TOP
3次ページ→

昔のこと
登録者:えっちな名無しさん
作者:名無しの作者
(・∀・)14(・A・)5

記憶が美化されているかも知れないし、あやふやなところもある。
辻褄合わせに、話に脚色も入っているだろう。
それでも書こうと思う。
今から30年ほども前の話である。
東京の大学に進学するため、地方から上京することになった。
高校までは住んでいたところは山や川が多く自然豊かなところであった。
山で栗をとったり、川で鮒を釣ったりして遊んでいた。
電線に止まったスズメの鳴き声で朝起きたり、夜は夜でカエルの大合唱が聞こえる、
そんなところに住んでいた。
しかし、東京首都圏は殺風景なところで、
どこに行ってもコンクリート、アスファルト、車ばかりで
凛とした葉の瑞々しさや水の冷たさを感じることはなかった。
ちょっとしたカルチャーショックだったかも知れない。
大学では、淡々と進める無味乾燥な講義を受け、人間味の無いつまらない授業を
義務的に受けていた。
大学の同級生は、いかに自分が優れているか偉いか自慢話ばかりをする人が多かった。
今風で言うと、人間関係をマウントごっこに頼っている感じの人が多かった。
つまらなかった。
本当につまらなかった。
つらかった。
それでも、挫けなかった。
東京の大学に進学して、親から期待されている。
決して安くない学費を出してくれている親に迷惑をかけられない。
大学は意地でも卒業しようと思った。
生活費を稼ぐため、社会経験のため、少しでも今の生活を変えたいため、
近くのファミレスでバイトをした。
そこで出会ったのが、亜樹子さんだった。
亜樹子さんは小柄で華奢な女性だった。
切れ長の大きな二重の眼がとても綺麗で、可愛らしい女性だった。
私より9歳年上で、4年前に結婚して北の大地から上京したと言っていた。
東京は色々物は揃っていて便利だけど凛とした空気の透明感がないと言っていたことを
覚えている。
感性が合っていたというしかない。
1年目の秋には、禁断の男女の仲になっていた。
何故このようになったかは覚えていない。
初めて亜樹子さんを連れて道を歩いているとき、金木犀の匂いがしたことを覚えている。
亜樹子さんは暖かった。
上京して、初めて、人のぬくもりを感じた。
素敵な人だった。
私にとって、初めての女性だった。
着痩せするタイプらしく、裸体は出るところは出ていて、肌は潤っていた。
殺風景な灰色の部屋に置いた瑞々しい檸檬のようであった。
亜樹子さん
3次ページ→
TOP