塀の、向こう側
2009/02/24 06:36 登録: ソァカクマキソヘメト
私は、ある罪を犯し、3年6ヶ月の間、〇〇女子刑務所に服役していました。
みなさんご存知かもしれませんが、刑務所は現在どこも過剰収容の状態が続いていて、独居房に複数人が収容されることも珍しくないのです。
私が服役していたところでも、同じ措置が採られていました。
もちろん、閉鎖された空間で生活の大半を共有するわけですから、誰と誰を同居させるかは慎重な検討がなされます。
喧嘩や同性愛へと発展しないように事前に面接が行われ、問題を起こすおそれのない、相性が合う者同士が組むように振り分けられるのです。
私が彼女と同じ房に収容されることになったのも、おそらく同郷で歳が近かったことが考慮されたからだと思います。
彼女(ユキ)はサバサバした性格をしていて、見た目もボーイッシュでした。
もちろん化粧は禁止されているのですが、ユキは羨ましくなるくらい透き通った肌をしていて、受刑者の間でも「お姉」と呼ばれ、皆から慕われていました。
私はユキのような娘と、同部屋となったことですっかり舞い上がってしまいました。
しかし、同時に困った事もありました。
それはトイレの問題なのです。みなさんには想像もつかないかもしれませんが、
独房のトイレは下半身部分の仕切りしかなく、用を足しているときの姿は、房内はもちろん、外からも見えるようになっています。
これは自殺防止のためとされています。
そのため、お互い用を足す時は見ぬふりをするのが暗黙のルールとなっているのです。
しかしユキと相部屋になってからは、彼女のような綺麗な女性に用を足している姿を見られるということを意識してしまい、抵抗がありました。
私が、モジモジしていると、彼女は気を遣ってくれたのか、自分が先に用を足すことで、私の羞恥心を取り払おうとしてくれました。
ユキがズボンを下ろす音が房内に響きます。私は、本を読んでいるのですが、なぜかドキドキしてしまって、目は文字を追いかけていません。
やがて、プシャァァという音がすると、アンモニアのむっとする臭いが充満します。
私はつい、彼女の方を横目で見てしまいました。
すると彼女もこちらを気にしていたのか、私と目が合うと、少し、顔を赤くしながらニコリと微笑んでくれたのです。
それをきっかけに、彼女とは打ち解けるようになりました。
それから刑務所の単調な生活が少し違ったものへと変わっていきました。
作業を終え、部屋に戻ると、彼女と話すのが楽しみになりました。私はなぜ、彼女のような聡明で、綺麗な人が、収鑑されるような過ちを犯してしまったのか不思議に思いました。
もちろんそれを私の方からは聞くことはできません。彼女は私と話す時はいつも笑顔を絶やしませんでしたが、時々遠い目で、窓から見える塀の向こう側へと視線を移すのです。
そんなある日の事です。
私はもうひとつの悩みを抱えていました。
それは恥ずかしい話しなのですが、性欲の処理についてです。
みなさんが女子刑務所の生活を思い浮かべたときに真っ先に疑問に思われるのも、この件についてではないでしょうか。
もちろん、女子受刑者といえども性的な欲求については、男子とあまり変わりません。
むしろ刑務所の閉塞感と孤独から、外にいるときよりも、女子の自慰の回数は多くなりがちなのかもしれません。
特に覚せい剤を使用していた者は、禁断症状を自慰で紛らわす者も多いとききます。
私は覚せい剤は使用したことはありませんが、やはり生理の前後は自慰をしたくてたまらなくなります。
もちろん建前上は刑務所内で自慰をすることは、禁止されていて、見つかれば、風紀を乱す行為として、刑務官に注意されます。
もっとも消灯後、蒲団の中でこっそりとすれば、まず、見つかることはありません。
私はその夜、ユキの寝息が聞こえるのを待っていました。一刻も早く下着の中に指を滑り込ませたくて、ユキが寝るのをただひたすらに待っていたのです。
しかし高ぶる気持ちとは裏腹に、いつもの彼女の少女のような寝息は聞こえてきませんでした。
その内、私は日中の作業の疲れからウトウトとしまいました。
夢と現実の狭間に居た私を引き戻したのはピチャピチャという水の音でした。
水の音はどうやらユキの蒲団から聞こえてくるようでした。
ユキの方を見ても消灯後ですので、房内は真っ暗で見えません。
その内に「ハッハッ」という野性動物のような息遣いのような音が聞こえて、私は確信しました。
(ユキがオナニーしてる!)
よく考えれば、彼女も私と相部屋になったことで性欲を発散させる機会を失い、溜まっていたのだと思います。
彼女の荒い息遣いに「んっんっ」という女の声が混じり始めました。
必死に声を出すのを我慢しているようですが、自慰の快楽には逆らえません。
ぴちゃぴちゃという濡れたおまんこの音が大きくなるのにつれて、「ああ、はぁ」と切ない声が響きます。私もユキの声やおまんこから出たネバネバした液が放つ匂いで、すっかり濡れてしまいました。
たまらず、指を下着にあてがおうと延ばしました。
その時です。廊下に足音が響きました。刑務官の見回りの音です。
私は慌てて蒲団を整え、姿勢を正しました。
しかしユキは自慰をやめません。達する寸前で、夢中でおまんこを虐める彼女の耳には廊下の足音は届いていないようでした。
刑務官に見つかれば、注意を受け、房の点数が引かれてしまいます。
私は蒲団ごしに彼女の手を掴み小声で「だめだよぅ」と言いました。
暗闇の中で、彼女の息を飲む音と、刑務官の遠ざかる足音を聞きました。
「ごめんなさい」
それからしばらくして、彼女は蚊の泣くような声で私に謝りました。
「いいんだよ」私が彼女の手を握ると、彼女も私の手を強く握り返しました。
「よかったら、一緒にしない?」
思いもよらない言葉に私が戸惑っていると、彼女は私の手を自分の秘所へと導きました。
ユキはパンツを膝まで下げていて、私の手は直に彼女のおまんこに触れました。
「わかるでしょ、ワタシが今、どんな気持ちか」
彼女のおまんこはおねしょをしたみたいにぐっしょりと湿っていました。
「ダメだよ。女同士でこんなの、変だよ」
「あなたも、ほら、こんなに」ユキのしなやかな指先がズボンの上から私の敏感な部分をなぞりました。私は、その瞬間クリトリスに電流が流れたようになって、切ない声をあげてしまいました。
私達は注意深く互いの蒲団をくっつけました。私は左手で、彼女は右手でお互いを慰め合うことにしたのです。
彼女のクリトリスは固く尖っていて、私の指がその上を通る度にユキは体を震わせました。
ユキは堪らなくなったのか、私の唇にむしゃぶりつくと、舌で歯を一本ずつねぶるように愛撫しました。
私も彼女と舌を絡ませあい、何度も唾液を流しこみます。
その時には私のおまんこも卑猥な音を立てていて、彼女の指を貪るようにくわえ込んでいきます。
「ねぇ、イキそう」
私が快楽に耐え切れず、訴えると、彼女はわざと指の動きを止めます。
「なんで、ねぇ、なんで?」
私が遠ざかる快楽の波を追いかけるように、腰を動かすと彼女はそれさえも拒むように、触れるか触れないか位の刺激しか与えてくれません。
「私、変になっちゃうよ。ああ、だめぇ」
「我慢してからイクと気持ちがいいんだよ」
ユキはそう言うと急に指の速度を速めました。
「〜〜〜っ!」
私は叫びだしそうになるのを必死に蒲団を噛んで耐えました。
「イっていいよ」
彼女の言葉と同時に、私は体を痙攣させると、おまんこからぴゅーっと液を滴らせて達しました。
「はぁはぁ」と息を切らせる私に彼女は優しいキスをしてくれました。
私はユキのイジワルに仕返しをすることにしました。廊下に刑務官の気配がないことを確認すると素早く彼女の蒲団に潜り込んだのです。
私は彼女のおまんこに一度優しくキスをすると、目一杯舌を突き出して、クリトリスを舐めあげました。
「だめだよ、汚いよ。そんなところ」
私は彼女の抗議を無視して、おまんこの輪郭に沿って、舌を這わせます。
「気持ちいいよぅ」
ユキの押し殺した声が私の加虐心を刺激します。
「我慢すると気持ちがいいんだったよね?」
私は暗闇の中で笑みを浮かべると舌先を細かく震わせて、ユキのおまんこのひだひだに押し当てました。
「あああ、いじわるしないでぇ」
ユキの腰はガクガクと震え、おまんこからは彼女の恥ずかしい液が、舐めても舐めてもとめどなく溢れ出てきます。
「私もイっちゃうよぅ、んあああ」
ユキの温かく、さらさらしたしぶきが何度も私の顔を濡らしました。
「ありがとう」
彼女はもう一度私に優しくキスをしてくれました。
それから私達は刑務官の目を盗んで何度もお互いの体を貪りました。
ある夜のことでした。
情事が終わった後、ユキは自分のことをポツリポツリと話してくれました。子供の頃、父が事業に失敗したこと。家でふさぎ込むようになった父親の後ろ姿。中学に上がった頃に父親に無理矢理犯され、その関係が高校を卒業するまで続いたこと。そんな自分を蔑むように見る母親。
断片的に語られる彼女の地獄に、私は拭いきれないほどの涙が溢れました。
「それから私は―――」
ユキは自分が犯した罪を赤裸々に語ってくれました。
私はそれを聞いて、自分があまりに身勝手な動機から罪を犯していたことを思い知らされたのです。
「だから、私はね、ここを出たら、人並みの幸せを手に入れたいんだ」
私は彼女の強さの理由がわかった気がしました。
「もし二人ともここから出ることが出来たら、一緒に買い物に行こうね」
「え?」
「貴方はワタシにとって初めて出来た友達だから」
私は涙で言葉を詰まらせながら何度も、頷きました。
季節が秋へと移る頃、事件が起きました。私達の関係が刑務官にバレたのです。
どんなに注意深くしていても、プロである刑務官には隠し通せなかったのでしょう。
すぐに私達は別々の房へと、移されることになりました。
私はユキから無理矢理引きはがそうとする刑務官に泣きながら手当たり次第に物を投げ付けました。それが、その時に自分にできるせめてもの抵抗だったのです。
そして私は懲罰房へ送られることが決まりました。
一人になった私は、ユキとの約束を果たすため、懸命に罪を償う努力をしました。懲罰棒で正座をしながら浮かんでくるのは、私を捨てた両親ではなく、ユキの顔でした。
どんなに辛く、寂しい夜も彼女の笑顔を思い出すことで乗り越えられたのです。
それから長い刑期を終えるまで、ユキと会うことはありませんでした。
塀の向こう側へ出た後も、私は何度もユキを探しました。しかし、刑務所では受刑者同士が連絡先等を教え合うことは禁止されているため、彼女についての手掛かりは、同郷だということ以外にはなにもありませんでした。
さらに長い時間が過ぎて、ユキの顔さえも忘れかけた頃のことです。
私は仕事の帰りに立ち寄った喫茶店で偶然ユキを見かけました。
ユキは髪を伸ばし、ワンピースを着ていてまるで別人のようでした。
初めて見る化粧をした彼女の顔は本当に綺麗でした。
私は震えだす足を押さえて、彼女の方へ歩いてゆきました。
彼女は先程から時計を気にしています。私が声をかけようとした時、お店の中に一人の男性が姿を現しました。
その人は、ユキの前までいくと、両手を顔の前で合わせ何度も謝る仕草をしています。ユキは膨れっ面で腕時計を指差すと、席を立ってお店の外へ男性に寄り添うように出ていきました。
私はユキに声を掛けそうになる自分を、懸命に抑えました。
二人が雑踏の中へと消えてゆくまで、私は唇を噛み締めながら、ただじっと時間が流れていくのを感じていました。
次第に遠ざかっていく二人の後姿の向こうには小さなありふれた幸せが広がっていました。
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