お化け屋敷

2007/12/12 00:38 登録: おバカな名無しさん

今日の晩、食事中に、家族との会話で、十数年前まで住んでいた家の話になった。その家は借家で、私が十歳になるまで、そこに住んでいた。立て付けが悪い木造の一軒家で、冬に吹雪になると、窓の隙間から雪が入り込んで来る程、酷い所だったのを覚えている。家族も、風呂場にはよくハサミムシが出ただとか、台所に向かって蟻の行列が行進していただとか、玄関のドアが閉まり辛かったとか、前の家の酷さ加減を挙げて、懐かしんでいた。
私も懐かしかった。幾ら古くても、長い間ずっといた家なのだ。やはり愛着はあったと思う。ただ、前の家には幾つか不思議な事があったのを思い出した。その一つは、寝室のドアの事だった。その家の寝室は二階にあって、一階から二階へ行くには当然階段を使う。そして、階段を登ると直ぐ寝室へ入るドアがある、という構造なのだが、父親が出張等で不在の時、私と母親の二人で寝床に着く時には、必ず母親がロープでそのドアを縛っていた。幼い私は理由を聞かなかったが、ロープで縛られたドアを見て、何故、母親はこんな事をするのか不思議に思っていた。
そして今日、懐かしついでに、その事を、母親に聞いた、すると、母親の表情が少しだけ曇った。母親暫く考えた後。
「私のちょっとだけ怖かった話だけど」
という前置きと共に、その家の奇妙な出来事について語りはじめた。
それは、父親が不在の夜だけに起きていた。一番最初は、その家に越して来て五日目の深夜、母親がふと目を覚ますと、ゆっくりと、階段を登る足音が聞こえてきたそうだ。最初は、父親が帰って来たと思ったそうだが、何か違う。第一、父親は明日までは帰って来ない。母親は恐怖を覚えたが、その、足音は段々と近付いて来て、とうとう寝室のドアの前までやって来てしまった。そして、泣きたい位に恐怖に慄く母親を尻目に、ドアの向こう側に何かしらの気配が居座り続けた。腰を抜かした母親が、漸く部屋の明かりを点ける事に成功すると、スッとその気配は消えた。そして、その日はそのまま、部屋の明かりを点けっ放しで、まんじりとも出来ないまま朝を迎えたそうだ。それ以後、父親がいない夜は必ず、足音が聞こえてくるようになった。階段の数だけ足音がして、ドアの前に居座り続け、一定時間すると、ふと居なくなる。確かに怖い。ただ、その気配は決してドアの前までしか来ないので、別に大した害はなかったのだか、やはり怖いという事で、父親がいない夜は、ドアを縛り、明かりを点けて眠る様になったそうだ。
私は、母親の話を聞いて、やっぱり変な家だったんだなあと思い。その夜は明かりを点けっ放しにしたまま、眠りについた。

まだまだ前の家には不思議な事はあったケド、それはまた今度。

出典:オリジナル
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