ジョーク

2009/02/18 07:57 登録: えっちな名無しさん

 私たち、いつまでも笑っていられたらいいね。
 
 ぼくは沙代の言葉を思い出した。
 五年前の春、高校の卒業式で沙代が言った言葉だ。
 校門で撮った二人の写真は引き出しの中に閉まってある。
 ぼくはそれを忘れていた。
 再び写真を思い出したのは、沙代が死んだ三日後である。
 焼身自殺。
 底抜けに明るかった彼女、時折、ぞっとするようなジョークも言っていた。
 少し、いたずらっこだった彼女の周りには、笑い声が絶えなかった。
 この五年で、いったい彼女に何があったのだろうか。 
 実を言う、ぼくは彼女に淡い想いを寄せていた。
 彼女はそれに気づいていたのだろうか? いや、気づいていなかった。
 ずっと友達だった。
 悲しい。
 何故、死んだ。これもジョークであって欲しかった。
 引き出しを開け、思い出に浸る様にぼくは裏返しになった一枚の写真を手に取った。
 桜が舞う頃。ぼくたちが撮った最後の写真。
 指紋がつかない様、慎重に角を持って写真を表返した。
 顔が写っていた。
 茶色く焼けただれた顔は、皮膚がべろりと剥けて、真っ白な骨が見えていた。
 写真からつんとする厭な匂いがした。
 これが沙代だということは何となくわかった。
 これは、沙代のちょっとしたジョークなのだ。ぼくは、そう解釈した。

 私たち、いつまでも笑っていられたらいいね。
 
 冗談じゃない、笑えないよ。
 
 終


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