じいさんの笑顔
2007/12/23 11:50 登録: えっちな名無しさん
学生時代、異常なまでの金縛りに困っていたことがある。
専門学校に入学した俺は実家を出て寮に住んでいた。
最初の2年は何ともなかったのに、3年目に入ると金縛りに遭うようになった。
布団に入り、ウトウトし始めると金縛り。
怖いから意地で金縛りを解除して、またウトウトし始めると金縛り。
一晩で十数回とか、ザラだった。
金縛りの時に見る幻覚は、決まってじいさん。
ニヤニヤしてて気持ち悪いじいさんだった。
(俺を苦しめて何がそんなに楽しいのか・・・)
そんな状態が何回も続くと、本当にイライラしてくる。
どっかで見た顔なのに、思い出せない。
夜中に1人で怒り狂ってる俺は、周りから見たら変かもしれないけど、
そのくらいあのじいさんが憎かった。
もともと俺には霊感はなく、今までそんなことはなかった。
しかも、母譲りなのか極度の臆病者で、金縛りの際の幻覚と幻聴には本当に参っていた。
ある日、金縛りの事をバイト先のパートのおばさんに話してみた。
俺「最近金縛り多いんですよー」
おばさん「疲れてるんじゃないの?たまには休んだら?」
俺「疲れてるのかな、休みの日も遭いますけど」
おばさん「疲れじゃないなら、霊じゃないかな」
俺「え、それはないですっ、俺霊感皆無だし。」
おばさん「ちゃんと墓参りいってる?行かなきゃダメだよー?
あ、でも土日も仕事だから家に帰れないか。」
俺「・・・・。あ、じいさん」
その週末、バイトを休んで地元へ帰った。
そういえば去年までは3週間に1回は帰ってきてたんだ。
そう遠くない距離なのに、今年は忙しくて帰るひまが無かった。
実家に帰る前に、ばあさんの家に寄る。
仏壇の写真を見ると、あのじいさんの写真があった。
俺が産まれる前に死んだじいさん。白黒のこの写真でしか見たことがない。
優しい笑顔で写っているじいさんの写真。
俺は仏壇の前で手を合わせ、実家に帰った。
その日の夜も金縛りに遭った。
でも、全然怖くなかった。
ゆっくり目を開けると、写真と同じ笑顔のじいさんがいた。
俺も笑うと、じいさんは「じゃ、またな」と一言残し、消えていった。
寮に戻る前に、もう一度じいさんの仏壇の前に座った。
手を合わせ、じいさんの写真に「またな。」と声をかけ、立ち上がった。
少し、軽くなった気がした。
出典:ゆず湯も
リンク:よろしく
(・∀・): 127 | (・A・): 36
TOP