中学の時の小話
2008/07/27 16:33 登録: えっちな名無しさん
冬の寒い日の授業中。
授業が終わるまであと30分くらいの時、隣の席のKさんが後でノートを貸してと言ってきた。
Kさんはメガネをかけた、内気で恥ずかしがりな感じの女の子。
毎時間きっちりノートを取ってる人だったから、不思議に思って理由を聞いてみた。
するとKさんは自分の耳元に顔を近づけて囁いた。
トイレに行きたい、と。
そういう事情ならしょうがないと納得した自分。
後で貸すから早く行ってきた方がいい、とKさんに言った。
ところがKさんは一向に席を立つ気配を見せない。
もう一度早く行くように言うと、Kさんは恥ずかしいから終わるまで我慢する、と答えた。
正直体に悪いと思ったが、授業中のトイレが恥ずかしいのもよくわかる。
無理しないようにとだけ言って、自分はとりあえず黒板を写すことに集中した。
合間にちらちらと隣をのぞき見ると、Kさんは右手でシャーペンを握り、左手でスカートの前を押さえていた。
落ち着かないように脚をもぞもぞ動かしてる様子からも、結構我慢してるのは想像できた。
まあ本当に我慢できなくなれば、いくら恥ずかしがりのKさんでも先生に言うだろう。
そう思い、自分は黒板をひたすら写す。
しかし時間が経つにつれ、Kさんの動きは少しずつ激しくなっていく。
スカートの前を押さえる手は両手になり、脚のもぞもぞは体全体に伝わり貧乏ゆすりを始めるKさん。
うつむいている表情は険しい。
本当に大丈夫なのか?
心配になって時々大丈夫?と声をかけたが、彼女はただ小さくうなずくだけだった。
そして授業終了まで残り10分となった時。
もうダメ、というKさんの呟きが聞こえた。
ぎょっとして隣を見ると、苦しげな顔をしたKさんが、痙攣を起こしたみたいに全身をプルプル震わせている。
瞳には涙がたまり、寒い教室にいるのに額には脂汗が浮かんでいた。
慌ててKさんに、無理なら早く行ったほうがいい、と声をかけた。
今の様子じゃ残り10分とはいえ、とても授業が終わるまでもつとは思えなかった。
しかしKさんは、だって恥ずかしい、と首をぶんぶん横に振るばかり。
全然恥ずかしいことじゃないから、と必死に説得しても、頑として席を立とうとしない。
Kさんの瞳に溢れた涙が一滴、かけてるメガネにぽたりと落ちるのが見えた。
このままでは最悪の事態になってしまうかも。
こうなったら、自分から先生に言うしかないか?
そう思った矢先、天の助けが舞い降りた。
先生が、少し早いが今日はここまで、と授業の終わりを宣言したのだ。
それを聞いたKさんの表情は、まさにぱっと明るくなった、という表現がぴったりだったと思う。
椅子を蹴倒さんばかりの勢いで席から立ち上がるKさん。
そんなKさんに、最後まで油断しちゃだめだよ、とよくわからないアドバイスをする自分。
Kさんはこくりと頷くと、教室の外へダッシュしていった。
数分後に教室に戻ってきたKさんは、何事もなかったかのようないつも通りの顔をしていた。
その姿を見て、ああ間に合ったんだと思い、本当にほっとした。
Kさんは席に戻るとすぐ、心配かけてごめん、と照れ笑いを浮かべながら謝ってきた。
約束通りノートを渡すついでに、大丈夫だった?と尋ねると、Kさんは恥ずかしさと照れくささが入り混じったような何とも言えない声で一言。
…ギリギリセーフ、と答えたのだった。
以上当時は冷や汗モノだったけど、今思い返すと結構萌える出来事だったのかなと思う小話でした。
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