ジョン

2008/03/27 14:25 登録: えっちな名無しさん

158 :優しい名無しさん:2008/03/26(水) 17:32:08 ID:LQlc9kq/
隣のシーズージョンは、小柄な子だった。
生まれて直ぐに貰われた家では、殴られ蹴られし、見かねて今のお母さんが引き取った。
始め、ジョンは優しいお母さんも怖かった。良い子良い子しようと思って頭の上に手をかざした途端、歯をむき出して唸って、お母さんの手に噛みついた。
傷だらけになったお母さんの手だったが、それでもお母さんはジョンを叱ることはしなかった。いつもジョンは良い子なのだと言っていた。
暫くすると、お母さんは怒らないことに気が付いたジョンは、それから、大人しく撫でられるようになり、抱っこもされるようになった。
一度、あんまりいたずらが酷くて、お母さんは冗談で「もう出て行きなさい」と言った。するとジョンは、とことこ玄関に行き、どんなに呼んでも、大好きなおやつを出しても動かなかった。頑固な子だった。
犬のくせに犬嫌いで、そのくせ寂しがり屋だった。
隣のお母さんは、ジョンを心から大切にしていた。絶対に怒らないお母さん。だからジョンはかなり大きな顔をして、毎日楽しそうだった。そうして17年ジョンは、幸せに生きたと思う。
老衰が激しくなったある日、ジョンは酷く苦しみだした。
でも、お母さんが撫でると、うっとりと目を閉じていた。もう目がよく見えなかったけど、お母さんの声と匂いは判ったから、きっと安心したんだと思う。
3日間苦しんだ。
漸く呼吸が楽になったと思ったお母さんは、ジョンの大好きな場所(ストーブの前)に大好きな毛布を敷いて、そこに寝かせた。
そのまま、ジョンは眠るように亡くなった。
きっとジョンはお母さんとの幸せな思い出だけを持って、辛かったことはもう忘れて、虹の橋を渡ったんだと思う。お母さんもそう思っている。
だけれど、ジョンがいなくなって心に穴が空いたようだと、お母さんは寂しそうに言った。
お母さんは、まだ元気がない。


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