きみが私よりも
2008/03/20 17:29 登録: えっちな名無しさん
小学生のとき、交通事故で入院した。
経験ある人は分かると思うが入院生活は本当にヒマ。
両足骨折のために歩くことも出来なくて、ヒマで仕方ない俺に隣の女の人が読書を勧めてくれた。
もちろん小学生の俺が小説など楽しめるはずもなく、嫌がったら年齢を聞かれた。
「じゃあさ、きみ、いくつ?」
なんで歳なんか聞くのか分からなかったが、素直に10歳だと答えた。
「私は16歳だよ。年上の言うことはちゃんと聞かなきゃダメだよ」
本を読む機会なんて全く無かったために、親にも同意されて不承不承読むことになった。
そして退院の日、その人は俺に、文庫本サイズのブックカバーを祝いだと言って渡した。
松葉杖があれば歩けるようにはなった俺は、読書よりも遊びたい気持ちでいっぱいだったので、もう本なんて読まないと答えた。
「じゃあ、きみが私よりも年上になったら言うこと聞く必要ないから、その時にもう一度考えてみて」
退院後は、その人と会うこともなく、ブックカバーの事などすっかり忘れていた。
だが20歳のときに一人暮しを始める事になって荷物を纏めていると、押し入れからそのブックカバーが出てきた。
そう言えば年上になったらとか言われたなと思い返し、自分が今20歳なら、あの人は26歳なんだから年上になんてなれるワケないじゃんと思った。
だが、そこで、なら何であの人は『年上になったら』なんて言ったのかと考えた。
変な考えが浮かんだ。
なんで入院してたのかは知らないし、名前すら覚えてないけど、もしかして重病だったんじゃないか。
自分の歳は16で止まると知ってたから、あんなこと言ったんじゃないか。
実際どうだったかはもう分からないし、ただ子供に言い聞かせるためだけの言葉だったのかもしれないけど、当時のあの人より年上になった今でも読書は心掛けてる。
ラノベだけじゃなく、あの人が読んでた夏目漱石や川端康成も読んでる。
もちろん、俺の推測なんてただの勘違いであってほしいと思いながら、今でもあの人の言うことは、ちゃんと聞いている。
今では本を読むきっかけを作ってくれたことに感謝してるくらい。
もらったブックカバーは使わずにしまってある。
出典:?
リンク:?
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