同窓会

2008/06/03 05:26 登録: えっちな名無しさん

某所で同窓会のスレッドを見て思い出した話。

成人式が終わって昼飯食いに行ったり遊んだりしたらいい時間になったので、自然な流れで同窓会にも参加した。
会場はありがちな駅前の居酒屋。来る人数の目安が20〜30人弱くらいだったのでフロアを貸し切ってた。
敏腕幹事がDQNを別の居酒屋へ隔離したはいいものの、
そうすると今度はDQN未満お調子者以上のウザい奴がキャバクラのようなコールをして酒飲めない奴に無理矢理飲ませたりしてた。
嫌な感じだと思いながら、俺は気の知れたメンツでチビチビ飲んでた。

本当ならこういうときに「おー久しぶりー!」って色んなテーブルに顔を出すものなんだろうけど
中学のころから20kgくらい太ってしまった俺は、会う人全てに「本当に○○(俺)か?」って言われてしまう始末。
まぁ自分の不摂生が悪いんだが、そういう風に言われていちいち太った原因とか説明するのが面倒だったし
相手も俺に変に気を使っているようなのが申し訳なかったよ。
学生時代スポーツだけが取り得のブ男が、デブになったらそれこそ魅力のカケラもなくなるわけで。
そこそこ仲良かった女子に話かけても「あぁ・・・うん」みたいな感じで避けられてるのわかったしね。
ちなみにその女子はお嬢様大学出てOLやってスイーツ一直線って感じ。ホテルのケーキバイキングだとかアーアー。
だから結局俺が太ったの知ってて、「デブ!デブ!」とか冗談で済ませてくれる親友たちくらいしか話せる奴がいなかったんだ。

そんな時に視界に入ったのは学生時代同じ部活で一緒にペア練習とかしてた女子(S)だった。
芸能人で言えば平山あやに似ているかもしれない。
当時既に「今風の女の子」って感じだったけど同窓会でも、色黒+金髪+縦ロールで衝撃を受けた。
明るく人なつっこい性格は変わっていないようでSの周りには自然と人が集まってた。
その様子を見ながら友人に「そういや俺、Sにボタンくれって言われたことある」って告白したら「冗談はその腹だけにしろ」とか言われた。
確かに中3の頃も学校で一番カッコいいって言われてたYと付き合ってたしなぁ。運動出来る優しいイケメン。彼の悪口は聞いたことが無い。

もちろんボタンの話は本当だよ。でも言われたの中学2年の終わりで俺は何を思ったか
まだ1年あるのに新しいボタン買うのも嫌だから断った。
その後クラス替えで離れてしまって疎遠になった。俺もケガで退部したし。
実は断ったことで彼女が傷つかなかったか、ずーっと不安だった。
けどこんな醜い姿になった俺が話しかけられるわけもなく、飲み会は終了。
周りが二次会のカラオケに行くなか、俺と友人数名で抜け出して別の店行こうとか相談してたら

「ねぇねぇ▲▲君でしょ!私!わかる!?」
と、いきなりSに声かけられてビビった。▲▲というのは下の名前。
俺は何を言うべきか考える余裕すらなくて
「えっとSさんだよね」
っていうようにしか返せなかった。それくらい驚いた。
Sは大きく頷いた。昔と変わらず愛らしい子だと思った。その後、お互いの近況とか話してた。
「やっぱりね、▲▲君は出来る子だとは思ってたよー」
とか思い出話にも花が咲いてたんだけど
もう他の奴ら結構移動を始めてて時間も無かったから唐突にボタンのことを話した。

「2年の3学期さ、部室前でボタン欲しいって言ってたよね?
 あの時、自分も良く分からないうちに断っちゃってごめん」
と、とりあえず謝った。そしたらSは笑いながら
「あはは、部活始まってるってのに聞いた私が悪かったんだよ」
そう答えた後2人は少し黙り込んだ。10秒か15秒くらいかな。
先に口を開いたのはSだった。
「▲▲君は二次会いくの?」
「大人数やカラオケは嫌いでさ、いつもの奴らとハシゴする予定」
「・・・それは残念だ!」
と終始Sはにこにこしながら俺を見ていた。
そしてまた沈黙。さっきの倍くらい無言が続いた。
「・・・実は結構落ち込んだんだぁ」
彼女の言葉を聞いて俺の後頭部がなぜか急激に冷えた感覚がした。
「あの時ボタンくれたら告白したかも。いやしてた」
彼女の表情から笑みが少しずつ消え、駅のロータリーを走る車を見つめていた。
「私卒業後もYと付き合ってるの知ってる?結局学生時代から続いてるの私たちだけみたい」
確かに二人とも市内の高校通ってたし、すごいなぁと思った。
「この状態で今私に告られたら▲▲君はどうする?」
全く予想してない言葉に俺は焦り、しばらく無言になった。
なんて答えるべきなんだろう、どうすれば彼女を傷つけずにいられるか、頭がグルグルした。
「俺ではとてもじゃないけどYのような立派な彼氏にはなれないよ。
 Yは俺なんかよりも何十倍も良い人間だもの。だからこんなに続いてるんだよ」
そのときの俺にはこれしか浮かばなかった。
「・・・そういうと思った」
Sは少し苦笑いしつつ答えた。
「私がYと付き合った理由は、▲▲君が薦めてくれたのがYだったから。部活の人に聞いたんだ。
 ボタンで失敗した時▲▲くんが『もっとYのような優しい奴に頼むべきだ』と言ってたって」
全く記憶に残っていないけど、言ったような気もする。

何も答えられないまま、お互いに友人に催促されて時間も限界って瞬間。
「私は少なくともYよりも優しい人を知ってるよ」
Sは俺と目を合わせて真顔で言った。
「・・・じゃあ、またね!」
彼女は話し始めたときの笑顔で手を振り、仲間の元へ駆けていった。

2日後
カラオケに行った友人からSの連絡先が書かれた紙を貰った。
紙には『▲▲君に渡してね』と書いてあった。
異性で俺のこと下の名前で呼ぶのはSしかいないので自然とわかった。
「こんなん見たらYが怒らないか心配だよ」
そういうと友人は笑いながら
「心配すんなよ、Yは去年職場結婚して県外に住んでるだろうが。同窓会来てなかっただろ?」

頭の中が真っ白になった。
連絡先の書いてある紙がカラオケ屋ではなく、居酒屋の物であることに気づいたのは
ほんのすぐ後のことだった。

出典:嘘のような
リンク:ホントの話

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