昨日、告白してきた
2009/04/13 14:55 登録: えっちな名無しさん
相手は友人の妹。友人ともどもガキの頃から、もう15年以上一緒に遊んできた相手。
家族ぐるみのつき合いだから、一緒に風呂に入ったこともあるし、いいとこ悪いとこ全部知ってる。
小学生の頃、貧弱で泣き虫だった俺を蹴飛ばしたりして虐められもした。兄貴は笑ってた。
せめて彼女には勝てるようになりたい、と小五で始めた空手は未だに続けてる。
身体だけが大きくなっても、まだ勝ってないから。
フランケンみたいな風貌でも生来の気弱は直らず、女性とまともに話すことができない。
中学・高校と進学しても、つき合いは変わらなかった。
ずっと馬鹿なことばっかりやって、一緒に遊んでた。
大学に入ってから免許を取るとよくパシりに使われた。俺は酒が全く飲めないから、終電
逃したときに車で迎えに行った。それも毎週のように。
「だって、兄ちゃんが『俺、避け飲んでるからあいつに頼め』って言うんだもん」
深夜2時くらいに俺の車で悪態を付くのを眺めるのは、腹立たしくも楽しかった。
昨日(正確には今日)もそんな一日だと思ってた。
朝イチから授業があるので早々と寝てると、携帯が鳴った。着うたは彼女限定のもの。
「またか」と思い、俺は電話に出た。
「はいはい」
「……あ、寝てた?」
勝ち気で(俺に対しては)人の迷惑なんか全然考えてない彼女なのだが、様子が違った。
「寝てるに決まってるだろ。明日、早いんだよ」
時計は日付が変わるか変わらないかくらい。
「そっか」
「……どこいるんだ?」
「いつものとこ」
「待ってろ、今なら15分くらいで行けるから」
俺は車に乗って、繁華街の方へと走らせた。
深夜でもそれほど人通りの絶えない駅前の歩道橋で、彼女は座り込んでた。
だるそうに歩く俺を見つけると、小さく手を振ってくれた。
様子がおかしいのは何となくでも判った。いくら鈍い俺でも、あの態度はおかしい。
「どうしたんだ?」
「……えへへ、今日ね、振られちゃった」
上段回し蹴りを食らっても、こんな衝撃は来ないと思う。
俺と彼女はずっと歩道橋に座っていた。
路駐した車が一瞬だけ気になったが、かまうもんかと放っておいた。
彼女には、ずっと好きだった男がいた。
大学の先輩らしい。
友達づきあいは続けていたが、臆病になりすぎて、ずっと一歩も踏み出せなかった。
料理なんかひとつも出来ないのに、がんばってバレンタインのチョコも手作りした。
不器用で飽きっぽいのに、マフラーまで編んだ。
でも、足が震えて当日は渡せなかった。鞄の中で眠ったままだった。
それから一週間近く経ってから、彼女は必死に勇気を出した。
受け取ってくれなかった。ごめん、僕、好きな人がいるから、と。
腹立たしくもあったが、今にして思えば誠実な男なのが救いだろう。
彼女は泣きながら俺に話してくれた。ひとつひとつ大事にしてきた思いを。
そして6本目の煙草を消した頃だったと思う。
彼女は言った。
「……こんな子、好きになってくれるわけなかったんだよ」
「そんなことない!」
何故か叫んでいた。自分でもびっくりした。
いつから好きになってたのかは判らない。
高校のとき、真っ赤になって「義理だからね! 義理!」と駄目押しのように渡してくれたバレンタイン
チョコだったか、中学入学前偉そうにしながら見せに来たブレザー姿だったか。
ずっと目で追っていた。
側にいられるのが嬉しかった。
一緒に遊ぶのが楽しかった。
無茶を言われ、虐められるのでさえ。
でも、告白する勇気なんかなかった。そのときまでは。
「俺、お前のこと好きだよ」
もう止まらなかった。
「ずっと昔から」
後は良く覚えてない。昔のことで綺麗だと思った瞬間や、時折見せる小さな気遣いが嬉しかったこと、
そんなのをいくつもいくつも並べてたと思う。
ただ、零下になろうかという気温のなか、唇がかさつき、額から汗まで噴き出していた。
試合直前よりも緊張した。
彼女はずっとぽかん、としてた。信じられないっていう顔で。
「……だからさ、元気出せよ。ここにいるんだから、お前のこと、一番好きだっていう奴が」
そっと髪の毛を撫でてやった。
綺麗に茶色へと染められた髪は、芯まで冷えていた。
「……子供扱いするなー」
むっとした顔で(照れ隠しなのは明白だが)俺をぽかぽかと殴る。
うん、とも、ごめん、とも返事は無かったが、元気が出ただけで嬉しかった。
車に乗り帰る途中、お腹空いた夜食奢れなどと彼女は言い出した。
すっかりいつもの彼女に戻っていた。
ファミレスで適当に済ませた後、俺は彼女の家まで送った。
一応連絡しておいたのか、玄関から彼女の母親が出てきて、しきりに俺へ謝っていた。
ツーカーの仲で、俺はおばさんとはえらく仲がよい。
家に戻ろうとして、彼女は車まで戻ってきた。
窓越しにこんこん、と叩き開けるよう求める。
「ねえ、本気であたしのこと、好き?」
やけに直球だった。
目線を合わせる勇気が無く、曖昧にうなずくと、彼女は言った。
「……見かけに寄らず卑怯よね。知らなかったわ。そんな手使うなんて」
酷い言われようだが、これはいつものことに過ぎない。
「10年以上片思いしてたのよね?」
「……そうだな、そうなるかな」
自覚したのは今日だったが。
「うわ、辛すぎ」
近所迷惑なほど、夜中に笑い出す。
そのまま頭を撫でられ、家へと飛び込むように帰っていった。
結局、返事はもらえなかった。
寝不足のまま大学に行き、夜は道場へと行く。
ひさびさに吐き気を覚えていた頃、俺は呼ばれた。
「おーい、空手男。彼女、来てるぞ」
にやにやした表情と「こんな面白いことは吹聴せねば」という意図が見え見えな大きな声。
「はぁ?」と気を取られたところへ、数人がかりで様々な攻撃を食らった。
「いつのまに!」「何でお前が!」「幸せ者は死ねっ」などと言う文句とともに。
表に出ると、意地悪をするときの笑顔を浮かべている彼女がいた。
「見たよー。殴られてたねえ」
「お前が変な嘘つくからだろ」
「嘘じゃないよ」
「は?」
「だから、嘘じゃないからいいじゃない」
意味を把握するまでしばらく時間が掛かる、との表現は知っていたが、自分が体験するとは
思わなかった。
危うくへたり込みそうになり、なんとか「ありがとう」とだけ返した。
道場を早上がりさせてもらって(理由は「人生の一大事」としたら、師範が笑って認めてくれた)
一緒に帰った。
そして、彼女は今後ろでDVDを見ている。
この板にはもう来ないかもしれないけど、みんなにありがとうと言いたい気分だ。
それじゃ、コンビニに行って来る。さっきから「シュークリームが食べたい」と喧しいから。
結局生活は変わりそうにない。願わくばこの先もずっと
出典:ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない ドラマ化 主演:小池徹平
リンク:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090413-00000016-flix-movi

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