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いわくつき物件
登録者:えっちな名無しさん
作者:名無しの作者
(・∀・)15(・A・)12

 不動産関係で働く友人が体験した話。
 とあるアパートに、なかなか人の居つかない部屋があった。
 よくありがちな、幽霊が出るといった明確な怪異が起こる訳ではなかったのだが、その部屋に入居した人間の話によると、そこで暮らし始めて間もなくすると、特に理由もなく言い様のない不安や恐怖を感じるというものだった。
『部屋の中に何かが存在している』
 入居者はそう言って、早々と退去してしまうため、そのアパートの大家も困り果てていた。
 友人の会社も出来る限り調査はしたのだが、その部屋で殺人事件や自殺があったという記録もなく、部屋の素材に何らかの有害物質が含まれている訳でもなく、何より他の部屋の住人は特に異常を訴える事なく平穏に生活していた。
「Aさんっていう、霊能者の先生に見てもらう事にした」
 ある日、そこのアパートの大家と懇意だった社長は、そう言って友人に霊能者を同行してそのアパートへ行くよう命じられた。
 不動産業界の伝手で紹介してもらったというその男性霊能者は、なかなか評判のいい高名な先生だったようで、とりあえず一体何があの部屋にあるのかを、見てもらう事にしたという。本格的に浄霊の儀式が必要かどうかを確かめるべく、まずは友人が霊能者を伴ってそのアパートへ下見に行く事になったのである。
 やがて約束の当日となり、友人と霊能者は問題のアパートを訪れた。
 その男性は五十歳前後の堂々たる体格で、霊能者という肩書にやや胡散臭いものを友人は感じていたのだが、なかなか貫禄のある頼もしい雰囲気の人だったらしい。だがその部屋の前にまで来た途端、その霊能者は急に立ち止まって表情を一変させた。
「すみません、ここは無理です」
 唐突に、その霊能者が言い放った。
 あまりに予想外な言葉を投げられ、友人も戸惑うしかなかった。
「どういう意味ですか?」
「残念ながら、とても私の手には負えません」
「せめて、中を見るだけでも」
 わざわざ霊能者まで招いてここへやって来た以上、友人としても無条件で引き下がる気にはなれなかった。鍵を開け、霊能者を中へ誘うべくドアを開けようとした時だった。
「開けるな!」
 友人に対し、恐ろしい剣幕で霊能者は叫んだ。
 さすがに友人もその様子に尋常ならざるものを感じ、唖然としたまま固まってしまった。
 そんな友人を見て、感情的になった事をすぐに後悔したらしく、霊能者は気
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