バーチャロン
2008/06/17 15:04 登録: えっちな名無しさん
俺は昔、本物の引きこもりだった。
そんな俺に、家から出る機会を与えてくれたのが初代バーチャロン(以下チャロン)、
ガンダム好きのメカヲタだった俺は、引きこもり欲求を押さえつけ、
自転車で1時間近くかかるセガに、足しげく通う事になった。
ファミコンのコントローラーでしかゲームをした事の無かった俺に
あの二本レバーは厳しく対戦は連敗、CPUはヤガランテに惨殺される日々が続いたけど、
俺はそれでも満足だった。
ある日、そのセガに言ってみると、大学生風のスラリとした兄ちゃんが
チャロンをプレイしていた、他の奴らとは明らかに違う動きをする兄ちゃんの戦いに、
俺はいつしか、心を奪われていた。
幾度となく入る乱入対戦を退け、俺がどうしても倒せないヤガランテを屠り、
ついにはクリアしてしまった。
初めて『勝つための動き』を見せ付けられたその時から、俺のチャロンは始まったのかもしれない。
兄ちゃんと俺で使用キャラは激しく違ったけど(俺ライデン、彼バイパー)
基本的な所(避けて打つとか、後出し有利の法則など)を必死で盗んだ俺は、
やっとこレバ操作にーに慣れてきた事もあり、2・3日も経たずにCPU戦をクリアし、
対戦でもそれなりに勝てるようになってた。
元々負けず嫌いだった俺は、次第に対戦の没頭していくようになっていた。
対戦を求めセガへと通う日々が続く、とはいえ、当時の俺は引篭明けの厨房、
異様な格好(タンクトップ・半ズボン・紫の麦藁帽子)に典型的なヲタク容姿(小太り・目つき悪)
そして異臭(当時は真夏だが、毎日風呂と歯磨きをしていなかった)あげくに異常なまでの内気さから、
対戦者とのコミュニケーションは無きに等しく、一人黙々と研究を続ける形になった。
研究の成果からか、いつしかそのセガワで俺に適う奴は居なくなっていた…ただ一人を除いて…
「あの」兄ちゃんだけは、俺の越えられない壁だった。
兄ちゃんは午後5時を中心にほぼ毎日セガに出没していた、
いつしか俺も、兄ちゃんとの対戦だけを求める日々に変わっていった。
研究ノートとメストの記事を頼りに日々挑み続ける俺、対する兄ちゃんは
当時の俺は知る由も無い高等技術(漕ぎなど)で俺をあしらい続けた、
ライデン一本槍の俺に対して、兄ちゃんは豊富なサブキャラを使って、
手を変え品を変え相手をしてくれた。
勝率は良くて3割半、酷い時には20連敗くらいした事もあった。
日々兄ちゃんと対戦を続ける俺、それでさえ、
筐体越しに視線を合わせる事はあっても、言葉を交わすことは無かった。
そんな日々が一月ほど続いた後、そのセガでチャロンの店舗大会が開かれる事になった。
まだ引篭もり気質の残っていた俺は、大勢の人前に出るのは気が進まなかったけど、
兄ちゃんとの決着をつける意味もこめて、意を決してエントリーをした。
そして当日…
大会当日、20数名の参加者の中に兄ちゃんは居なかった。
常連との接触すら無かった俺には、事情を知るすべは無かった。
取り残されたような気持になる俺、だも大会は滞りなく進行して、
俺の優勝で幕を閉じた。
丁度その頃から、兄ちゃんがあまりセガに顔を出さなくなり始めた、
俺のチャロン熱も、大会を境に下火になり始め、通う事も無くなって行った。
そして何より、両親(ゲーム代を出してくれてた)の進めで復学が決まってしまい、
俺のチャロン漬けの日々は、終わりを告げることになった。
結局、最後の最後まで兄ちゃんと話をすることは無かった。
兄ちゃんへの手紙
色々なキャラや戦法で相手をしてくれて、本当に楽しかったです。
貴方との真剣勝負を通じて、自らに磨きをかける事の大切さを学んだ気がします。
厨房相手に50人抜きが出来たのも、貴方を相手に鍛えぬいたお陰です。
そして、貴方のさりげない優しさに、本当に感謝しています。
マジでキモヲタだった当時の俺の相手をしてくただけでも、感謝したり無いくらいです。
いつか、俺が台の接続ラインを間違えて、隣でCPU戦始めちゃったときに、
捨てゲーしてまで乱入してくれましたよね、あの時の嬉しさは今でも忘れられません。
何よりも、貴方の存在が無ければ、未だに俺は引篭もり生活が続いていたかも知れない、
結局学校は中退して、チャロンもマタリプレイ専門になっちゃったけど、
立派に社会人やれてるし、別の真剣勝負に人生を賭ける事を見出せました。
本当に心残りな事は、最後まで貴方と一度も言葉を交わさなかった事です。
貴方がここを見ている、僅かな可能性を賭けて、
あの頃の俺には、言いたくても言えなかった言葉を、今送らせて下さい。
―― あ り が と う ――
有明プラザのS・S
出典:*
リンク:*

(・∀・): 134 | (・A・): 37
TOP