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猫は発情しなかったけど、
登録者:えっちな名無しさん
作者:名無しの作者
(・∀・)340(・A・)342

そのアパートに引っ越して間もないころ、夕方になると、外から猫の声が聞こえてくることに気付いた。
 
「にゃあ!」「にゃあぎにゃあ!」「ぎゃあ!」
って感じで、かわいい感じじゃなくて、ケンカしてるのかと思った。
でもほぼ毎日聞こえるし、少なくとも十匹単位の数に聞こえる割には、近所で猫をみかけたことないし、不思議に思ってた。
 
住宅地で、車の通りも少ないから、余計に猫の鳴き声が際立った。
そのころ夜勤もある仕事してたから、昼間寝てるときは正直少し迷惑だった。
彼氏が部屋に遊びにきたときに聞いてみたら、猫の発情期なんじゃないの、と言ってた。
 
「ま、まあ人間は年中発情してるけどね」
 
と、年下で奥手でおとなしい彼氏が、私にくっつこうとしてくる。
彼なりに精一杯遠まわしに、アプローチしてきてるのがわかったけど、あまりえっちが好きじゃない私は、気付いてないふりをしてやり過ごした。
 
猫の発情期がいつまで続くのか知らないけど、夕方家にいるときはほぼ必ず聞こえるし、姿を見ないのに声だけうるさいのが不思議で、ある日彼氏と一緒に猫を探してみることにした。
 
猫の正体はすぐわかった。
アパートの近く、生活道路の向こう側は金網があって、さらにその向こうは高校の体育館?になってる。
その中から聞こえてくるのは猫の鳴き声じゃなくて、女子剣道部員の“気合い”だった。
 
その高校は女子剣道部がそこそこ強いとこらしくて、部員もたくさんいた。
窓の向こう、細い声を一生懸命張り上げて、女の子たちが竹刀を振り回してる。
 
「にゃあ!」「にゃあにゃあ!」「にゃあ!みぇーん!めん!」
 
うるさい。でも、正体を知ってしまうと、もう猫の声には聞こえなくなってくるから不思議だ。
なーんだ、そうだったのか、なるほど。
と思うと同時に、…ということは、猫の発情期と違って、これがいつまでも続くのかあ、と思ったら、ちょっとうんざりした。
 
ふと、サッカー部か陸上部あたりだと思う、短パンの男の子と、剣道着の女の子が木陰で寄り添うように立っているのを見つけた。
私と彼氏が、金網越しに見ているのに気付くと、すぐに走って行ってしまったけど。
走り出す瞬間、つないでいた手を振りほどいて、胸の前できゅっと握って恥ずかしそうにしてる女の子がかわいかった。
 
「いいなあ…」
 
と彼氏がつぶやいた。
私があまりイチャ
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