TOP
←1前 ↑2先頭 3次ページ→
た。
それは夢の様な良い話でしたが、私は突然の大きな仕事に、期待よりも、嫌な予感しかしませんでした。
特に担当者の竹中のことが軽薄そうで、どうしても信頼できませんでした。
まだ、かなり若いのに他人を見下したような話し方や私を見る目つきが鳥肌が立つくらい嫌でした。
しかし、
コロナ不況でも竹名の所属する自動車会社だけは売上を伸ばしていることを知っていましたし、何より、その仕事があれば苦境を脱することができる、逆に言えば、その仕事がなければ会社は倒産する状態でしたので、
私は夫に反対はせずに、その話に飛びつきました。
仕事を受注してからは、毎日が忙しく、期間工を雇ったり、私もフルで業務にあたりました。
そのおかげもあって、納品は滞りなく、非常に順調で竹中からも感謝されるほどでした。
しかし、1年近くが過ぎて、いつ契約を更新するのかとヤキモキしていると
突然、竹中は契約を打ち切ると言ってきたのです。
それは、コロナによって材料が高騰している中、思い切って発注した後でした。
夫と二人必死に頭を下げました。
せめてコロナが落ち着いて、材料の高騰が収まるまでまってくれないかと。
しかし、竹中は聞く気を持ってくれません。
そのうち、当社の資金繰りについて難癖をつけられ、夫が席を外すと
竹中は嫌らしい目つきで私の身体を眺めながら
「二人で会いたい」などと言ってきました。
「ど、どういうことでしょうか?
 お仕事のお話でしたら、夫と一緒に伺う方が良いのではないでしょうか?それか、夫」
竹中は失礼にも私の言葉を遮り、言葉をかぶせてきました。
「社長の方には用はありません。発注をこのまま続けるかどうか奥さん次第です。この意味分かりますか?」
「申し訳ございません。おっしゃる意味がよく分かりません。」
「分からない人ですね。全て”は奥様のその素敵な”か・ら・だ”次第、と申しているのです。」
そう言って、竹中は私の全身を舐めるように見ながら、嫌らしく口元を歪めました。
「な、何をおっしゃっているのですか! そういうことでしたら、お断りします!」
「本当によろしいのですか? おたくの会社、潰れますよ」
一瞬、言葉が詰まりました。しかし、あまりにも理不尽で馬鹿にしていま。
私は夫が応接室へ戻る前に、竹中を追い出しました。
それからは、本当に辛い毎日でした。
竹中から切られた私
←1前 ↑2先頭 3次ページ→
TOP