雪乃先輩

2008/08/18 01:42 登録: えっちな名無しさん

俺が高校時代の話だから、もう20年近く前の話だ。

部活のマネに雪乃って先輩が居た。
彼女の背は150?程で物凄く華奢な身体。それに地黒+部活=真っ黒で、いつも元気で何事にも一所懸命な人。今で喩えるなら雰囲気は北乃きいにちょっと似ていたかもしれない。
当時の俺は雪乃の存在が非常に気になっていた。時に厳しく、しかし優しく見守ってくれている憧れのような存在。勿論、家族や彼女以外では一番近い距離の異性だった事も一理あるかもしれない…

そんなある夏休み中の出来事
いつものように部活を終え、自主トレ(筋トレ)をしていた。普段は40分程度のメニューを1セットとしてこなしてたんだが、この日は身体が軽く、また翌日が休みだったので2セット目をこなしていた。ふと背後に視線を感じて振り返るとそこには雪乃の姿があり、俺は慌てて片付け始めた。
何故なら彼女がトレ室に来るということは他の部員がいなくなった証拠であり、俺の退室を促すものであった。

※俺の学校ではある事件がきっかけとなり、運動系はマネージャー、文科系は部長・副部長しか部室の鍵を持ち出せない(返せない)仕組みになっていた。

「雪乃さん、スイマセン。自分の事ばっかり考えてたモンで…」と言うが何やら雪乃特有の元気さが無い。トレ室の扉にもたれ掛かり若干、表情も虚ろに思われた。しかしながら彼女の口から発せられたのは「ええけど、早く着替えてきて…」と俺を促す言葉だった。
シャワーもそこそこに、早々に着替えを済ませ部室の外に出ると雪乃は既に待っており、連れ立って用務員室へ鍵を返してから俺たちは駅へと向かった。

幸いにも電車は比較的空いていたので二人並んで席へ腰を掛けた。
ちなみに俺と雪乃の駅は隣。なのでこうして一緒に下校する事も度々あり、俺にとって不自然な光景ではなかった。
車内で交わされる他愛も無い会話。「しかし」と言うか「やはり」と言うか、いつもの元気良さが無い。俺は尋ねても好いものかと思慮していた。
そして、乗換駅で異変が起きる。貧血を起こした時のようにフラっとするとその場にしゃがみ込んだのだ。
「大丈夫?」といいながら肩に手を置くと駅の熱気とは異質な暑さが手に伝わる。それもかなりの高温である。俺の質問にも首を縦・横に振るので精一杯の模様。

幾つか質問をした結果を要約すると?朝から少し熱っぽかった?昼前から酷くなり昼食は摂っていないって感じだ。
今なら普通に病院へ担ぎ込むなり、タクシーで送るなり、最悪の場合は救急車を要請したであろう。情けないが当時の俺の思考回路には「雪乃を自宅まで送り届けなくては…」という使命感しかなかったのである。
恥ずかしがる雪乃をよそに駅構内を抱っこの状態で渡り、乗換ホームに到着。既に電車は入線していたのでそのまま乗り込む。
ここで俺は問題にようやく気付く。雪乃の自宅を知らないと言う重大な事である。
しかし、個人情報の観点から現在では廃止されている名簿が自宅に帰ればあるので半ば強引ながら、とりあえず俺の家に連れて行くことにしたんだ。まぁ、俺の家が駅から歩いて30秒だというのもあったのだが…

地元の駅で女性を抱いた状態で降りる段になって恥ずかしさに気付く鈍感な俺。今更ながら「やっぱり恥ずかしいですよね」と声を掛けるも半分聞いてないフリで無視された。
自宅に着き、名簿から自宅へ電話を掛けるも留守電。だって今みたいに携帯電話なんて無い時代だから仕方ない。
俺の両親は(自営業)仕事兼旅行で2日前から不在。しかもこの日は姉貴は彼氏とお泊まりで帰らない。
俺は俺なりに必死で氷枕を作ったりと看病した。不謹慎ながら「今ならキスできるぜ!」と悪魔が囁くのを必死で堪えた。強く抱きしめると折れそうな細い腕。抱きかかえた時の腕の感触。彼女の寝顔を見つめながら改めて「気になるじゃなく好きなんだ」って実感したよ。
結局、何も出来ずに寝顔に「雪乃さんの事、好き」って呟いた。そしたら、今まで寝ていたはずの雪乃に「そんな事、今 言わないでよ」と言われて目が飛び出るほど驚いた。

その後は彼女の母親に連絡がつくまで気まずい空気が漂い、そのまま彼女は入院することになった。
半ばヤケクソで病院には毎日見舞いに行ってやった。病院が定期で通える場所にあったって事も手伝ったんだがな…
それで退院の日にある意味けじめとして、ちゃんと「付き合って欲しい」って伝えたよ。
返事は即答で「俺君の事、嫌いじゃないよ。好きだよ。でも俺君と付き合ってしまうと他の部員と同じ目線で見れなくなるからダメ。みんなが思っている程、ワタシ強い子じゃないから………」と目に涙を溜めながら言われて俺もつられて一緒に泣いちまったよ。

結局、雪乃と付き合うことは無かった。
しかし、互いに結婚した今も家族ぐるみで行き来がある本当の意味での友人だ。
余談ではあるがこの辺のやり取りなんかは俺の嫁は全部知ってるよ。結婚する前に全部話してるから…

それにしても、この季節になると毎年思い出す俺の「萌え」である。

出典:淡い
リンク:思い出

(・∀・): 104 | (・A・): 29

TOP