おいしいリンゴ！

「ううん。まるかじりしよ」

赤い皮に歯をたてる。
しゃぐっ　しゃく　しゃりり
白い果肉を噛むとじゅわりと口の中いっぱい広がる蜜。
ほっぺたと背筋がはじけた甘みでブルッとふるえた。
甘酸っぱさが舌の上で泡みたいにシュワシュワひろがってく。
夢中になって前歯で繊維をしゃりしゃりリズミカルに崩す。
ハチミツみたいに歯茎にとろり垂れて、じんじんしそうだ。
ほおばった甘い繊維が夢中でゴクゴク喉を落ちていく。
かじり付いて口いっぱいにほおばって。かじり付いてほおばって。
「甘うぃえ」　
「うぉん」

つやつや真っ赤な皮と、さらさら白い果肉のコントラスト。

ささやかな幸せがお腹につまったその後で
ちょっと気になる歯形の跡。ぴったりくっついてたサクラ色の唇。

ちらちら見てたら
いいたかったことを、逆に言われ放題。

だから
りんごみたいに真っ赤になった僕。

出典：出雲犬族＠目指せ小説家 ◆nm8wXm/w96
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