ローゼンメイデンが雛見沢で巻かれたようです

2008/10/05 20:59 登録: えっちな名無しさん

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 20:42:32.16 ID:F0gaU4fv0
「ちくしょう…今日もひどい目にあった…。」
この俺、前原圭一は今日もいつもの部活でこてんぱんにやられ、
手ひどい罰ゲームを受けて今帰宅してきたところだ
部屋に入るなりすぐに布団に寝そべり、今もぐったりとしている
うぅ…思い出すのもおぞましいぜ…お婿にいけなくなっちゃう…
あいつらの考える罰ゲームは容赦なさすぎるんだよ…
しかもそういう時に限って嫌なことは続くもので
帰宅したのとほぼ同時に電話がかかってきて、慌てて受話器を取ったらイタ電だった
さらに泣きっ面に蜂とばかりにダイニングテーブルに書置きがあり、
お袋と親父はまたもや仕事の都合で東京に行っちまったらしい


2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 20:44:04.54 ID:F0gaU4fv0
勘弁してくれ…
お袋と親父はまたもや仕事の都合で東京に行っちまったらしい
帰ってくるのは明日の夜らしいから…場合によっては4食連続でカップラーメンだ
明日が休みでさえなければ昼はみんなの弁当を少しずつ分けてもらう手があったんだが…
いや…しかしさすがに4食カップ麺はまずいな
沙都子のおかげでご飯と
味噌汁くらいは作れるようになったはずだ
面倒がらずに明日の昼はそれでいこう
しかし今日はもう肉体的にも精神的にも疲弊しきっているからカップ麺だな…
よっ、と軽い掛け声と共に体を起こす
「…なんだこれ?」
ふと横を見ると四角いものが目に飛び込んでくる
どうやら…西洋の鞄…?
なんだか高級そうだが…こんなモンさっきあったか…?
とりあえず鞄を手元に寄せる


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 20:45:07.29 ID:F0gaU4fv0
「…ぅお…!」
思わず声が漏れた
鞄の中にはまるで本物の少女と見間違うかのような美しい人形があった
「すげえな…人形ってこんなに精巧に作れるもんなのか…?」
以前魅音の親戚の店であるというおもちゃ屋で行われた部活、
その時にも人形を貰ったがあれとは比べ物にならない
男の俺が見ても美しいと思えるほどの美しさだ
この人形、魅音にあげたら喜ぶだろうな…
って何考えてんだ俺!いつからこんなロマンチストになっちまったんだ!


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 20:45:56.51 ID:F0gaU4fv0
頭の中をKOOLにしながら人形を眺めていると、背中に小さな穴が開いているのに気がついた
…ねじ穴…?ということはねじも鞄に入ってるのか?
と思ったのと同時にそれは見つかった
シンプルな形のねじだ
「こいつを巻けばいいのかな…」
ねじを巻くということは動くのかな?
まぁとりあえずやってみよう
やらないで後悔するより、やって後悔した方がいいって誰かが言ってたような気がする


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 20:47:06.22 ID:F0gaU4fv0
キリ…キリ…キリ…
俺以外の誰もいない部屋にねじを巻く音だけが広がる
何回巻けばいいんだろうか…
と思うが早いか、それは突然起こった
「のわぁ!?な、何だこりゃ!」
KOOLになれ!KOOLになるんだ前原圭一!
しかしこの状況で落ち着ける方がどうかしてるぞ!
いったい何が起こったって?
人形が光りだしたんだよ!そして今宙に浮いてるんだ!
わけがわからない…あれか!?オヤシロさまの祟りか!?
畜生こんなとこで死にたくねぇ!悟史!俺に力を貸してくれ!1500秒だ!


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 20:48:19.00 ID:F0gaU4fv0
混乱しているうちに、人形から発せられる光は収まった
だが異変はまだ続いている
人形がこっちに向かって、まるで生きているかのように歩き出した
もうやだ…ちびりそう…
そして俺の目の前で止まる
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなs…
パチン!


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 20:50:04.19 ID:F0gaU4fv0
一瞬、何をされたのか分からなかった
頬に走る痛みに、自分は今この人形にビンタされたのだとわかった
「な…な…」
多少は意識がはっきりしてきたものの、まだ混乱は解けてない
喋ろうとしても、金魚のように口がぱくぱくするだけでまるで言葉にならない
そんな俺のぐちゃぐちゃな頭の中の様子を知ってか知らずか
なんでもないかのように、その人形は口を開いた


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 20:51:04.67 ID:F0gaU4fv0
「あなたが私のミーディアムね。名は?」
「へ…?」
自分でも思うくらい間抜けな声が出る
「聞こえなかったの?あなた、名は何というの?」
「ま、前原圭一」
なんとか声を絞り出し、慌てて答える
「そう、圭一…。それにしてもさえない部屋ね…私が住むのにふさわしくないわ。
でもしょうがないわね。あなたに巻かれてしまったんですもの。」
と人形はため息を漏らす
俺は人形のあまりの落ち着きっぷりにつられてか、
少しずつ落ち着きを取り戻していた


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 20:52:04.49 ID:F0gaU4fv0
「お…おいおい、いきなり失礼な奴だな。ていうか『巻かれた』って…
あのねじのことか?お前いったい何者なんだ?」
人形はこちらを見上げ、落ち着いた声で言う
「あら、自己紹介がまだだったわね。私の名前は真紅。
誇り高いローゼンメイデンの第五ドールよ。」
「ローゼンメイデン…?なんだそりゃ…?
それに第五って…お前みたいな奴が少なくともあと四体もいるのか!?」
「ええ。ローゼンメイデンは全部で七体。
アリスゲームに勝って、完璧な少女アリスになるために作られた人形よ。
アリスになれば私たちのお父様、ローゼンに会えるの。」


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 20:54:12.21 ID:F0gaU4fv0
聞きなれない言葉の連発にまた混乱しそうになる
だがこう見えても頭の回転の良さには自身がある
少し落ち着いて整理すれば理解できた
「なるほどな…しかしそりゃまた随分と勝手な父親だな。
娘同士を戦わせて自分は高みの見物たぁいい身分じゃねぇか。」
「あなたには分からないわ。これは私たちドールの問題ですもの。」
少し怒ったような口調でぴしゃりと言われてしまう
あちゃー…少し言葉がきつかったか…
誰でも自分の親のことを悪く言われるのは嫌だもんな


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 20:55:11.14 ID:F0gaU4fv0
「いや、すまん。謝るよ。
ただお前の親父さんとは話が合いそうにないなぁと思ってさ。」
もし俺がこんなリアルな人形を七体も作ったなら絶対に手放さない
それだけでハーレムの完成じゃねぇか
見たところこの真紅はお嬢様タイプってとこか?
なら他のドールはどんなタイプがいるんだろうか
姉?妹?幼馴染?ツンデレは必須だろjk…
これはたまらねぇぜ…ふひひひひ…
「まったく…人間のオスは下劣ね…」
ゲッ!また考えたことをそのまま口に出しちまったのか!?


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 20:56:56.68 ID:F0gaU4fv0
「まぁいいわ…それより圭一。契約をするわよ。」
「契約?なんのだよ?」
「あなたが私のミーディアムとなり、私を守る契約なのだわ。」
「ふーん…契約か…なんだかかっこいいじゃねぇか!
男に生まれたからにはこういうことをぜひ体験してみたいぜ!
よっしゃ!その契約、結んでやるよ!」
と真紅を見ると、少し驚いたような表情を浮かべている


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 20:58:23.39 ID:F0gaU4fv0
「ん?どうしたんだよ。」
「いえ…そんなに喜んで契約を結んでくれるとは思ってなかったのだわ…。
でもよかった。なら、この指輪に誓いのキスを。」
ますますかっこいいな…白馬の王子様ってやつか?ちょっと照れるぜ…
ゆっくりと唇を真紅の指輪へと近づける
そして唇と指輪の距離がゼロになった瞬間、あたりがまばゆい光に包まれた
「いい子ね、圭一…。」
優しく微笑む真紅にちょっとだけ萌えたのは内緒だ


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:00:32.75 ID:F0gaU4fv0
すぐに光は消えた
これだけでもう契約は終わったのだろうか?
ふとそんな疑問が頭に浮かび、真紅に確認を取ろうとした
しかし自分の指に感じる何かに気づき、すぐにその必要はないとわかった
真紅の指輪と同じような指輪が自分の指にもあったからだ
「それがドールとミーディアムの繋がりの証。
その指輪を通じて私はあなたの力を貰いながら戦うの。」


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:01:51.74 ID:F0gaU4fv0
力を貰う…?俺の生命力を使うってことか?
「心配は要らないわ。健康な人間ならまず命の心配はない。
ただ少し体が疲れるだけなのだわ。」
「なるほど。元気玉みたいなもんか。」
真紅は何を言ってるのか良く分からないという表情だ
そりゃそうだ、俺だって自分で何を言ってるのか良く分からん


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:04:04.96 ID:F0gaU4fv0
「まぁいいわ。契約も済んだことだし…圭一、お茶を入れてきてちょうだい。」
突然の要求に少し面食らう
「お茶?なんで俺がへぶん!」
別に俺は天国じゃない
これは真紅の長いツインテールに引っ叩かれてでた悲鳴だ
「いいから。入れてきなさい。主人に文句を言う下僕がどこにいるの?」
「はぁ!?いつから俺が下僕になったんだよ!」
「何を言ってるの?さっき契約したばかりじゃない。」


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:05:40.59 ID:F0gaU4fv0
「なっ…そんな話聞いてねあべし!」
「うるさい下僕ね…まだ立場がわからないの?」
ちくしょう…なんでこんなことに…
俺の夢はご主人様なんだ…俺専属のメイドさんがいて、
朝はいってらっしゃい、夜はおやすみなさいまでたっぷりご奉仕三昧なんだ…
なのにどうして…すまん…イリー…トミー…クラウド…
「早く入れてきてちょうだい。」
「うぅ…わかったよ!入れてくりゃいいんだろ入れてくりゃ!」


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:07:27.57 ID:F0gaU4fv0
やれやれ…とため息をつきながら階段を下り、冷蔵庫からお茶を探す
「え〜っと…あったあった。よし。」
お茶をコップに注いで持ってあがる
まったく…なんで俺がこんなことを…
「ほらよ、持ってきてやったぜ。」
「あら、以外に早かっt…圭一?これは何なの?」
「何って…お茶だろ?自家製の麦茶だぜ。」


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:09:27.57 ID:F0gaU4fv0
「私は紅茶が飲みたいの。まったく、それくらいわかりなさい。
使えない下僕ね…。」
KOOLになれ…怒りを鎮めるんだ前原圭一…そうだ、この麦茶を飲み干そう
それで頭を冷やすんだ…じゃないと頭がフットーしそうだよぉ…!
グビッ…グビッ…ぷはぁ!
よし…落ち着いた。まったくこの人形はわがままにも程がある…
「わかったよ、紅茶だな?まったく…」
「早くしなさい。待ちくたびれてしまうわ。」


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:10:34.13 ID:F0gaU4fv0
さて…紅茶の葉が家にあるのか、という少しの不安は台所の棚を少し探せば解消された
しかしまたここで新たな問題が…紅茶ってどうやって入れるんだ?
とりあえずお湯と茶葉を使うということはわかるんだが…
まぁその二つがあればお茶にはなるだろ
まずティーカップに紅茶の葉を入れて…どのくらいだろう


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:12:51.17 ID:F0gaU4fv0
カップの半分くらいか?どばどばっ…と
そしてお湯を注ぐ…うっ…少し茶葉を入れすぎたかも…
いや、このくらいのほうがいい味が出るはずだ!
とにかく完成だ。早く持っていかないとまた殴られちまうぜ

しかしこの数十秒後、持って行くのが早かろうが遅かろうが
殴られることには変わりなかったと思い知らされたのであった


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:14:50.65 ID:F0gaU4fv0
ひょっとして一レス分の文の量が少ないかな


「まったく…何を考えてるのか分かったものではないわね…」
「だって紅茶なんか入れるのも初めてだし入れてるところを見たこともないんだぜ?
あんなにフルボッコにしなくてもいいじゃねぇか…。」
「茶葉を粗末に扱った罰なのだわ。ほら、きちんと見ていなさい。まずは…」
あのあと俺製スペシャルティーを真紅に見せた途端、
真紅のツインテールがまるで詩音に似合いそうな拷問道具の鞭のように
俺に襲い掛かってきた。そこから先はよく覚えていない
ただひとつ分かることは、俺の顔が目も当てられない
悲惨な状況になっているということです


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:17:55.36 ID:F0gaU4fv0
そして今この瞬間はというと、真紅先生のお紅茶講座だ
俺に紅茶の入れ方を熱心にご指導して下さっている
それなら自分で入れた方が早いだろjk…
でもそんなこと言っても無駄だろうから言わないでおこう
「…なのだわ。わかった?」
「あぁ、だいたいわかったが…思ったより難しそうだな…。
お湯の温度にこんなに気をつけなきゃいけないなんて始めて知ったよ。」


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:19:39.30 ID:F0gaU4fv0
「えぇ、お湯の温度ももちろんだけど、もっと大切なものがあるわ。
それは、愛情。愛情がなければ美味しい紅茶など入れられはしないのだわ。」
「へぇ…良いこと言うじゃねぇか。愛情が大切ってのは俺もよくわかるぜ!」
それは沙都子が俺に教えてくれた大切なことだ
沙都子が作ってくれた料理は俺への愛情が詰まっていて、最高に美味かった
それは紅茶にも言えることだったんだな…
しみじみとそんなことを考えていると、そんな俺の胸中を悟ったのか、
真紅は「そう。」とにっこりと微笑んで言ったのだった


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:21:28.74 ID:F0gaU4fv0
その後は真紅の入れたお茶を俺の部屋で二人でのんびりと味わっていた
一息ついたところで、少し気になることがあり俺は真紅に話しかける
「なぁ真紅、お前、他のドールたちとは仲いいのか?」
「そうね…一体だけまだ会ってないドールがいるけれど、
大体は仲がいいと言えるわね。姉妹ですもの。」
一人の子を除いては…とぼそりと付け加えたが、
そのことにはあまり触れないほうがいいような気がした


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:24:41.52 ID:F0gaU4fv0
それよりも…
「仲がいいってことはさ…さっきのアリスゲーム…
あれで姉妹たちを倒さないといけないんだろ?
それってつらくないか?倒されたドールはただじゃすまないんだよな?」
真紅は少し目を閉じ、それからカチャ…とカップを置き、口を開いた
「えぇ、倒されたドールは私たちの命の源、ローザミスティカを奪われ、
そして動くことも話すこともできないただの人形になってしまう。
それでも私たちは他の子を倒さなくてはならない。
そうしなければアリスにならないから。
そうしなければお父様に会えないから。
そしてそれが私たちローゼンメイデンに定められた…」
「運命だから…か?」
真紅は少しだけ驚いた表情を浮かべたが、すぐにそれは消えた
「えぇ、そうよ。運命には…逆らえない。」
どこかで聞いたような言葉
『もう、決まっていることなのですよ。運命なのです。』


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:27:27.79 ID:F0gaU4fv0
あれは夢だったのだろうか…
かつて梨花ちゃんが口にした、「運命」という言葉
その口から出た「運命」は「絶望」という言葉とまるで同じだった
そして今真紅の口から出ようとした「運命」もそれとほとんど変わらない
一見、強い決意が感じられるようだが、その実それはほとんど諦めに近い
俺はこの言葉をそんな意味で使って欲しくない
だから言ってやった
「真紅…お前、予言って信じるか?」


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:29:17.57 ID:F0gaU4fv0
真紅は一瞬、「何を言い出すんだこいつは」という表情を浮かべたが
俺が真面目な表情を崩さないのを見てふざけた質問ではないとわかったようだ
「…いいえ、あまり信じていないわ。」
「だろうな、俺もそうだった。
だがな…予言ってのは実在する。俺は予言をできる人を知っている。」
真紅は俺の言おうとしていることが分からないようだった
しかし構わず俺は続ける
「その人はいつに何が起こるか、普通では絶対に分かり得ないことを
次々と予言していき、それらはすべて的中した。
そしてその人は自分が昭和58年6月に自分が殺されると予言していた。
そして言ったんだ。
『これはすべて運命だ。すでに決められている運命には決して抗えない。』
ってな。」


44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:30:53.12 ID:F0gaU4fv0
真紅は少しうつむき、顔をそむける
「だがな、俺は言ってやったぜ。
運命なんて簡単に打ち破れる。金魚すくいの網よりも簡単に。
ってな!」
「そんな簡単に言わな…」
「さて、ここで問題だ。その予言者は昭和58年7月現在、生きているでしょうか?
それとも死んでしまったでしょうか?」
言わなくてもわかるはずだ


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:32:41.14 ID:F0gaU4fv0
真紅が顔を上げこちらを見た
「俺たちは立ち向かったんだ。その予言者の命を狙う敵と、死の運命に。
そして勝った!予言者自身がこの死の運命だけには絶対に抗えないと言っていた、
その運命を打ち破ったんだよ!分かるだろ!?
運命なんてのは、金魚すくいの網よりも簡単に打ち破れるんだよ!!
だがな、その運命は俺だけの力で打ち破ったわけじゃない。
俺の仲間全員と、その予言者本人が全員で力を合わせたんだ!
つまり真紅、その『姉妹を倒さなければならない』なんてふざけた運命とやらを
打ち破るには、お前自身の力が必要なんだ!
運命には抗える!そして掴めるんだ!その先の未来ってやつを!」


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:34:44.00 ID:F0gaU4fv0
言い切ると真紅はしばらく呆然としていたが、ふと穏やかに笑って言った
「そうね…もしかしたらアリスゲーム以外にもお父様に会う方法があるかもしれない。
姉妹を傷つけずに済むのかもしれない。
圭一、ありがとう。あなたの言葉はまるで魔法のよう…。
今の言葉、あの子にも聞かせてあげたいわ…。」
「あの子って…?さっきの…」
「ええ、私のせいで深く傷つき、心を閉じてしまった子…。
戦いと深い闇に心を支配されつつあるかわいそうな子…。
私はあの子を助けたい…!
そして私のせいで傷つくその前の、本当のあの子に戻ってほしい…!
あなたの言葉なら、彼女に届くかも…」
「いいや、違うな。」
「えっ…?」


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:37:19.04 ID:F0gaU4fv0
「その人はお前にとって大切な人なんだろ?だったら、その人の心に届くのはお前の声だ。」
「で、でも…今までずっと…!」
「今までだめだったからと言って諦めるのか?違うよな。
何度呼びかけてだめでも、本当に大切だと思っているなら
最後には絶対届く!心を取り戻せる!」
また、あり得ない記憶
俺がおかしくなり、レナが俺に呼びかける
レナがおかしくなり、俺がレナに呼びかける
俺へのレナの呼びかけは、少し遅かったがちゃんと届いた
俺のレナへの呼びかけは、とても早く届いた
早さの違いはあれど、いつかは必ず届く
この記憶が、あり得ない記憶であるはずなのに、
何よりも確実な証拠のような気がする


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:39:29.73 ID:F0gaU4fv0
「俺なんかの言葉より、その人を一番大切に思う
お前の言葉の方がずっと届きやすいはずだ。
俺の言葉で心の扉を開けることはできるだろう。
だが相手を本当に思いやる者でないとその扉の奥には行けない。
俺は真紅と力を合わせて扉を開けてやる。
だがそこから先は真紅、お前の仕事だ。わかるな?」
心なしか真紅の目じりに涙が溜まった気がしたが、
真紅が一瞬うつむきまた顔を上げたときには、そこには笑顔があるだけだった
そして一言「えぇ」とだけ言い、残った紅茶を飲み干すと
すっかり元の調子を取り戻し、俺は苦笑いするしかなかった


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:42:45.98 ID:F0gaU4fv0
しかしさっきのレナの記憶といい梨花ちゃん記憶といい、何だったんだろうか
もしかしたらパラレルワールドというものは実在して、
ああいう世界もあったのかも知れない
というようなことを考えていると、真紅がおもむろに元いた鞄に入り始めた
「…どうしたんだ?」
「私たちドールは夜は鞄で寝るの。夜は眠りの時間なのだわ。」
夜って…まだ9時ぴったりじゃねぇか
やけに早寝なんだな…
とは言ったものの、俺もあまりの驚きと久しぶりの熱弁に疲れ果てている
そのせいか腹も減ってない
このまま横になれば眠れそうだ
と思い横になるとどんどん意識が遠ざかっていく
どうやら本当にこのまま眠ることになりそうだぜ…
頭の中でそう呟いたのが最後、俺の意識はそこで途切れた


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:44:59.88 ID:F0gaU4fv0
小鳥のさえずりと窓から差し込む朝日で俺は目を覚ました
それにしても…
「不思議な夢だったな…」
思わずそう呟いた
なかなか面白い夢だっただけに、目が覚めたのが少し残念だぜ
今度は頭の中でそう呟き、寝返りを打つ
………………いやごめん、夢じゃなかったわ
寝返りをうった先の視界に真っ先に飛び込んだのが
さっきまで夢だと疑わなかったそれそのもの
動く人形が一人優雅に紅茶を飲んでいる姿だったのだから
とっさに誰かに謝りたくなってしまうほどびっくりした


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:47:30.53 ID:F0gaU4fv0
「あら、遅いお目覚めね圭一。下僕が主人より遅くおきるなんてなってないのだわ。
またしつけが必要かしら…って、何をしているの?」
「いや、なんでもない。
ちょっと寝坊した自分への戒めに頬をつねっただけだ。」
「いい心がけね。」
めちゃくちゃ痛ぇ…どうやら夢じゃねぇみてぇだな
まぁあんなリアルな夢あるわけねぇしなぁ…


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:51:51.98 ID:F0gaU4fv0
っとそれはそうと今何時だ?
げ、もう11時かよ…
確か今日も昼から部活だと魅音が言ってたよな…
もしかしたら魅音から電話があったかも知れない
「真紅、俺が寝ている間に電話なかったか?」
「いいえ、なかったわよ。」
?それは少し変だ…なんだかんだで几帳面な魅音だ
いつもなら10時、遅くとも10時半には電話があるはずだが…
仕方ない、あちらから連絡がないならこちらから連絡するまでだ


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:55:42.31 ID:F0gaU4fv0
プルルルル…プルルルル…ガチャ
「はい、園崎です」
「あ、もしもし。魅音さんの友人の前原です。
魅音さんに代わっていただけますか?」
「わかりました、前原さんですね。少々お待ちください。」
受話器を置き、パタパタと走り去る足音がする
おそらく今のが園崎本家のお手伝いさんだろう
まったくすげぇよな…お手伝いさんを雇うなんて…
などとぼんやり考えているうちに電話に人が出た


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 21:59:29.43 ID:F0gaU4fv0
魅音?という呼びかけの言葉は、
耳に飛び込んできたお手伝いさんの声に押さえこめられた
「ごめんなさい、魅音さん今手が離せないみたいで…伝言を言付かってきました。
今日の部活は中止、だそうです。それと、前原さんの方から
他の部活メンバーにも連絡しておいてくれ、とのことでした。」
「あ…そうですか、わかりました。承ったと伝えておいてください。それでは。」
俺は別れの言葉を言い、チン…と受話器を置いた


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 22:03:40.59 ID:F0gaU4fv0
なんだろう、体調でも悪いんだろうか
それはそれで心配だが、それならそうとお手伝いさんがきちんと言うはずだ
何か急用ができたというのが妥当だろう
園崎家がらみか…?
といろいろ邪推を働かせているところに小さな人影が、真紅が足元にいた
「どわっ!びっくりさせるなよ!」
「なんの電話だったの?」
スルーですか
「遊びの電話だよ。でもあいにく急用ができたんだとさ。」
「そう…」


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 22:08:23.76 ID:F0gaU4fv0
そう言ってそのまま立ち去ろうとする
…?変な奴だな…
ん?ちょっと待てよ…
少し心に引っかかり、俺は真紅を呼び止めた
「なぁ、真紅。お前以外のローゼンメイデンは今どこにいるんだ?」
「それはわからないわ…アリスゲームを始められるように
同じ時代の同じ場所で目覚めるようにはなってるはずだけど…。」
まさか…いや、まさかな…それはあまりに世間が狭いってもんだぜ…
俺は頭に浮かんだ若干の嫌な予感を無理やり振り払い、
久しぶりの自炊に勤しむのであった


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 22:12:59.28 ID:F0gaU4fv0
あ…ありのまま今起こった事を話すよ!
『人形のねじを巻いたら動き出した』
な…何を言ってるのかわからないと思うけど
おじさんも何が起こったのかわからなかった
頭がどうにかなりそうだった…
徹甲弾とか空気投げとか
そんなチャチなもんじゃあ断じてない
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったよ…

時は少しだけさかのぼる


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 22:17:40.36 ID:F0gaU4fv0
「んっ…ふぁあ〜…」
今日もいつも通りの時間に目が覚める
園崎家時期頭主として育てられ、起床の時間はもうすっかり体に染み付いている
いつもと変わらない時間に起きる、いつも通りの朝
…のはずだった
「あるぇー…?なんだこれ?」
昨日の夜にはなかったそれは堂々と私の横にあった
見たところ鞄のようだが…
好奇心に押されるがままにそれを開け、感嘆する


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 22:21:54.60 ID:F0gaU4fv0
「かわいい…」
中にはとてもよくできた作りの人形が入っていた
西洋風の人形を見ると圭ちゃんにもらったあの人形を思い出す
あれは今でも私のお気に入りだ
壊れたり汚れたりしたら嫌だから一緒に寝てはいないが寝る前には必ずキスをしている
この初めて見る人形は、あの私のお気に入りに負けないくらい可愛かった
いや…もしあの人形が圭ちゃんにもらったものでなければダントツでこっちの方がすごい
いわゆる脳内補正というやつだ
まぁともかく、本当にこの人形はすごい
…ん?この背中の穴は…ねじ穴?
ということはどこかにねじが…お、あったあった
これを巻けばいいんだね

あ…ありのまま(ry


68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 22:25:49.77 ID:F0gaU4fv0
そんなわけで今まさに目の前に動く人形がいる
かなり仰天したが、以外とすぐに落ち着きを取り戻せた
それには理由がある
この人形の方が私に怯えているかのように鞄の陰に隠れているのだ
自分を怖がっている者に怯えることはない
まずは相手の恐怖心を取り除くために優しく話しかけよう
「あなた、何者なの?」
「は、話しかけるなですぅ!人間!」
あるぇー?


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 22:32:10.77 ID:F0gaU4fv0
「いや…話しかけるなと言われても…」
「やかましいですぅ!話しかけるんじゃねぇですぅ!」
…参ったなあ
そんなこと言われてもこんな不思議な状況にあるんだから
まずは現状把握から始めなきゃ何もできない
けど相手は相当こっちを警戒してて話しかけるなの一点張り
この空気はまさに一触即発、張り詰めた空気だ…
よしわかった、こんな時は…
「強行突破あああああああ!」
「いやああああああ!けだものですぅうううううううう!!!」


71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 22:37:25.56 ID:F0gaU4fv0
「ぐす…ひっく…」
無理やりとっ捕まえて引きずり出してあんなことやこんなことをしたのが悪かったらしい
泣き出したこの人形をなぐさめるのにもう何十分たっただろうか
途中、また電話かと思ったら圭ちゃんからだったらしいが今はそれどころではない
やれやれ…おじさんモードに身を任せると何をしでかすかわかったもんじゃないねあたしゃ…
「いやぁ…だから悪かったってば…
だってあの空気だよ?無理やりにでもつかみ出すしかないじゃん?」
「どこの常識を使えばあの場面であんな手段に訴えられるんですか!
まったく信じられん野郎ですぅ!おとといきやがれこんちくしょー!ですぅ!」
「いや、おじさん女だから野郎ではないよ。」
「…………。」


72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 22:40:52.64 ID:F0gaU4fv0
「それはそうと、あんたいったい何者なの?喋って動く人形なんて初めて見るよ。」
「…私はローゼンメイデン第三ドール、翠星石ですぅ。」
「ローゼン…何それ?それに第三って…
あんたみたいなのがあと何体いるわけ?」
「いつの時代でも私たちの説明をするのは少し面倒ですぅ。」
やれやれ…といった感じで翠星石は話し始めた


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 22:45:23.93 ID:F0gaU4fv0
「なるほどねぇ…」
「翠星石は本当はアリスゲームなんてやりたくないですぅ…。
いくらお父様に会うためとは言え、姉妹たちを倒すなんて…。」
「ちょいとここで質問なんだけどさ、」
翠星石が物憂げに顔を上げる
「あんたのお父様に会う方法ってそのアリスゲームしかないわけ?」
翠星石は一瞬、質問の意味が理解できない、という表情をした
それはそうだ、今の私の質問は前提条件を覆すものなのだから
「そ、そんなものあったら最初から苦労しねぇですぅ!」
「ないの?」
「あるわけないですぅ!」


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 22:49:40.50 ID:F0gaU4fv0
はっきり「ない」と断言せず「あるわけない」と言ったのは
裏を返せば別に確認したわけではないということだ
「探してみたの?その方法。
それとも絶対にないと言い切るに足る根拠でもあるわけ?」
「それは…ないです…けど…」
「探そうよ。あんたの話だと、他のドールもそろそろ目覚め始めても
いい頃なんだよね?みんなで力を合わせればきっと…いや、絶対見つかる。
三人寄ればなんとやら、ってね。」


77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 22:56:44.12 ID:F0gaU4fv0
「手伝って…くれるですか?」
「何言ってんの?当ったり前じゃん!ねじを巻いた私があんたのマスターなんでしょ?
仲間が困ってたら全力で助ける!それが私たち雛見沢村の住人なんだよ!」
翠星石はじわ…と目に涙を浮かべたかと思うと慌ててそれを拭い取った
「に…人間にしては立派な心がけですぅ!ほめてやるですぅ!
翠星石の手助けをできることを感謝するがいいですぅ!」
やれやれ…これがいわゆるツンデレってやつなのかね…
世話が焼けそうだよまったく…
思わず苦笑いを浮かべてしまう


79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 23:01:47.58 ID:F0gaU4fv0
と、突然翠星石が何かを思い出したように声をあげた
「あっ!そ、そうですぅ!えっと…人間…!じゃなくて…」
「園崎魅音。魅音でいいよ。」
急いだ様子を見せながらも名前で呼ぼうとしてくれたということで
私も翠星石に認められたような気がして、つい顔をほころばせてしまう
だが翠星石の慌てっぷりを見るとにやけている場合でもなさそうだ
「魅音!もう一人、青い服と帽子のドールを見なかったですか!?」



80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 23:06:30.58 ID:F0gaU4fv0
「へ?いや、見てないけど…その子がどうかしたの?」
見てないけど、という言葉にあからさまにがっくりと肩を落とす
「その子は…蒼星石は、翠星石の双子の妹ですぅ…。
二人はいつも一緒、そのはずなのに…あぁ…心配ですぅ…。
翠星石に似て賢い子ですから、大丈夫だとは思うですけど…。」
どちらかというと心配で会いたいというよりは
寂しくて寂しくてしかたないというような感じだった
しかし、ひとつ気になる単語がある
『双子の妹』


81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 23:11:13.96 ID:F0gaU4fv0
…はは、まさかね…
気づけば翠星石がじーっとこちらを見ていた
「な、なに?なにか顔に付いてる?」
「さては人間…心当たりがあるですね?」
「い…いやぁ…心当たりってほどのもんでも…」
「隠すなですぅ!どんな些細なことでもいいから教えやがれですぅ!」
「わ、わかった!わかったから!そんなに詰め寄らないで!」
「わかればいいですぅ。ほら、さっさと話しやがれですぅ。」
「いや実はね…私にも双子の妹がいるんだな、これが…。」


83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 23:15:28.26 ID:F0gaU4fv0
今私は、詩音が住んでるマンションの入り口に大きな西洋風の鞄を持って立っている
理由は言うまでもない
私の話を聞いたとたん、翠星石が詩音のところまで連れて行け
と言って聞かなくなってしまったのだ
こうなればもうしょうがない
詩音のところにその、蒼星石とやらがいなければ
遊びに来ただけと言って帰ればいい
でももし本当にいたらどうしよう
まぁその場合は詩音も誰かと遊ぶ暇なんてないだろうから門前払いだろうな
などと考えるうちに詩音の部屋の前についた


85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 23:20:11.99 ID:F0gaU4fv0
私は深く息を吸うと、意を決して呼び鈴を鳴らす
ぴんぽーん…と鳴った直後、とたとたと足音が聞こえ、扉が開けられる
「…あら、お姉じゃないですか…。どうしたんですか?連絡もなしに。」
「いや、ちょっと近くを通りかかって、あがっていいかな?」
「ごめん、あの…ちょっと今立て込ん…」
詩音はふと視線を落とすと目を見開き言葉を途切れさせる
つられるように私も詩音の視線をたどると、そこには翠星石が入っている鞄があった
「お姉…その鞄、どうしたんですか?」
「え、いや、ちょっとね、興宮のお店で買ったんだ。
おしゃれでしょ?えへへへへ…。
えっと、今忙しいんでしょ?また今度にするよ…」
「…いえ、やっぱりあがっていってください。
立て込んでいると言っても大した用事ではないので。」
「…うん、わかった。」
ありゃりゃ…こりゃビンゴだわ…


87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 23:24:47.39 ID:F0gaU4fv0
「蒼星石ぃ!会いたかったですぅ!」
「あははは、ほらほら翠星石。泣かないでよ、お姉さんでしょ?」
案の定、詩音のところに蒼星石はいた
私が部屋に入るとそこには私が持っていた鞄と同じものがあり、
詩音が「出てきてください」と言うとクローゼットからおずおずと蒼星石が出てきたのだ
蒼星石が「あの…」と口を開くが早いか、鞄から翠星石が飛び出して
蒼星石に抱きつき、そして今に至る
「いや〜、それにしてもびっくりだよ…。
まさか本当に詩音のとこにも来ていたとは…。」
「びっくりしたのは私も同じです。
蒼星石から双子の姉がいる、と聞かされてもしかしてとは思いましたけど…。」


89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 23:31:48.22 ID:F0gaU4fv0
そんな会話をしながらふと戯れている二体に目をやる
「ふふ、もう泣きやんだ?翠星石。」
「な、泣いてなんかないですぅ!」
「まったく…翠星石は相変わらず寂しがりやなんだから。」
「きぃー!あんまり姉をからかうといくら蒼星石でも許さないですよ!」
「あはははは、ごめんごめん。」
微笑ましいやりとりだ
なんだかこの関係…
「私たちみたいですね、お姉?」
詩音も同じことを考えていたらしい
「泣き虫で素直じゃない姉に、それをからかう妹。そっくりじゃないですか。」
私も考えていたことなので反論できない
ちょっと悔しい…でもあまり嫌な感じじゃない
私は何も言わずに目線だけを返しておいた
感情を伝えるにはそれだけで十分だった


91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 23:39:26.55 ID:F0gaU4fv0
…ふと気づいたことがある。蒼星石ってちょっと…
「悟史くんに似ているでしょう?」
驚いて詩音を見る
私の考えを当てられたから驚いたんじゃない
そう言った詩音の言葉がとても落ち着いていて穏やかだったからだ
「…やっぱり強いね、詩音は。」
「ふふ、でしょう?」
自慢げに冗談めかして笑い、すぐに言葉を重ねた
「最初はやはり取り乱しましたよ。
人形が動いたことに対してももちろんですが、その人形に
悟史くんの面影が重なることに気づいた時に一番混乱しました。
でも、すぐに思い出したんです、私の役目を。」


94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 23:45:21.68 ID:F0gaU4fv0
「詩音の…役目…」
「はい。私の役目は沙都子と二人で悟史くんの帰りを待つこと。
まったく関係のない蒼星石に悟史くんの影を重ねて懐かしむなんてナンセンスだ、
って気づいたんです。
ま、悟史くんの顔は入江診療所に行けばいつでも見ることができますから。」
それに…とさらに続ける
「あの子、女の子ですしね。私にそんな趣味はありません。」
プッ、と吹き出し、二人で笑う
やっぱり詩音は強い。私も負けてられないな…


95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 23:50:24.75 ID:F0gaU4fv0
その後も黙って二対のドールの微笑ましいやり取りを眺めていた
しばらくするとそんな私たちの視線に気が付いたらしく
蒼星石が翠星石を連れてこちらにやってきた
「マスター、それに魅音さん。僕と翠星石を引き合わせてくれてありがとう。
ほら、翠星石もちゃんとお礼しなきゃ。」
「あ、ありがとですぅ…。」
僕…?でも女の子だよね…僕っ娘ってやつか…
いやはや、ツンデレに僕っ娘とは…圭ちゃんが知ったら大喜びだねこりゃ
にしてもしっかりした子だ。これじゃどっちが姉だがわからない


96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/23(金) 23:55:43.32 ID:F0gaU4fv0
「いやいやいいってことよ。仲間の手助けをするのは当然だからね!ていうか…詩音?」
「はい?」
「あんた、マスターなんて呼ばせてるの?似合わな〜…。」
「余計なお世話です。それに私が呼ばせてるわけじゃありません。
…まぁ、マスターは確かにちょっと堅苦しいですよね。
蒼星石、次からは私のことをご主人様と…」
「ストーップ!あんた何言わせようとしてんの!」
「冗談ですよー。私のことは詩音と呼んでくださって結構です。」
本当に冗談だったかどうかはかなり怪しい
詩音なら本当に呼ばせかねない
「うん、わかったよ。詩音さん、でいいかな。これからもよろしくね。」
蒼星石はまったく疑ってないようだった
本当にいい子だ


97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 00:01:38.50 ID:9XJB8tUO0
帰り際になるとまた翠星石が寂しがったが
翠星石に急かされたおかげで行き先を誰にも告げてない
あまり遅くなると心配をかけてしまうだろう
「じゃあね詩音。また明日学校で。」
「えぇ、私が明日サボらなければ、の話ですが。」
まったく…と苦笑いを返しておく
「うぅ…蒼星石ぃ…」
「ほらほら翠星石、またいつでも会えるんだから。
遊びに行ってもいいよね、魅音さん。」
「全然構わないよ、いつでもおいで!」
「す、翠星石も遊びに行くですぅ!」
「えぇ、いつでも来てください。大体はここにいますからね。」
別れの挨拶もそこそこに、詩音のマンションを後にし、
帰りは葛西さんに送ってもらったおかげで早く家に着いた
夕飯を食べ、お風呂に入り、寝る準備を整える頃には翠星石はもう眠ってしまっていた
人形の夜は早いらしい
…やれやれ…私も今日は疲れた。こりゃあ朝までぐっすりだね…
そう呟いたのを最後に、私は深い眠りに落ちた


99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 00:05:18.42 ID:9XJB8tUO0
再び時はさかのぼる

「うん、わかった。それじゃあね圭一くん。また明日〜。」
そう言って受話器を置く
休日の部活が突然中止なんて珍しい
魅ぃちゃんに急なバイトでも入ったのかな
まぁとにかく、部活がなくなったということは
今日はもうやることと言えばあれしかないだろう
そう、宝探しだ
私は軽く作ったお弁当を持ってダム現場にいそいそと足を運ぶ
久しぶりだからすごくかぁいいものが増えているかもしれない
はぅ〜、楽しみ〜!お持ち帰りしたい〜!
目的地にはすぐに着いた
思ったとおり、新しいゴミ山が増えている
さっそく一番近い新しいゴミ山に登り、宝探しを始める
今日はなんだかとってもすごいお宝をお持ち帰りできそうな気がする


101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 00:09:38.65 ID:9XJB8tUO0
途中の秘密の隠れ家での休憩を含めると、宝探しを始めておよそ三時間
いろいろなかぁいいものを見つけた
紐が絡まった靴、ファスナーは動くけど口が閉まらない財布などなど他にもたくさん
そろそろ帰ろうかな、と思い始めた時だった
その鞄を見つけたのは
「はぅー…なんだか高そうなんだよ、だよ。」
それはまったくゴミには見えない、とてもきれいな鞄だった
その外装の立派さに惚れ惚れしながら鞄を開ける
次の瞬間、鼻血を噴くかと思った
「か…かかかかぁいいいい!!!
これはお持ち帰りせざるをえないんだよ!だよ!」


103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 00:14:29.21 ID:9XJB8tUO0
中身はとってもきれいなお人形
そのかぁいさに興奮して、舐めるように全身を観察する
「はぅ〜!かぁいいかぁいいかぁいいよ〜!
…あれ?これってもしかして…」
ねじ穴?も、もしかしてねじを巻いたら動くのかな!かな!
急いでさっきの鞄の中を見る
ねじは…あった!きっとこれを巻けばカタカタかぁいく動くんだね!
そうと分かればさっそく巻いてみよう


105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 00:19:35.47 ID:9XJB8tUO0
キリ…キリ…キリ…
これはきっと私の中でのかぁいいランキングはケンタくんレベルだ
ううん、圭一くんのオットセイレベルかもしれない…
なんてランク付けをしていると、それは突然起こった
「きゃっ…!」
ねじを巻いていたお人形が突然光を放ち出したのだ
あまりの突然のことに呆然とするしかない
だがすぐに光は収まり、私をもっと驚かせた
「あらぁ、あなたが私のねじを巻いたのぉ?ふーん…つまんない感じぃ。」
お人形が、喋った


111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 00:24:15.16 ID:9XJB8tUO0
あまりのことに声が出ないが、頭の中はなぜかあまり混乱していない
きっと、この人形がすごくかぁいいからだろう
…理由になってないかもしれないけど
「あらぁ?思ったより驚いてないみたいねぇ。
もっと怖がると思ってたんだけど…つまんなぁい。」
ようやく、声が出た
「あ、あなた、いったい何者なの?」
「私ぃ?私は、ローゼンメイデン第一ドール、水銀燈。
七体のドールの中でもっともアリスに近い、最強のドール。」


113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 00:28:43.16 ID:9XJB8tUO0
そのかぁいいお人形、水銀燈ちゃんは彼女たちのことについて話し始めた
アリスゲームや彼女のお父さん、いろいろなこと
彼女の話を聞いているうちに私はだんだん冷静さを取り戻し、
彼女を観察する余裕が生まれた
彼女を観察して一つわかったことは、彼女は寂しがりやさんだということ
「…というわけよぉ。わかったぁ?私は必ず他のドールたちをジャンクにして
アリスになり、お父様に会うの。それが私の存在理由。」
彼女は、お父さんだけが自分に愛情を注いでくれる存在だと思い込んでいる
誰も自分を愛してくれないという恐怖から逃れるために戦いに身を投じている
「可哀想…。」


115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 00:33:24.69 ID:9XJB8tUO0
思わず私の口から出たその言葉に、彼女は反応した
「…なんですってぇ…?」
「あなたは誰にも愛されないと思い込んでいるだけ。
お父さんしか自分を愛してくれないと思い込んでいる可哀想な子…。」
「黙りなさぁい。あなたに何がわかるっていうのぉ?
私はお父様にさえ愛されればそれでいいの。他の誰の愛情もいらないわ。」
「嘘だよ。」
「…っ!」
「あなたはとても傷ついた目をしている。
自分を愛してくれていると思っていた人に裏切られ傷ついた、そんな目。
誰の愛情もいらないと自分に言い聞かせてきたんだよね?裏切られるのが怖くて。」
「黙りなさい!それ以上余計なことをいうとジャンクにしてあげるわよ…!
たかが人間の小娘なんかに何がわかるっていうの!?」
「わかるよ。」
私は静かに言葉を重ねる
「わかるよ。だって…レナと同じだもん…。」


119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 00:38:41.55 ID:9XJB8tUO0
「っ…。」
「私も昔、自分に愛を注いでくれていると思った人に裏切られた。
私は深く傷ついて、心が壊れかけた。
でも今はこうして幸せに生きている。どうしてだと思う?
それはね、たくさんの人の愛情に気づいたから。
今はたくさんの人が私を必要としてくれる。
それが幸せなことなんだって気づいたから。」
「ふーん…よかったじゃなぁい。
でも生憎私の周りにはそんな人なんていないし必要だとも思わない。」
「本当に?」


127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 00:47:08.59 ID:9XJB8tUO0
彼女は答えない
でも構わず続ける
「私は、私を裏切ったあの人を許していない。
でも、もしあの人が本当に反省して私と、私のお父さんに謝ってくれれば
許してあげるつもりだよ?罪は許すためにある。
犯した罪が一生許されないなら、なんのために生きるかわからないもんね。
もし、あなたが裏切られたと思っている人が謝りにきたら…
あなたはどうする?」
「………。」
「クスクス…そうだよね、わからないよね。
実際は謝られるまで許せるかどうかはわからない。
私も、許すつもりだけどもしかしたら許せないかもしれないもん。」
そしてまた私はクスクスと笑う
しばらく笑った後、水銀燈ちゃんは「はぁ…」とあきれたようなため息をついた
「あなた、おかしな人間ねぇ…。」


129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 00:53:16.20 ID:9XJB8tUO0
「はぅー。失礼だよぉ。
それに、喋って動くお人形の方がもっと変なんだよ?だよ?
あ、そうだ。私は竜宮レナ。レナって呼んでね。」
「聞いてないわぁ。」
「聞くつもりだったでしょ?」
そういうとそっぽをむいてしまった
どうやら図星だったみたいだ
「よろしくね、水銀燈ちゃん。」
「…なれなれしいわねぇ。もうちょっとどうにかならないのぉ?」
「ん〜そうだよね、ちょっと長いもんね。じゃあこんなのはどうかな?
『銀ちゃん』!はぅ〜、かぁいいな、かぁいいなー。」
銀ちゃんはため息をつき、「好きにしなさぁい」と言ってくれた
私がうれしそうに笑っていると、銀ちゃんが何かを思い付いたように口を開いた
「あ、そうだぁ。ねぇレナぁ。」
「ん?何かな?かな?」
「ヤクルトちょうだぁい。」
今度は本当に鼻血を噴いた


132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 00:57:33.95 ID:9XJB8tUO0
ぼたぼたと血が流れ出る鼻を抑えながら私は聞きなおした
「や…ヤクルト…?今ヤクルトって…?」
「え、えぇ、そうよぉ…。あなた、大丈夫ぅ?」
「か…かかかかか…かかか…」
「ちょ、ちょっと…?」
「かぁいいよおおおおおおおお!!
おもおっももおもおもっちかえりいいいいいいいいい!!!!!!!
ヤヤヤヤクルトだね!?お、お家にあるからね!今から帰ろう!
レナのお家に帰ろう!いっぱいいーーっぱい飲ませてあげるからね!」
「ひっ!?」
私はそう言うと同時に銀ちゃんを脇にかかえ、全速力でお持ち帰りした
銀ちゃんは鞄につかまってわずかに抵抗しようとしたが、
その鞄は銀ちゃんと共に私の腕の中だ
家に帰ったらたっぷりと銀ちゃんを愛でよう
まだまだ夜までは時間があるから存分に楽しめる
この日私は生涯最高の宝物をお持ち帰りできたのだった
オヤシロさまありがとう


136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 01:00:58.94 ID:9XJB8tUO0
「梨花?どうかしましたの?」
「…今ダム現場の方からものすごい叫び声が聞こえたような気がしたのです。」
「あぅあぅ…きっとレナがかぁいいものを見つけた歓喜の咆哮なのです…。
がくがくぶるぶる」
「それは恐ろしいですわね…。
対象が生き物でないことを祈るばかりですわ。」
「みー。祈ればきっとオヤシロさまがなんとかしてくれるのですよ。
ね、羽入?」
にぱー☆と笑うとあぅあぅと困ったようにうめき出す
まったく退屈しないわ、このダメ神は…くすくす
「ほらほら二人とも、早くしてくださいまし!
お店が閉まってはお夕飯のお買い物ができなくなってしまいますわよ!」
沙都子に呼ばれ、羽入と共に慌てて駆け出す


141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 01:05:41.29 ID:9XJB8tUO0
今日はたまにはいいだろうということで散歩がてら三人で夕飯のお買い物だ
三人でお買い物なんて初めてだから新鮮でちょっと楽しい
「じゃがいも三つくださいなー、なのです。」
「ネギも二本くださいですわ。」
「あぅ、シュークリームも十個お願いしますです!」
八百屋にシュークリームがあるわけないだろ。あほか。
しかも十個ってなんだ。多すぎよ。あほが。
「あぅ…今あほって言われた気がするのです…。二回も。」
「気のせいなのですよ。にぱー☆。」
「ほらほら二人とも、お買い物は済みましたから早く帰りますわよ。
暗くなると足元が危ないですわ。」
やはり楽しい
今日の当番は沙都子だから夕飯はすごく楽しみ
この幸せな日常を手に入れられて本当によかった
今日もいつも通りの日常だ
と思っていた
この数十分後までは


143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 01:09:31.44 ID:9XJB8tUO0
「誰からだったの?」
「いたずら電話だったのです。
まったく、神にいたずら電話とは不届きな輩がいるものなのです。あぅ。」
ふーん、と適当に返事をして私はまたテレビへと顔を向ける
と、沙都子が台所から呼びかけてきた
夕飯ができたらしい。このにおいは…野菜炒めか
沙都子の野菜炒めはとても美味しいから私は大好きだ
思ったとおり、あっという間に平らげてしまった
夕飯も終わり、のんびりとテレビを見ていたときだった
「梨ぃ花ぁ〜?これはなんですのぉ〜?」


146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 01:13:02.19 ID:9XJB8tUO0
洗面所から沙都子の呼ぶ声
何事かと立ち上がろうとすると、沙都子が大きな鞄を引きずるようにして持ってきた
「みぃ…?どうしたのですかそれは?」
「だからそれを今私が聞いたんじゃありませんの。」
そうだった。しかし私に心当たりはない。
ちらりと隣を見て羽入に視線で訊ねる
視線に気づいた羽入は首を横に振った
「あぅ…とにかく開けてみましょう。
それでなにか分かるかもしれませんです。」
「そうですわね。ちょっと不気味でございますけど…。
仕方ありませんわね。では開けますわよ…!」
「みー…どきがむねむねするのです…。」
ごくり…と固唾を飲む
「えいっ!」
掛け声と共に鞄が開けられた


148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 01:17:12.67 ID:9XJB8tUO0
「これは…!」
「すごいのです…!」
「あぅあぅ…あぅあぅあぅ…!」
目に飛び込んできたのは本物の女の子と見間違えてもおかしくないほど
精巧に作られた西洋風のお人形
しばらく三人で興奮しながらそれを見ていたすると
「あぅ…?」
「どうしたんですの?」
「見てください。ここに穴が開いているのです。」
「あらあら、本当ですわね。んー…この穴は…」
「みぃ…ねじ穴みたいなのです。」


150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 01:21:46.32 ID:9XJB8tUO0
「ならどこかにねじがあるはずですわね。」
「あったのですよ、あぅ。」
「でかしたのです。ならさっそく巻いてみようなのですよ。」
「で、でもいいんですの?こんな誰の物かもわからないお人形を勝手に…。」
「あぅあぅ!そんなの関係ねぇのです!据え膳食わぬは男の恥とも言いますです!」
「ボクたちは男でもないし使い方も間違ってますが
巻いてみようという意見には賛成なのですよ。」
「むぅ…二人がそうおっっしゃるのでしたら…
わかりましたわ、巻いてみますわよ。」
沙都子は羽入からねじを受け取り、キリキリと巻いていった


152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 01:26:49.02 ID:9XJB8tUO0
「みぃ…むねが、…どきがむねむねするのです。」
「言い直さなくてもいいのです。」
と、突然異変は起こった
「きゃっ!な、何ですのこれは!?」
「な、何!?何が起こってるの!?」
「パネェのです!パネェのです!」
人形が光り出した!?どうなってるの!?
一瞬、羽入のオヤシロパワーかと疑ったが、
「あぅあぅあぅ!パネェのです!パネェのです!」
完全にテンパっているので、それはないだろう
これはいったい…!?
そして光はゆるやかにおさまり、次の瞬間
「うゅ…ここどこなのー…?」
人形が喋り、そして時が止まった


156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 01:31:14.58 ID:9XJB8tUO0
ちょっと待った、『時が止まった』?
「ちょ、あんた何やってんのよ!」
「あぅあぅ!ザ・ワールドなのです!パネェのです!」
だめだこいつ…早くなんとかしないと…
「キムチ。」
「あぅん!」
これでよし
「羽入!あんたなんでこんなとこでオヤシロパワー使ってんの!」
「ごめんなさいです…あまりの恐怖につい…。
でも大丈夫なのです。今意識があるのは僕と梨花だけなのです。」
「そういう問題じゃなくて…はぁ、もういいわ。今はそんなことより…
アレよ。なんなのいったい?」
「あぅあぅ…僕にわかるわけないのです…。」


159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 01:35:00.24 ID:9XJB8tUO0
「それもそうね…あんなにテンパってたあんたに聞くだけ無駄だったわ。」
「それはそれで酷いような…。それにしても本当に何なのでしょうか…
あんなの、何百年とこの世を見てきた僕でさえ初めて見るのです。」
「今わかるのはあの人形は生きているということ。
それに、あまり危険ではないみたいということね。」
「な、なぜ危険ではないと?」
「第一声があまりにも可愛らしかったもの。それに見た目も。」
「そんな理由…?言われてみれば確かにそうですが…。」
「とにかく、詳しいことは本人に聞くしかなさそうね。
あんたももうだいぶ落ち着いたみたいだし。そろそろ解除してくれる?」
「あぅ…わかったのです。そして時は動き出すのです。」



162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 01:39:54.31 ID:9XJB8tUO0
時が動き出したとき、人形はあたりをきょろきょろと見回して言った
「あなたたちが雛を巻いてくれたの?」
沙都子は口をぱくぱくとしてまるで金魚のようだ
一瞬、このショックで発症してしまわないかと不安になったが、
たしか注射は打ったはずなのでその心配はないだろう
そう思い、まずは目の前のこの問題を片付けることにした
「そうなのですよ。正確に言えばそこで金魚さんみたいに
口をぱくぱくしている子がねじを巻いたのです。」
沙都子は自分を話題に出されて一瞬驚いたようだったが、
すぐに馬鹿にされていると思ったようで、冷静さを取り戻そうとしていた
これでひとまずは全員が落ち着けただろう


163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 01:44:13.50 ID:9XJB8tUO0
ちらりと羽入の方を見ると、いない
どこへいったのかと目線を泳がせるとすぐに見つかった
テーブルのうしろに隠れてびくびくと人形の様子をうかがっている
なんというへたれ…
羽入はあてにできないと悟り、私と沙都子だけで話を進めることにした
「みぃ、まずはあなたに質問があるのですよ。ね、沙都子?」
さすがは部活メンバーといったところだろうか
沙都子はもうかなり冷静だった
「え、えぇ、もちろんですわ。まずは根本的な質問から。
あなたはいったい…何者なんですの?」


166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 01:48:27.36 ID:9XJB8tUO0
その人形、雛苺から聞かされた話はにわかには信じがたい内容だった
しかし、実際に目の前で人形が喋っているのだ
そのローゼンメイデンやらアリスゲームやらの話を信じないわけにはいかない
「それにしても、酷い話ではございませんの…?
お父様に会うためとは言え、姉妹を手にかけないといけないなんて…。」
「本当に…つらいことなのですよ…。」
雛苺の話を聞いているうちに冷静になったのだろう
いつの間にか横に立っていた羽入が呟いた
羽入も、実の娘に自分を手にかけさせたのだ
身内の命を奪うことのつらさはよく知っているだろう
「雛はほんとはアリスゲームなんてやりたくないの…。
みんなと仲良く遊べればそれでいいのよ…。」
当たり前の日常が一番手に入りにくいというのはどこも共通みたいね…
私もそれを手に入れるために今までもがいてきたんだもの
その気持ちはよくわかる
そして、奇跡の起こし方もわかる
だから言ってあげた
「大丈夫ですよ。」
「ほぇ…?」


167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 01:52:49.01 ID:9XJB8tUO0
「アリスゲームなんかしなくてもみんなで楽しく暮らせる日は必ず訪れますです。
でもそれは、待っていてもやってきてはくれません。
あなただけの努力でも、それは無理。
みんなの力を合わせてようやくアリスゲームなしの、敗者のいない世界になる。」
羽入がいない世界がカードの足りないジジ抜きだったように、
アリスゲームがあるこの世界はジョーカーのあるババ抜きなのかもしれない
ジジ抜きの世界は羽入という欠けたカードが加わり、敗者がいなくなった
ならババ抜きのこの世界では、アリスゲームというジョーカーを抜いてしまえばいい


169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 01:57:12.20 ID:9XJB8tUO0
「アリスゲームがたとえ定められた運命だったとしても臆することなどない。
運命なんて、金魚すくいの網よりも簡単に打ち破れるのだから。」
ね、圭一…。圭一のあの言葉、あの表情を思い出し、私の胸に熱く広がる
「だから、がんばりましょう。
運命なんて、ぷちっとぶち壊してやりましょうです。ふぁいと、おー!」
そういうと、しばらくぽかんとしていた雛苺だったが
突然にっこりと笑ってうれしそうに「ふぁいと、おー、なの!」と手を掲げた
よかった、運命に抗う道を選んでくれたようだ
もともと抗いかけていたのだ、私は少し後押しをするだけでよかった


171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 02:00:39.94 ID:9XJB8tUO0
ふと横を見ると羽入がにこにことこちらを見つめている
「…なによ。私の顔に何か付いてる?」
「いえ…僕はうれしいのですよ。
梨花は強さを身につけただけでなく、その強さを人に分け与えるほどに成長した。
それが長年梨花と共に生き続けた僕にとって、とてもうれしかったのですよ。
それにさっきの梨花は、なんだか圭一みたいでかっこよかったのです。あぅあぅ!」
圭一みたいだったと言われ、少し顔が熱くなる
慌てて顔を背けたが気取られてしまったらしく、羽入はくすくすと笑い続けている
今日の夜食はキムチで決定だ


172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 02:03:27.28 ID:9XJB8tUO0
そう心に決めたところで沙都子に話しかけられた
「梨花、雛苺さんがお腹が空いたとおっしゃってますわ。
何か食べる物はありますかしら…?」
「みぃ…あるにはありますけど調理しないといけないようなものばかりなのです。
雛苺?何か食べたいものはありますですか?」
そう聞かれた雛苺は待ってましたとばかりにすぐさま答えた
「雛ね、うにゅーが食べたいの!」
「う、うにゅー…?」
「うにゅーなの!白くて、まぁるくて、黒くて赤くて、うにゅーってしてるの!」
何が何だかさっぱりわからない…


176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 02:06:38.15 ID:9XJB8tUO0
横の沙都子と羽入にちらりと視線を向けるが、二人とも揃って首をひねっている
と沙都子が口を開いた
「白い…丸い…。おにぎり…?なら黒は海苔で、赤は梅干ですわね!
そうでございましょう、雛苺さん!」
そう自信満々に答える
しかしそれではうにゅーの説明が付かない
そしてやはりはずれだったらしい
雛苺はぐずるように不満げに口を開いた
「ぶー…違うの!全然違うの!
白くて、黒くて、赤くて、丸くてうにゅーなの!」
日本語でおk…
だめだ、まったくわからない
沙都子も自身があった解答がはずれ、お手上げだという感じだった
ただ一人、羽入だけがいまだ頭をめぐらせているようだった
そして突然、ぴこーんと電球が頭上に出てきそうな勢いで羽入が口を開いた
「そうか、謎はとべてすけたのです!沙都子!紙と色鉛筆を持ってきてください!」


179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 02:10:35.79 ID:9XJB8tUO0
「へ…?り、了解ですわ!」
羽入の命を受け、沙都子が慌ててそれらを探す
「羽入、あんたほんとにわかったの?
ていうかなんで紙と色鉛筆なのよ。口で言えばいいじゃない。」
「だって、どうやら雛苺はうにゅーの正式名称を知らないのです。
口で言ったってわかりっこないのですよ。だから絵で書いて教えてあげるのです。」
それもそうか、と少し関心してしまったのが悔しい
そうこうしているうちに、沙都子が道具を持ってきた
それを受け取り、羽入が絵を描き始める
使った色は白、赤、黒
そして出来上がった絵、これは…!
「あー!うにゅーだー!」
そうか、苺大福だ
なるほど、言われてみれば確かに白くて赤くて黒くてうにゅーっとしている
「それにしてもよくわかりましたわね…。やはり羽入さんは部活メンバーの一人。
油断はできないということですわね。」
羽入は誇らしげに胸をそらし鼻高々だ
おそらく羽入のことだ
甘いもの好き同士で何か雛苺と通じたのだろう


180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 02:15:16.21 ID:9XJB8tUO0
だが一つ問題がある
それは…
「でも…家に苺大福なんてないのですよ。みぃ…。」
それを聞いて雛苺はまたぐずりそうな雰囲気を出す
雛苺の精神年齢が見た目どおりであるなら、ぐずられるとかなりやっかいだ
しかしこの時間になるともうどこのお店も閉まってしまい、
とてもじゃないけど苺大福を手に入れることなどできない
なんとかこの場をおさめなければ…
私が口を開こうとした瞬間、羽入が不敵に笑い出す
「は、羽入さん…?どうしたんですの…?」


183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 02:18:09.86 ID:9XJB8tUO0
「ふっふっふ…。見て驚けなのです!じゃじゃーん!」
「そ、それは!」
「なん…だと…?」
羽入が懐から取り出したのは、そう、苺大福
「わー!すごいのすごいの!うにゅーなのー!」
「はい、雛苺。食べるがよいのです、あぅあぅ☆」
「わーい!ありがとうなのー!」
驚く私と沙都子を尻目に羽入はにこやかに雛苺にそれを渡す
「羽入…いつの間に…!」
「僕は非常食として常に甘いものを携帯しているのです。」
「そんなこと初めて聞いたのです!」
「抜かりないですわね…。羽入さん…恐ろしい子…!」


187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 02:23:11.57 ID:9XJB8tUO0
ふと後ろからあくびが聞こえた
振り向くと雛苺が口の周りに大福の粉とあんこを付け、
その小さな口を大きく開けてあくびをしている
「みぃ?もう眠いのですか?」
「うぃ…うにゅー食べたら眠くなってきたの…。」
「あらあらそれならもうお休みなさいませ。
無理に起きると体に毒ですわよ?」
こくりとうなずいた後、沙都子に口の周りを拭かれ、
そしてもそもそと鞄に入っていった
どうやら鞄の中で眠るらしい


188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 02:26:05.44 ID:9XJB8tUO0
「あ、名前、聞いてなかったの…。」
一度閉めかけた鞄をまた開け、眠そうな目をこすりながら聞いてきた
「ボクは古手梨花なのです。」
「北条沙都子ですわ。」
「古手羽入なのです。よろしくなのです、あぅ。」
「梨花…沙都子…羽入…よろしくなの…。」
もう眠気が限界だったらしい
言い終わるか終わらないかのうちに鞄が閉まり、眠ってしまった
私たちは顔を見合わせてくすくすと笑いあったあと、
もう寝る準備ができていたこともあってそのまま消灯、
眠りについた


240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 12:31:46.83 ID:9XJB8tUO0
翌朝、今日は月曜日だから学校だ
そして圭一たち部活メンバーは朝起きて真っ先に同じ内容の問題で悩んでいた
『いつ、打ち明けるか』
いつまでたっても隠しきれるとは思えない
特にアリスゲームを終わらせる方法をみんなで考えようと提案した者は
できるだけ早く打ち明けて、仲間全員で問題に立ち向かわなければならないと
そう考えていた
さて、どうするかな…
圭一は考え事をしすぎたせいでレナとの待ち合わせに遅れ、
一人急いで学校へと向かっていた


242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 12:38:51.73 ID:9XJB8tUO0
ようやく学校に着き教室のドアを開けるとすでにホームルームが始まっていた
全員の目線が自分に集まるのを圭一は感じた
「前原くん、遅刻ですよ?」
「す、すみません…!」
「早く席についてください。ホームルーム後、職員室に来るように。」
「はい…わかりました…。」
クラス中の視線を一身に受けながら、圭一はとぼとぼと自分の席へ歩いていく
ふと違和感
クラスのほぼ全員の視線が圭一の顔に集中しているのに対し、
部活メンバーのそれだけは違った
圭一の手の先の方に集中しているのだ
つまり、契約の指輪
単に圭一が見慣れない指輪をしているのが気になるだけなら
ここまでの視線は注がれないだろう
第一、 それなら他のクラスメートたちの視線もそうなるはずだ
これは明らかにおかしい
まさかあいつら…
圭一がそう思ったのと魅音が号令をかけたのは同時だった


244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 12:47:06.74 ID:9XJB8tUO0
職員室で軽い説教を受けたあと教室に戻ると、部活メンバーのみんなが一斉に駆け寄ってくる
最初に口を開いたのは魅音だった
「圭ちゃん、あんたいったいその指輪どうしたわけ?」
口調こそ軽いものの、その顔にうっすらと浮かぶ表情はどう考えても
似合わないおしゃれな指輪をはめてきた親友をからかうようなそれではない
軽い口調はおそらく自分の勘違いだった時の保険だろう
ちょっと聞いてみただけ、とごまかせるように
なんとか顔に出すまいとはしているようだったが
全員の顔にその表情がうっすらとだが見て取れた
だから俺は思い切って言った
「今日の部活だけどさ、俺の家でやらないか?」


246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 12:54:54.41 ID:9XJB8tUO0
時間は長いようで短かった
みんなを家に招いたあとどうやって話を切り出すか考えていたら
いつの間にか放課後だったのだ
熟考した結果、「話す必要などない」という結論におさまった
なぜなら、もし俺の予想が当たっていればみんな俺の部屋の鞄と真紅を見て
すべてを悟るはずだからだ
もちろん真紅には人形のフリをさせておく
俺の勘違いであれば母さんにもらっただのなんだのいくらでもごまかせばいい
その時はまた改めて打ち明ける機会をうかがおう


247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 13:01:55.35 ID:9XJB8tUO0
そうこうするうちに家に着いた
みんなを少しだけ玄関で待たせて真紅に経緯を説明する
真紅は「めんどくさいわね…」と言ったがすんなりと承諾してくれた
よし、行くか
「待たせてごめんな。さ、みんなあがってくれ。」
おじゃましまーす、と一様に挨拶をするみんなを部屋に案内する
さて、どんな反応を示すだろうか…
部屋のふすまを開けた途端、後ろからみんなの息を呑む音が聞こえた気がした
全員が目を大きく見開き、畳に座っている真紅を見つめている
これはもう間違いないな、と思った数秒後だった
「…は…」
俺が一つ忘れていたことを思い出したのは
「はう〜〜〜〜〜!!!!!!かぁいいいいよおおおおおおおおお!!!!!!1」
そして次の瞬間には真紅はレナに頬ずりされながら助けを求めていた
すまん真紅…かぁいいモードの存在を忘れてたぜ…


248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 13:08:42.29 ID:9XJB8tUO0
そしてその矛先は俺に向く
「ちょっと圭一!なんなのあの子は!
あんな恐ろしいものに出会ったのは猫以来はじめてなのだわ!」
「そ、そんなこと俺に言われたって…。
レナはかぁいいものを見ると見境がなくなるんだよ。勘弁してやってくれ。」
「みぃ…猫さんは可愛いのですよ?にゃーにゃー。」
なぜか猫をかばう梨花ちゃん。親近感でも感じるのだろうか
「そんなことより、みんなの反応を見る限り、
みんなのところにも来たんだよな?ローゼンメイデン。」


252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 13:19:14.53 ID:9XJB8tUO0
「はい、来たのですよ。とってもかぁいいお人形さんだったのです。」
かぁいい、という言葉にまたレナが反応するが、もう暴走はしないようだ
「はぅー…レナのところにも来たんだよー。とってもかぁいかったー…。
昨日はね、お昼過ぎから夜のおやすみまでた〜〜っぷりかぁいがってあげたんだよ!だよ!」
その言葉に真紅を含む全員が身を震わせる
そのドールの精神が今無事かどうかが心配だ
「そ、それはともかく、おじさんのとこにも来たよ!それに…」
「もちろん、私のところにもきましたよ。」
そうか…やっぱり全員のところに来たんだな…


256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 13:24:13.04 ID:9XJB8tUO0
とここで真紅が口を開く
「そう…やっぱり来たのね…。私の名前は真紅。
誇り高いローゼンメイデンの第五ドール。
さっそくだけど、あなたたちのところに来たドールたちの名前を教えてちょうだい。」
「ん、オッケー。まずは私からいくね。
私は園崎魅音。私のところには翠星石って子が来たよ。」
「園崎詩音です。私のところには蒼星石です。」
「翠星石に蒼星石か…なんだか似たような名前だなぁ。」
「えぇ、翠星石と蒼星石は双子の庭師。見たところ彼女たち…
魅音と詩音も双子のようだし何か引かれあうものでもあったのかもしれないわね。」


257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 13:31:37.45 ID:9XJB8tUO0
真紅が微笑むと梨花ちゃんが口を開いた
「みー。何か引かれあったに違いないのです。
ボクは古手梨花。そこの二人と一緒に三人で暮らしていますです。
ボクたちのとこに来たお人形さんは、きっと羽入と甘党同士で引かれあったのですよ。にぱー☆」
「甘党?もしかして…雛苺かしら。」
「Exactly,その通りでございましてよ!とっても可愛らしい方でございましたわ。
わたくしは北条沙都子と申します。よろしくお願いしますわ、真紅さん。」
「あぅあぅ☆僕は古手羽入と申しますです。
雛苺は僕ととっても話が合いそうだったのです!」


259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 13:42:21.81 ID:9XJB8tUO0
「最後はレナだね!私は竜宮レナ。よろしくね、真紅ちゃん!
レナのとこには…はぅ〜、思い出しただけでご飯三杯はいけるかな!かな!」
「あら、そんなに可愛らしいドールなの?なら金糸雀かしら?」
「違うよ違うよ〜!えっとね〜…」
その瞬間、真紅が体を強張らせた
その理由を冷静に思考をなぞって考える
今出てきたドールは真紅を入れて四体
ローゼンメイデンは全部で七体だから、あと三体だ
そしてレナの元にいるのは今名前が挙がった金糸雀ではないらしい
これで残り二体
しかし一体はまだ会ったことはないと言っていた
ということは真紅が体を強張らせた理由はただ一つ
今からレナが嬉々として名前を挙げようとしているそのドールこそが
真紅が傷つけてしまったという、罪を贖うべき存在
そしてついに名前が挙がった
「その子はね、水銀燈ちゃんって言うんだよ〜!」


266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 13:50:40.53 ID:9XJB8tUO0
レナはようやく真紅のただならぬ状態に気づいたらしい
「真紅ちゃん…どうかした?」
真紅は答えない
おそらく、来るべき時が来たと気持ちの整理をしているのだろう
レナは返事をしない真紅が心配になってきたらしい
再び声をかけようと口を開きかけた瞬間、
真紅が顔を上げレナを真っ直ぐに見つめた
どうやら整理はついたみたいだな
「レナ…。」
「な、何かな?かな?」
「水銀燈に会わせてちょうだい。」
「…………いいよ。今から?それとも明日でいいかな?」
最初の間はおそらくレナが真紅の真意を読み取るために
必要な時間だったのだろう
そして会わせるべきだと判断した
それで表情を崩してに日にちを聞いたってとこだろうな
深読みかも知れないが、ほぼその通りのはずだ
まったく…恐い奴だぜレナは
もしかしたら真紅の目的まで予測が付いているかもな


269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 14:01:43.83 ID:9XJB8tUO0
「迷惑でなければ今すぐがいいわ。」
「わかった。じゃあ案内するよ。魅ぃちゃんごめんね。
今日部活出られなくなっちゃった。」
「ううん…いいよ、行っておいで。んじゃ、今日の部活はお開きにしよう。」
魅音も何か察したらしく承諾してくれた
俺たちはもう一度みんなに謝り、全員で外へ出た
玄関の前で別れ、俺と真紅、レナだけがその場に残っている。
「んじゃ、行くとするか。」
「うん、行こう。」
俺たちは日が傾きかけている道を歩き出す
真紅は俺の腕の中だ
「…真紅。」
「なに…?」
「お前だけで扉を開けられなくても、俺が付いてるからな!
この口先の魔術師がよぉ!」
「…えぇ。今は私は一人じゃない。あなたがいれば大丈夫。
ありがとう、圭一。」
レナはその様子を黙って微笑みながら見ているだけだった
その様子はやはり、今から真紅が水銀燈にあって何をするのかわかっているようだった


273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 14:06:15.82 ID:9XJB8tUO0
ここでみなさんに大変なお知らせがあります

280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 14:10:09.57 ID:9XJB8tUO0
期限今日までなのに家賃払ってなかった
というわけで払い込んでくる
多分30分くらいで帰ると思う

290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 15:07:32.86 ID:9XJB8tUO0
玄関を出るとそこは大雨でした
小振りだと思って油断したら本降りになりやがってちくしょう
というわけで予定の二倍もかかってしまいました、申し訳ない
あと原因としては途中でカード忘れたことに気付いて
取りに帰ったことかな

295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 15:10:45.13 ID:9XJB8tUO0
レナの家に着いた
今日はレナの親父さんは仕事遅くなるらしいから幸い誰もいない
少々大声を出すようなことがあっても大丈夫だろう
少し緊張しつつレナの家にあがった
部屋の少し手前でレナが待ってて、と合図する
水銀燈がいるかどうかを確認するためだろう
しかし、そこで予想外のことが起きた
「あれ…いない…!いなくなってる…。」
え、まじかよ…!
俺と真紅は慌ててレナの部屋に入る
…確かにいない。いったいどこに…


296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 15:17:47.53 ID:9XJB8tUO0
どうする?と訊ねようと真紅の方を見ると、真紅の視線はある一箇所のみに注目していた
「…鏡がどうかしたの?」
レナが訊ねると、真紅は聞きなれない単語を口にした
「nのフィールド…。」
「nの…なんだそりゃ。」
「水銀燈はこの鏡の中に入ったのだわ。
さぁ、私たちも入って探しましょう。」
「鏡の中!?そりゃまじか…。なんでもありだなもう…。」
「レナはここに残って…」
真紅の言葉をレナが遮る
「ううん。レナも行くよ。」


301 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 15:26:38.17 ID:9XJB8tUO0
「でも…危険かもしれないのだわ。」
「無駄だぜ真紅。レナは行く。いや、レナじゃなくても
あの場にいた誰でも同じ状況に立たされれば付いていく。理由は簡単だ。
なぜなら俺たちは…」
「「仲間だから!」」
見事に俺とレナの声が合う
真紅は数瞬後、穏やかに笑った
「…そうね。行きましょう。レナ、圭一。」
やはり理由はこれだけで十分だった
真紅のあとにつき、俺たちは光り出した鏡へと吸い込まれていった


303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 15:34:46.59 ID:9XJB8tUO0
「…なんつーか…不気味なところだなぁ…。」
「はぅ…なんだか寂しいところだね…。」
「ここが水銀燈のフィールド。
今のあの子の心の中を映し出していると言ってもいいわ…。」
そこはまるで西洋の廃村のようなところだった
石造りの建物はぼろぼろになり、そこかしこに散らかっている壊れた人形が
さらに不気味さを増させていた
しかも空は真っ黒と来たもんだ
ここがその水銀燈ってやつのフィールドでそいつの心の中ってんなら
相当にそいつの心はずたぼろだ
真紅の奴、いったいどんな言葉で罵ったんだ…?


312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 15:43:16.33 ID:9XJB8tUO0
いや、罵詈雑言なんかなくたって人の心は十分に傷つく
ほんの少しの心のすれちがい
それだけで十分だ
真紅の傷つけ方がそのどちらか、あるいは両方だったかは知らないが
ここまで荒んでしまってるんだ
そりゃあ説得に骨が折れるのも無理はないぜ
突然真紅が立ち止まる
真紅を見ると、目線をかなり上へ向けていた
俺とレナも真紅の目線を追って上を見上げると、
そこには黒いドレスに身にまとった一体の人形がいた


314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 15:51:00.73 ID:9XJB8tUO0
「水銀燈!」
真紅が叫ぶ
あれが水銀燈か…
水銀燈は一際高い建物の屋根に座り、冷たい目線でこちらを見下ろしている
「あらあらあらぁ…こんなところまでわざわざどんなお馬鹿さんたちかと思えば…
真紅ぅ…何しに来たのぉ…?」
ここで水銀燈はレナの方を向く
「あなたが連れてきたの?レナぁ…。
まさか…本当に謝りに来させたわけじゃないわよねぇ?くすくすくす…」
違うよ、とレナが答えた
そして水銀燈が何か言う前に言葉を重ねる


320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 15:58:55.83 ID:9XJB8tUO0
「謝りに来させたんじゃない。真紅ちゃんが自分から謝りに来たの。
私は勝手に付いてきただけ。」
「そうよ、水銀燈…。私はあなたに謝りに来たの。」
水銀燈は一瞬、少しだけ意外そうな表情を見せたが、すぐに冷徹なそれに戻った
「ふーん…本当に謝りにきたのねぇ。」
「ごめんなさい…。あの時のこと、本当に…ごめんなさい…。」
そう謝罪の言葉を口にした真紅の目にはうっすらと涙が浮かんでいた
が、水銀燈は小ばかにしたような表情を崩さなかった
「くだらなぁい…馬っ鹿みたぁい…。あっはははは!
真紅ったら、本当にお馬鹿さぁん。あはははははははは!」
「ちょっと待ちやがれてめぇ…!今なんて言った…!?」
水銀燈の言葉に、俺は我慢できず口をはさんだ
「何度でも言ってあげるわぁ。こんなお涙頂戴の茶番なんてくだらない、くっだらなぁい!」


328 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 16:07:14.85 ID:9XJB8tUO0
「ふざけんじゃねぇ!!真紅がどんな気持ちで今日ここにやって来たか分かってんのか!!」
「えぇ〜?知ぃらなぁい。水銀燈わかんなぁい。あっはははははは!
謝られたくらいで私が許すと思ってるのぉ?許すわけないじゃなぁい。」
「嘘だよ。」
俺が次の怒りの言葉を発する前に、レナの静かな、
それでいてはっきりとした声が辺りに響きわたる
俺は驚いてレナを見る
驚いたのは水銀燈も同じようだった
さらにレナは続ける
「銀ちゃんは嘘をついてるよ。本当に許す気がないなら
あの時レナに質問されて黙ったりするわけないもん。」


333 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 16:15:54.06 ID:9XJB8tUO0
俺にはなんのことかわからなかったが、そういうやり取りがあったらしい
水銀燈に目を移せば、その顔には初めてはっきりと動揺が浮かび上がっていた
「な…何言ってるのぉ…?私は決して真紅を許さない。
あの時の私の痛み、真紅…あなたにはわからないでしょう…?でも私はその痛みを乗り越えた。
そしてその痛みを糧にあなたへの憎しみを育て上げてきたのよ…!」
「嘘だな。」
「っ…!」
この嘘は俺にもはっきりとわかった


335 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 16:23:29.46 ID:9XJB8tUO0
水銀燈は痛みを乗り越えてなんかいない
今この瞬間も、真紅に傷つけられた痛みに苦しみ、泣いている
それほどに真紅のことが好きだったのだろう
そして真紅は自分がどれほど慕われていたか知ってる
だからこそ謝りたいのだ
自分がつけた傷は、自分で治したい
水銀燈を大切に思うからなおさら…
「お前は今泣いている。真紅に傷つけられた痛みに苦しみ、泣いている。
真紅を恨むことでその痛みを和らげようとしているだけだ。
でもな…お前が本当に望むことはそんなことじゃないだろ!」
「何を言ってるのかわからないわぁ…水銀燈わかんなぁい。あはははははは!」
「じゃあ分かるように言ってやる!」
「……やめなさぁい…。」


338 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 16:30:30.82 ID:9XJB8tUO0
「お前が本当に望むことは…」
「やめろって…やめろって言ってんでしょお!!」
そう叫んだ水銀燈が大量の鋭い羽を飛ばしてくる
このままだと間違いなく蜂の巣だ
しかし俺この瞬間にこの言葉を言わないといけない
水銀燈の心の扉を開けられない…!
「圭一!」
「圭一くん!」
レナと真紅が俺の名を叫ぶが俺は避けようともせず、扉を開ける鍵を使った
「お前が本当に望むのは…
真紅本人の愛情でその傷を治してもらうことだろうがあああああああああ!!!!!!!!」
水銀燈が息を呑んだ
さぁ、真紅。扉は開いたぜ。あとはお前が進むだけだ
不本意ながら俺はここでリタイアさせてもらうぜ…


343 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 16:38:07.89 ID:9XJB8tUO0
全身を貫かれる痛みに耐えようと固く目をつぶっていたが
まったく痛みは襲ってこない
恐る恐る目を開けると周りが柔らかな光に包まれている
この光が攻撃を防いでくれたのか…?
見ると光は俺の指輪から発せられている
「こ…こりゃいったいどういうことだ…?」
「すごい…こんなに強い心の持ち主だったのね、圭一…!
あなたの優しい、強い力が、指輪の力を最大限に引き出したの…。」
「ま、まぁよくわからねぇが助かっちまったな…ははは…。」
「圭一くん…!よかった…よかった…!」
「な、泣くこたねぇだろ泣くこたぁよぉ!
…とにかく、水銀燈の心の扉は開けたぜ。
さ、行ってやれ。水銀燈の本当の心の元に。」


344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 16:45:52.05 ID:9XJB8tUO0
「えぇ、ありがとう。圭一。」
私は圭一にお礼を言い、水銀燈の方へ向き直った
唖然としていた水銀燈だったが、私が近づいたことに気づくと我に返ったようだ
「水銀燈…もう一度謝るわ。本当にごめんなさい。
でもひとつだけわかって欲しいの。私はあなたを馬鹿にしていたわけじゃない。
あなたがアリスゲームで傷つき倒れるのが嫌だったのよ…。
それであんなことを…。」
「なによぉ…私が何を憎んでたのか、わかってたのね…。
ならわかるでしょぉ?私があの時どれほど傷ついたか…。」
「えぇ…それに感情に任せてあなたにひどい言葉を浴びせたことも…
本当にごめんなさい…。」
「ふん…そうだわぁ…真紅ぅ…。私、いい言葉を知ってるのよぉ…?
『罪には罰』意味はわかるでしょぉ…?」
「えぇ…当然、私が犯した罪も許されるには罰が必要なら、
甘んじてその罰を受けるつもりなのだわ。」
「いい心がけねぇ…。それで私、あなたの罪にはどんな罰がいいか考えたのよぉ?
それはね…死刑。あなたが死ねば、私は許してあげるぅ。あはははははは!」


346 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 16:56:20.60 ID:9XJB8tUO0
私はだまって傍にあった大きく、尖った石を自らの喉に突き立てる
あとは力を入れれば私の喉は貫かれ、そのままローザミスティカが外へ飛び出すだろう
「…あなた…死ぬのが恐くないのぉ…?」
「恐いわよ…。私たち人形の『死』の先は、真っ暗なだけ。」
「ならどうして…!どうしてなのよ真紅!」
「あなたに…許してもらいたいから…。さよなら…水銀燈…。ごめんなさい。」
異変に気づいた圭一とレナがこちらに走ってくる
でももう遅い
手に力を込める
今までありがとう、さようなら

バキッ


348 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 17:05:53.82 ID:9XJB8tUO0
激しい痛み
でもその痛みは喉ではなく、頬に走っていた
そして手に持っていたはずの石は遥か横に飛ばされている
私は、水銀燈にグーで思い切り殴られたのだと気づくまで時間がかかった
「わからなぁい…どうしてそこまで…!
あなたは私を傷つけた!ローゼンメイデンだと認めてくれなかった!
あんな態度をとった!それなのに…どうしてなのよぉ!」
水銀燈が私に掴みかかる
私は彼女の目を見る
その目はまるでピースが足りなくて完成しないパズルのよう
あと一つのピース
それは私が持っている
私の口から彼女に伝えよう
「あんな態度をとったのも…あなたに許して欲しくて必死なのも…
私は、あなたのことが大好きだから。」
ぱちり、とピースがはまった音がしたような気がした


350 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 17:13:29.67 ID:9XJB8tUO0
彼女の目から熱い雫が零れ落ちる
「私のことが…好きだから…?」
『愛情』それが彼女が唯一欲していたもの
それを今、彼女は手に入れた
「真紅は…私を愛してくれるのぉ?」
「もちろんなのだわ。」
「私を…大切に思ってくれるのぉ…?」
「えぇ…お父様よりも、誰よりも。」
「真紅ぅ…真紅ぅ…!うわぁああ……わぁあああああああん!」
水銀燈は、私の胸で思い切り泣いた
その目はまるで初めてあった時のように澄み切っていた


354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 17:22:13.87 ID:9XJB8tUO0
「ったく…一時はどうなることかと思ったぜ。
いきなり自殺しようとするんだもんよ…。」
「まぁまぁ圭一くん…よかったじゃない。真紅ちゃんも、みぃんな無事だったんだから。」
俺たちはあの後、そのまま泣きつかれて寝てしまった水銀燈を運び
nのフィールドから戻ってきた
「しかしあの水銀燈がまさか泣き出すとはな…。
けっこう、いやかなり萌えたわば!」
今のはレナパンか…?ツインテールか…?
「初めて会った頃はとても内気で大人しい子だったのだわ。」
「なるほど、それが真紅のせいであんなにひねくれてしまったと。」
「もう、圭一くん!そういうこと言っちゃダメ!」
ちょっと本気で怒られてしまった
だが真紅は気にしてはいないようだ


357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 17:31:41.02 ID:9XJB8tUO0
「いいのだわ、レナ。確かに私は許されたけど、罪を犯した事実が
消えるわけじゃない。私はこのことを胸に刻みつけて生き続ける。
それがこれからの私の役目なのだわ。」
そうだね、とレナは和やかに言った
「しかしだいぶ遅くなっちまったな。もう帰らないと。」
「あ、うん、そうだね。気をつけてね。」
「おう、じゃあなレナ。また明日。」
「うん、また明日ね。」
レナは片手で器用に寝ている水銀燈を抱き、手を振ってくれた
「さぁ、急ぎましょう圭一。もう9時を3分も回ってしまったわ。」
「あぁ、そうだな。急いで帰ろう。」
お袋にどやされるような時間になる前に、な


361 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 17:37:15.41 ID:9XJB8tUO0
その後数日は少しだけ忙しかった
水銀燈と蒼星石にアリスゲームをやめるよう説得していったのだ
水銀燈はもはやアリスゲーム自体にあまり執着しておらず説得は簡単だった
が、難しかったのは蒼星石だ
彼女もやはり姉妹を手にかけるという事実と
それをお父様が望んでいる、という考えで葛藤していたが
アリスゲーム以外に方法はないと信じきっている、
真っ先に死亡フラグを立てるようなタイプだった
少し骨が折れたが、その悩みを突いてなんとか説得できた
やはり心根は優しい少女だったのだ


364 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 17:46:31.18 ID:9XJB8tUO0
そんな一週間が終わろうとしていた金曜日のことだ
明日、つまり土曜日だが、学校が終わったら園崎家へお互いの人形を連れてきて
そのままみんなで泊まって遊ぼうという話が魅音の口から出た
もちろん反対する理由なんかあるはずもなく、全会一致で可決された
こいつは楽しみだぜ…!他の人形がどんなのかも気になるしな!
真紅も嫌がることはないだろう
案の定、家に帰ってこの話をすると
「ま、たまにはそういうのもおもしろそうね。」
と言って参加表明を示してくれた
その日の夜はまるで綿流しの祭りの前日のように興奮してなかなか寝付けなかった


372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 17:57:23.24 ID:9XJB8tUO0
「ぃよっしゃあああ!テンションあがってきた!」
「圭一、頭が二つに見えて気持ち悪いわ。やめてちょうだい。」
「あ、サーセン。」
その日は朝からハイテンションで授業などとてもじゃないが手に付かなかった
そのテンションは昼間で持続し、レナとの待ち合わせの場所へ向かっている今も
わくわくが止まらない
真紅はお袋から借りたバッグの中に入り、顔だけ出して会話している
と、待ち合わせの場所にレナが見えた…その隣には浮いてる人形が
「おいおい…いくら人通りが少ないとは言え、ちょっと大胆すぎるんじゃねぇのか?」


381 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 18:07:38.07 ID:9XJB8tUO0
「平気よぉ、さっき高いところから見たけどだぁれもいなかったわぁ。」
「だって、圭一くん。」
「それならいいんだけど…。」
ふと水銀燈がバッグの中の真紅に気が付いた
「あら真紅ぅ、なぁにぃその格好。まるで犬か猫ねぇ、かぁわいい♪。」
「うるさいのだわ。そっちこそまるでカラスじゃない。」
「失礼しちゃあう。猫さんに言われたくないわぁ。くすくすくす」
どうやら性格がしおらしくなったのはあの時だけみたいで、
もう真紅のことを憎んでないとは言ってもきつくなった性格だけは
すぐには元に戻らないようだ
まぁ、きつくてこそ銀様です、と言う輩も居そうな気がするしこれはこれでいいか
…何言ってんだ俺。銀様ってなんだよ


388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 18:19:47.76 ID:9XJB8tUO0
とりあえず園崎家に到着した
途中本当に「きつくてこそ銀様です」とどこからか聞こえたような気がしたが
空耳ということで片付けておこう、気味が悪い
そんなことより中へ入ろう
呼び鈴はならさなくても門は勝手にくぐってくれていいとのことだったので
玄関まで来てからおじゃましまーす、と家の中に声をかける
するとどたどたと足音が聞こえ、魅音がやってきた
「いらっしゃーい。お、あんたが水銀燈だね。
ささ、あがってあがって。もうみんな来てるよ。」
水銀燈は「なれなれしいわねぇ」とつぶやいていたが
そんなに嫌な気分には見えなかったのでスルーしておいた
促されるまま家に上がり、部屋に案内される
みんなが集合しているという少し広めの部屋に案内され、部屋に入る
一歩入ると…まさにそこはハーレムじゃないか!
見渡す限りの少女、少女、少女!しかも美少女揃いと来たもんだ!
くぅ〜っ!男に生まれてよかったぜ!
すまんソウルブラザー!俺は一足先に桃源郷へ旅立つ!


394 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 18:30:19.93 ID:9XJB8tUO0
「みぃ…圭一、顔が恐いのです…。」
「まぁまぁ、こんなに美少女たちが一同に集まってるんですから
圭ちゃんの青い性に火がつくのも無理はないですよ。」
「ふ、不潔ですわ!」
「あぅあぅ…ダメなのです…!僕は人妻なのです…!あぅあぅあぅ…」
「けけけ圭一君!あ、青い性って何かな!何かな!」
「くっくっく!圭ちゃ〜ん、こんな中に何時間もいて耐えられるのかな〜?」
「わーい!またお友達が増えたのー!楽しいのー!」
「そ、蒼星石!あの気持ち悪い顔で笑う気持ち悪い人間は何ですか!
気持ち悪いですぅ!」
「い、いやぁ…そんなに悪い人のはずじゃないんだけど…。」
「…圭一ぃ、何か好き放題言われてるわよぉ?」
「自業自得ね。この真紅の下僕として恥ずかしいわ。反省なさい。」
「なんというカオス…じゃなくて、てめぇら何勝手なこと抜かしてんだ!
黙りやがれぇえ!」
今日一日、期待通りのとても楽しい一日になりそうだ


397 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 18:37:53.49 ID:9XJB8tUO0
ここで重要なお知らせがあります
すごくお腹が減ってまいりました
夕食を済ませて来ようと思う


412 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 19:31:26.06 ID:9XJB8tUO0
U.F.O「食べないか」
俺「UFO!いい焼きそば…。」
U.F.O「ところで俺の麺を見てくれ。こいつをどう思う?」
俺「すごく…うまく、太く、大きいです…。」
コーンフレークもやっぱり美味しかったです


415 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 19:33:24.06 ID:9XJB8tUO0
「しかしあの水銀燈が本当に丸くなってやがるとは…驚きですぅ。」
「あら、そんなに驚くことないじゃなぁい。私は前から優しかったでしょお?」
ね、蒼星石ぃ?」
「えっ?あ、うん。はは…そうだね…。」
「わーい!水銀燈も仲良くしてくれて、雛うれしいのー!」
「もちろんよぉ雛苺。仲良くしましょお。」
「雛苺気をつけなさい。油断すると何をされるかわからないわよ。」
「もう真紅ったらぁ。私がいじわるするのは真紅だけよぉ?くすくすくす」
雛苺はそうでもないみたいだが、翠星石蒼星石はやはり水銀燈の様子を見て、
事前に話は聞かされていたとは言え驚きを隠せないようだった


417 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 19:39:13.75 ID:9XJB8tUO0
「さ、盛り上がってるとこ悪いけど傾注傾注〜!これからもっと盛り上がるからね!」
頃合を見計らって魅音が手をたたく
全員の視線が自分に集まったのを確認して魅音は軽く咳払いをし、言葉を重ねる
「え〜、さてさて皆の衆。この状況でやる事と言ったら、っくっくっくっく…
一つしかないよねぇ…?まぁ部員の諸君はもうとっくに察しはついてるだろうけど。」
魅音の口がにやりと笑う
だがそれは魅音だけではない
疑問符を頭に浮かべているドールズ以外は俺も含めてみな一様に同じ表情を浮かべていた


419 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 19:45:31.34 ID:9XJB8tUO0
「もちろんでございますわ魅音さん。」
「こんな面白そうな状況で、こいつをやらないわけがねぇ!」
「あぅあぅ!今日は僕も張り切っちゃうのですよ!」
「あはははは!いいねいいねぇ!わくわくしてきたかな、かな!」
「みー。何も知らないお人形さんたちはかわいそかわいそなのです。にぱー☆」
「お姉?もったいぶらないでそろそろ教えてあげたらどうです?
焦らし過ぎはNGですよ?くすくすくす…」
「くっくっくっく…!そうだね。それじゃあみんな行くよ!
さぁ!今から楽しい楽しい部活の始まりだー!」
「「「「「「おおおおお!!!!!」」」」」」


422 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 19:53:25.11 ID:9XJB8tUO0
「ぶ、部活ぅ…?なんですかそれ?説明せにゃわからんですぅ。」
「よくぞ聞いてくれた!
我が部はだな、複雑化する社会に対応するため活動ごとに提案されるさまざまな条件下、 時には順境、 時には逆境からいかにして…」
「つまり、みんなでゲームをして遊ぶ部活なのです。」
「わーい!ゲーム、ゲーム!楽しそうなのー!」
「おおっと雛苺!俺たちの部活をそんじょそこらのお遊びと同じに考えちゃあいけねぇぜ?」
「ほえ…?」
「会則第一条!狙うは1位のみ!いい加減なプレイは許さない!ですわ!」
「また会則第二条、勝つためにはあらゆる努力が義務付けられているんですよ?」


424 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 19:59:12.31 ID:9XJB8tUO0
「それに、敗者には恐ろしい罰ゲームが待っているのです…あぅあぅあぅ。」
羽入が恐ろしげに身を震わせて言うが、それはおそらく演技ではなく
自分が受けた罰ゲームの数々を思い出して本当に身震いがしたのだろう
なんてったって最近まで罰ゲームの常連だったからな…
「それじゃさっそく始めよう。やっぱり初日はジジ抜きだよね。
みんな、ルールはわかる?」
「トランプならわかるけれど…ジジ抜きというのは初めて聞くわね。」
「ん、おっけー。なら説明するよ。大丈夫、ルールは簡単だからね。」


425 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 20:05:44.61 ID:9XJB8tUO0
魅音の説明をみんな真剣に聞く
そしてさすがというべきか、みんなどうやら一回の説明でちゃんとルールを覚えたらしい
だがな…ルールを覚えたくらいじゃこの部活では勝てねぇんだよ!
そいつを身をもって教えてやるぜ!
「それじゃまずカードをよく切って…と」
「一枚抜きますわね。」
「カードを配って、と。よし、スタート!」
俺はすばやく配られたカードを持ち、みんなの手札をチェックする
なんてったってこいつはガン牌トランプだ
しかし部活メンバーはさすがだ
うまくカードの傷を見られないような持ち方をしつつ
みんなのカードに油断なく目を配らせてやがる
まぁ俺も例に漏れずそうしているわけなんだが…


428 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 20:12:44.10 ID:9XJB8tUO0
哀れなドールたちはそんなことにも気づかずに俺たちの餌になるだけ…
と思ったが例外がいるようだ
それは水銀燈と蒼星石
この二人は俺たちの様子にすぐに気がついたらしい
「ねぇ魅音さん。このカード結構傷があるみたいだけどもしかして…。」
水銀燈を除く他のドールたちは驚き、視線を向ける
「ん〜?くっくっく…圭ちゃん、会則第二条はなんだっけ…?」
「勝つためにはあらゆる努力をする、だろ?
こいつにゃ俺も苦しめられたぜ…。な、羽入。」
「あぅあぅ…恐ろしいのです…みんな鬼だったのです…。」
「やっぱりねぇ…どうも雰囲気が妙だと思ったのよぉ…。」
「な、なんですかいったい!」
「うゅ…なんだか怖いの…。」
「ちょっと、どういうことなの?水銀燈!」
「あらあなたたちまだわからないのぉ?
つまり、部活メンバーはみんな傷でカードを見分けられるってことぉ。」


431 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 20:18:40.23 ID:9XJB8tUO0
「な、なんですってー!」
「ひ、卑怯ですぅ!そんなのありですかぁ!」
「会則第二条、ですよ。くすくすくす…私も部活に加わった当初は苦労しましたが
いくつかのカードは特徴的ですからすぐに覚えられます。」
「うゅ…が、がんばるのー!」
詩音が苦労したことなんてあったっけ?
と少し疑問に思ったが、もしかしたら昔からちょくちょく
魅音と入れ替わって部活をしていたのかもしれない
そしてそのうちにカードの傷も覚えていったとか…
十分ありうる話だ
とりあえずドールたちは納得したらしく、逆に臨むところだと奮起したようだ


433 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 20:24:39.59 ID:9XJB8tUO0
しかし奮起したところでたった一回のジジ抜きでカードを覚えられるはずもなく、
結果は一位から順に詩音、魅音、俺、レナ、沙都子、梨花ちゃん、羽入、
蒼星石、水銀燈、真紅、翠星石、雛苺と
ドールたちは下位に集中したのだった
「くっくっく…優勝はいただきましたよお姉?」
「ふん、こんなの準備運動だもんね!勝負は十回あるんだ。
合計ポイントで勝てばいいんだよーだ!」
「はいはい、せいぜい部長の威厳にかけて頑張ってください。」
「うゅ〜…負けちゃったの〜…。」
「おーっほっほっほ!ちび苺風情がこの翠星石に勝とうなんて百年早いですぅ!
身の程を知りやがれですぅ!」
「でも翠星石、結構ぎりぎりだったよね…。」
「や、やかましいですぅ!」


434 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 20:31:13.32 ID:9XJB8tUO0
二回目以降もあまり結果は変わらなかった
が、驚くべき結果となったのは最後の十ゲーム目
なんと水銀燈が羽入より順位が上だったのだ
「なん…だと…なのです…!」
「水銀燈…大したやつだぜ…。」
「まさかこれ程とは…ですわ。」
「水銀燈…恐ろしい子…!」
「あぅあぅ…まぢで超ヤベェのです…パネェのです…。」
「わぁ〜!水銀燈すごいの〜!」
「な、なかなかやりやがるですぅ!」
「すごいなぁ…。僕も負けてられないや。」
「さすがは第一ドール、とでも言うべきかしら…。」
「あらぁ、このくらい当然よぉ。もうほとんどのカードは頭に入ったしぃ。
次からは優勝も狙えるわぁ。優勝がもっともふさわしいのはこの水銀燈よぉ。」


437 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 20:37:41.40 ID:9XJB8tUO0
「言うねぇ…くっくっく…!まさかこんなに早くカードを把握してくるとは…
あと十ゲームは必要だと思ってたけどおじさんも予想外だよ!
この分だと他のドールも次の十回勝負の中盤にでも把握できそうだね!
こいつぁ面白くなってきた!よし、次からはもうあんたらを初心者だとは思わない!
歴戦の部員のつもりで叩き潰すから覚悟しときな!」
全員の表情が闘志に燃えたものとなる
先ほどの勝負を見る限り、水銀燈以外のドールたちも
意外なことに最も幼そうに見える雛苺までもが終盤に差し掛かる頃には
水銀燈までとは行かなくともだいたいのカードを把握しつつあるようだった
これなら本当に魅音の言うとおりあと五ゲーム前後で全員がほぼすべてのカードを
把握するだろう
ローゼンメイデンってのは精神年齢にばらつきはあるものの、
記憶力等はそろってかなり高いみたいだな
まったく末恐ろしい連中だぜ…


441 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 20:45:51.19 ID:9XJB8tUO0
「ところで魅ぃちゃん、罰ゲームは何かな、何かな。」
レナが口を開くまですっかり忘れてたちなみに今回の成績は
優勝の数は魅音が4、詩音が3、俺、レナ、沙都子が1ずつ
ビリの数が雛苺が5、翠星石が4、真紅が1という結果だ
よって罰ゲームは雛苺、ということになる
「くっくっくっく…そういうわけだよ。覚悟はいいかい?雛苺…。
大丈夫、最初だからね。かるぅ〜い罰ゲームだよー…。」
魅音が両手をわきわきとさせながらゾンビのように雛苺へ近づく
おそらく地獄のくすぐり攻撃だ
確かに次から行われるであろう罰ゲームに比べりゃ軽いほうだが…
これはこれで体力的にかなりきつい


443 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 20:52:07.34 ID:9XJB8tUO0
「ぃ…ぃやぁ…やぁなの…怖いのよ…。」
雛苺が涙目になりながら後ずさるが、後ずさった先には翠星石が待ち構えていて
逃がすものかと雛苺をがしっと羽交い絞めにする
「ひぃっ!?」
「逃げちゃだめですよぅ雛苺〜。さ、魅音。思う存分やっちゃってですぅ。」
「GJ翠星石。くっくっく…大丈夫大丈夫…痛くないでちゅよ〜。」
雛苺は助けを求めるように周りを見回すが、みんなの目はこう言っていた
『ご愁傷様、雛苺。仏壇にはうにゅーを供えてあげるから成仏してね。』
「ひ…やああああああなの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
雛苺の悲鳴とも笑い声ともつかない叫び声が響きわたった


445 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 20:57:00.25 ID:9XJB8tUO0
「はぁ…はぁ…し…死んじゃうかと思ったの…。」
「くっくっく…まさかこの程度でへこたれたわけじゃないよねぇ?」
「も、もう怒ったわなの!今度こそやっつけちゃうんだから!」
泣き出すのではないかと思ったがどうやら甘く見すぎていたらしい
これは俺も認識を改めるべきだろう
「すごい気合だね雛ちゃん!レナたちも負けられないかな!かな!」
「へへっ、そうこなくっちゃな!さすがローゼンメイデンだぜ!」
「うんうん、いいねぇ雛苺!盛り上がってきたぁ!
よし、なら次の罰ゲームからはくじ形式にしよう!
さぁみんな!思い思いの罰ゲームをこの紙に書いて箱に入れていって!
まさか自分が負けた時のために軽めの罰ゲームを…
なんてチキンはここにはいないよねぇ?くっくっく!」
早速くじびき罰ゲームの始まりか…
くぅ〜!いよいよ部活らしくなってきやがったぜ!
「みんな入れたね?よし、それじゃあ第二ラウンド始めるよ!」
さぁて…今回はどんな結果になるか…この緊張感、たまらねぇぜ!


447 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 21:04:49.41 ID:9XJB8tUO0
結果は、今度は優勝は詩音、ビリは翠星石というかたちになった
予想通りドールたちは中盤にはカードを把握しきったらしく
後半から真紅、水銀燈、蒼星石のような頭の回転が早いやつらが追い込みを見せ
かなり上位まで食い込むようになった
だが翠星石は序盤の下位が足をひっぱったせいもあり、
また基本的に抜けているせいもあり見事ビリが確定したのだ
「きぃい〜!くやしいですぅ!この翠星石がちびちびなんかに遅れをとるなんて!
一生の不覚ですぅ!」
「わーい!翠星石、罰ゲームなのー!」
「さぁさぁ翠星石さん、さっさとくじをお引きあそばせ?」
「何がでるかな?何がでるかな〜?はぅ〜!」
「うぅぅぅ…もうどうにでもなりやがれですぅ!」
翠星石がやけくそのようにくじを引く
ごくり…とみんなが唾を飲む音が聞こえたような気がした
「あぅ…なんて書いてあるのですか…。」
「さぁ翠星石、早く読み上げちゃってください。」


449 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 21:10:15.14 ID:9XJB8tUO0
「えっと…『猫耳尻尾首輪付きで、語尾を猫にしてしゃべる』…。
な、なんですかこれ…。意味がわからんですぅ…。」
「はぅ〜!翠星石ちゃんの猫さん…!かぁいいよ〜!」
「お持ち帰りはだめだぞ、レナ。」
「わ、わかったよぅ…。見てるだけならいいよね、よね!」
「でも魅音さん、お人形サイズの猫耳セットなんてあるんですの?」
「くっくっく…おじさんを誰だと思ってるわけぇ?
ちゃーんと手配済みだよ!ほら!」
そういって魅音が取り出したのは紛うことなき人形サイズの猫耳セット
「さすがお姉。抜かりありませんね。」
「と、言うわけで…はい、翠星石!」
「うぅう…わかったですぅ…。ちょっと待つですぅ…。」
そういって翠星石はごそごそと耳、尻尾、首輪を付ける
そして出来上がったその姿は…


453 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 21:16:39.94 ID:9XJB8tUO0
「こ、これでいいですか…にゃあ?」
「おぉ!いいねいいねぇ!」
「をーっほっほっほ!大変可愛らしいですわよ!」
「えぇ、とてもすばらしいですよ翠星石。」
「あぅあぅ。これでは梨花の猫かぶり…もとい猫さんも霞んでしまうのです!」
「とりあえず今日はキムチなのです。にぱー☆」
「翠星石、とっても似合ってるよ。」
「そんな格好も新鮮ね。なかなか面白いわ。」
「わぁ〜翠星石が猫さんなのー!」
「あらぁ、ずいぶんと好評ね翠星石ぃ。もうずっとその格好してたらぁ?」
「いやに決まってるですにゃあ!お前らも何好き勝手言いやがってるですかにゃん!
黙りやがれですにゃん!」


458 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 21:22:23.10 ID:9XJB8tUO0
こいつは予想以上の破壊力だぜ…
特に評価すべきは語尾が『にゃあ』だったり『にゃん』だったりするところだ
これならワンパターン化を回避でき、飽きもこない
さすが、最萌えトーナメントで名を馳せただけのことはある!
ちなみにレナはというと、お持ち帰りの衝動を抑えるために
自分の手を鎖でぐるぐる巻きに封印している
鼻血をどくどくと流しつつ息を荒げ血走った目で
翠星石を見ているその姿はちょっとしたホラーだ
「す、翠星石のことはほっといて、さっさと次のゲームをやるですにゃ!」
その一言でレナの流れ出る鼻血の勢いがまた少し増した
翠星石、少しもったいないがお前はあまり喋らない方がいい
でないとひどく後悔することになる


463 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 21:33:05.19 ID:9XJB8tUO0
次のゲームからは大貧民に決まった
何かローゼンメイデンたちでも知っているゲームにしようか
と提案したのだが、本人たちが新しいゲームの方が面白いと言うのでこうなったのだ
ルールを説明するとやはり一度で理解したらしい
「よし、ルールを理解したところで今回のやり方を説明するよ。
見ての通り今日は人数がすごく多い。この人数が一緒になって大貧民をするとなると
一人あたりの手札が少なくなって、革命なんかの大技の可能性もなくなるし
早く終わっちゃってつまんないよね。
と、言うわけで今からくじ引きで二グループに分かれようと思う。
そしてそれぞれのグループの上位二人が集まって四人でもう一ゲームして
優勝者を決めるってわけ。罰ゲームはそれぞれのグループのビリ二名!
くじ引きの罰ゲーム+優勝者の命令を一つ聞くこと!質問は?」
「罰ゲームは二人で同じ内容か?それとも別々の内容なのか?」
「今回はくじ引きは二人で同じ罰ゲームをしてもらう。
優勝者の命令は、まぁ本人次第だね。
他に質問は?…ないみたいだね。それじゃみんなくじを引いてー。」


466 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 21:39:20.07 ID:9XJB8tUO0
なるほどな…こんな形式もなかなか面白いじゃねぇか
さて…俺様の餌食となる哀れな子羊は誰かなぁ…?
くじの結果は次の通り
Aグループ:圭一、レナ、詩音、水銀燈、蒼星石、雛苺
Bグループ:魅音、沙都子、梨花、羽入、真紅、翠星石
へっ!なかなか面白そうな面子じゃねぇかよ!こいつは少しも油断できねぇな!
向こうは…おそらく魅音は確実にあがってくるだろう。魅音、決勝で会おうぜ!
俺は心の中で魅音に宣戦布告し、意識を自分のグループに戻す
「はぅ〜!絶対絶対レナが優勝して、みんなみぃんなお持ち帰り〜!」
「うん、それ無理。だって私がいるんですもの。その時点で実現不可能ってことです。」
「雛だって負けないもん!雛が買って、うにゅーいっぱい貰うの!」
「あははは、みんな張り切ってるね。でも、僕もやる気は十分。
悪いけど負ける気はないよ!」
「あらあらぁ。みんなみんなお馬鹿さぁん。
優勝はこの水銀燈にふさわしいということがいつになったらわかるのぉ?」
けっ!どいつもこいつも殺気に満ち満ちてやがる!
久々だぜ…武者震いってやつはよぉ!
「上等だぜ!どいつもこいつもこの俺がけちらしてやる!かかってきやがれ!」


468 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 21:44:46.80 ID:9XJB8tUO0
今回使うトランプは傷のないものだ
まぁあのガン牌トランプは新入りに部活の厳しさを教えたり
実力を測ったりするのに使う洗礼のようなものだからな
それに大貧民はガン牌じゃないほうが俺は好きだ
とりあえず手札をチェックする
ふむ…まぁ悪くはない
だが一つでもミスを犯すと一気に最下位まで転げ落ちる可能性もあるだろう
油断せずに行こう

470 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 21:48:04.83 ID:9XJB8tUO0
さて、ゲームも中盤、そろそろ手札も少なくなってきた
いよいよここからが正念場だ
この残りの手札をいかに順序良く、効率良く、計画的に出せるか
場の流れを掴むことが勝利のポイントとなる
それにはまず今までみんなが出したカードや
カードを出すまでの間、表情などから敵の手札を読まなくてはならない
運も関係するだろうが、それに頼ってちゃだめだ
そう…頼れるのは…自分だけっ…!


472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 21:51:58.17 ID:9XJB8tUO0
ここで圭一が気になったのは詩音…
詩音は少し前から強いカードを惜しみなく出し続けている
レナも気づいた…その異変に…!
「詩ぃちゃん…さっきから強いカードばかり出してるね…。
自分が親の時にもいきなりQとかKとか…どうしてかな…かな?」
「あら、そうですか?私、無計画なので強いカードがあるとぽんぽん使っちゃうみたいです。」
「嘘だよ。レナは知ってるよ?詩ぃちゃんは何か切り札を隠し持ってる。」
その時、圭一も気づく…!詩音の切り札…!
「…まぁ部活メンバーレベルの人ならいつかは気づくと思ってました。
でも…気づくのが少し遅かったようですね。はい、革命です。」
革命っ…!
順番は蒼星石…パス…!雛苺…パス…!そしてレナっ…!
「…さすが、詩ぃちゃんだね…。」
詩音、微笑む…不敵…!


475 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 21:57:07.24 ID:9XJB8tUO0
だが、すぐに異変に気づく…!レナが笑っているっ…!
「でも今回はレナの方が一枚上手だったね!えい!革命返しだよ!」
「っ…そんな…!」
詩音、驚愕…!
詩音の手札にはもう強いカードは残されていない…
それほどまでの強カードの浪費…!レナはそれを待っていたっ…!
「へっ…革命返しか…やるじゃねぇかレナ…。」
「えへへへ、今回はちょっと運がよかったかな!かな!
次はレナからだね。今の詩ぃちゃんの手札だと…これくらいなら安全かな。」
「運がよかった、か…。確かに革命返しは並大抵のことじゃねぇ。
レナの勝気がう強運を引き寄せたんだろうよ。
だがな…」
ここでもう一匹の狼が牙を剥くっ…!


477 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 22:01:48.36 ID:9XJB8tUO0
「俺はその運をも利用してやるだけだぜ!」
圭一が出したカードは2…!この雛見沢では最強のカードっ…!
「さらに8切り!10のダブルで二枚捨て!Aのダブル!あがりだああああ!」
圧倒的勝利…!レナ、唖然っ…!
偶然…?いやそれとも…?
レナの頭で謎が渦巻く…!それほどの衝撃…!
「俺も詩音が何か隠してるなってことは察してた。
そしてレナがそれに気づいてなお詩音を泳がせていることにも気づいたんだ。
だから俺は待ってたんだ。レナが詩音を返り討ちにするのをな!」
漁夫の利…!それを圭一は待っていた…!
ざわ…ざわ…
圭一の最後のカードはAのダブル…
詩音はもちろん、誰も2のダブルなど出せない…!
親は圭一の次の水銀燈へと移る…!
「あらぁ、みんなパスぅ?つまんなぁい。はい、革命。」


481 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 22:06:02.76 ID:9XJB8tUO0
その時、圭一たちに電流走るっ…!
水銀燈までもが革命っ…!
もちろん誰も出せるはずなどないっ…!
そのまま水銀燈は8切り、Kのダブルを出し、あがり…!
部活メンバーの詩音、レナを置き去りに…水銀燈、あがりっ…!
狡猾…!圭一があがり、親が自分になるこの瞬間を狙っていたかのようなあがりかた…!
まさに狡猾っ…!
この瞬間…!圭一と水銀燈の決勝進出が決定する…!
残された者は不毛な戦い…!ビリを回避するために戦い続ける…!
蒼星石、雛苺などまさに空気っ…!
「水銀燈…お前やっぱりすげぇな…!オラわくわくしてきたぞ!」
「あらぁ、まだそんな余裕があるのぉ?
そんな口も利けないくらい叩きのめしてあげるわぁ。覚悟しなさぁい。」


484 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 22:12:52.62 ID:9XJB8tUO0
いよいよ決勝戦だ
Aグループからはこの俺前原圭一、水銀燈…
Bチームからは予想通り魅音…そして意外なことに真紅だ…!
「へっ…やっぱり上がってきやがったな魅音!
そして真紅…てめぇもなかなかやるじゃねぇか!
並み居る部活メンバーを圧倒し、ここまで来るたぁ…こいつは楽しみだぜ!」
「当然よ。やるからには優勝を狙うのだわ。」
「お馬鹿さぁん。何度言わせるのかしらぁ?
優勝はこのローゼンメイデン第一ドール、水銀燈がいただくわぁ。」
「くっくっく…い〜い殺気だねぇ…。
よっしゃ!それじゃあ決勝戦、始めるよぉ!」
そう言ってカードが配られ、各々手札をチェックする
「真紅ぅ…まさかこんな形で戦うことになるなんて思わなかったわぁ…。」
「えぇ、私もよ水銀燈。」
「アリスゲームで決着が付けられないなら…今ここで白黒はっきり付けましょお?」
「…えぇ。臨むところなのだわ。」


486 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 22:18:57.87 ID:9XJB8tUO0
「くくく…いいねぇいいねぇ。因縁の対決ってわけだね…。」
「だがな…俺たちのことを忘れてもらっちゃ困るぜ!」
互いに闘志を高めあい、その間にもゲームは進む
「あぅあぅあぅ…!みんなすごいオーラなのです…!」
「みぃ…負けたボクたちには眩しすぎるのです…。」
「悔しいですけどこのような闘気を見せられては負けを認めるしかございませんわね…。」
「はぅ〜…こんなの久々なんだよ…だよ…!」
「残念…私もあの舞台に立ちたかったです。」
「ほぇ〜…すごいの〜…!みんなあいとあいとー!」
「蒼星石ぃ…なんだか怖いですにゃぁ…。」
「翠星石、目を逸らしちゃだめだ。これが…戦いなんだ。」
「そ、蒼星石もちょっと怖いですにゃ…。」



490 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 22:24:24.41 ID:9XJB8tUO0
時の流れは遅いようで早く、ついに終盤だ
ここで一つ気になることがある
魅音のカードの出し方…序盤で躊躇なく8で切ってきやがった…
主導権を握るため…?いや、それにしたって大胆すぎる…
8切りは最後のコンボにつながる重要なカードだ
おそらく奴はまだ8を隠し持ってやがる…
となるとこっちはそいつを出されねぇように8以上のカードで攻めるしかねぇ…
魅音は俺の次だからな…


494 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 22:31:40.89 ID:9XJB8tUO0
そして俺は9のカードを出す
魅音は黙ってQを出した
そしてK、Aと出され、俺は2を出す
これで次は俺からだ
だが俺はすぐにはカードを出さなかった
「魅音…お前の考えは読めてるぜ…。」
魅音は急に話しかけられ面食らったようだったがすぐに切り返してきた
「…へぇ?何がどう読めてるって…?言ってごらんよ。」
「お前、8をまだ隠し持ってやがるな?それも一枚じゃねぇ。」
「…あちゃー…やっぱり気付いてたか…。さすがは圭ちゃ…」
「とでも言うと思ったか?」
「なっ…!?」


496 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 22:35:35.68 ID:9XJB8tUO0
魅音が明らかに驚きの表情を浮かべる
だから俺は確信した
「『魅音は8を持っている』そう思わせ、強いカードを出させることが
お前の目的だったんだろ?つまりお前は、強いカードをほとんど持っていない!」
「みぃ?どうしてそうなるのですか?」
「そうですよ圭ちゃん。強いカードをほとんど持っていないのなら
相手に強いカードを出されれば困るだけじゃないですか。」
「あぁ、普通に考えればそうだろうな。だが、魅音の場合は違う。」
「何がどう違うと言うんですの!」
「俺は今言ったよな?魅音は強いカードを『ほとんど』持っていない、と。」
「あぅ…?それがどうかしましたですか?」
「わからないか?つまり…魅音は2を持っているがそれ以外はかなり弱いカードなんだ!」
魅音がぴくりと肩を震わせた


497 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 22:35:49.84 ID:9XJB8tUO0
魅音が明らかに驚きの表情を浮かべる
だから俺は確信した
「『魅音は8を持っている』そう思わせ、強いカードを出させることが
お前の目的だったんだろ?つまりお前は、強いカードをほとんど持っていない!」
「みぃ?どうしてそうなるのですか?」
「そうですよ圭ちゃん。強いカードをほとんど持っていないのなら
相手に強いカードを出されれば困るだけじゃないですか。」
「あぁ、普通に考えればそうだろうな。だが、魅音の場合は違う。」
「何がどう違うと言うんですの!」
「俺は今言ったよな?魅音は強いカードを『ほとんど』持っていない、と。」
「あぅ…?それがどうかしましたですか?」
「わからないか?つまり…魅音は2を持っているがそれ以外はかなり弱いカードなんだ!」
魅音がぴくりと肩を震わせた


499 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 22:40:42.39 ID:9XJB8tUO0
「うゅ…それがどうして…?」
「ここで『相手に強いカードを使わせる』という行為が生きてくるんだ。」
そこまで言うと蒼星石がはっと目を見開いた
「そ、そうか…。もしかして…!」
「わかったですにゃ?蒼星石!早く教えるですにゃん!」
「うん、つまり…魅音さんの2以外のカードは、みんなが強いカードをもったままだと
役に立たないけど、弱いカードどうしなら絶対に勝てるんだ!
たとえば9くらいのレベルのカードとか、ダブルとかトリプルとか…。」
「そう、魅音は俺たちが『魅音は8切りを狙っている』と思い込み、
8以上のカードをほぼ出し尽くした頃に隠していた2を出し主導権を掴み、
他のカードで一気に型を付けちまおうって腹だったんだよ!」


501 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 22:46:39.91 ID:9XJB8tUO0
「……!」
魅音は驚きのあまり声も出ないようだ
「つまり…ここで俺が普通にカードを出せば魅音は絶対に勝てねぇ!」
そう言って俺が出したカードは…6だ!
「……パス。」
そして予想通り、魅音はパスだ
おそらく持っていることにはいるのだろうが、
ダブルで持っているがために出すに出せないのだろう
そうして俺たちは次々と弱いカードから順に消費させていく
もう弱いカードも使い切ったな…
そう思った時だった
魅音が2を出したのは


502 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 22:53:35.48 ID:9XJB8tUO0
「へっ…さすがにもう我慢の限界か。悪く思うなよ。
俺に考えを読まれた自分が悪いんだからな!」
「いやはや…まさか本当におじさんの考えを読んでくるとは…。」
俺が優越感に浸って口を開こうとしたときだった
魅音が…笑った…。この笑いは諦めの、自虐的な笑いじゃない…
罠にかかった獲物を今まさに掴もうとする狩人の笑みだ…!
「いや、まさか本当におじさんの考えを…『読んでくれる』とはね…!」
そう言って魅音が出したのは…革命…!
「う、嘘だろ…?」
「誰かが読んでくれるだろうと思ってたけど、さすがは圭ちゃん!
おじさんが見込んだ男なだけはあるね!」


505 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 22:58:03.96 ID:9XJB8tUO0
そうか…魅音は俺はまたもや魅音の裏をかいたつもりで
裏の裏をかかれていたのか…!
つまり魅音の本当の目的は俺たちに弱いカードを使わせ、革命後に自分が優位に立つこと…!
「あとはおじさんの独壇場だねー。もう圭ちゃんたちには弱いカード…
まぁ今は強いカードだけど…残されてないもんね。」
「あら、それはどうかしら。
圭一はそうでも、私までそうとは限らないわよ。」
「何言ってるのぉ真紅ぅ。あなたも私たちと同じように弱いカードばかり使ってたじゃなぁい。」
水銀燈の言うとおりだ
しっかり覚えている
真紅も俺や水銀燈と同じように弱いカードを惜しみなく使っていたはずだ


510 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 23:03:45.87 ID:9XJB8tUO0
だが…その数十秒後にそんな疑念はどこかへ吹き飛んだ
俺と水銀燈が無様にパスを繰り返すのに比べ、
真紅は魅音が繰り出す強カードに見事対抗している…!
これはどういうことだ…まさか…!
いや、間違いない
真紅は…最初から手札がかなり弱かったのだ…!
だからあれだけの弱いカードを使ってもまだ
魅音に対抗しうるだけのカードを持ち合わせていた…!
俺はさっきのゲームで敵の運を味方に付けたが…
こいつは自分の不運までも味方に付けやがった!
はは…今回は完敗だな…
そう思った時、隣から呟きが聞こえてきた
「…そろそろかしらぁ。」


512 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 23:12:13.30 ID:9XJB8tUO0
「え…?」
俺がそんな間抜けな声と共に横を見ると、ちょうど水銀燈の順番だった
「ほらほら、水銀燈。あんたの番だよ。まぁまたパスだろうけ…」
ど、という言葉は魅音の口から出ることはなかった
水銀燈がカードを出したからだ
しかもそのカードは…
「あんた…まだ3なんて隠し持ってたわけぇ?」
「これで次は私からねぇ。はい。」
そう言って水銀燈が出したのは…J
「あら、何か取って置きが…それこそ革命でもするのかと思ったけれど…ただのJバック?」
「ま、まぁとにかく、これで今だけは強さが逆、つまり元に戻ったわけだ!
これでようやく俺もパスしなくてすむぜ!」
俺が出したのはQ
「ふーん、まぁいいや。どうせすぐ元通りだし。おじさんはパスね。」
「パスなのだわ。」


516 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 23:16:38.76 ID:9XJB8tUO0
そしてK、A、2と順序良く水銀燈と二人で出して行き、当然次も水銀燈からだ
水銀燈が出したカードを見て、全員が驚く
「はい、これでまた元通りぃ。」
またJ…!
さすがに魅音と真紅の顔に焦りが浮かび始めた
だが焦ったところで二人には何もできない
また順序良く、順調に俺と水銀燈のカードは減っていく
再び水銀燈からだ
さすがに三回連続でJはないだろう…
水銀燈の手札は残り三枚
もしまた同じように順序良くカードを出されればあがってしまう
そんな不安に魅音と真紅が苛まれている中、水銀燈の手からカードが置かれた
そのカードは…やはりJではなかった


520 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 23:21:14.73 ID:9XJB8tUO0
だが二人の表情は依然固いまま…いや、むしろさらにこわばってしまったようにも見える
なぜなら…
「はい8切りぃ。」
そう、8だ
これで水銀燈の手札は残り二枚
そして順はこのまま水銀燈
まさか…
今この場で対峙している者だけではなく…全員がそう思った
そしてその疑念は次の瞬間、現実となる
「はい、9のダブルであぁがりぃ。あははははは!
貰っちゃったぁ貰っちゃったぁ♪優勝、貰っちゃったぁ♪」
「お…おおおおおおおおおおおお!!!!」


527 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 23:26:33.49 ID:9XJB8tUO0
少し遅れて歓声があがる!
「いやぁ〜!参った参ったぁ!まさかあんな隠し玉を持っていようとは…!
おじさんびっくりだよ!」
「負けたのだわ、水銀燈…。今回はあなたの勝ちね。おめでとう。」
「お前…やっぱすげぇよ!絶対優勝は魅音か真紅だと思ってたのに…!
まだ打つ手を残してたなんてな!感動したぜちくしょう!」
「よくもまぁこの猛者たちを相手に…!やりますね、水銀燈。」
「をーっほっほっほ!さすがは一番の年長さん、ということですわね!
恐れ入りましたわ!」
「あぅあぅあぅ…僕より年上なのでしょうか…。でも僕はこう見えても人妻なのです…!」
「何で張り合ってるのかも何が言いたいのかも分からないわ。とりあえず落ち着きなさい。」


534 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 23:30:57.75 ID:9XJB8tUO0
「ぅわぁ〜!すごいのすごいの〜!ほんとに優勝しちゃったのよ〜!」
「さ、さすがは翠星石の姉ですにゃあ!翠星石に似て賢いですにゃ!」
「水銀燈…もし彼女とアリスゲームで決着をつけていたらと思うとぞっとするよ…。
負けていたのは僕かも知れない…。
それにさっきの水銀燈のセリフ…なんだか怖いな…。ははは…。」
「さぁてさっそくだけどぉ。ビリのお二人さぁん?わかってるわよねぇ?」
「さて…ビリは確か…蒼星石と梨花ちゃんだったよねぇ?くっくっく!」
「罰ゲーーーム!!はははははははは!」
「圭一さん…何やらテンションが妙でございましてよ…。」
「でも気持ちはわかるんだよ!だよ!はぅ〜!」
蒼星石と梨花ちゃんが恐怖に怯えた目でこちらを見ていようが
そんなことは今の俺たちには関係なかった


540 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 23:35:37.58 ID:9XJB8tUO0
「えっと…『メイド口調で喋る』…?は、恥ずかしいな…。」
「みぃ…これでいいのですか?ご主人様…。」
「蒼星石のメイドさんか…これはたまらん!気分はどうだ?蒼星石!」
「恥ずかしいです…ご主人様…。」
「ほらほら圭ちゃん!やたらと話しかけて口調を堪能するのもいいけど、
今はまだすることがあるでしょ?」
「そうよぉ。さぁて…どんな命令をしてあげようかしら…
そうだわぁ。二人とも私の靴をお舐めなさ…」
「水銀燈!不潔なのだわ!二つの意味で不潔なのだわ!」
「二つの意味で…?どういうことですの?
確かに靴を舐めるのは汚らしいですけど…。」
「あぅあぅ…沙都子はまだ知らなくてもいい世界なのですよ。」
「冗談よぉ。もう…真紅ったら本気にしちゃってぇ…。」
そう言った水銀燈の顔がひどく残念そうだったのは気のせいだろうか
「ならそうねぇ…。あっ、いいこと思いついたわぁ。
ねぇ魅音、あなた今、ドール用の可愛らしい服持ってるぅ?
フリフリが付いてるような…。」
「へ、うん、持ってるけど…。」
「それを蒼星石に着せてあげてちょうだぁい。きっとすっごく似合うわよぉ?
ねぇ蒼星石ぃ?」


543 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 23:40:58.62 ID:9XJB8tUO0
それを聞いた魅音は、すべてを理解したようににやりと笑い、
ピンクの、可愛いフリルがたくさん付いた洋服を取り出した
「えっ?いやあの…!に、似合わないと思います…!ご主人様…!」
「いいえ、とっても似合うと思いますよ蒼星石!」
「詩音さんの言うとおりでございますわ!さぁ、早く着てみてくださいましな!」
「そうですにゃん!翠星石の双子なんですから何でも似合うはずですにゃん!」
「蒼星石のスカート、見てみたいのー!」
「で、でも…僕、こんな男の子みたいだし…」
「ばっきゃろおおおおお!それがいいんだろうがあああああああああ!!」
「!?」
突然の俺の叫びに全員が驚く
だが、こうなった俺はもう誰にも止められん!まさにヘヴン状態!
「いいかよく聞け蒼星石…世の中にはな…
『ギャップ萌え』という言葉が存在するということを知っているか…?」
こうして俺の固有結界が発動し、
ボーイッシュな子が急に女の子らしい服装をすることの素晴らしさを理解させるまで
そう長い時間はかからなかった。


545 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 23:44:34.85 ID:9XJB8tUO0
「…ということだ!わかったか!」
「は、はい、ご主人様…。僕、着てみます…!」
「よし、というわけだ魅音!さっそく着せてやってくれ!」
「ふぇ…?あ、うんわかった!ほら蒼星石。こっちきてこれに着替えて…。」
どうやら俺の固有結界を目の当たりにして意識が飛んでいたようだな…
ふっ…俺もまだまだ現役だぜ!
「圭ちゃん…相変わらずですね…。」
詩音が感心したような呆れたような声を出したが、俺は聞こえないふりをした
みんなの視線にも気付かないふりをした


548 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 23:49:27.89 ID:9XJB8tUO0
なんてやってるうちに、どうやら着替えが完了したようだ
「じゃじゃーん!どうよみんな!この麗しき姿を見るがいい!」
「ど…どうですか?ご主人様…。」
おおお…!これは…!
そこに現れたのは初対面で男かと間違えたとは思えないほどに可愛い少女だった
恥ずかしそうに軽くうつむいている顔!斜め下に泳いでいる視線!染めた頬!
普段はズボンのためスースーして気になるのか内股気味に閉じている足!
スカートの前を掴んでいる両手!どれを取ってもパーフェクトだ!
「わぁー!蒼星石、可愛いのー!」
雛苺にそう言われ、さらに顔を赤くする。最高だ!
「えぇ、とってもお似合いよ蒼星石。少しうらやましいわ。」
「さっすが自慢の妹ですにゃあ!」
「これではボクの立場がないのです…。」
「あぅあぅwwwwwテラ空気なのですwwwwwwwwあーぅあぅあぅwwwwwwww」
「黙れツインクロワッサン。」
「!?」


552 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/24(土) 23:55:45.92 ID:9XJB8tUO0
「さすが蒼星石!悟史くんに似ているだけのことはあります!女の子の格好もよく似合う!」
「!?詩音さん!?にーにーに何をしたんですの!わたくしの知らない間に
寝ているにーにーに何をしたんですの!?ちょっと、目を逸らさないでくださいまし!」
「やっぱりよく似合うじゃなぁい。それにそんなに恥ずかしがってくれれば
私も命令したかいがあるわぁ。くすくすくす。
ああそうそう、梨花ぁ、あなたはヤクルト買って来てちょうだぁい。」
「空気からパシリに進化したのです…みぃ。」
「やっぱりギャップ萌えは鉄板だぜ…。いいもん見させてもらったぜ。
というわけで蒼星石。非常に残念だが今すぐそいつを脱いで元の服に着替えろ。
返事はいらない、今すぐだ。そうじゃないとお前の貞操が危なくなる。」
俺は魅音に目で合図すると魅音はそれを受け取ってうなずき、
急いで蒼星石を隣の部屋に連れて行った
なぜこのような行動を取ったか?答えは簡単だ
「…いいかレナ、俺の目を見ろ。自分を保て。
お前はお前だ。竜宮レナだ。それ以外の何者でもない。わかるか?」
「お…おもおもおもおも…おもぢ…がえり…!」
「落ち着いて俺の目を見て、深呼吸だ。吸って…吐いて…吸って…」
レナは今にもお持ち帰りの我慢の限界を突破しそうになり
自我を保っているのがやっとの状態になってしまっていた


556 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 00:01:04.40 ID:IDEqofPF0
いつの間にか日が暮れ、もうすぐ夕飯時だ
俺がレナを落ち着かせている間に部活メンバーはみんな台所に夕飯の用意をしに行き
ドールたちはこの場に残って先ほどの蒼星石の話で盛り上がっている
なんとかレナを正気に戻し、俺は安堵のため息をついた
「ご、ごめんねごめんね圭一くん…!
翠星石ちゃんが律儀に猫さん口調を使い続けてただけでも
かなり限界が近かったのにそこに蒼星石ちゃんのあの格好が来るんだもん…。」
「ま、まぁ確かに翠星石の律儀さもかなり来るもんがあったが…
お持ち帰りを我慢するだけであそこまで危なくなるこたねぇだろ…。
いつもは普通に我慢出来てるじゃねぇか…。」


558 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 00:05:03.56 ID:IDEqofPF0
「だってだって〜。お人形さんなんだよ?動いてるんだよ?
これはいつも通りには我慢できないよ〜。」
「そりゃそうだが…。」
このとき、まだ俺たちは気付いてなかった…
「ふっふっふ〜!やっと見つけたかしらローゼンメイデン!
今回こそ、このローゼンメイデン一の頭脳派金糸雀がみんなのローザミスティカ、
楽してずるしていただきかしら!」
自分たちが外から監視されているということに…
「おい…、なんだあの黄色いのは。あいつもローゼンメイデンか?」
「あ、金糸雀なのー!」
でもすぐ気付いたのだった


563 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 00:08:19.15 ID:IDEqofPF0
「な、なんでばれたのかしらー!」
「いや…なんでって言われたって…なぁ?」
「あんな目立つところであんな大声で喋ってたら
気付かれない方がおかしいと思うよ…?
それにしても、あなたもかぁいいね〜…。はぅ〜…。」
「っ!?」
「レナ、落ち着け。また俺を苦労させる気か。」
「はっ!危ない危ない…。」
「わーい!金糸雀も遊びにきたのー?」
「まぁたうるさいのが増えやがったですぅ。」
「まったく…これでさらに賑やかになるわね…。」
「それで?今日はどうしたの金糸雀。残念だけど、部活はさっき終わっちゃったんだ。」
「部活…?はっ!違うかしら!今日はアリスゲームをやりに来たのよ!」
と、ちょうどその時、文字通りちょっと羽を伸ばしてくると言って
外に出ていた水銀燈が戻ってきた


564 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 00:13:11.00 ID:IDEqofPF0
「何よぉ騒がしいわねぇ…。あら、金糸雀じゃなぁい。久しぶりぃ。
相変わらずお馬鹿さんな顔してるわねぇ。」
「すっ、すすすす水銀燈!?どうしてあなたがここにいるのかしら!?」
「あらなぁにぃ?私がここにいちゃいけないわけぇ?
それで…さっき『アリスゲームをしに来た』…とか聞こえたけどぉ?」
「あ…あわわわわわ…まさか水銀燈まで手を組んでいたなんて…!
完全に想定の範囲外かしら…!このままじゃ殺られるかしら…!」
「そんなに怯えなくてもいいじゃなぁい。安心しなさぁい。
私たちもうアリスゲームなんてやる気ないわぁ。」
「ど、どうか命だけは…って、へ?今、なんて…」


567 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 00:18:30.39 ID:IDEqofPF0
金糸雀の表情が信じられない、というものになる
「水銀燈の言った通りなのだわ。私たちはもう二度と戦わない。」
「で…でもそれじゃあお父様に…」
「僕たちはアリスゲーム以外の方法でお父様に会う方法を考えることにしたんだよ。」
蒼星石がそう言うと、一瞬金糸雀の目に希望のようなものが浮かんだのは
気のせいではないだろう
「そんな方法が…あるのかしら…。」
「絶対あるの!だから金糸雀…。もう、戦わなくていいのよ?」
「本当に…?本当に本当に…?」
「くどいですぅ。私たちがあると言ったらあるのですぅ!」
「その通りだぜ翠星石!金糸雀…でいいんだよな。
なぁ金糸雀、お前も本当は戦いたくなんてなかったんだろ?
本当は、みんなと仲良く遊ぶ。そんな日常がいいんだろ?」
「そ、それはもちろんそうかしら…。でも…」


569 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 00:23:32.74 ID:IDEqofPF0
「ここにいる子たち、みんな同じ気持ちだよ。みんな、本当は誰も傷つけたくなんかない。
だから、アリスゲーム以外の方法でローゼンさんに会う道を選んだの。」
「だから…ほら、金糸雀。あなたも一緒に手伝ってちょうだい?」
そう言って真紅が手を差し伸べる
金糸雀はおずおずとその手に自分の手を伸ばし…触れた
そして目に涙を浮かべたかと思うとすぐに後ろを向いてしまった
泣き顔を見られたくなかったのだろう
そのまま外に出て、鼻をすする音の後に聞こえたのは元気な声だった
「こ、このローゼンメイデン一の頭脳派、金糸雀にかかれば
そんな方法あっという間に思いつくかしら!大船に乗った気でいるかしら!」
その言葉からは大きな喜びと強い意志がうかがえた
「き、今日はもう帰るかしら!早くしないとキョウちゃんが心配するかしら!」
そういって金糸雀は鞄に乗って飛んでいった


573 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 00:26:09.87 ID:IDEqofPF0
「まったく…素直じゃねぇ野郎ですぅ。
うれしいならうれしいとそう言えばいいですのに…。」
「ふふ…そうだね、翠星石。」
「うゅ…翠星石も人のこと言えな…むぐ…。」
「お馬鹿さぁん、またうるさくなるから黙ってなさぁい。」
「そうよ雛苺。あなた、また翠星石にいじめられたいの?」
そんなやり取りをしている人形たちを見ながら、俺は一つのことが気になっていた
「ねぇ圭一くん…。金糸雀ちゃんが最後に言った、『キョウちゃん』って誰かな?かな?」
「あぁ、俺も今同じ質問をレナにしようとしてたところだよ。
金糸雀のミーディアムってことは間違いないんだが…。」


575 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 00:28:33.24 ID:IDEqofPF0
「はぅ…気になるよぉ。」
「ま、そのうち分かるだろ。それよりレナ、夕飯組を手伝いに行こうぜ。」
「うん、そうだね。あ、でも圭一くんは見てくれてるだけの方が
一番お手伝いになるかな、かな!」
ぐっ…言い返せないのがつらい…
レナはくすくすとからかうように笑ったあと、ドールたちに行き先を告げ部屋から出て行った
ちぇー…ま、俺も皿を並べるくらいならできるだろ
今日は部活メンバーの料理に舌鼓だ!
そう考えるだけでお腹の虫が見事な演奏を奏でるのだった


659 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 12:34:58.25 ID:IDEqofPF0
「一応、下痢止めを出しておきますね。最近暑いですからね…
あまり冷たいものばかり口にしないよう、気をつけてくださいね。」
「はい、ありがとうございます…。よっこらしょっ…と。
それでは先生、ありがとうございました。」
「はい、お大事に。」
「ふぅ…。」
「お疲れ様、入江先生。今のが最後の患者様でしたね。」
「えぇ、お疲れ様でした。私はまだ少しすることがありますので…
もう帰ってもらっても結構ですよ。」
「はい、それでは…お先に失礼します。」
看護師に帰ってもらい、私はイスに腰掛けたまま天を仰いで少し目を閉じる
少し暑すぎるせいか、ここ最近患者の数が多い
おかげで今日一日はほとんど働き通しだ


664 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 12:46:38.62 ID:IDEqofPF0
目を閉じたまま眠りに落ちそうになったが…ふいに声をかけられ驚いて目を開ける
「入江所長?どうやらお疲れのようですわね…。」
「鷹野さん…!ダメじゃないですか、勝手に歩き回っては…!」
「大丈夫ですわ、今日もきちんとC120は投与してあります。
それにスタッフの許可も得ました。」
「当然です。また命を狙われてはかないませんからね。」
冗談めかしていうと、鷹野さんはくすくすと笑う
あの事件のあと、鷹野さんの処分が協議された
私と富竹さんの必死の訴えのかいあって、鷹野さんが起こした一連の行動は
雛見沢症候群の発症によるものと認められた
そして鷹野さんの行動を厳しく監視し、雛見沢症候群を完治させるという条件で
この入江診療所に残してもらえたのだ


666 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 12:55:28.70 ID:IDEqofPF0
鷹野さんの回復は奇跡的と言える程で、もう発症の恐れはないだろうと言えるまでになった
おそらく富竹さんの存在が大きいだろう
だがそれを言うと間違いなく否定するだろうから言わないでおく
「やっぱりこう患者さんが多いと休む暇なんてありませんからねぇ…。
もうヘトヘトですよ、ははは…。」
「本当にそれだけですか…?」
「…と言いますと?」
「疲れてる理由です。やっぱりあの子が原因なのでは?」
「あはははは、まさか。最初こそ驚きはしましたが、今ではもうぜんぜんへっちゃらです!
毎日仕事が終わって彼女に会うのが楽しみでたまりません!」
よほどうれしそうな顔をしていたのだろうか
鷹野さんはくすくす笑って安心したような表情を浮かべた


667 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 13:05:25.25 ID:IDEqofPF0
「それなら良かったです。でもくれぐれもお大事に。
医者の不養生、なんてことにならないようにしてくださいね。」
「えぇ、心配してくださってありがとうございます。
さぁ、もう部屋に戻ってください。もうすぐ私は帰りますから鍵を閉めますよ。
あと、いつも通りスタッフを何人か待機させておきますから
何かあったらナースコールしてください。すぐにスタッフが駆けつけますので。」
「待機?見張り、の間違いではありませんか?」
一瞬慌てて否定しようとしたが、すぐに冗談だと気付いてほっとした
鷹野さんが出て行き、診察室は私だけになる
さぁ、早く残りの仕事を済ませてしまおう
あの子が寂しがるかもしれない


668 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 13:19:33.35 ID:IDEqofPF0
「金糸雀ちゃ〜ん!ご主人様がただ今帰りましたよ〜!」
「あ〜〜〜!キョウちゃん!ほっぺが摩擦でマサチューセッチュかしら〜〜〜!!」
いつもの挨拶…と言っても彼女、金糸雀ちゃんが私の元へやってきてから
まだほんの一週間程度だ
この子は私が診療所でその日最後の患者さんを診終わって
さて帰宅しようという時に突然鞄と共に現れた
その時もたまたま一緒だった鷹野さんに促されるままねじを巻き、
私はこの子のマスター…いや、ご主人様となったのだ!
夢にまで見たリアルご主人様…
私はその時、メイド神様がメイドへの愛を忘れない私にお与えくださった
ご褒美なのではないか、と本気で思ったものだ
「さて金糸雀ちゃん、申し訳ないんですが今日はちょっと時間がないので…
夕食はあり合わせのものでいいでしょうか?」
「キョウちゃんの作る卵焼きがあればいいかしら!」
「ん〜…なんていい子なんでしょう…。
よーし、今日はいい子の金糸雀ちゃんにご褒美です!
いつもよりたくさん作っちゃいますよ!」
「わーい!キョウちゃん大好きかしらー!」


674 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 13:28:09.74 ID:IDEqofPF0
「ところで金糸雀ちゃん、今日何かいいことでもありましたか?」
夕食を食べながら私は少し気になっていたことを質問する
「なんだかとても幸せそうな顔をしているので…。」
「うん…実はあったかしら…。
カナ、もうアリスゲームをしなくてもよくなったの!」
「それは…本当ですか…!」
「うん!本当かしら!」
すでにアリスゲームについては出会った初日に聞かされている
聞いた時はなんて可哀想なんだと思ったものだが…
「本当に、おめでとうございます!
私も金糸雀ちゃんが姉妹の方々を傷つけずに済んでとてもうれしいです!
しかしどうしてまたそんな急に…?」


676 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 13:36:37.84 ID:IDEqofPF0
「実は今日、他のドールたちに会ってきたかしら。
そしたらみんなが、もうアリスゲームはしなくてもいいんだよって…
お父様に会う別の方法を考えましょうって…言ってくれて…。」
話すうちに感極まったのだろう、金糸雀ちゃんは嗚咽をもらしながら
うれしそうにそう言った
私は黙って立ち上がり、彼女の後ろに座って自分の膝の上に乗せる
彼女は振り向いて、私の胸に顔を押し付けて静かに、笑顔で泣いていた
私はそんな彼女の頭を黙ってなでるだけ
それで十分だった


679 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 13:50:18.73 ID:IDEqofPF0
「…ところで金糸雀ちゃん。」
彼女が泣き止んだところで私は口を開いた
「先ほど、『姉妹たちに会いに言った』と仰いました?」
「え?うん、言ったかしら。」
ずず…と鼻をすすりあげ、彼女は答える
「…会いに行きましょう。」
「へ…?」
「会いに行くのです!その麗しき天使たちに!
さぁ!いざ行かん桃源郷へ!メイド・イン・ヘヴン!!」
「あ、あの…キョウちゃん…?」


681 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 13:56:56.30 ID:IDEqofPF0
「あぁ…待っていてください…。私の愛しいメイドさんたち…!
ご主人様が今、あなたたちのつや肌を見に行きますよぉ〜〜!
すべすべ!すべすべぇ〜!」
「だめかしら…ヘヴン状態になったキョウちゃんはもう止められないかしら…。」
「さぁ!今日はもう遅いですよ金糸雀ちゃん!明日に備えて早く寝ましょう!」
「えぇ!?ま、まだ8時かしら!早すぎなのかしら〜!」
「ご主人様に逆らう気ですか!?お仕置きしちゃいますよぅ!ほらほら、早く寝なさい!」
「うぅぅ…わかったかしらぁ…。」
そう言って私は彼女を鞄へ半ば無理矢理押し込めた
まさかこんなにすぐにチャンスがやって来るとは…
これまではアリスゲームのこともありなかなか会いにくかったが
もう全員仲良しだという
これで心置きなく会って極楽を体験できますね…うふふふふふふ


682 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 14:06:54.35 ID:IDEqofPF0
「はっ!今のは…!?」
「あるぇ〜?どったの圭ちゃん?」
「何かおかしなものでも拾って食べたんじゃございませんの?」
「誰が食うか!」
頭を軽く小突く
「ふ…ふわぁぁぁん!圭一さんのイジワル〜!」
「はぅ〜!泣いてる沙都子ちゃん久しぶりだぁ!
かぁいいよ〜!おっもちかえりぃ〜!」
「みぃ…それで、どうかしましたですか?圭一。」
「あぁ、いや…今ソウルブラザーの気を感じたような気がしたんだが…。」
「そうるぶらざあ?なんですかそれ?変な名前ですぅ。」
「魂の兄弟…という意味ね。なんなの?圭一。」
「いや何でもない、気のせいだったみたいだ。忘れてくれ。」


685 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 14:16:09.84 ID:IDEqofPF0
つい先ほど夕飯も終わり、雑談に花を咲かせているところだ
まずはついさっきの金糸雀のことについて起きた出来事を俺とレナで話した
みんなが早く会いたそうにしているのを見て、少しだけ優越感に浸れた
そのあとは、俺たち人間がドールたちに昔の異国の話を聞かせてもらったり、
俺たちが雛見沢について語ったり、なかなか面白い
「それでね…言いつけを守らないと…オヤシロさまがどこまでもついてくるの…
ひたひた…ぺたぺた…それでね…」
今はレナがオヤシロさまについて語っているところだ
だがこれはあまりにも怖いですレナさん
見ろ、翠星石なんか雛苺と蒼星石の袖をしっかりつかんで離さないじゃないか
「翠星石…ちょっと苦しいんだけど…。」
「翠星石、暑いのぉ。くっつかないでなのぉ。」
「べっべべべ別にくっついてなんかないですぅ!
ちび苺が怖くないように、そ、傍にいてやってるだけですぅ!」
「雛別に怖くないのぉ。」
「あなたたち、静かにしなさい。レナが話せないでしょ。」
「そうよぉ、今いいとこなんだからぁ。」
以外にみんな興味深々だな…


686 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 14:23:53.97 ID:IDEqofPF0
「それでね…その足音は…とうとうお家の中にまで入ってきて…
枕元にまで立つようになるの…それでね…顔をじーっと覗き込んで…
ずっと…ずーっと謝ってるの…ごめんなさい…ごめんなさい…って。」
「あ…あわわわわわわわ…。」
「翠星石…ちょっと…。」
「痛いのぉ…強く握りすぎなのぉ…。」
「それでね…最後には自分の背中に…ぴったりとくっついて…
それこそ息遣いまで感じるくらいに近く…ぴったりとくっついて…
耳元でこう言われるの…!」
「たーたーりーじゃー!」
「きゃああああああああああああ!!!!」
ウッディ!!…ってびっくりしたぁ…梨花ちゃんかよ…
俺までびびったじゃねぇか…


689 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 14:32:02.32 ID:IDEqofPF0
「あっはははははは!やったぁ!大成功なんだよ!大成功なんだよ!」
「怖がりの翠星石はまんまと引っかかってかわいそかわいそなのです。にぱー☆」
その笑い声に、雛苺に抱きついて震えていた翠星石はばっと振り向く
「お、お前たち!こんないたいけな少女を怖がらせて喜ぶなんて…!
人の皮をかぶった悪魔ですぅ!鬼畜生ですぅ!」
「やっぱり翠星石怖がってたのー。」
「へっ?い、いや…怖がってはないですけど…。」
そんな翠星石の様子を見て、再び笑い声が上がる
「それにしても…羽入あんた、ほんとにそんなことやってたの…?」
「あぅ…まぁだいたい似たようなことは…。」
「あんたねぇ…そんなんされたら誰でも怖がるわ!」
「ま、まあまあ…済んだことは水に流すのですよ!」
梨花ちゃんと羽入が何か言っているようだったが、よく聞こえなかった
と、いつの間にかいなくなっていた魅音が部屋へ戻ってきた


691 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 14:41:25.03 ID:IDEqofPF0
その両手で抱え込むように持っているのは…缶ジュース…いや、酒!?
「さっすがお姉!わかってるぅ!」
「あぁ〜!魅ぃちゃんいけないんだいけないんだぁ!
お酒は二十歳になってからなんだよぉ!」
「まぁまぁ、そんな固いこと言わずに。気にしない気にしない!
チューハイなんてほとんどジュースみたいなもんだって!
あ、ただし梨花ちゃん、沙都子、羽入はさすがにちょっとやばいから
あんたたちはジュースね、はい。」
そう言ってジュースを渡され、羽入がほっと安心したように見えたのと、
梨花ちゃんがちっと舌打ちしたように見えたのはほぼ同時だった
気のせいだろうか…気のせいだと思いたい。特に後者


695 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 14:54:07.54 ID:IDEqofPF0
「あんたたちお酒は飲めるの?」
「飲んだことないわぁ。」
「私もなのだわ。」
「雛もなのー。」
「あ、僕たちはあるよ。一回だけ。」
「黄色い色をした泡だらけの奴ですぅ。
苦くてすぐに吐き出しちゃいましたけど。」
「あぁ、そいつはビールだね。安心しな、今から飲むのはジュースと変わりゃしないよ。」
「ジュース!?雛、ジュースだーいすき!」
「雛苺は…酒は大丈夫なのか?見た目的には一番アウトっぽいんだが…。」
「んー…まぁちょっとだけなら大丈夫でしょ。
さ、そうと決まればさっさと飲もう!」
そう言って魅音は缶を配っていく
全員に行き渡ったがまだまだ量はありそうだ
「もう…ほんとにちょっとだけなんだよ、だよ!」
レナもしぶしぶながら了承してくれた
それを見た魅音が嬉しそうに音頭をとった
「よし!じゃあこの出会いを祝って!かんぱーい!」


699 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 15:10:42.69 ID:IDEqofPF0
「だっひゃっひゃっひゃっひゃ!いぇーい!みんな飲んでるぅ〜?」
「悟史きゅ〜ん♪だーいすきですー!きゅんきゅん☆」
「にーにー♪にーにー♪」
「くお〜らぁ〜蒼星石〜!もっともっと飲みやがるぇれす〜!」
「す、翠星石…もうらめ…飲めらいよ…うっぷ…!
詩音さん…沙都子さん…離して…苦しい…」
「真紅ぅ…真紅ぅ…水銀燈のこと好きぃ…?
ずっと一緒よぉ?約束よぉ?真紅ぅ…。」
「えぇえぇ、わかってるのだわ水銀燈…。」
「ひゅーひゅー!熱いねお二人さーん!おじさん妬いちゃうよー!
だっひゃっひゃっひゃっひゃ!」
「はぅ…みんな酔っ払っちゃってるね…沙都子ちゃんまで…。」
「沙都子はどうせ酔っ払った詩音のやつに無理矢理飲まされたんだろうよ…
普段はあれだけ沙都子の健康管理には厳しいってのに…酒ってやつは恐ろしいぜ…。」
それにしてもみんな酔い方が半端じゃない
まともなのは俺とレナ、真紅に梨花ちゃんくらいなもんだ
また、雛苺にはやはり酒は早かったらしくほんの数口飲んだ後、
こってりと倒れてしまってもうぐっすりだ


704 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 15:21:03.27 ID:IDEqofPF0
意外なのは、酒を飲むなと言われてほっとしていた様子だったはずの
羽入がべろんべろんに酔い潰れていることだ
あの様子だと酒は嫌いで絶対に飲みそうにないんだが…
「あぅあぅあぅあぅ…!回るのれひゅ…世界が回ってるのれひゅ…!」
「ったく情けないわね…。ちょっとしか飲んでないじゃない。」
「おい羽入…お前だいじょうぶかよ?飲むのもいいけどほどほどにしとけよ?」
「違うのれひゅ…梨花を…梨花をとめてくら…ぐぴゃあ!」
羽入が言い切る前に梨花ちゃんが手元の紙カップに残っていた液体を飲み干した
「みぃ?羽入は何を言っているのですか?ボクはただジュースを飲んでいるだけなのです。
酔っ払って頭がかわいそかわいそになってるのではないですか?にぱー☆」
「はは…じゃあ梨花ちゃん、羽入の面倒は任せたぜ。」
「あいあいさーですよー。」
「あぅ…あぅあぅあぅあぅ!」
羽入が何か助けを求めるような視線を向けたきたような気がしたが
まともとは言ってもすでにホロ酔い状態の俺はあまり気にかけなかった


708 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 15:32:13.60 ID:IDEqofPF0
レナの元に戻ると、酔いが回ってきたのか少し眠そうな顔をしていた
気付くといつの間にか大半が眠りに落ちてしまっている
「レナ、眠かったら寝てもいいんだぜ?」
「ふぁ…けぇいちくん…。うん、じゃあ梨花ちゃんを寝かし付けてから寝るよ…。」
レナはそう言って立ち上がり、梨花ちゃんのもとへ歩いていった
梨花ちゃんはレナに何か言われ、少し飲み足りないという様な表情を浮かべたが
素直に布団へ入って眠ってくれた
レナは他の眠りこけているメンバーにも布団を掛けて回る
「はは、全員が寝てからじゃないと寝ないってか?いよいよクラスのお母さんって感じだな。」
戻ってきたレナにそう言うと、レナは少し気恥ずかしそうに笑う
「えへへへ。でも、圭一くんは寝るのを待たなくても大丈夫かな?かな?」
「あぁ、前にも言った通りレナがお母さんなら俺はお父さんだからな。寝るときゃ一緒だぜ!」


713 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 15:43:05.94 ID:IDEqofPF0
何の気なしにそう言ったんだが、レナはどんな風に受け取ったのか顔を真っ赤にする
「おおおお父さんとお母さんが…い、一緒に寝るってどういう意味だろ!だろ!」
「へ?いや別にどういう意味も何も…深い意味は特に…」
「いいい一緒に寝る…レナと圭一くんが一緒に…!はぅ〜!」
そのままレナはばったりと倒れてしまった
俺は心配して駆け寄ったがどうやら寝てしまったらしい
ったく…マイペースな奴だぜ…
俺はすやすやと気持ちよさそうな寝息を立てるレナの顔に
苦笑いを向けながら布団をかけてやる
しかしみんながこうも気持ちよさそうに寝息を立てていると
俺までつられて眠くなってきた
俺はあまった布団にもそもそと入り込み目をつぶり、
そのまま酔いも手伝って、あっという間に眠りへと落ちていった


718 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 15:52:33.35 ID:IDEqofPF0
ここで皆さんに大変なお知らせがあります

727 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 15:57:10.91 ID:IDEqofPF0
圭一たちだけでなく、俺も飲み会に出ることになった

741 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 16:00:35.72 ID:IDEqofPF0
おおっと見送るにはまだ早いぜ
まだまだ時間はあるからそれまで投下させてもらおうじゃないか

745 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 16:02:40.40 ID:IDEqofPF0
深夜、私はふと目が覚めた
そのまましばらく目を瞑っていたがどうやら眠りそうにない
のそりと鞄から這い出し、ぐっすりと眠っているみんなの体を踏まないように
注意を払いながら部屋を横切る
月明かりの漏れるふすまを開けると、そこにはきれいな丸い月があった
今日は満月だったのだろうか?
ふすまを閉め、縁側に腰掛けしばらく月明かりを浴びる
夜風と静かな虫の音が心地いい
と、突然背後のふすまが開けられる
「こんな夜中に誰かと思えば…どうしたの水銀燈。」
「それはあなたも向けられるべき質問じゃない?真紅ぅ。」


749 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 16:11:21.62 ID:IDEqofPF0
真紅はくすりと笑い、それもそうね、と呟く
「ちょっと目が覚めたから夜風に当たろうと思ったのだわ。」
「私も同じよぉ。」
「あら、そうだったの?てっきり寂しくて眠れないものとばかり。」
「どうしてわたしが寂しがらなくちゃいけないのぉ?失礼しちゃあう。」
「だってさっきまで私に抱きついて泣いてたじゃない。」
顔がカッと熱くなるのがわかる
酔っていたとは言え記憶ははっきりとしている
冷たい夜風もここまで急に熱くなった顔は冷ませないようだった
今だけはこんなにも周りをはっきりと照らす明るい満月が恨めしい
「よ、酔ってただけよぉ、お馬鹿さぁん。寂しくなんかないわぁ。」
真紅はくすくすと笑い続けている
言い返したが、やはり赤くなった顔を見られたようだ

752 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 16:20:55.11 ID:IDEqofPF0
「でも、寂しくないのは本当よぉ。」
真紅は笑うのをやめ、しかし笑顔は崩さずこちらに目を向けた
私はそのまま言葉を重ねる
「私は今、とっても幸せ。数日前までのことが嘘みたいに幸せ。」
真紅は黙って聞いてくれている
「私は数日前までお父様に会うことだけを生きがいにしてきていた。
あなたへの憎しみを力に変えて戦ってきた。
でも…たとえあなたを壊してアリスになれたとして…
お父様に会えたとして…ここまで幸せになれたかどうかわからない。
そのときの私の傷は、あなたには二度と治してもらえないから…。
仮にお父様と暮らせて傷の痛みを忘れかけることができても
それはかさぶたができただけ。もどかしい痒み、痛みは残る。
そしてそのかさぶたは決して剥がれることはなくいつまでも残り続ける…。
でも、今は違う。もう傷は完治した。真紅…あなたの手によって。」


754 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 16:28:47.26 ID:IDEqofPF0
そこまで言い切ると、今まで黙っていた真紅が口を開いた
「えぇ…そうね、水銀燈。あなたは今とても幸せそうな顔をしている。
それだけじゃなく、希望に満ちている。
それはあなただけじゃない。私も、他のドールたちも。
アリスゲームに心をすり減らしていたあの時よりもとても満ち足りた顔をしているわ。
あの時の私たちには、アリスゲームに勝つという目標があったように見えるけれど、
それは本当は、お父様に会うために仕方なくアリスゲームをやらなければいけない
という、諦めのようなもの。
でも今は違う。みんなでお父様に会う方法を考える。
そんな目標、希望に満ち溢れている。それが今の私たちなのだわ。」
そう言って、真紅はにっこりと笑った
それだけで私は幸せになれる
そんな気がした
それからしばらく二人で夜風に当たり、
どちらともなくあくびをした所で寝なおすことにした
鞄に入りながら私はもう一度思う
自分は今、これまでにないくらい幸せなのだと


757 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 16:36:34.38 ID:IDEqofPF0
「ん…朝か…。」
「あ、圭一くん起きた。おはよう、圭一くん。」
「あぁ、おはよ…ふわぁ〜…。」
「ったく〜、ほらほら圭ちゃんいつまでぼけっとしてんの。
とっとと顔洗ってきな!」
「へいへい…まったく、これじゃ家でお袋に起こされるのと変わらねぇぜ…。」
まだ覚めきってない目をこすりながら洗面所へ向かう
「まったく…何回しつけても圭一の寝坊癖は治らないわね…。
この私のミーディアムだというのに…。」
「仕方ないですぅ。こーんな美少女たちに囲まれて熟睡できるわけないですぅ。」
「それが人間の雄よぉ。雛苺、覚えときなさぁい。」
「わ、わかったのー。」
「ちょ、ちょっとみんな…!圭一くんに聞こえたら悪いよ…!」


758 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 16:43:26.08 ID:IDEqofPF0
もう聞こえてる、というツッコミは後回しだ
ていうか蒼星石も否定しないのな…
とにかく今は顔を洗って頭をすっきりさせよう
「ふう〜、目が覚めるぜ〜!」
冷たい水でしっかり目を覚ました俺はみんなの部屋に戻る
もうみんなとくに起きていたようだった
「ん…?魅音、詩音、二人ともなんだか少し顔色が…。」
「あり?わかっちゃった?だっはっはっは…。」
「うーん、やっぱり昨日は少し飲みすぎちゃったみたいです…。」
「お前らなぁ…姉妹そろって二日酔いかよ…。」
「もう、だから言ったんだよ!だよ!飲みすぎちゃだめだって!」
俺は半ば呆れるように、レナは説教するように言う
「わ、悪かったよ。反省してるって…。」
「今度からは気をつけます…。」


759 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 16:52:13.91 ID:IDEqofPF0
見たところ沙都子、梨花ちゃん、羽入の幼女ズは平気なようだ
沙都子、羽入なんかはかなり酔ってたはずだが…若いから代謝がいいのか?
「あ、でもでも!部活で大騒ぎするほどの体力はなくても
楽しく遊んだりおしゃべりしたりするくらいなら平気だよ!」
魅音が突然口を開く
俺はやれやれと言う風に首をすくめる
「しょうがねぇなぁ…んじゃ、今日は普通に遊ぶとするか。
な、もういいだろレナ。そこら辺で許してやれ。」
「はぅ…もう、次は本当に気をつけるんだよ、だよ!」
レナの説教から解放され、二人はほっと息をつく
今日は部活じゃない普通に遊びやおしゃべりか…もしかしてこんなの初めてじゃないか?
そう思うくらい珍しいことだったが、たまにはこういうのもいいだろう
と、そんなことを思っていたとき…

ぴんぽーん


763 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 17:04:14.70 ID:IDEqofPF0
呼び鈴?お客さんか
「あるぇ、誰だろ?ちょっと行ってくるね。みんなは待ってて。」
そう言って魅音は駆け足で玄関へ向かう
見る限りでは足取りは軽い
本当に大したことはない程度の二日酔いなのだろう
そう安心しかけたその時
「ええええええええええ!!!」
魅音の屋敷中に響き渡る大声
「な、なんだなんだ!?」
「お姉に何か…!」
「とにかく言ってみよう!」
俺たちは慌てて玄関へと向かう
そしてそこに居たのは…
「おや?これはこれはみなさん…本当にお揃いだとは…。」


768 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 17:14:08.97 ID:IDEqofPF0
「か、監督ぅ!?な、なんでここに…!」
しまった…!ついその場の勢いでみんなで駆けつけちまったが
ローゼンメイデンを人に見られると少し面倒だ…!
そう思ったのと同時だった
見覚えのある姿が監督の後ろからぴょこんと飛び出してきたのは
「じゃじゃーん!さっそく来たのかしらー!」
「か、金糸雀ちゃん!?じゃあ昨日の『キョウちゃん』ってもしかして…」
「監督のことだったのかよ!?」
「そう言えば入江の下の名前は京介だったのです…。」
「監督の本名なんてもう覚えてませんよ。」
「覚えていたとしても、まさか監督だなんて思いませんわ!」
「あぅ…ここまで知り合いに集中するとは神でさえ予測不可能なのです…。」
「いやー、おじさんはてっきり金糸雀のマスターはスナイパー大介かと…
こりゃ一本取られたわ…。」
「みなさん…私の名前くらい覚えててくださいよ…。
それに誰ですかスナイパー大介って…。」
監督はそう言ってあからさまにがっくりと肩を落とした


769 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 17:21:09.68 ID:IDEqofPF0
そしてその目線は俺へと向けられ、その眼光の鋭さに思わずたじろぐ
「ひどいじゃないですか…!」
「へっ?い、いや…なにが…」
「どうして黙ってたんですか!こんな!可愛い!
それもゴスロリの少女たちに囲まれて!ずるいですよ!羨ましいですよ!
どうして教えてくれなかったんですか!
どうして私もこの桃源郷に連れてきてくれなかったんですか!Kぇええええい!」


775 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 17:29:08.32 ID:IDEqofPF0
「監督…いや、イリー…!すまなかった…!俺は…俺は…!
いつか言おうと思ってたんだ…!でも、なかなか言い出せなくて…!
俺だけで桃源郷を楽しんじまって…本当にすまなかった…!
イリー…俺を殴れ。力いっぱいに頬を殴れ。
お前がもし俺を殴ってくれなかったら、
俺はソウルブラザーを名乗る資格さえないんだ。殴れ。」
イリーは、すべてを察した様子でうなずき、
園崎家いっぱいに鳴り響くほど音高く俺の右頬を殴った
殴ってから優しく微笑み、
「K、私を殴ってください。同じくらい音高く私の頬を殴ってください。
私はこの一週間、たった一度だけあなたを憎みました。
生れて、はじめてあなたをを憎みました。
あなたが私を殴ってくれなければ、私はあなたとブラザーになれない。」
俺は腕に唸りをつけて、イリーの頬を殴った
「ありがとう、兄弟。」
俺とイリーはひしと抱き合い、
それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた


783 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 17:37:22.25 ID:IDEqofPF0
「蒼星石ぃ…気持ち悪いですぅ…。」
「う、うん…そうだね翠星石…。」
「真紅ぅ…あなたは大変なものに巻かれてしまったわぁ…。」
「言わないで…わかってる、わかってるから…!」
「真紅…かわいそかわいそなのー…。」
「あれが真紅のマスター…。キョウちゃんといい勝負かしら…。」
俺とイリーは互いを許しあい、今は二人で固有結界を発動中だ
「おぉ…見える…私には見えますよK…!
水銀燈ちゃんが、真紅ちゃんが、雛苺ちゃんが
翠星石ちゃんが蒼星石ちゃんが金糸雀ちゃんが…
メイドさんになっているところが!
見えていますか!?K!」
「あぁ、もちろんだともイリー…。それだけじゃない…
ナースの水銀燈…女教師の真紅…園児スモックの雛苺…!
見える、見えるぞおおおおお!」


787 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 17:46:14.39 ID:IDEqofPF0
「あるぇー?おじさんたち忘れられてない?」
「あの二人はまったく…手に負えませんね。」
「男の人は変ですわー!」
「あぅあぅ…あれは特殊な例なのですよ…たぶん…。」
「このロリコンどもめなのです。」
「はぅ〜、でも見てみたいな、見てみたいな!みんなのかぁいい格好!
ね、いいでしょ魅ぃちゃん!それでレナがみんなお持ち帰り〜!」
「ふぇ?ま、まぁナース服なんかもあるっちゃあるんだけど…」
それを聞きつけたイリーが魅音に迫る
「今あるとおっしゃいましたか?おっしゃいましたね?
ならば着せてあげようではありませんか…天使の羽衣を!
さぁ、手伝ってください!レナさん!」
「はぅ〜!了解なんだよ!だよ!」
なんだかすごくいい展開になってきたじゃねぇか!
こいつぁ嬉しい誤算だぜ!


793 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 17:58:26.31 ID:IDEqofPF0
「いやよ、そんな服。」
「あらぁいいじゃない真紅ぅ。
着せ替えられるのも立派なドールとしての役目よぉ?」
「それはそうだけど…」
「こんな気持ち悪い人間の慰みものになるなんてお断りですぅ!」
「言葉を慎みたまえ。君はメイド王の前にいるのだよ。」
「ひぃ!?近寄るなですぅメガネ!蒼星石ぃ〜!」
「翠星石…ごめん…僕には助けられない…。」
蒼星石はすでにレナのマッハの手によってセーラー服に着せ替えられ、
その鉄壁の腕にがっしりと捕縛されていた
雛苺は園児スモック、金糸雀はチャイナ服にすでに着せ替えられている
「わぁ〜金糸雀かわいいの〜。」
「えへへへ、そうかしら…。雛苺も似合ってるかしら!」


797 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 18:08:53.37 ID:IDEqofPF0
実に微笑ましい光景だ
見ているだけで和んでしまう
それに真紅もしょうがないと覚悟を決めたらしく、
水銀燈に手渡された女教師のスーツ片手に
隣の部屋へと歩いていった
その隣で水銀燈もナース服に着替えているみたいだ
そんな真紅たちの様子を見て翠星石もようやく諦めたらしい
素直に魅音に別室へ連行されていった
そして全員が着替え終わり、部屋から出たその時
「富竹フラッシュ!!」


891 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 22:29:35.49 ID:IDEqofPF0
「あぁ〜、目がぁ〜目がぁ〜!」
「か、監督!大丈夫ですの!?」
「今の光…富竹さん…いや、トミー!」
「Yes, I am !我が名はトミー!
K、心配しなくても大丈夫、鷹野さんから話は聞いてるよ。」
「トミー、いったい今日はどうして…。」
「何を言うんだK!ソウルブラザーとして君たちを手伝いに来たんじゃないか!」
「手伝いに来た…?まさか!」
「そう、そのまさかさ!この麗しい天使たちを撮影しに来たんだよ!」
「トミー…お前ってやつは…。」
「はっはっはっは、お礼なんかはいらない!お安いご用さ!
じゃあ行くよ!富竹フラッシュ!富竹フラッシュ!」


896 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 22:35:28.09 ID:IDEqofPF0
「ちょっとぉ…被写体には断ってから撮るのが礼儀じゃないのぉ?」
「ごめんごめん、フラッシュ!メインは野鳥の撮影でね、フラッシュ!
断ったためしが、フラッシュ!ないんだよフラッシュ!」
「と、撮るのをやめるですぅ!」
「まだまだぁ!フラッシュ!フラッシュ!」
「トミー…。」
「あっはっは!なんだいK?フラッシュ!」
「無茶しやがって…。」
「え?」
「ジロウさん?約束の時間になっても来てくれないと思ったら…くすくす…
私との約束を破っての女の子の撮影はそんなに楽しいかしら…?」


905 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 22:42:40.45 ID:IDEqofPF0
「え…?た、鷹野…さん…?」
「あら、今は入江診療所で療養中じゃなかったんですか?ねぇ梨花ちゃま。
まさか抜け出してきたわけじゃあないですよね?」
「みぃ…またボクを綿流ししに来たのですか?悪い猫さんなのです。」
「くすくす…そんなことしないから大丈夫よぉ。ちゃーんと許可は取ってあるし、
付き添いのスタッフも外で待ってるわ。」
「ご、誤解だよ!鷹野さんとの約束を破るつもりなんてなかったんだ!
K!君からも何か言って…」
「精神的に向上心のない者は馬鹿だ。」
「へぇあ」
「さ、行くわよジロウさん?くすくすくす…。」
「じ…時報はもういやだああああああ!!!!!」
チーン


916 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 23:02:47.89 ID:IDEqofPF0
「な…なんだったですか今のは…」
「うゅ…怖かったのー…。」
「はぅ…富竹さんすごかったね…。」
「ありゃあ鷹野さんにみっちり調教されちゃうだろうね。」
「今頃叩かれたり踏まれたりで大変大変なのです。にぱー☆」
「ま、自業自得ですね。」
「あぅ…女の恨みは恐ろしいのですよ…!」
「鷹野さんという方がありながら他の女性に目移りした罰ですわ!」
「ははは…女性って怖いんだね…。」
「あの鷹野って女の私への視線…
初対面の人に向けるものじゃなかった気がするわぁ…。」
「きっと彼女の知り合いに水銀燈に似た人がいるのだわ。」
「き、キョウちゃん大丈夫かしらー?」
「えぇなんとか…。もう大丈夫です。
天女たちのつや肌を拝むため、こんなことでへこたれる入江京介ではありません!」
「トミー…その地獄の先にはきっと新たな目覚めが待っている…。がんばれよ…!」


919 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 23:10:45.42 ID:IDEqofPF0
その後、みんなで一緒に魅音のカメラで記念撮影をしたり、
さまざまな衣装に着替えさせたりして楽しんだが
やはり楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、
気付けばとっぷりと日が落ちていた
もう道は真っ暗で危ないので、みんな鏡を通って帰ることになった
鏡の中を通りながら、俺は考える
鷹野さん、幸せそうだったなぁ…
それにみんなも、もう完全に鷹野さんを許せていたようだ
あの事件からしばらくして、鷹野さんは梨花ちゃんと俺たちに
涙を流しながら謝ってくれた
当然俺たちはすぐに許し、鷹野さんの回復を祈ったのだった


925 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/25(日) 23:18:38.48 ID:IDEqofPF0
もう、この雛見沢に敵はいない
いや…一つだけあったか
「圭一?どうしたの、ぼーっとして。」
「いや、なんでもない。」
真紅は「変な子ね…」と言ったがそれ以上言及しようとはしなかった
俺たちの敵、それは…
「真紅…。」
真紅は黙って俺の顔を見る
そのまま俺は言葉を続けた
「アリスゲーム以外の方法はない、なんて運命、絶対にぶち壊してやろうな!」
「えぇ、もちろんなのだわ。」
真紅も力強く微笑んでくれた


1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 19:09:39.94 ID:536WUvtw0
その翌日から、俺たちは毎日魅音の家で部活をし
部活を早めに終えてからローゼンに会う方法をみんなで考える
というような毎日を送っていた
最初は試行錯誤していたが徐々にその方法が固まり出してきた
「つまりさ、ローゼンに会うにはアリスってのにならないといけないんだよね?
ってことは…」
「うん、みんながそれぞれ究極の少女になればいいってことだよね、よね。」
「そのためには…みんながそれぞれの欠点をなくしていけばいいってことですか?」
「それはなかなかに難儀でございますわね…。
自分の欠点ほど分かりにくいものはありませんでしてよ。」
「あぅ、それなら他人に欠点を指摘してもらえばよいのです。」
「ではこれから全員でみんなの欠点をあげつらうのです。
ハイパー悪口タイムなのですよ。にぱー☆」


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 19:17:19.12 ID:536WUvtw0
「言い方は悪いが…確かにそれなら効率がいいな。」
「おーっほっほっほ!悪口なら翠星石の十八番ですぅ!」
「翠星石…そんなところが君の欠点なんじゃ…。」
「口が悪いと言えばあなたも少し見直した方がいいんじゃない?水銀燈。」
「そういうあなたもわがままな性格を直した方がいいわぁ。」
「わ、わるくち…わるくち…えっと…金糸雀のいらない子!」
「がーん!ひどいのかしらー!」
みんな好き勝手言ってるな…


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 19:26:22.32 ID:536WUvtw0
けどこれなら確かに欠点はすぐ全部あがるだろう
あとはそれを直せばいいだけだ
だが…少し気にかかることがある
こうやってローゼンに会うのが現実味を帯びるにつれて
胸に引っかかるものが大きくなる
「なぁ、みんな…。」
その引っかかりに俺は我慢できず口を開いた
みんなの視線が俺に集まる
そのまま俺は続ける
「みんながそのアリスになって、ローゼンに会えたらさ、
そのあとは…どうするんだ…?」


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 19:37:37.88 ID:536WUvtw0
一瞬、空気がとても重たくなるのを感じた
「圭ちゃん…」
「圭一くん…」
「そのあとは…そのままローゼンと暮らすのか?
それとも、俺たちと一緒に…。」
「圭一さん、それは…」
「みぃ…」
「あぁ、わかってる。これは俺たちが決めることじゃない。
みんなが決めることだ。俺たちに引き止める権利なんかない。
ただ、ここではっきりさせておきたいんだ。選んで欲しいんだ。
その先の未来を。」
みんなが下を向いてしまった
だがこれはいつかははっきりさせないといけないこと
みんなも薄々はわかっていたはずだ
気まずい沈黙の中、羽入がぽつりと呟く
「選択することは…戦うこと…。」


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 19:49:08.66 ID:536WUvtw0
その一言を聞き、俺の頭の中で一つの仮説が浮かび上がる
彼女たちの父、ローゼンは彼女たちにアリスゲームという戦いを用意した
だが、ローゼンが用意した戦いは一つではなかったんだ
もう一つ…選択という戦いを用意していたのではないだろうか
が、もし俺の仮説が正しいとして、この戦いも楽ではない
選択は今ドールズが直面しているものだけでなく何度も訪れる
しかもいつ訪れるかも、どれが正しいのかも、
そもそも正しい選択肢が思い浮かぶかどうかもわからない
ある意味アリスゲームよりも残酷で、難しい戦い
だがその先にあるのはみんなが笑っていられる最高の未来
そのために…真紅たちは勝たなくてはならない
再び訪れた長い長い沈黙のあと、最初に口を開いたのは雛苺だった
「雛…ずっとみんなと一緒にいたいの…。」


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 20:00:39.76 ID:536WUvtw0
「雛、お父様と暮らすより…みんなと遊ぶ方がいいのよ…。」
それにつられるように金糸雀も口を開いた
「カナもかしら…」
「雛苺…金糸雀…!あなたたちなんてことを…!」
真紅が二人に食って掛かろうとしたが、少し大きめの影がかばう
「待つですぅ真紅!」
翠星石が両手を広げて雛苺と金糸雀をかばっていた
「翠星石…あなたまで…!」
「真紅だって本当は同じ気持ちのはずですぅ…。」


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 20:16:08.02 ID:536WUvtw0
「っ…!あなたたちは、お父様に会いたくないの!?」
今度は蒼星石が前に出る
「もちろん会いたいよ。でも、お父様に会って
そのまま詩音さんたちとお別れなんて…僕には…。」
「蒼星石…。」
詩音がそう呟いたのが聞こえた
真紅はさらにうろたえ言葉を返す
「それは私ももちろんそうだけれど…でも…!」
「真紅、落ち着きなさい。」
そう割って入ったのは水銀燈
その口調はいつもの小馬鹿にしたようなものでなく、
はっきりとした、諭すようなものだった


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 20:28:21.27 ID:536WUvtw0
初めて聞く水銀燈のそんな声に、一瞬俺まで身を引き締めてしまう
「誰もお父様に会いたくないなんて言ってないわ。
お父様に会ってからでも、お父様にお願いすれば
ここに残してもらえるかもしれない。」
「…!そんなこと…できるのかしら…。」
「さぁねぇ。それはわからないわぁ。でも…」
真紅が口を開こうとしたが、その前に水銀燈が言葉を重ねる
「でも、もしそれが無理だとしても、私はここに残るわ。
お父様に会うことより、ここでレナたちと…
みんなと過ごすことを選ぶ。」
「銀…ちゃん…。」
水銀燈がレナの方に優しい笑顔を向け、レナはそれを受け取る
そして水銀燈は真紅の方に向き直りさらに言葉を続ける
「真紅、あなたはどうなの?
あなたは、もしお父様とみんなを選ぶなら、どっちを選ぶの?」


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 20:36:57.08 ID:536WUvtw0
沈黙
それは何分間か、それとも数秒だったのか分からない
そしてその沈黙は、零れ落ちる雫の音、嗚咽によって破られた
「私は…私は…みんなと一緒に居たい!
お父様よりも大好きな人たちを見つけてしまった…!
お父様よりも一緒に居たいと思える人たちに出会ってしまった…!」
真紅が涙をこぼしながら水銀燈の胸に顔を押し付けて叫ぶ
いや、声はかすれ、とても叫んでいるとは言えない声
だが俺の…俺たちの心には大音量で響く大きな声だった
「ほらぁ、泣かないのお馬鹿さぁん。泣くようなところじゃないでしょお?
これでおあいこねぇ。くすくすくす」
「ぐすっ…う、うるさいのだわ…。」


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 20:44:43.38 ID:536WUvtw0
真紅は意地からかプライドからか、数分もすれば泣き止んだようだった
「だが、これではっきりしたな。」
「うん、そうだね。みんながここまで私たち部活メンバーのことを思ってくれて
部長としてこれほど嬉しいことはないよ!」
「あらお姉、当然じゃないですか。これ程魅力的な人材が揃ってるんですから!」
「をーっほっほっほ!魅音さんも山犬の隊長の勧誘を蹴ってまで
ここに居てくれたんじゃありませんの!」
「みんなボクの魅力にメロメロなのですよ。にぱー☆」
「あぅあぅあぅ…たぬきです…たぬきがいるのです…。」
「あっははは!やっぱりこの部活は最高ってことだね!だね!」
みんなで笑い合う
「よっしゃ、んじゃあもう一度確認しとこうぜ!
お前たちはどんなところへ向かって走るんだ!?」
ドールズたち全員が視線を合わせ、一斉に口を開く
「みんなとずっとずっと一緒に、楽しく暮らせる未来へ。」
その瞬間周りが真っ白な光に包まれ…俺の記憶は途切れた


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 20:52:28.98 ID:536WUvtw0
「この光は…いったいなんなの…?」
「でもこの光…なんだか暖かいですぅ。」
「それになんだか懐かしい…。」
「不思議なのー。」
「不思議かしらー。」
次の瞬間、異変に気付く
圭一たちが、みんなが倒れている
「圭一!どうしたの!しっかりしなさい!」
「魅音!何があったですか!」
「詩音さん!しっかりして!詩音さん!」
「梨花ぁ!沙都子ぉ!羽入!死んじゃやーなのー!」
「勝手に殺すんじゃないかしら!
それより、目を覚ますかしら!レナ!」
どうやら完全に気を失ってしまっているらしい
ふと水銀燈の声が聞こえなかったことに疑問を感じ
目をやると、何か様子がおかしかった


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 20:59:45.82 ID:536WUvtw0
「…水銀燈…?どうしたの?」
声をかけるが水銀燈は反応せず、その目は大きく見開かれている
そしてその目から涙がこぼれ落ちた
「…と…ま…。」
何か呟いたが、聞き取れない
「な、なんですか?よく聞こえないですぅ。」
「お父様…!」
その言葉に全員がびくりと反応する
「お父様よ…!この光はお父様のものだわ…!
私は覚えてる…間違いないわぁ!」
次の瞬間、どこかから足音が聞こえた
こつ…こつ…こつ…
と次第にその足音は近づき、全員が音の方向へ目を向ける
そして、光の中から一人の西洋風の顔立ちをした男がゆっくりと姿を現した


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 21:08:12.10 ID:536WUvtw0
「あ…あなたが…私たちのお父様…?」
男は薄く微笑み、ゆっくりと口を開いた
「あぁ…そうだ。愛しい我が娘たちよ…。」
そこではっと目が覚めたように水銀燈が口を開いた
「お、お父様!みんなはいったい…なぜ倒れて…!」
「心配するんじゃないよ水銀燈。彼らには少し眠ってもらっているだけだ。
私とお前たちだけで話をするためにね。」


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 21:14:13.61 ID:536WUvtw0
その言葉に、私も含め全員がほっとする
と同時に不安が広がる
このまま私たちはお父様に連れて行かれるのではないか?
そしてまたアリスゲームを再開させられるのではないか?
記憶を消すなどすればそれは容易だろう…いやだ…!
「安心しなさい真紅。それからみんなも。」
胸中の不安を読み取ったかの様にお父様が言う
「私は怒っているわけではない、嬉しいんだ。」
そしてそのまま言葉を重ねた
「君たちは究極の少女に、アリスになってくれた。」


71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 21:19:14.56 ID:536WUvtw0
「えっ…?」
その言葉に全員が混乱する
「それはどういう…」
「アリスゲームに勝ち、ローザミスティカを手に入れて究極の少女となる。
これもアリスだ。だが、もうひとつ違う種類のアリスがある。
それは、完全なる幸せを手に入れた少女。完全に幸せになることができた少女。」
「完全なる…幸せ…。」
「そうだ。それほどに完全なる幸せを手に入れることは難しい。
いくら金を持っていても、盗まれるのではないかと不安になれば幸せではない。
また大好きな親友たちに囲まれて平和に暮らしていても、
いつかそれを失いそうで怖くなる。そういうものだ。
だがお前たちは違った。失う恐怖を忘れるほどに楽しみ、
失う恐怖が生まれないほどに互いを信頼している。
それはつまり完成された幸せ。お前たちはあの選択の瞬間にアリスになったのだ。」


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 21:23:35.10 ID:536WUvtw0
「じゃ、じゃあお父様は全部見てたのですか…?」
「あぁ、全部見てたよ。」
「つまり…みんなと一緒にいても…?」
「あぁ、もちろん構わない。ただし…」
何か条件が付くのか、と身構えたがそれは当たり前のことだった
「彼らは私やお前たちのように永遠に生きることはできない。
いつか体が朽ち果て、別れが来る。それでもいいのかい?」
そんなのは考えるまでもない
私たちは全員で力強くうなずいてみせた


76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 21:30:05.50 ID:536WUvtw0
だが、ひとつ気になることがある
それはみんなも同じなようだった
「あの、ですがお父様…僕たちは今、みんなで六体です…
七体目の子の意見は聞かなくても…?」
「ん?あぁそのことか。七体目ならほら、そこにいるよ。」
お父様はなんでもないことの様にそう言って私たちの後ろを指差す
そこには、鏡
そしてその中に今まで見たことのない、白いドレスに身を包んだドールがいた
その右目には薔薇…彼女が…?
「あなたが…第七ドールなのぉ…?」
「はい…初めまして、お姉様方。
私はローゼンメイデン第七ドール、あなた方の末の妹…雪華綺晶です。」


83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 21:36:08.37 ID:536WUvtw0
「雪華…綺晶…。」
「お前、そんなとこに居ないでこっちに来たらどうですか?」
「いや、それはできない。」
翠星石の質問にお父様が口を挟む
「彼女には実体がないんだ。
私は物質世界に囚われることがアリスへの枷になるのでは、そう思って
彼女を実体をもたない霊体のドールとして作り上げた。」
「そう…私には体がありません。
だからアリスゲームを始めるには、体を手に入れなければなりませんでした。」
「体を手に入れる…それはつまり僕たちの…」
「えぇ、そうです。それはつまり、お姉様たちの体を奪うということ。
そして私はお姉さまたちのミーディアムの力を以ってアリスになる、
その道を選んでいたのです。」


91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 21:41:08.13 ID:536WUvtw0
「そ、そんなことが可能なんですか!?お父様!」
私は思わず叫ぶ
お父様は静かに首を縦に振った
「あぁ、可能だ。もし皆がアリスゲームという手段を選んで
アリスを目指していたなら、その方法もあった。
少なくとも彼女、雪華綺晶はお前たち何れかの体を奪わなければならなかった。」
「最初は…のん気に遊ぶお姉様たちを眺めながらこう思いました。
なんて可哀想なお姉様たち…アリスゲームという私たちの使命を忘れるなんて…
そんな体ならお姉様たちには不要…私がもらってあげましょう…。
でも……私にはできなかった…。」


94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 21:47:14.09 ID:536WUvtw0
「雪華綺晶…。」
誰ともなく彼女の名前を呼ぶ
「始めは体を奪うチャンスをうかがっていた私でした。
でもあなたたちを見ているうちに…本当にアリスゲーム以外の方法があるのではと
そう信じ始めました。
何より…あなたたちは幸せそうでした。
そして…いつの間にかそれを見ている私まで幸せを感じているということに
気が付いてしまったのです。
だから私は…アリスゲームを求めなくなっていた。」
そう言って、彼女は微笑んだ


99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 21:54:13.08 ID:536WUvtw0
雪華綺晶が話し終わり、お父様が微笑んで言う
「そういうわけだ。七体目の彼女もお前たちと共に居ることを望んでいる。
これで納得だろう?」
「でも…見てるだけなのー…?」
雛苺がそう口を挟んだ
その言葉に私たち全員がはっとする
「ほんとに見てるだけでいいの?みんなと遊ぶ方が楽しいの…。」
雪華綺晶はにっこりと笑って答える
「いいんです。見ているだけで私はとても楽しかった。
それに雛苺お姉様、そんな優しい言葉はもったいないです。
私は、奪うならあなたの体だと決めていたのですから…。」
「でも今は思ってないのよー。だから関係ないの。」
雛苺は、さも当然だという風に言った


101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 21:59:26.76 ID:536WUvtw0
さらに金糸雀が続ける
「カナは…ううん、みんなはあなたと一緒に遊びたがってるかしら。」
「当たり前ですぅ!せっかく姉妹全員がそろったんですから
みんなで遊ばないともったいないですぅ!」
みんなの意見は一致しているようだ
ということは、私たちがしなければいけないことは一つだ
「お父様…あの子に、雪華綺晶に体を作っては下さらないでしょうか?」
「お父様ぁ…私からもお願いよぉ…。」
「僕からも…お願いしますお父様…!」
全員がお父様に懇願する
するとお父様は目をつむり、そして開いたとき
その顔にはとても優しい微笑があった


104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 22:05:31.75 ID:536WUvtw0
「そういうだろうと思っていたよ…。安心しなさい。」
「じ、じゃあ…!」
「あぁ、すでに作ってある。」
お父様はそう言って手を前にかざす
するとその先が優しく光り、そこに現れたのは…雪華綺晶、
いや、雪華綺晶とまったく同じ姿の人形だった
雪華綺晶は目を大きく見開き、その人形を見つめている
「これが…私…。私の体…。」
人形は雪華綺晶に背を向けた状態でゆっくりと宙を移動し、
その背中が鏡に触れる
雪華綺晶が右手を少し上げ、鏡に触れると人形も同じ様に右手を上げる


107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 22:12:28.13 ID:536WUvtw0
「さぁ、出ておいで雪華綺晶。」
お父様が優しく呼びかける
雪華綺晶はうなずき、恐る恐る自らの体を人形へ近づける
そして雪華綺晶と人形が触れ…雪華綺晶の体は
そのまま止まることなく進み続け、完全に人形と重なった
人形はみんなが見守る中ふわりと床へ降り立つ
そして人形は…いや雪華綺晶はゆっくりと目を開けた


111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 22:18:03.12 ID:536WUvtw0
「私の…体…!これが私の体…!」
彼女は実体ができたことをかみ締めるように
自分の両肩を抱いて嬉しそうに呟いている
その目に涙を浮かべながら
そして顔をあげ走り出す
その先にはお父様の姿
「お父様!」
彼女はお父様の胸に勢いよく飛び込み、お父様はそれを受け止める
「お父様…ありがとうございます…ありがとうございます…!」
「いいんだよ雪華綺晶。そもそも私が最初から体を作ってやればよかっただけの話だ。
それよりも礼は彼女たちにした方がいい。
お前の幸せを本気で考えてくれた彼女たちに。」
雪華綺晶はうなずきお父様から離れ、振り向いて涙を拭いた


120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 22:23:26.54 ID:536WUvtw0
「お姉様…本当にありがとうございます…!
私はあなたたちの幸せな姿を見るだけで幸せでした。
これ以上の幸せなんてないと思ってました。
でも…体ができて、みんなと遊べるとわかって…嬉しい…!
今度こそ、私は最高に幸せです…!」
「いいのよぉお礼なんて。」
「そうですぅ、当たり前のことをしたまでですぅ。」
「おめでとう、雪華綺晶。
そんなに喜んでもらえて僕も嬉しいよ。」
「わーい!もっともっと楽しくなるのー!」
「キョウちゃんもびっくりするかしらー!」
「雪華綺晶…姉妹の幸せは私たちの幸せなのだわ。」
雪華綺晶はさっきまでの笑顔よりももっと素敵な笑顔を見せてくれた


125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 22:28:52.61 ID:536WUvtw0
「さて…そろそろ時間だ。」
その言葉を聞き、全員がお父様を見る
そして胸に生まれる一抹の寂しさ
いくら圭一たちと居ることを選んだと言っても
せっかく会えた父親とまたしばらくお別れなんて寂しくないはずがない
「こらこら、そんな顔をするんじゃない。お前たちが選んだ道だろう?
だが…、最後に一つだけ頼みを聞いてくれるか?」
そこで一度言葉を区切り、お父様はゆっくり息を吸い込んで言った
「もう一度、お前たちを抱きたい。」


129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 22:34:28.52 ID:536WUvtw0
「お父様…!」
私たちは一斉にお父様に駆け寄り、お父様はしゃがみこんで手を広げる
そして私たちみんなを一度に抱きしめた
懐かしい、とても暖かい、お父様の腕…
「次に私に会うときは、お前たちのミーディアムの時間が終わった時だ。
楽しい時間というものはあっと言う間に過ぎていく。
だから、ミーディアムとの別れがいつ来てもつらくないように
思い切り楽しんできなさい。
私はそれまでゆっくりと待つことにするよ。」


137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 22:39:41.42 ID:536WUvtw0
そう言ってお父様はゆっくりと手を離す
私たちは涙をこらえてしっかりとうなずいた
「なぁに、友達の家へ遊びに行く子供を送り出すようなものだ。
私は少しも寂しくないよ。だから…楽しんでおいで。」
そう言ったお父様の姿はどんどん見えなくなっていく
そして完全に消える直前にお父様が言った言葉
「いってらっしゃい、我が愛する娘たちよ。」
私たちは当然こう返す
「行ってきます、私たちの愛しいお父様。」


140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 22:44:45.57 ID:536WUvtw0
「う…俺は…気を失ってたのか…?」
「圭一、気が付いたのね。」
「真紅…?いったい何が起こったんだ?」
周りを見ると、みんなも俺と同じように気絶していたらしく
目を覚ましてはそれぞれのドールに言葉を掛けられていた
だが、数が合わない
一人だけ余っているドールがいる
他のみんなもそれに気付いたらしい
「あなた…誰かな?かな?」
「もしかして…第七ドールですか?」
「わ…私たちが寝ている間に何が起こったんですの?」


143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 22:50:43.29 ID:536WUvtw0
みんなが次々と疑問を口にする
そしてゆっくりとそのドールが口を開いた
「初めまして、ミーディアムの方々。
私はローゼンメイデン第七ドール、雪華綺晶と言います。」
「やっぱり第七ドールか…何が起こったのかは後で聞くとして、
とりあえずよろしくな、雪華綺晶。俺は…」
「前原圭一さん。」
「え?」
俺が意表をつかれ唖然としていると彼女はくすくすと笑いさらに続けた
「園崎魅音さん、詩音さん、竜宮レナさん、北条沙都子さん、
古手梨花さん、羽入さん。」


146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 22:56:03.88 ID:536WUvtw0
「な、なんで私らの名前を知ってるわけ!?」
「だって、『見て』いましたから。ふふふふ…。」
「お、おい真紅…なんだか変わった子だな…。」
「と言うよりむしろ不気味なのです…あぅあぅ…。」
「大丈夫よ、悪い子ではないはずだから…たぶん…。」
「なんだか最初と随分と印象が違うわねぇ。」
「こ、これが本性ということですか!油断ならん野郎ですぅ!」
「本性というよりは…これが彼女なりの『楽しみ方』なんじゃないかな。」
「お父様に言われた通りに楽しんでいるのかしら!」
「ひ…雛なんだかちょっと怖いの…。」
「ちょっと待て、今お父様って…。」
俺がそう疑問を口にするとドールたちは顔を見合わせて笑い合い、
俺たちが気絶している間に起こったことを話し始めた


152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 23:03:02.30 ID:536WUvtw0
「そうか…そいつぁよかったじゃねぇか!」
「うん!これでみんなずっと一緒だね!だね!」
「をーっほっほっほ!これで部活がさらにさらに盛り上がりますわね!」
「くっくっく…雪華綺晶か…こりゃまた一癖も二癖もありそうな奴だねぇ!」
「また面白そうな人材が入りましたね…くっくっく…」
「みぃ…一番手ごわそうなのです…。」
「あぅあぅ…一筋縄ではいきそうにないのですよ…!」
どうやら真紅たちは俺たちがくたばるまでこちらに残ることを
ローゼンに許可されたらしい
なんだ、以外にいい奴だったみたいだな…
しかし、幸せであることが究極たぁなかなか言いこと言うじゃねぇか
最初は酷い奴だと思ったが認識を改める必要がありそうだ
それはともかく、この新メンバー雪華綺晶
なかなか癖のある性格をしてやがる
ふと妙な視線に気が付く
横を向くと、魅音がにやにやと嫌な目でこちらを見ていた


156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 23:10:22.15 ID:536WUvtw0
「な、なんだよ?俺の顔に何か付いてるか?」
「いやね…雪華綺晶ってさ、随分前から私らのこと見てたんだよね?」
「はい、よぉく観察させていただきました。」
「くっくっく…圭ちゃあん…やばいんじゃないのぉ?」
「はぁ?いったい何が言いたいんだ?はっきりと言えよ。」
「えぇ〜?はっきり言っちゃっていいのぉ?
いくらおじさんでもそれはためらっちゃうなぁ〜。
男の子が部屋に一人の時にすることで
見られて困るものって言ったら…何だろうねぇ?くっくっく…」
「え…何って…ナニ!?」
い、いや…落ち着け、KOOLになるんだ前原圭一…
まだ俺のソロ活動を見られたと決まったわけじゃない…
俺はそんなわずかな希望をのせた視線を雪華綺晶に向ける
が、その希望は粉々に打ち砕かれた
「だぁれが覗いた駒鳥さん…そぉれは私…私なの…」


163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 23:15:13.46 ID:536WUvtw0
「だぁああ!馬鹿!やめろ!やめてくれええええ!!」
「ななな何かな!ナニかな!圭一くんが覗かれたのってナニかな!」
「圭ちゃん、恥ずかしがることはありません。男の子なら当然のことですよ☆」
「圭一が何を使ってナニをしていたのか気になりますです、にぱー☆」
「何ですの?圭一さんは何をしていたと言うんですの?
さっぱり話が見えてきませんでしてよ。」
「沙都子はまだわからなくていいのです、あぅ。」
「真紅ぅ…もしかしてあなたも…」
「し、失礼ね!私も今初めて知ったのだわ!やっぱり人間の雄は下劣なのだわ!」


169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 23:22:04.24 ID:536WUvtw0
「…?何がどうしたというんですか。
わけがわからんですぅ。蒼星石はわかるですか?」
「え!?い、いや、わかんないや。うん、全然わかんない。はは…。」
「うゅ〜…圭一なにしてたなのー?」
「このローゼンメイデン一の頭脳派にもわからないとは…
悔しいかしら…。そうだ!帰ってキョウちゃんに聞くかしら。」
「ストオオオオオオオップ!聞かんでいい!聞かんでいい!!
他の奴らも好き勝手ぬかしてんじゃねえええええええ!!!!」
畜生…畜生…!真紅の目を盗んでやるのは大変だったんだぞ…!
それなのに…どうして…どうしてこんなことになっちまったんだよぉ…!
やっぱり…俺の人生は死ぬまで退屈しなさそうだった


176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 23:28:31.40 ID:536WUvtw0
次の日からも賑やかな毎日が続いた
部活も、もうローゼンに会う方法を考える必要はなくなったので
たっぷりと時間を取ることができる
ちなみ雪華綺晶はミーディアムがいない状態だったので
誰かにミーディアムになってもらおうということになり
事情を知っている鷹野さんになってもらうことになった
事情を知っているのは富竹さんもだが満場一致で却下
鷹野さんは診療所が閉まった後の話し相手ができたと言って喜んでいた


182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 23:32:38.99 ID:536WUvtw0
「くそおおおおおお!てめぇらよってたかって俺をはめやがって!」
「いやぁ…最近の圭ちゃんにはどうも勝てる気がしなくてね。」
「ご褒美の大きさに比例して強くなる圭ちゃんですから。」
「こんなに可愛い女の子たちへの罰ゲームがご褒美なら
圭一の強さは半端じゃないのです。」
「パネェのです!まぢパネェのです!」
「よって、ここは協定を結ばせてもらった、というわけですわ。」
「だからってこんなのアリかよぉ!!」
「あら圭一、会則第二条なのだわ。」
「怒っちゃダメよぉ、血圧上がっちゃうから。乳酸菌摂ってるぅ?」


189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/05/26(月) 23:37:27.61 ID:536WUvtw0
「圭一の罰ゲーム、珍しいのー!」
「これはしっかり記憶に焼き付けるかしら!」
「久しぶりの罰ゲームですよ!ゆっくり味わってねですぅ!」
「あはは、ごめんね圭一くん。悪く思わないでね。」
「ほぉらどうぞ、圭一さん…ばぁつゲームは何でしょう…
開いてください圭一さん…」
不気味に歌うように言う雪華綺晶から
恐る恐る二つ折りにされた紙を受け取り、内容を見る
その罰ゲームは…
「い……いやああああああああ!!!」
「「「「あはははは!!」」」」
今日も雛見沢には笑い声が絶えない
これまでよりもずっとずっと賑やかな笑い声が
~fin~

出典:ローゼンメイデンが雛見沢で巻かれたようです
リンク:http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1211542952/

(・∀・): 191 | (・A・): 192

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