夜の玉掛(たまかけ)合図講習

2009/05/21 00:18 登録: ままならぬ股間

草薙オペレータ:「J工場長!、いったいなにをっ!」

J工場長:「草薙君、私は自分を偽りたくない。正直にありたいんだ。」


リーマンショック以降の景気後退〜大減産により、計画休止中の某大手メーカー工場。社員の多くは一時帰休となり、警備担当者を除けば、数名の保安要員(3交代制)しかいない。蒸し暑い5月のある日。夜勤シフトの保安要員として工場内を巡回していた
草薙(20歳)は、深夜突然現れたJ工場長に迫られていた。


草薙オペレータ:「電気室の節電についてお話があるということではなかったのですか!」



人気のない電気室の壁際においつめられた草薙は、あとずさりしながら震える声を絞り出す。設備点検リストをはさんだクリップボードはすでに床に落ち、肩からぶらさげた大形ライトにも身体の震えが伝わっている。



J工場長:「すまない、あれは二人きりになるための口実だった。巡回中の香取君や制御室で監視中の中井君には、邪魔してほしくなかったんだ。」


にじりよるJ工場長。工場内は一部の例外を除き私服の着用は認められていないため、工場長といえど作業服、安全靴(ブーツ)、ケブラー手甲、ヘルメット、保護メガネ姿である。
しかしその赤ら顔は、酒席帰りであることを如実に示していた。


J工場長:「君はまだ若すぎる。いくら工場長でもすぐには昇進させてあげられない。かわりに私の気持ちを贈りたいんだ。見たまえ、君を想ってこんなになってる。」


J工場長は膨らみきった下腹部を指し示すとベルトに手をかけた。
バックルを外し、トランクスごと作業ズボンを下げる。ブルッ!と勢いよく硬直した赤黒いホイッスルが飛び出した。全長13cm。
すでに先端部からは潤滑作用のある液体があふれている。


J工場長:「君は玉掛作業者の資格を取りたがっていたね。玉掛で重要なのは合図、ホイッスルさばきだ。私のホイッスルで存分に練習してほしい。」


部下のスキルアップを願う年の離れた上司の真摯なよびかけに、草薙の不安は氷解していった。ズボンとトランクスを脱ぎ去り、ベンチに腰かけたJ工場長の両足の間に、自然と膝をつく。


J工場長:「怖がらなくていいよ。まずはクレーン『呼び出し』の合図からだ。さぁくわえてごらん。」


ぱくっ。


草薙オペレータ:「Jこうじょうちょうぉ、ひぁやんかなまぐひゃいれすぅ(J工場長、なんか生臭いです)。」

J工場長:「『呼び出し』は『片手を真上に高く上げ、ピー』だよ。」

草薙オペレータ:「ピー」

J工場長:「工場内は騒音があるから、クレーン運転士にアピールするようピーは長めに吹こうね。」

草薙オペレータ:「ふぁい(はい)。」


素直に指導に応じる草薙に気を良くしたJ工場長は、「クレーン運転士免許」を持ち、「玉掛技能講習」も終了している。現在は管理職にあるとはいえ、かつては吊り上げ荷重50tを超える大型天井クレーン運転や、玉掛業務にも長く従事していた。
ちなみに移動式クレーンを用いた作業はプロパーの通常業務には無く、子会社に外注するため、この工場では移動式クレーン運転士免許はプロパー社員には取得させていない。


J工場長:「次は『位置指示』。ヤードにもよるが当工場のヤード長は長いところでは500mを超える。スパンは30m程度。この大きな可動範囲の中で、フック位置を指示するのが『位置指示』だよ。」
J工場長:「腕を斜め下に伸ばして『位置を指で示しピッ、ピー』だ。短音、長音の順だね。」

草薙オペレータ:「ピッ、ピー」

J工場長:「そう。フックがある程度近づくまで、指で指し示す姿勢は維持すること。」

草薙オペレータ:「ふぁい(はい)。」

J工場長:「さて、当工場では知っての通り、正社員が扱うのは天井クレーンのみだから、合図もそれに限定するよ。移動式クレーンは合図が一部異なるからね。次は『一時預け』。『両腕を胸の前で交差・無音』だ。」


両腕を胸の前で交差する草薙。上体が揺れた際、歯がくわえたままの肉ホイッスルにあたってしまう。


J工場長:「草薙君歯を立てないで…。」

草薙オペレータ:「しゅみません。(すみません)。」

J工場長:「一時預けは玉掛作業を安全に行う上での基本中の基本だ。合図を終えたら必ずクレーンの『一時預け灯』の点灯を確認、指差呼称すること。一時預けヨシ!」

草薙オペレータ:「いちじあじゅけヨヒ!(一時預けヨシ!)。」

J工場長:「指差呼称の時はホイッスルを口から離すんだよ。」

草薙オペレータ:「一時預けヨシ!」


J工場長:「一時預けして吊荷に吊具を取り付けた。次はなにをすべきかな?」

草薙オペレータ:「『一時預けの解除』です。ぱくん。」

J工場長:「そうだね。このままではクレーン運転士は運転操作できない。解除の合図は知っているかな?」


『片手を真上に高く上げ無音』の合図をする草薙。年若い部下の優秀さにJ工場長は目を細める。


J工場長:「うむ。その通り。次は荷を吊りあげるわけだが、ワイヤー緊張から地切りして1m程度までは『微動巻き上げ』を行う。1ノッチの最低速度で慎重にね。」

草薙オペレータ:「じぎりはいゃふぁりきけんでしゅか(地切りはやはり危険ですか)。」

J工場長:「うむ、さきほどは飛ばしたがフックのセンター合わせがずれていたりすると、地切りした瞬間に大きく荷振れしてしまう。だから最低速度で行うんだ。」

J工場長:「『微動巻き上げ』の合図は、『片手を上にあげ、示指(人差し指)で小さく円を描きながらピッ、ピッ』だ。短音2回ね。クレーンは微動に関しては30cmくらいで止めてしまうから、必要ならそれを繰り返す。」

草薙オペレータ:「ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。」

草薙オペレータ:「てくぶぃかりゃ(手首から)、ちゅぽん、手首から先だけを回転させる感じですね。」

J工場長:「そう、そんな感じ。続けて『巻き上げ』の合図。『片手を上に上げ大きく輪を描きながら、ピーピー』だよ。これは少し難しいから私が手本を見せよう。」


J工場長は手で半円を描きながらピー、一瞬手を止め、もう半円を描きながらピー。それを繰り返す。大きく円を描く動きとホイッスルを同調させるのがコツだ。
指先までピンと伸びた、姿勢の良い熟練の合図は見た目にも美しい。これで下半身が全裸でなければ…。


J工場長:「できるかな?やってごらん。」

草薙オペレータ:「ピー、ピー、ピー、ピー」

J工場長:「うん、いいね。天井クレーンの運転室は高い位置にある。そこからも見えるように腕の動きは大きく、はっきりとが基本だ。ところで草薙君。」


草薙オペレータ:「ふぁい(はい)。」

J工場長:「唇の表面が乾くとホイッスルが張り付いてしまうことがある。時々は舌で舐めて湿らせることが必要だ。練習してみようか。」


こくんとうなずき、草薙はJ工場長の股間の肉ホイッスルに舌をはわせる。ぺろっ、ペろっ、ぺろっ、ペろっ、ぺろっ。
「あああ…」
J工場長はのけぞって快感を堪能している。


J工場長:「う、うむ。湿らすのはそれくらいで良いだろう。乾いてきたな、と思ったら自然にできるようになれば一人前だ。次に進もうか。」

草薙オペレータ:「ふぁい(はい)。ぺろっ。」

J工場長:「うっ、つ、次は『停止』の合図だ。さきほど『巻き上げ』を練習したが、クレーン運転士は危険と判断しないかぎり、指示された操作を続ける。微動を除いてね。つまり『停止』合図をしなければ巻き上げ限界まで巻き上げてしまうわけだ。」

草薙オペレータ:「ふぁかります(わかります)。」

J工場長:「任意の高さで止めたいときなどに『停止』を合図する。知っているかな?」

草薙オペレータ:「ふぁい。(はい)。」


『片手を真上に高く上げピー』の合図をする草薙。J工場長の肉ホイッスルを「ちゅぽん」と一旦口から離し、


草薙オペレータ:「『呼び出し』と『停止』は同じになるわけですね。」

J工場長:「そうだね。動作とホイッスルは同じだ。状況により意味が異なるわけだ。」

J工場長:「ついでだから『急停止』も練習しておこう。本来あってはならないことだが、玉掛したワイヤーロープがずれるなど危険時にもちいる合図だよ。」
J工場長:「『両手を高く上げて左右に激しく振りながらピー』だ。」


腕を左右にぶんぶん振りながら、


草薙オペレータ:「ピー。」


草薙はJ工場長の肉ホイッスルを口から離すと、


草薙オペレータ:「ですが、『巻き上げ』、『巻き下げ』はともかく『走行』『横行』中の急停止は吊荷が振れてかえって危険ではありませんか?」

J工場長:「まったくそのとうり。プラッギング(逆相制動)を伴う急停止はできれば行いたくない。そうならないために吊具の作業前点検や選定、吊荷の重量目測、重心位置推定、しっかりした玉掛がもとめられるわけだ。」

草薙オペレータ:「重心位置推定、難しそうです。」

J工場長:「今は合図の練習だから、それについては別の機会にしよう。次は『走行』だ。『走行方向を指差し、ピー、ピッ』長音、短音の順。」

草薙オペレータ:「『位置指示』と逆のホイッスルなわけですね。ピーッ、ピッ。」

J工場長:「そうだね。長短が逆になる。クレーンにある程度長い距離を走行させるときに『走行』合図をするよ。」


草薙オペレータ:「『横行』の合図は無いわけですよね?」

J工場長:「クレーンを『走行』させるまでもない、クラブトロリの移動、すなわち『横行』のみの場合は、『位置指示』ですませる。」


草薙オペレータ:「工場長のホイッスルからお汁が垂れてきました。レローン、ぱくっ。じゅるじゅる。」

J工場長:「うほぉっ!、あ、ありがとう。さてクレーンに走行を指示したら、合図者は吊荷を下すべき場所、または吊荷の場所まで素早く移動して、『位置指示』をしなければならない。でないとクレーンは基本的にはヤード端、ランウェイ端まで行ってしまうからね。」

草薙オペレータ:「合図者が高所にいるなどして、走行に追随できない場合もあると思うのですが。ぱくん。」

J工場長:「良い質問だね〜。その場合はメガホンやトランシーバー等を使用して、『走行』合図の前に『○○○の場所まで走行して、待機していて下さい』などと伝える必要があるよ。」

草薙オペレータ:「なるほろぉ(なるほどぉ)、とらんふぃーばーでしゅか(トランシーバーですか)。しこしこしこ、じゅるっじゅぽじゅぽじゅぽ。」

J工場長:「くっ!そろそろ出そうだ。草薙君、もうすこしで一旦休憩しようか。」

草薙オペレータ:「ふぁい(はい)。じゅぽじゅぽじゅぽ、しこしこしこしこ。」


J工場長は眉間にしわを寄せ、目を閉じて快感を味わっている。息が荒い。
「私が見込んだ通り適応力のある若者だ。肉ホイッスルの扱いも新人とは思えん。このまま訓練していけば… ククク、先が楽しみだワイ。」


草薙オペレータ:「ちゅぽん、J工場長?」

J工場長:「おっとすまん、『巻き下げ』だ。『片腕を水平に横に伸ばし、3段階で手のひらが足に着くまで下げながらピー、ピー、ピー』だ。言葉だとわかりにくいな。手本を見せよう。」


手のひらを下に向け、片腕を横にピンと伸ばす。足までの90度を3段階(30度ずつ)に分けて手を下げていき、ピー、ピー、ピー(長音)とホイッスルを同調させる。
言葉にするとこんな感じだが、なかなかどうして、美しく決めるのは難しい。
年季の入ったJ工場長の合図は、手の動きとホイッスルがばっちり同調し、非のうちどころがないものであった。

草薙オペレータ:「ピー、ピー、ピー」

J工場長:「うむ。いい感じだ。『巻き下げ』指示をして着地が近くなったら、『停止』指示をする。着地まで1mくらいが目安かな。『停止』指示をしなかったからといって、全ノッチで着地するようなクレーン運転士はいないが、死角になる場合もあるからね。運転士に依存してはいかん。」

草薙オペレータ:「きぁならじゅ、ていししずいをだふのれしゅね(必ず『停止』指示を出すのですね)。じゅぷじゅぷじゅぷ。」

J工場長:「基本はそう。設備や構造物で視界の悪い場所では特に重要になる。」

J工場長:「吊荷が着地予定位置から多少ずれている場合は『水平移動』を行う。まず、クレーン運転士のできるだけ正面に立ち、手のひらを内側に向けて両手を前に伸ばし、「移動する距離」を腕を左右に広げて示す。言葉だと分かりにくいが、小学生の「前へならえ」みたいな動作だ。ここまで無音。」

草薙オペレータ:「ちゅぽん、こうですか?」

J工場長:「そう。クレーン運転士が了解のそぶりをしたら、『片腕を前に伸ばし、手のひらを移動する方向に向けて手首から先だけを曲げてピッ(短音)』。」

J工場長:「それでも距離が足りない時は、再度移動距離を示した後、『片腕を前に伸ばし、手のひらを移動する方向に向けて手首から先だけを曲げてピッ(短音)』。」


草薙オペレータ:「こう、ですよね。ピッ」

J工場長:「そう。この『水平移動』は微動巻き上げ〜地切りの前のフック位置微調整にも使うからね。さっきは忘れていたけど。」

草薙オペレータ:「地切り、着地の前に『水平移動』でフック位置微調整ですね。ぱくん。じゅぽじゅぽ」


J工場長:「そういうこと。さて着地の際に使う『微動巻き下げ』だ。『片腕を水平に横に伸ばし、示指(人差し指)を下に小さく振りながらピッ、ピッ、ピッ(短音)』。」

草薙オペレータ:「てくぶぃかりゃ(手首から)、ちゅぽん、あ〜あご疲れた。手首から先だけを上下させる感じですね。」

草薙オペレータ:「ピッ、ピッ、ピッ」

J工場長:「そうだね。『微動巻き上げ』もそうだが、微動動作はクレーン運転士も少しで止めてしまうから、必要な量だけ繰り返し合図する必要があるよ。」



草薙オペレータ:「しこしこ、じゅぷじゅぷじゅぷじゅぷ、しここここここここ…」

J工場長:「もう限界だっ、GO!GO! どぴゅぴゅぴゅ」

草薙オペレータ:「いっぱいでましたねぇ。工場内で保護メガネ必須ってのはこういうわけだったんですね。」

J工場長:「はぁはぁ、つ、続きは休憩してからにしようか。それと業界団体などで玉掛合図は若干違うから、つっこみは無しで。」



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次回に続く?





〜玉掛け合図、ここまでのまとめ〜


『呼び出し』:片手を真上に高く上げ、ピー(長音)

『位置指示』:腕を斜め下に伸ばして位置を指で示し、ピッ、ピー(短音→長音)

『一時預け』:両腕を胸の前で交差・無音(拳は握る)

『一時預け解除』:片手を真上に高く上げる・無音

『微動巻き上げ』:片手を上にあげ、示指(人差し指)で小さく円を描きながら、ピッ、ピッ(短音2回)

『巻き上げ』:片手を上にあげ大きく輪を描きながら、ピーピー(長音2回)

『停止』:片手を真上に高く上げ、ピー(長音)

『急停止』:両手を高く上げて左右に激しく振りながらピー

『走行』:走行方向を指差し、ピー、ピッ(長音→短音)

『巻き下げ』:片腕を水平に横に伸ばし、3段階で手のひらが足に着くまで下げながらピー、ピー、ピー(長音3回)

『微動巻き下げ』:片腕を水平に横に伸ばし、示指(人差し指)を下に小さく振りながらピッ、ピッ、ピッ(短音3回)

『水平移動』:手のひらを内側に向けて両手を前に伸ばし、「移動する距離」を腕を左右に広げて(手のひらの間隔で)示す。片腕を前に伸ばし、手のひらを移動する方向に向けて手首から先だけを曲げピッ(短音)



≪注釈≫

・玉掛合図は業界団体(製造、建設・土木など)によって若干異なります。また同一業種でも大企業間で若干異なる場合もあるようです。上記の例は一例です。

・最近では無線を使用した声による合図を行い、手やホイッスル(笛)を全く使用しない場合もあります。

・テレコンクレーン(遠隔操作クレーン)では、クレーンに機乗せず、地上から操作できるため、合図者がいない場合もあります。



出典:オリジナル
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