バイク屋さんのお話
2008/12/01 11:44 登録: えっちな名無しさん
96 :技物 ◆i3xpOVARIM :2008/11/30(日) 14:49:09 ID:+2/RuFVi
じゃー お店やってての泣ける経験談だしてみる?
97 :774RR :2008/11/30(日) 16:19:25 ID:Vr06RAID
>>96
たのむ・・・
98 :その1@技物 ◆i3xpOVARIM :2008/11/30(日) 18:15:32 ID:+2/RuFVi
|_|・ω・)
|文|⊂ ノ じゃーいくね
| ̄|AJ
前スレでの出来事
http://moemoe.mydns.jp/view.php/14575
からしばらくたったころ。年の瀬も押し迫った12月。
それはよくあるいつものような光景だった。はず。
「こんにちは。他所で買ったバイクですけど修理できますか?」
ずいぶん大人しい声。小柄でなその子は綺麗に手入れされた
Apeで現れた。ヘルメットを脱いだその姿は・・・
女の子・・・?女子高生・・・?
と、俺の怪訝な表情を察したのか勘違いしたのか自分から免許証を
提示してきた。
「あ、俺一応17歳です。」
男の子か・・・女子高生との出会いではなかったか・・・
女の子と見まがうほど綺麗な可愛い顔だったが・・・
俺がウホな人じゃなくて良かったね・・・
さぁ、要件を聞こうか。俺はいつもの店長の表情に戻った。
99 :その2@技物 ◆i3xpOVARIM :2008/11/30(日) 18:16:15 ID:+2/RuFVi
ここでは仮に彼を小林君(仮)としておこう。
彼はこう切り出した。
「ついつい衝動買いした部品なんですが、取り付けが出来ないので困ってます。
よそで買ったバイクだし、迷惑かもしれませんが取り付けお願いできますでしょうか?」
ぱっとみ、それなりにやんちゃっぽい格好のわりに非常にまともだ。
育ちのよさは言葉遣いや、態度に十分に感じ取れた。
ご近所さんみたいだし、持込って色々面倒ごと多いんだけど新品だし保証書もあるみたいだし
ま、いっか。割増分はサントリードライ1本で手を打つからさ。
いつもは持ち込みは工賃倍にしてるんだが、まぁいいよ。
実際工賃倍額って変な客対策の魔除けだしね。
俺はこの礼儀正しい少年に好感を抱いたのは事実だ。そしてこうも提案した。
欲しい部品あって用品屋で見かけたら声かけてね。内にあるカタログで大体対応できるし
工賃は一応用品屋に合わせるから。近所だしそれくらいは融通するよ。
町で見かけたもので調べることはできるから。
「ありがとうございます!俺バイクのこと全然わかんないんで助かります!」
こうして彼はうちの店の常連になった。
100 :その3@技物 ◆i3xpOVARIM :2008/11/30(日) 18:17:11 ID:+2/RuFVi
それからというもの、彼はちょくちょく店にきては細かい修理を依頼して
くるようになった。当時はまだXRモタードが一般的ではなかったこともあり
前後のホイール交換や、ディスク化などやりたいなーなんてカタログを
眺めるだけにくることも多かった。大体、晩飯前にくることが多かったかな。
そして彼はうちの店にいつも溜まっている景色の一部になり、俺もそれを
よしとしつつ春を迎え、忙しい季節がやってきた。
・・・今日は小林君(仮)こねーな・・・そう思ったとき、店の前にボロボロの成りで
Apeを押してきた彼の姿があった。
「事故っちゃいましたわぁ・・・(笑」
・・・おいおい・・・きをつけれっていったのに・・・
ま、みたくれは派手だけどこれなら十分直るって。
足に俺のチョイノリを少し貸しといてやっから。
ホイールもだめじゃン・・・
「じゃ、これを機にディッシュホイールいっちゃいますよ(笑」
わかった、バッチリ直しておくから1週間はチョイノリで我慢してね。
101 :その4@技物 ◆i3xpOVARIM :2008/11/30(日) 18:18:07 ID:+2/RuFVi
数日後、無事にApeの修理が終わり、彼がバイクを引き取りにきた。
今回は前後の足回り交換も入ったからかなり高額だった。
いつもお支払いが綺麗な彼ではあったが、タイヤ交換も必須だった為
さすがに支払いに関してはドキドキしていたようだ。
タイヤな、うちお客や俺がレースでつかったTT91のお古あるからそれを
つけておいたよ。スプリントでしかつかってないからセンターは
9部以上あるし、サイドだって峠なら十分つかえるよ。
「助かります!有難うございます!」
いいっていいって。いつもちゃんとお金貰ってるしね。
このタイヤだってこうやってリサイクルできたから捨てないで
済んだんだし。ブレーキも強化してるんだからコレくらいは
奢ってもいいだろ?
「さっそく走り回ってきます!有難うございました!」
そういい残すと、小林君(仮)は楽しそうに走り去った。
彼の笑顔は人懐っこく、本当にいい。今時の若者にしては
珍しいタイプ・・・だが俺はホモじゃないお(w
102 :その5@技物 ◆i3xpOVARIM :2008/11/30(日) 18:20:25 ID:+2/RuFVi
12月のある日、いつものように彼が現れた。珍しく仕事着のままだった。
と、いうよりも俺は仕事着なのを初めてみたんだが。
あれ、ニッカなの・・・?つーかにあわねぇえええww
「あれ?いいませんでしたっけ?俺鳶やってるんですよ。」
顔に似合わず男っぽい仕事なんだな・・・
「だって大将が聞かないからですよwプータローじゃないのは判るでしょうけど(爆笑」
だな、だからか。同年代の子たちよりも全然まともに見えるのって。
「学校も行かなきゃなんで、仕事もはやく上がらなきゃだし
最初は拳骨ばっかりくらってましたよー」
いろいろな話をした。今付き合ってる彼女のこと。
バイクのこと。仕事のこと。同居してる両親や姉のこと。
お姉さんが美人だというはなしは強烈に納得したのは
言うまでもないが。
103 :その6@技物 ◆i3xpOVARIM :2008/11/30(日) 18:20:57 ID:+2/RuFVi
「大将、俺もうすぐ車の免許とるから遊びにくる回数は減るかもですけど
また面倒みてやってくださいね(笑」
ああ、いつでもおいで。任意保険の更新もあるし車の保険も入ってよ(笑
保険ノルマきつくてなぁ〜
「はいはいわかりました。車もお願いしますね!」
・・・小林君(仮)とこんなに話したのは久々だった気がする。
ただ可愛いだけのこじゃなかったんだなぁ・・・
走り去る彼を見送りながら、少年が大人になる過程をなんとなく
目撃したような気がした。だが、この先に予想外の結末が
待ち受けているとは俺には予想だに出来なかった。
104 :その7@技物 ◆i3xpOVARIM :2008/11/30(日) 18:21:33 ID:+2/RuFVi
年が明け、季節はすっかり春。暖かい春の日差しが降り注ぐ日曜日。
シャッターを開けると、何処かでみたような顔の親子連れがスタンバイしていた。
妙齢ながら見目麗しい奥様と、ハロプロとかいけそうな美少女。
「私、小林(仮)の母親です。こちらは姉になります。日ごろ息子がお世話になっていると
伺っておりましたが間違いありませんでしょうか・・・」
・・・?あれ??どーりで・・・で、お母さん、今日はどういったご用件で・・・?
「実は、息子は・・・1ヶ月ほど前に事故をおこして・・・」
え”?おっしゃる意味がよく判りませんが・・・なにがあったんですか?
バイクの事故でも起こしたんですか??
「バイクでなくて・・・お友達の助手席に乗っていて事故に巻き込まれまして・・・
数日前まで意識不明でしたが、なくなりました・・・」
こういって、母親は”平成××年×月×日 所有者死亡”と記載された返納証明書を俺に差し出した。
俺は、絶句してしまった。
105 :その8@技物 ◆i3xpOVARIM :2008/11/30(日) 18:33:04 ID:+2/RuFVi
母親が重い口を開く。
「あの子、いつもバイク屋さんのお話をしてましたので・・・あの子は兄弟は姉しかいません
もので・・・俺にもアニキとかいたらあんな感じかな?なんていってましたので・・・」
「どんな店長さんがおられるのかとおもいましてこうしてお邪魔いたしました。
それと別に、あの子のバイクがなぜかエンジン掛かりませんので動くようにして
頂きたいのです。お願いできますでしょうか。」
・・・小考して、俺は返事をした。
そのバイク、誰が乗るんですか。乗らないままじゃバイクも腐りますし、それこそ
彼の本位ではないと思います。ちゃんと最後まで乗ってくれるのでなければ
このまま土に返してあげるのもいいかもしれないと思うんですが。
小林君(仮)があのバイクを大事にしていたのは判ってますので
見ず知らずの人にぞんざいに扱われたりするのをみるのはきっともっと辛くなりますよ?
「息子の仲のいい友達が貰ってくれるそうです。修理もこちらにお任せするという条件で
快く貰ってくれました。なんとかお願いできますでしょうか?」
気が重いんですが、時折あのバイクの姿を俺も見れるのなら。いいです、引き受けましょう。
こうして俺は小林君(仮)の所有権がついたあのApeの最後の修理依頼を受けた。
107 :その9@技物 ◆i3xpOVARIM :2008/11/30(日) 19:19:16 ID:+2/RuFVi
修理を受けたことで気が付いた。このバイク、どこも悪いところがないのに
なぜかエンジンが掛からない・・・
隅々まで手をいれろっての?わかったよ、最後だからさ。
修理代は香典分まけといてやるからさ。
結局、エンジンといわず足回りといわず全て手を入れ、色も少しだけ塗りなおして
欠けていたヘッドライトを交換してApeは生き返った。
あまってたBT601をはかせてコレで終了。
修理終了の電話を入れると、母親と姉の2人に、引き取る友人が連れ立って引き取りに
行くとの返事を頂いた。最後に綺麗に洗車して磨き上げてみた・・・
「これが・・・あのバイクなんですか・・・?」
ええ、そりゃ洗ったからですよ。ヘッドライトとか新品だから綺麗に見えるだけで
同じバイクですって。じゃ、いまエンジン掛けますよ。
”ばぅうう!!ボボボボボボボボ・・・・”
「ああ、この音でした。いつも煩いって怒っていたんですよ・・・あの子はいつも
乱暴に怒るんですよ・・・もうね・・・ほんとに・・・」
そうなんですか・・・
108 :その10@技物 ◆i3xpOVARIM :2008/11/30(日) 19:19:49 ID:+2/RuFVi
俺は続けた。彼はどっちかというとはにかみやで可愛い子って感じでしたよ。
礼儀正しいっていうかしっかりした子なんだなーって思ってました。
やっぱり外と家では違うもんなんですよね・・・
やっぱり、親御さんに良く似てるなっておもいますよ。
「あのこがそんな子だなんて思いもよりませんでした・・・家では本当に乱暴で・・・」
いえいえ、あのくらいの年齢だとそんなもんですよ。母の日とか、忘れる子じゃなかったでしょ?
仕事帰りになんか荷物抱えてるのたまにみましたよ?
「ええ、ええ・・・」
たまにはお茶でも飲みに着てください、それと、これ。取り外したバイクの部品ですが
不要なら処分します。そうでないでしたら、形見代わりにいかがですか?
「有難うございます。実は私もそれをお願いし忘れていて・・・有難うございます。
ただ、お茶を飲みにくるのはもう出来そうもありません。」
・・・まぁ、時間かかるとおもいますんで。気持ちの整理がつくまでは・・・
「いいえ、あの家にいると思い出がありすぎて辛いので引っ越すことにしまして・・・」
・・・判りました。それではいずれ機会がありましたら。それまでくれぐれもお達者で。
109 :その11@技物 ◆i3xpOVARIM :2008/11/30(日) 19:21:22 ID:+2/RuFVi
”バイン!バイン!ボボボボボボォオオオオオーーー!”
こうして小林君(仮)のApeは出て行った。
・・いっちまった。本当に逝っちまったんだなぁ。
俺は見えなくなるまで、走り去る姿を見送りつづけるしか出来なかった。
その夜、俺はいつになく痛飲したらしい。らしい、というのは行き付けのバー
でひたすら無言で飲みつづけターキーを3本もあけ、最後はタクシーに押し込まれて
たたき出されたというのを後日聞いたからだ。
記憶がなくなるまで飲むなんて、今までなかった。
・・・入院している姿をみていないからだろうか。店に修理にくるApeや
通りすがるApeの排気音を聞くたびに、彼がひょっこり現れるような
気がする。
「大将!またこわしちゃいましたぁ〜ww」
ばっかやろう!怪我はないのかよ、怪我は!!!
・・・なんてやりとりがまたありそうで、俺は今も割り切れないままだ。
110 :技物 ◆i3xpOVARIM :2008/11/30(日) 19:24:41 ID:+2/RuFVi
その後・・・
あのApeがどうなったか、俺にはわからない。
ご両親は引っ越してしまったし、貰い受けたお友達はオイル交換にも来ないので。
できれば元気で走っていて欲しいな。そんで、いつか修理にきてくれれば。
「やっぱり吉村のキャブ、だめですよぉ〜(苦笑」
いつでもいいから、遊びに着てね。
111 :774RR :2008/11/30(日) 20:23:57 ID:3lTCtL0U
なけた
その友人がちゃんと大切にしてくれているのかが気になって仕方が無い。
112 :774RR :2008/11/30(日) 20:31:38 ID:Vr06RAID
技物さん 乙 ∧_∧ ターキー飲んでくれ
(´・ω・`) シュッ
(つ と彡./
/ ./
/ ./
/ /
/ /
/ /// / ツツー
/ 旦 /
/ ./
・・・・・バイク屋さんらしい話だな
エイプを見るたびに、技物さんは思い出すのだろう・・・
113 :774RR :2008/11/30(日) 20:42:44 ID:P5po65ER
つ ?
釣はとっといてくれ・・
114 :技物 ◆i3xpOVARIM :2008/11/30(日) 21:41:09 ID:+2/RuFVi
本当にいい子だったんだよ・・・
親御さんみて確信したけど、口先が多少乱暴でも育ちがいい。
しっかりしつけられているのはほんとうによく判ったんだな。
凄く礼儀正しくてしっかりした子だったし、俺が店を始めて
間もないころのお客だったのでね。
当時は売掛の回収が下手で踏み倒されることが多くて・・・
正直やさぐれていたんよ。
あの子がきてくれてる時期は挫けそうな気持ちをなんとか
立て直すことが出来ていたんだな。
うちの相方も可愛がっていたし、ほんとうにいい子だったんだ。
まさか人の車の助手席であんな事故おこすなんてね・・・
バイク乗りのジーさん
http://moemoe.mydns.jp/view.php/14575
出典:バイクにまつわる泣けた話【5発目】
リンク:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/bike/1225428542/l50

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