お母さん

2008/08/20 10:17 登録: えっちな名無しさん

子供の頃、母が大好きだった。
俺の母は病弱で、いつも入退院を繰り返していた。
たまに家に帰って来ると、俺はもう大喜びで、寝込んでいる時に布団に潜り込んで添い寝したり、
暴れたりした。
でも母は文句一つ言わず、抱きしめてくれたり、頭を撫でてくれたりした。
親父はいつも、「お母さんに迷惑かけるんじゃない。」と言っていたけど、
俺には意味がよくわからなかった。
俺の中では、お母さん=いつも寝ている人、だった。

いつからか、母が家に帰ってこなくなった。
俺は、母はまた入院したのだと思い、親父にお見舞いに行こうと何度も言った。
でもその度、「仕事が忙しい」「また今度にしなさい」と、断られた。
そんなある日、俺はガマンできず、一人で病院に行こうと決意した。
親父に何度も連れて行ってもらってたので、
道は覚えていた。
そして病院に着くと、真っ先に母の病室へと飛んで行った。
しかしそこにいたのは、母ではなく、見知らぬ老婆だった。
それから俺はその老婆と小一時間程話をした。
一人で寂しかったのだろう、俺みたいな話し相手が欲しかったのかもしれない。
どんなことを話したのかは全然覚えてない、ただこの一言だけは今でも覚えている。
「”僕”がお母さんに会えるのはまだまだ先のことだよ。」

家に帰ると、案の定親父が怒っていた。
どこへ行ってたのかと聞かれ、
俺は病院へ行ったこと、老婆に会ったこと、老婆に言われたあの言葉、
全部親父に話した。
それを聞いた親父は、怒るのをやめて、「もう勝手なまねはやめなさい」と一言だけ言った。

あれから何年かすぎ、俺が小学校2年の時、
新しい母と妹ができた。
ある日急に家に住み込むようになったその赤の他人達を、
俺はどうしても好きにはなれなかった。
そして、そのまま2ヶ月が過ぎた。

そんなある日の放課後、急に雨が降り出した。
前日に天気予報を見て、傘を持ってきた妹は一緒に帰ろうと誘ってきた。
でも俺は断った。
何度もしつこく誘ってきたが、俺はいじになって断った。
するとそのうち諦めて、妹は一人先に帰って行った。

雨は全くやむ気配がなく、友達もみんな家に帰り、残ったのは俺一人だけになった。
俺はだんだん寂しくなり雨の中歩いて帰かえることにした。
そして雨の中、俺は新しい母に会った。
妹から話を聞いて迎えに来てくれたらしい。
一緒に帰ろう、と言って傘を差してくれたので、
俺は何も言わずに着いていった。
その帰り道、母はずっと俺の手を握ってくれていた。
すると俺は何故か解らないが、急に泣き出してしまった。
いきなり泣き出す俺に母は戸惑って、
「どこかいたいの?」「学校でいじめられたの?」とか聞いてきたが、
俺は何も言わずにただ泣くばかりだった。
すると母もも何も言わずに、雨でびしょびしょに濡れた俺を抱きしめてくれた。
その日からかな、
俺は新しい母をお母さんと呼ぶようになった。


出典:?
リンク:?

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