眼妹。

兄へ。

久し振りだね。
ずっと連絡してなくて御免なさい。

今日、「リン」という名前の犬に出会いました。
兄にメッセージを書こうと思ったのは、この名前に出会ったから――。



あたしは元気です。
最近は新しい道を歩きながら、凄く忙しい日々を送っています。少し、強くなれなした。兄と比べたら全然かもしれないけれど。


家出した理由は、あたし達は一緒に居ると壊れてしまうから。


兄から出る言葉には、包んでくれる言葉と、攻撃する言葉があります。
包んでくれる言葉は、涙が出るほど暖かかった。
兄がいっぱい愛を込めてくれたからだね。

攻撃の言葉の裏には“強くなって欲しかった”って理由の他にもっと違うものがあった事、あたしは気付いてた。
不安の叫び声。
どうしたら兄が元気になれるか。
どうしたら兄が楽になれるか。
どうしたら兄に心の安定を与えられるか。
ずっと考えてた。
実践もしてみた。
でも、効果は一瞬だったり、逆効果だったりで、うまくいきませんでした。

攻撃の言葉も、ずっと言われ続けると、気持ちをわかっていても中々辛かったのです。

兄と自分を守る為には、離れるしかなかった。
最終手段だったの。


兄と暮らした日々は、映画のようでした。

一匹の猫とあたし達で暮らしたあの家。
本当は子供も欲しかったね。
だって愛し合ってたんだから。
名前だって決めてた。
兄も気に入ってくれてたね。

二段ベッドの上は高いから、兄が居ないと上れなかった。
一度寝たフリをするの。そしたら兄はあたしの寝顔見て小さく笑って、頭を撫でてから眠りにつくの。寝息が聞こえてきたらそっと兄の寝顔を見てた。
安心して眠る兄の顔を見てから、あたしも眠ったの。

こんな作品を創れる相手は、兄くらいです。



恋ではないけれど、あたしは今でも愛しています。
ただ、一緒に生きることは出来ません。しません。
それがあたしの出した答えで、変えるつもりはありません。

一つ、これだけは伝えておきたい事があります。
貴方は綺麗です。
恋が終わったあたしが言ったなら、少しは信用してくれるかな？



大人になれなくて強くなれなくてごめんね。

兄の幸せを心から願っています。



それでは。ぱお。


出典：妹から
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