TOP
←1前 ↑2先頭 3次ページ→
、6人兄妹はほとんど離れ離れになる
ことなく大人になったという。
その話を聞いた俺はますます、この一族の一員になれたことを嬉しく思い、
こんな素敵な人たちのところに嫁いでくれた母に感謝すらしていた。
しかしそんな俺の気持ちが、後々自分の障害になるなんて、当時は思いも
しなかったんだ。
9 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 18:38:51
その年、2000年のクリスマスに、俺は付き合っていた彼女にプロポーズした。
この街では数少ない小洒落た店を予約し(俺は地方都市で育った)
大枚をはたいて買ったエンゲージ・リングを彼女の薬指にはめた。
18の頃に両親が離婚し、間近で見せられた彼らの修羅場がトラウマとなって
いた俺は、「結婚」なんてものになんの幻想も夢も抱いていなかった。
その俺が結婚する。結婚できる。俺のトラウマは癒されたんだと思った。
満面の笑顔で彼女が言う。
「ウチのお父さんの説得、ふたりでがんばろうね」
彼女は3人姉妹の真ん中で、上・下の姉妹はすでに嫁いでいた。
それゆえにいつも「お前の結婚相手は婿入りできる人間でないと認めない」
と、彼女は父親から釘を刺されていた。
俺はプロポーズの前に彼女に言っていた。
「俺の母親は再婚してるから安心だけど、親父はずっと一人身で暮らして
 いる。彼に再婚する意思はないし、この先も独身でいるだろう。
 だから俺は君の家に婿入りするわけにはいかないんだ」
彼女は俺の気持ちを快く汲み取ってくれた。
「お義父さんも一緒に幸せになろうね」
そんなことも言ってくれた。幸せだった。
この幸せな気持ちさえあれば、彼女のオヤジさんもきっと説得できると、
自信を持っていた。
10 名前:1 ◆SemWiFNIUE [] 投稿日:2005/11/11(金) 18:40:47
それからまもなくのある日、俺は彼女の実家に挨拶に行った。
オヤジさんは渋い顔つきをしていた。
すでに彼女から俺が婿入りの意思のないことを聞かされていたからだろう。
座布団も茶も出なかった。
まあ当然だろう、と俺は気合を入れてオヤジさんと話し始めた。
「はじめまして。大塚と申します」
「話は聞いてる。認めない」
呆気にとられた。
「私たち夫婦に残されたのはこの娘だけだ。この娘までとられたらこの先、
 私たちの面倒は誰が見る?」
俺はめげない。
「私が婿入りしないとしても、
←1前 ↑2先頭 3次ページ→
TOP