修羅の人

2008/02/24 18:13 登録: えっちな名無しさん

スナックでバイトしていた時。その店の常連さんに、その筋の幹部の方がいた。
顔はいかつくて、体もごつく、相当の修羅場をくぐり抜けてきたらしい人だ。
指は右手が三本しかなかった・・・・^^;
あまりお付きの若い衆をゾロゾロ引き連れて来ることはなく、いても二人くらいだ。
物静かで決して大声を上げたりすることもなく、いつも店の隅の方で静かに飲んでいた。
俺にはいつも「坊や、仕事は慣れたか?」「20歳かー、若いのう。これからだな、羨ましいよ」
とか声をかけてくれ、金払いもよく、まあいいお客様だった(それでも怖かったけど)。
一度、お付きの若い衆が酔った客がうるさいと大声を上げ、周りをびびらした事があった。
若い衆を押さえ、周りに「お騒がせしました」と謝り、その場を収めた。
すぐにその人は店を出たが、忘れ物をしているのに気付き、俺が追っかけていって届けようとした。
ドアを開けて、捜したがもう姿はない。おかしいな、三十秒くらいの間なのに・・・ふと見ると、
通りのちょっと陰になったところにその人を見つけた。お忘れ物ですよ、と声をかけて近づこうとしたら、
「迷惑かけんなっていってるだろうが!」と騒いだ若い衆の頭をバシッと叩いているところだった・・怖ええ。

ある夜珍しくその人が五人くらいで店に来ていた時、
「坊や、ビール五本追加してくれ!」と右手を広げた。
ちょっと目が悪かった俺は、その人の右手は三本しかないことも忘れていて
「あ、はい・・・え・・三本ですか?」と言ってしまった。
瞬間、他の四人の顔つきが変わり、俺もしまった!と一気に冷や汗が出た。
だがその人は「このガキャ・・・」とニヤッと笑って左手で二本の指を足して、「違う違う、五本!」
それで何事もなく終わった。よかった・・・洒落の分かる人で(いや、洒落をいったつもりは無かったが)

半年くらい過ぎ、「もうここに来るのも最後なんだ」というので「どうかされたんですか?」と聞くと
肝臓が悪くてドクターストップがかかったという。
以前から言われ続けていたのだが、それまではどうしても酒をやめなかったんだそうだ。
「孫が生まれてなあ、やっぱり一日でも長く孫と一緒にいたくてな」というその人の顔は、
どこにでもいる普通の優しいおじいちゃんの顔だった。
その後、そっちの世界も引退したと聞いた。今も元気でいるだろうか。

出典:ちょっと前2ちゃんのスレで拾った
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