緑の扉のじじい
2008/02/03 16:00 登録: えっちな名無しさん
これはワシが中1の頃の話。
その頃のワシは、悪ガキだったんだよな。いや、問題児だったかもな。
よくイタズラをしては呼び出されて起こられたもんじゃ。
イタズラの質はそんなに濃くは無いが、回数だけは自信があるぞい。
物心ついた時からゲームとイタズラだけはピカイチだったね。
ワシは頭は良くないんだが悪知恵だけは次から次へと湧いて来てたんだよ。
今でも「その知恵を勉強に使え」とよく言われますよ、えぇ。
それでこの体験はワシとその仲間達の体験。
その頃中学生だったんだが、その前に通ってた小学校の登校ルート上にその舞台がある。
「緑の扉のじじい」
いつの日やらこう呼ばれるようになってた。
たぶんこの体験談をワシの友達がみたら絶対的に特定されるなこりゃ。
登校ルートの途中にボロイ家があってな、そこにじじいがすんでいるんだな。
頭のてっぺんがハゲてて横の髪が長い、落ち武者ヘアーのサングラスじいさんが。
そんで、なんで「緑の扉のじじい」なんてあだ名がついてるのかというとだね、
そのじじいの家は本家と離れがある感じの家で、本家の方は木造一階立ての玄関が障子の古い家で、
離れの方がコンクリの物置みたいな小屋。
自分家の敷地をブロックで囲んでて、敷地内には小さい畑もあったが敷地自体はそんなにデカくない。
その離れの出入り口っぽい扉が緑色なんだな。たぶん鉄の扉を緑ペンキで塗ったんだな。
じじいの家の隣がペンキの保管庫みたいな倉庫があった。
ノブもなんか芯にアルミ板を巻いたような感じだった。
その離れの家には窓から出入りしてるみたいで、窓にはしごがかけてあったね。
その扉にはブロックが立て掛けてあって塞いでるような感じでしたからね。
それでこれは小学生の時だがある日ワシの友達二人、あだ名が「ウッツゥィー」と「テッツゥィー」
が下校途中、その扉に立て掛けてあったブロックを「テッツゥィー」がなんとなく持ち上げ、
近くにあったペンキ缶の上に落とした。
ビュン、ゴトンッ!
本人はなんとなく、割れるかな?と思ったそうだ。
でも割れないので2回目。
ビュン、ゴトンッ!
ウッツゥィー 「おい、もうやめとけよー」
テッツゥィー 「おー、これでやめとくわー」
ビュン、ゴトンッ!
次の瞬間。
「こぉらあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!」
離れからじじいの怒声が聞こえてきて、二人は一目散に逃げてった。
「ウッツゥィー」は足が速い奴で、「テッツゥィー」はあっという間に引き離されたとか。
それで翌日その事が学校で話題になり、そのじじいに挑む猛者どもが現れはじめた。
扉を叩きまくり、石を投げ、「クソじじい!」と叫んだり。
その中の一人、「デブシ」はじじいが出てくるまでたたき続けたという武勇伝を持つ。
おそらくその時点で初めてじじいを外におびき出したのは「デブシ」が初めてだったかもな。
そんな事がワシが中1になるまで続いた。
ある日、ワシがそのじじいの事を学校で話していたらワシの友達がどんどん食いついてきたんじゃ。
そのイタズラの事について話すと「俺もやりてぇ!」と次々に言い出した。
さすがワシの友達!
そんなにやりたいなら明日の土曜にやろうぜ!という事になった。
この時の参加者は、
「ブッチホン」「リーゼント」「ブン」
「タマゴ」 「パピオン」 「リョータ」
「ケンチュウ」 そして「ワシ」
という大人数でじじいの家を攻める事になった。ちなみに全部あだ名。
実際はもっといたはずだが、あまり覚えてない。
当日。
ワシの家が集合場所となり、全員集まった所で出陣となった。
じじいの家の近くまで自転車を走らせ、目的地につき、そこで作戦会議となる。
まずAチームとBチームに分ける。
じじいの家に行くには大通りからの二つのルートがあるのだが
Aチームが片方のルートからじじいの家に近づき、扉を叩きまくる。
そして怒声が聞こえたら、もう一つのルートで待機しているBチームの方に大通りから逃げて、
全員逃げてきたのを確認したらBチームがじじいの家に小石を投げまくる。
途中でAチームも参加し、全チームで小石を投げまくる、というものだった。
この時ワシはAチームになった。
そして決行時。
近くにそれぞれの自転車を大通り側に向けて置き、そーっとじじいの家に近づく。
「ブン」がじじいの家を覗き、安全確認。OKのサインを出した。
それを確認したワシが言う。
「よっしゃ!やったれ!」
ドカドカドカドカバンバンバンバンボカンボカン!
一斉に叩きまくる。
じじいの怒声は確認できなかったがある程度叩いたら逃げ出し、自転車にまたがり、一斉に走り出した。
大通りからBチームのルートへ行くと既に石が壁に当たる音が。
自転車を置き、それに参加した。
ヒュン ドカン!バカン! ヒュン ガタタン!ガン!
皆が石を投げまくりじじいの木造の家の方に当たりまくる。
途中「リョータ」が石を投げるたびに「くそじじい!」と叫びまくる。
「おい!特定されんぞ!」と注意を促す「ブッチホン」。
手にいっぱいの小石を貯め、一気に炸裂弾のように投げる「タマゴ」。
正確に全力投球する「パピオン」。
かなり長い間だったと思う。
そして「ブン」がじじいの家に「ビンボー!」と叫んだ瞬間、
じじいが家の影からぬっ、と出てきた!
「うわぁー、じじいが出てきたー!」「じじいやー!」と叫び逃げ出す友達。
自転車のスタンドを上げる「カタン」という音が連続で響く。
もう一度確認するためにじじいの家の方を見るとサングラスをかけたじじいが確かにいた。
それを確認し、慌てて自転車のスタンドを倒し、逃げ出した。
通路の途中の建物の影に「リョータ」が隠れていたが、構っている余裕なんか無かったね。
それで大通りに出て、仲間達としばらく様子を見ていた。
突然、Bチームの方のルートから「リョータ」が、ターミネーター2の液体金属みたいな
走り方で「おじいさんが!おじいさんが!」とつぶやきながら戻ってきた。
リーゼント「あほやなお前、あんな所に隠れとるからや!」
ワシ 「おいもう逃げとったほうがええんとちゃうか?」
ブン 「めっちゃビビッたで、俺がビンボー!って言った瞬間、ぬっ、て出てきたんやもん!」
ブッチホン「お前真っ先に逃げてったやないか、臆病ネズミや(笑)」
ケンチュウ「殺す!」
バシッ!
ブッチホン「いってーな!」
そんな会話を続けているとAチームのルート側にいた「タマゴ」が
「うわぁー、チャリ乗っとるー!!」
と叫びながら自転車をこちら側に方向転換してきた!
「ええー!?」「うわー!」
叫びながらワシ達も方向転換する。
そのまま走り出し大きな坂を下る。
ワシ 「どっちに行く!?」
タマゴ「右!右!」
そのまま大きな田園地帯に入った。
とても広く見通しが良くてずっと続く草原のような場所なのだが、
その時のワシ達にはそんな夕焼けの風景を楽しんでいる余裕なんてない。
長い長い一本道を永遠と自転車でこぎ続ける。
後ろを見ると、自転車に乗ったじじいが坂を下って来ているのが見えた。
「めっちゃヤバい!」
自転車をこぐ足に力が入る。
だがあまり体力に自信がある方じゃ無かったんで、次第にペースが落ちてきた。
このまま自分だけ他人のフリをしようとも思ったが絶対にバレると思いやめた。
途中で「ブッチホン」が真剣な顔つきで、ワシを追い越した。
一人のじじいに追われる大人数の学生達。
この当時はワシらにとってはじじいは恐ろしい存在だったんだな。
だから捕まるわけにはいかん!と思ってヘトヘトになりながらも自転車をこぎ続けた。
おそらく5km以上は走り続けたかな。それでもまだじじいは追ってきている。
途中神社があった。そこで「タマゴ」が「ここに逃げようぜ!」といった。
自転車を担ぎ、何段も続く階段を上るワシら。
全員のぼりきった時は全員ヘトヘトになってた。
「じじいめっちゃしつこかったな!」
「追跡者やであれ!」
「追跡じじいや!」
「なんやそれ」
「ここまで追ってこやんか?」
「はやう逃げたほうがええって!」
その神社にはもう一つ出入り口があったのでそこでゾロゾロと逃げ出した。
「ケンチュウ」がしきりに周りを見渡している。
それからしばらくその辺を走っていたが、じじいの姿は見当たらなかった。
だいぶ暗くなって、再度じじいの家に偵察しにいったが、自転車もなくじじいもいなかった。
翌日、学校でその話で持ちきりになり、それからまた挑む猛者どもが増えた。
ワシらにとってはいい思い出だが、じじいにとっては迷惑極まりない思い出だった。
出典:オリ
リンク:オリ

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