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Water lily HOTEL
登録者:えっちな名無しさん
作者:名無しの作者
(・∀・)3(・A・)2

『Water lily HOTEL』
恋歌
旅客船“イオカステ”号が港に着岸した衝撃でも慶子と巧は目を覚まさなかった。今
朝未明にサイパンについてすぐ港からこの船に乗った時に服用した酔い止め薬がまだ
効いていたのである。薬が効きすぎる体質は母子だけに実に良く似ていた。まあ、今
はまだ早朝六時なので起きなくても無理はないのかもしれないが。
「Good  Morning!」
他の乗客がさっさと降り、最後の乗客となった二人を船長である三十歳くらいのブロ
ンドの美女がおこしに来た。ちなみに彼女はこの船の機関士とは実の姉弟らしい。サ
イパンを出発する前にそう自己紹介された時に二十人はいた他の乗客が歓声を上げた
が、慶子達にはその意味が良く判らなかった。まあ、出港と同時に二人とも寝てし
まったので、その後の船内がどうなったのかは知らないのだが……
「あ、ついたの」
寝ぼけまなこでまず巧が起き上がった。今年で十五歳になる身体は痩せぎすなので服
を着ていると判らないが小学生から続けた柔道のお陰で意外に筋肉がついている。背
はそこそこで性格はおとなしめだがしっかりしており、結構かっこいい容姿のせいも
あって学校では特に女の子に人気があった。
「ほら、ママ。島に着いたよ。起きて」
巧は寄り添うように寝ていた母の肩を揺すった。久しぶりにきっちり化粧した慶子の
頬にショートボブの髪が当たり、いやいやをするように揺れる。十秒ほどしてからよ
うやく母は目を覚ました。
「あ、巧。おはよう。――ご飯は?」
「おはよう。今日は僕の当番じゃないよ。ママ」
ぼけた挨拶をする二人に女船長が早口の英語で長々と喋った。顔が紅潮しており、笑
顔であるから怒っているわけではないのだろうが二人の英語力――特にヒアリング能
力では聞き取れない。せいぜい巧が、五時間前の出発時には白いきっちりとした制服
の船長が、今は結構危なくらいに胸元の見えるワイシャツ一枚で、しかも運動でもし
たかのように汗をかいている事に気がついたくらいである。僕たちが寝ている間に何
かあったのだろうか?
「船長さん、なんて言ってんのよ。巧」
「わかんない」
「中学校で英語やっているでしょう!」
「・・それを言うならママは大卒だろ」
「卒業後は忘れてるわよ!それが日本の常識じゃない!」
「無茶言うな!」
結局、二人は力一杯の笑顔で愛想を振りまくと言う、純日本人的
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