アナルビーズ
2009/06/10 22:24 登録: 萌(。・_・。)絵
アナルビーズ「まさかこんなのに転生するなんて…」
アナルビーズは自分の不幸を呪いました。
泣こうと思っても涙を流す瞳はどこにもありません。
アナルビーズの自分は、良い声で鳴かせて涙を流させることしか出来ないのです。
アナルビーズは嫌悪感に身をよじさせました。
けれど、その動きは快感で身悶えさせるものでした。
アナルビーズは死のうと思いました。
けれど、アナルビーズの身では自分でスイッチのオンオフも出来ません。
アナルビーズは絶望しました。
今後の展望は、誰かのアヌスに入ることしかわかりません。
アナルビーズは心の中で泣きました。
アナルビーズは暗く、小さな箱の中に詰め込まれました。
きっと、これから売られ、誰かのアヌスに詰められるのでしょう。
アナルビーズは悲しみました。
次に日の光を浴びる時はアヌスに詰め込まれる時なのです。
アナルビーズは一生日の光を浴びなくても良いと思いました。
ガタゴト、ガタゴト。
アナルビーズが入った箱はとても揺れました。
ガタゴト、ガタゴト。
アナルビーズは気が狂いそうでした。
ガタゴト、ガタゴト。
ガタゴト、ガタゴト。
ガタゴト、ガタゴト。
「997……998……」
箱の中でやることがなかったアナルビーズは、
何回揺れたかを数え続けていました。
ガタゴト……
「999……」
ガタンッ
「……1000」
ちょうど1000回揺れた時、箱の揺れはピタリと止まりました。
スイッチがオフだったアナルビーズもピタリと止まっていました。
ビリビリッ!
箱の外で、何かを引き裂くような音が聞こえてきます。
それを聞いたアナルビーズは心が引き裂かれそうでした。
「……まさか、もう?」
転生して間もないアナルビーズはアヌスに入る心の準備が出来ていません。
しかし、アナルビーズなため体の準備は出来ています。
アナルビーズは体を震わせようとしました。
けれど、当然スイッチはオフでしたから体は反応してくれません。
動いたとしても、反応するのはアナルビーズが入ったアヌスの主。
アナルビーズは嫌だと叫びたいと思いました。
しかし、アナルビーズはアナルビーズ。
嫌よ嫌よも好きの内です。
フワリ。
アナルビーズの入った箱は空を飛びました。
「うわあっ……!」
その感覚に、アナルビーズは少し感動しました。
「店長、これって二段目の棚で良いんスか?」
アダルトショップの店員が箱を持ち上げただけでした。
その事実に、アナルビーズは少し絶望しました。
カタコト、カタコト。
アナルビーズが入れられた箱が二段目の棚に運ばれていきます。
カタコト、カタン。
アナルビーズが入れられた箱が二段目の棚に陳列されました。
コトカタッ。
アナルビーズが入れられた箱が二段目の棚の一番奥に収められました。
棚の一番奥に収まったアナルビーズは少し安心していました。
これなら、自分が買われる可能性が低くなるからです。
アナルビーズは人を喜ばせるための道具です。
ですが、アナルビーズは人を喜ばせることが出来ないことが嬉しかったのです。
アナルビーズは、このまま棚の奥で静かに暮らしたいと思っていました。
ですが、アナルビーズは少し寂しくもありました。
なにせ、暗い箱の中で一人ぼっちなのです。
棚の前の方からは、とても中が良さそうな人間達の話し声が聞こえてきます。
アナルビーズはその声を聞くのがとても嫌でした。
だって、その話声の主達のアヌスに自分が入ることになるかもしれないのですから。
そして、それ以上にアナルビーズは孤独を感じていました……。
しくしく、しくしく。
アナルビーズは暗い箱の中で泣きました。
しくしく、しくしく。
ですが、アナルビーズはアナルビーズ。
その涙は輝く事はありません。
しくしく、しくしく。
もしもアナルパールだったならとは、微塵も思いませんでした。
アナルビーズは毎日、毎日泣いていました。
そんなある日のことです。
「ねえねえ、どうしてキミは泣いてるの?」
箱の外から、誰かがアナルビーズに話しかけてきました。
「だっ、だれ!?」
アナルビーズはビックリしました。
あまりに驚きすぎて、ビーズが少し取れてしまったかと思いました。
くすくす。
箱の外からは、笑い声しか聞こえてきません。
「……ねえ、だれなの?」
アナルビーズは勇気を振り絞ってもう一度聞きました。
アナルビーズは括約筋の締め付けにも耐えられます。
勇気を振り絞るのはお手の物でした。
「ごめんよ、キミがあんまりにもおどろいたもんだから」
声の主はおどけた調子で言いました。
ですが、アナルビーズが聞きたいのは声の主が何者かでした。
もしかしたら、この声の主のアヌスに自分が入るかもしれないのですから。
「ねえ、キミはだれ?」
「こんにちは。ボクはピンクローターだよ」
アナルビーズは同業者だとわかって安心しました。
その直後、自分がそう思ってしまったことを嘆きました。
「どうしてボクに話しかけてきたの?」
「そりゃそうさ。だって、毎日泣いてるんだもん」
そう言われて、アナルビーズは顔を赤くしました。
ですが、アナルビーズの色は赤ではありませんでした。
「聞こえてたんだ」
「ボクだけはね」
ピンクローターは敏感な部分を刺激するために作られています。
だから、その耳も敏感なのです。
「ねえねえ、どうしてキミは泣いてるの?」
ピンクローターは最初と同じ質問をしました。
ですが、アナルビーズは黙ったまま。
アヌスを開く事は得意ですが、口を開くのは苦手だったのです。
「言いたくない?」
「うん、ごめん」
ピンクローターはそれなら仕方ないとそれ以上追求はしませんでした。
その日から、アナルビーズは泣かなくなりました。
だって、泣いたら笑われてしまうのですから。
「ボクにはね、夢があるんだ」
それに、ピンクローターという友達が出来たのですから。
「どんな夢?」
「女子中学生の性の目覚めを手助けしたいんだ」
ピンクローターはとても立派なピンクローターでした。
アナルビーズは、それには少しウンザリしていました。
アナルビーズとピンクローター。
一本と一個は色々な話をしました。
「あっ、今オナホールが買われていったよ」
一番多いのは、仲間の旅立ちに関する話でした。
「いくつ?」
「いつもの常連さんみたいだから、三つじゃないかな」
それは、典雅な話とはとても言い難いものでした。
そんなある日のことでした。
「このピンクローターで良い?」
ピンクローターの旅立ちの日がやってきました。
それは、アナルビーズとピンクローターの別れを意味します。
聞こえてきたのは、優しそうな男の人の声。
ピンクローター仲が良いエロカップルに買われていくのでしょう。
アナルビーズは、少しも羨ましくありませんでした。
ですがどうしたことでしょう。
「いやだ! ボクはここをはなれたくない!」
ピンクローターは必死に嫌がりました。
アナルビーズはどうしたのかと思いました。
「どうしたんだい。女子中学生じゃないと嫌なのかい?」
アナルビーズの思考は、ピンクローターの嗜好によるものかと考えました。
「ちがうよ。そうじゃないんだ」
ピンクローターはアナルビーズの言葉を否定しました。
「おしえてよピンクローター。それならどうして?」
アナルビーズはわけがわかりません。
「だって、こn」
ヴィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙……
ピンクローターの言葉は、ピンクローター自身の振動によって妨げられました。
エロカップルの動作確認です。
カチリ。
ピンクローターのスイッチがオフになった音が聞こえました。
その音は、ピンクローターの振動音よりも大きなものでした。
ピンクローターは、振動音が小さい優れものだったのです。
「すごいなあ」
その事実を知ったアナルビーズはただただ驚きました。
「ありがとう」
褒められたピンクローターは、照れくさそうにお礼を言いました。
「ねえ、ピンクローター」
アナルビーズはピンクローターに問いかけました。
だって、ピンクローターが嫌がる理由がわかりません。
「この人たち、男どう」
ヴィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙……
ピンクローターの言葉は、また振動によって遮られました。
アナルビーズは、それがとてもありがたいと心から思いました。
カチリ。
ピンクローターのスイッチがオフになった音が聞こえました。
アナルビーズは何も言えませんでした。
一本と一個の間に沈黙が流れます。
「これを入れながら挿れてやるからな」
「俺……おかしくなっちゃうかもな」
一本と一穴の間に期待が溢れます。
先に沈黙を破ったのはアナルビーズでした。
「やっぱり、ピンクローターだってアヌスに入るのは嫌だよね」
アナルビーズは、はじめて自分の心の内を明かしました。
アヌスに入りたくない。
それは、アナルビーズとしての自分自身を否定する考えです。
だから、アナルビーズは別れになるこの時まで言い出せなかったのです。
きっとピンクローターはアヌスに入りたくないんだ。
それに、男の人のアヌスだからなおさらだ。
アナルビーズはそう思っていました。
ピンクローターは女子中学生を刺激したいと言っていたのです。
アナルビーズがそう思うのも無理はないかもしれません。
「いいや、ちがうよ。そうじゃないんだ」
しかし、ピンクローターの答えは違いました。
ピンクローターの答えにアナルビーズは驚きました。
「ええっ、キミはアヌスに入るのが嫌じゃないのかい?」
「アナルビーズ。ボクたちは、人をきもちよくさせるための存在だ」
ピンクローターの声はとても落ち着いていました。
その言葉に嘘があるとはアナルビーズには思えませんでした。
ですが、その言葉が嘘であって欲しいとはアナルビーズは思いました。
「人をきもちよくさせるためなら、ボクは全力で震えるよ」
アナルビーズは、ピンクローターの言葉に聞き入っていました。
「たとえそれがどこであろうともね」
自分は性欲を満足させるための道具。
そう思っていたアナルビーズは、ピンクローターの意思を聞いても別に感動はしませんでした。
「でも、アヌスに入れられるのだけは駄目なんだ」
ピンクローターは一度言葉を切り、そして言いました。
「ボクのコードが切れちゃうかも知れないから」
そう、ピンクローターは本来当てて楽しむためのものなのです。
「そんな……」
それでは、キミは死んでしまうじゃないか!
そう叫ぼうと思っても、アナルビーズは口が震えて声が出せません。
スイッチが入っても、アナルビーズは震えるタイプではありません。
「入れられながら出し入れされたら、ボクのコードはきっと切れてしまう」
寿命を迎えるのなら、それは大人の玩具としては幸せです。
ですが、正しくない用途で壊れるのは大人の玩具としては少し悲しいのです。
「だけど……ボクはこれでやっと人をきもちよくさせられるのか」
そう言ったピンクローターは、すっかり落ち着きを取り戻していました。
「ありがとう、アナルビーズ。話し相手になってくれて」
ピンクローターの声がどんどん遠くなっていきます。
「ピンクローター! ピンクローター!」
アナルビーズは必死でピンクローターを呼びました。
ああ、けれど!
けれど、ピンクローターが買われていくのを止めることは出来ません!
どうして自分はアナルビーズなんだ。
アナルビーズは思いました。
もしも自分がダッチワイフだったら、空気の抜けた手でもピンクローターを離さないのに。
もしも自分が乗馬鞭だったら、えいやとカップルを叩いてピンクローターを取り戻すのに。
アナルビーズは必死で体を動かそうとしました。
けれど、スイッチの入っていないアナルビーズは動きません。
弱、中、強の三段階の振動機能も、今は何の意味もありません。
「ありがとうございま〜す」
店員の気の抜けた声が、ピンクローターが買われたという事実を物語っていた。
「1000円になりま〜す」
きっと、ピンクローターは1000円分以上の快感を与えることでしょう。
コードが切れるまで。
振動をし続けられるかぎり。
「ありがとうございました〜」
アダルトショップの自動ドアが開く音が聞こえました。
「さ、帰って早速試すか」
「おい、バカ! 外で大きな声で言うなって!」
エロホモカップルの仲睦まじい声が聞こえました。
ですが、その事を話し合う相手はアナルビーズにはもういません。
……コトリ。
アナルビーズが入っていた箱が倒れました。
アナルビーズが動いたからではありません。
今まで隣にあったピンクローターの箱がなくなったからです。
アナルビーズとピンクローターは、箱越しとはいえ支えあっていました。
その支えをなくしたアナルビーズの箱が倒れるのは当たり前でした。
アナルビーズは、また一人ぼっちになってしまいました。
それからどれくらいの時間がたったのかわかりません。
ですが、アナルビーズには関係がなくなっていました。
二段目の棚の奥で、アナルビーズは心のスイッチをオフにしていました。
だから、アナルビーズは泣きません。
だから、アナルビーズは嘆きません。
ある時は、男女のカップルがアナルビーズに目をやることもありました。
けれど、アナルビーズは素通りされました。
ある時は、ピンクローターを買っていったホモカップルがアナルビーズを手に取りました。
けれど、太さに満足出来なさそうなのか元の位置に戻されました。
アナルビーズは誰にも使われそうにありません。
ですが、アナルビーズはそれでも良いと思っていました。
このまま廃棄処分になっても良いと思っていました。
ですが、実際は返品です。
他の仲間たちが全て売られていき、アナルビーズは店で一番の古株になっていました。
時には再度入荷されたピンクローターが話しかけてくることもありました。
けれど、それはアナルビーズの友達のピンクローターではありません。
アナルビーズは黙って待ちました。
このまま一度も動くことなく、このまま一度もきもちよくさせることなく終わることを。
……ゴソゴソッ。
「だれ?」
二段目の棚の奥、アナルビーズは箱が揺れたのに気付きました。
ここの店員はサボリ癖があるので、商品の前出しではないでしょう。
だから、お客さんだとアナルビーズは考えました。
同時に、きっと買われることはないんだろうなとアナルビーズは思いました。
ゴソゴソッ。
アナルビーズは不思議に思いました。
いつもなら箱が棚から取られ、すぐに空を飛ぶような感覚がします。
なのに、今回はすぐにはそうなりません。
「どうかしたのかな?」
アナルビーズは箱が棚に詰まっているのかもしれないと思いました。
そして、商品として手にとって欲しいと思った自分に驚きました。
フワリ。
やっと空を飛ぶ感覚がやってきました。
何度か経験をしていて、アナルビーズはその感覚がお気に入りでした。
カタコト、カタコト。
箱の中でアナルビーズが揺れます。
カタコト、カタコト。
カタコト、カタコト。
カタコト、カタコト。
いつもより長い揺れにアナルビーズはどうしていいかわかりません。
この揺れの長さ……。
「もしかして」
アナルビーズは持ち歩かれているのです!
カタコト、カタコト。
アナルビーズは驚きました。
もしかしたら自分は買われると思うと、どういったビーズをしていいのかわかりません。
カタコト、カタンッ。
揺れが止まりました。
「とうとう買われる日が来たんだ」
言ってはみたものの、現実感がありません。
はじめはアヌスに入るのが嫌で嫌でたまりませんでした。
けれど、買われないのは商品としては傷つきます。
だから、今だったら購入する人のアヌスに入っても良いと少しだけ思いました。
「どうしたんだろう?」
なのに、いつまで待っても自分の値段が言われることはありません。
ウィーン…。
「あれ、おかしいな」
今の音は、何度も聞いてきた旅立ちの音です。
「ボクはまだ買われてないよ。だけど、お客さんは手に持ってるよ」
アナルビーズは混乱しました。
「あれ? あれ?」
アナルビーズの箱を持っている人間は――
ガタゴトガタゴトッ!
「うわああああっ!」
アナルビーズを買うつもりは無かったのです。
ガタゴトガタゴトッ!
「揺れる! 揺れる!」
箱の中のアナルビーズは怖くてたまりません。
ガタゴトガタゴトッ!
「痛い! 痛い!」
箱の中のアナルビーズは体を何度もぶつけます。
ガタゴトガタゴトッ!
「壊れる! 壊れる!」
アナルビーズは強い衝撃を与えてはいけません。
ガタゴトガタゴトッ!
「助けて! 助けて!」
アナルビーズは助けて欲しいと叫びました。
けれど、アナルビーズを助けてくれる人は誰もいません。
ガタンッ!
「痛いっ!」
一際大きく揺れた後、さっきまでのことが嘘のように揺れはなくなりました。
「いたたたた……」
アナルビーズは体をさすろうとしましたが、アナルビーズなのでそれは出来ません。
アナルビーズはちょっぴり悲しくなりました。
「いったい、何があったんだろう」
アナルビーズはまだ少し混乱していましたが、そのことが気になっていました。
アナルビーズはアヌスの奥へと進む、いわば開拓者。
探究心は強いのです。
ですが、そんなアナルビーズも今は箱の中。
アナルビーズの箱を持っている人が何かをするまでどうすることも出来ません。
カタコト、カタコト。
さっきまでの激しいものとは違う、ゆったりとした揺れ。
それに、フワフワと揺りカゴに乗せられているような優しい揺れ。
「ふわあぁあ……」
驚き、疲れていたアナルビーズはだんだん眠くなってきました。
それに、元々スイッチはオフなのです。
アナルビーズはまどろんでいました。
ガタンゴトン、ガタンゴトン
電車に乗っているみたいです。
プップー! ブルルーン
車が沢山走っているみたいです。
カチャカチャッ、ギイイッ……バタンッ
どこかの家に着いたようです。
アナルビーズは段々怖くなってきました。
自分は買われたわけではありません。
なのに、どこか遠い所へ来てしまったのですから。
それに、アナルビーズをここまで連れてきた人間は今まで一言も話していなかったのです。
アナルビーズは心の中で震えていました。
トタトタトタ。
階段を上がる音が聞こえてきます。
ですが、その音もすぐにやみました。
アナルビーズは自分が二階に居るんだと思いました。
階段を上がり終えた後も、少しだけアナルビーズの入った箱は揺れました。
ユラユラ、カタコト。
ユラユラ……カチャッ……パタンッ。
トサリッ。
「うわあっ」
アナルビーズは下から突き上げられるような揺れに驚きの声をあげました。
アナルビーズは下を突き上げるものなので驚くのは当然です。
アナルビーズが入った箱は、その揺れを最後に動かなくなりました。
アナルビーズは不安で不安で泣きそうになりました。
ゴソゴソッ。
アナルビーズの周りで、今まで聞いたことのない音が聞こえてきます。
「何? 何?」
それと一緒に、アナルビーズが入っている箱もカタカタと揺れます。
フワッ。
アナルビーズは、いつもの取り上げられた時の空を飛んでいる感覚を感じました。
「なんだろう、なんだろう」
カチカチカチリッ
アナルビーズは、今の音に聞き覚えがありました。
アダルトショップにいた時に、店員から聞こえてきた音です。
スッ……
「!?」
アナルビーズの心臓の鼓動が強になりました。
だって、箱の中に何かが入ってきたのですから!
「怖いよ! 怖いよ!」
アナルビーズは叫びました!
今まで箱の中に自分以外のものが入ってきたことなってなかったのですから!
「ピンクローター! 助けて! 助けて!」
友達のピンクローターに助けを求めましたが、彼はここにはいません。
もしかしたら今頃男のアヌスに入っているかもしれないのです。
ですが、今のアナルビーズはそんなこともわからない程混乱していました。
ピッ。
……幸いにも、その侵入者はすぐに出て行きました。
アナルビーズのようにひっかかることはありませんでした。
「はぁ、よかった」
アナルビーズがほっと一息ついたのも束の間。
ゴソゴソッ……。
アナルビーズが入っている箱がゆっくりと開き始めました。
アナルビーズはどうしたらいいかわかりません。
だって、一度はもう日の光を見なくても良いとおもったのですから。
購入した人のアヌスに入っても良いと少しだけ思いもしました。
ですが、箱を開けようとしている人は買ったようには思えません。
でも、アナルビーズがわかっていることが一つだけありました。
「そとだ」
外に出られる。
アナルビーズだから結局中に入るものの、アナルビーズに転生して初めての外です。
箱の隙間から光が差し込んできます。
人工的な光ではありません。
アナルビーズになる前に見た、燃えるような夕日の赤。
アナルビーズには瞳はありません。
まぶしいという感覚はありません。
けれど、久々の太陽の光は連なったビーズに妙に染みました。
カパリ。
アナルビーズの箱は、アナルビーズを送り出すように蓋を開きました。
そこから見える景色は、箱を開けた人間の手で塞がっていました。
けれど、夕日の光が差し込んできます。
「そとだ」
アナルビーズは外に出ます。
「そとだ!」
アナルビーズは外に出ます。
外に出てもすぐ中に入るかもしれないとは考えません。
だって、アナルビーズになって初めての外。
アナルビーズは外に出る時も良い仕事をするのです。
「はやく! ボクをここから出して!」
けれど、どうしたのでしょう。
箱を開けた人間はアナルビーズを外に出そうとしません。
それにはアナルビーズもビーズを傾げた気持ちになりました。
使わないのなら、箱を開ける理由がわからないのですから。
「ねえ、どうしたの? はやくボクをここから出してよ」
アナルビーズはお願いしました。
けれど、箱を開けた人間の手は動く気配がありません。
アナルビーズは困りました。
外に出るためには人間の手を借りなければいけません。
「ねえねえ、キミはボクを使うつもりなんだよね?」
だから、アナルビーズは人間に話しかけました。
「だったら箱から出さなきゃ駄目だよ」
箱から出してくれるように説得しました。
「箱から出さないとスイッチも入れられないよ」
ですが、アナルビーズの言葉は人間には届くはずが無いのです。
その時、奇跡がおきました。
「……っ」
アナルビーズの箱を開けた人間が、ゆっくりと箱の中に指を差し込んできたではありませんか!
「やった! ねえ、もしかしてボクの言葉が聞こえてるの!?」
そんなことはありません。
ただの偶然です。
「わーい! そとだ! わーい、わーい!」
ですが、アナルビーズの喜びに変わりはありません。
アナルビーズは柔らかい指の感触をビーズに感じました。
指が一本触れたのですが、すぐに引っ込められてしまいました。
「もう一本だよ! がんばれ!」
アナルビーズは応援しました。
アナルビーズは気付いたのです。
自分に触れた指先が、少し震えていたことに。
「がんばれ! がんばれ!」
アナルビーズはアヌスに挿入するものです。
出口にあたる部分を入り口にするものです。
だから、アナルビーズを怖がるのも無理はありません。
「がんばれ! がんばれ!」
アナルビーズは応援しました。
「がんばれ! がんばれ!」
いつしか、外に出たいという気持ちよりも人間を応援する気持ちが強くなっていました。
アナルビーズは人をきもちよくさせるためのものです。
中に入り、外に出ることによって人をきもちよくさせるものです。
「がんばれ! がんばれ!」
だから、アナルビーズがこの人間を応援するのは自然なことです。
「がんばれ! がんばれ!」
中に入ったのなら、外に出たいのはアナルビーズとして当たり前です。
ですが、そこには人の力が必要になります。
「がんばれ! がんばれ!」
指の力や括約筋の違いはあれど、アナルビーズは人間がいないと駄目なのです。
「がんばれ! がんばれ!」
おずおずと差し出された人差し指がアナルビーズに触れました。
「がんばれ! がんばれ!」
そして添えられるように親指が触れました。
「がんばれ! がんばれ!」
人間の人差し指と親指で、アナルビーズはどんどん外へ出て行きます。
「がんばれ! がんばれ!」
「がんばれ! がんばれ!」
スルリッ。
人間は反対の手で箱を持っていたのでしょう。
アナルビーズ自身は上へ。
アナルビーズが入っていた箱は下へ。
生まれてからずっと一緒だった箱に別れを告げる暇はありません。
アナルビーズは一気に外の世界に飛び出しました。
「うわあ、まぶしい!」
アナルビーズは夕日を浴び、思わず言いました。
まぶしくはないのですが、まだアナルビーズに転生して感覚がつかめていなかったのです。
ですが、今のアナルビーズは人間の指二本で宙吊りになっている状態。
怖がってしまうよりも、驚いていた方が良かったのかもしれません。
「…………」
ゴクリ。
目の前の人間からツバを飲む音が聞こえました。
驚いていたアナルビーズは、その音を聞きつけハッとしました。
これから、その人間のアヌスにはいるかもしれないのです。
「えっと、こんにちは。ボクはアナルビーズ」
言うまでもない自己紹介ですが、アナルビーズは礼儀正しく言いました。
お辞儀をする程の動きはスイッチを入れたアナルビーズにも無理です。
自己紹介を終えたアナルビーズは、そこでようやく人間の姿を確認しました。
これから長い付き合いになるかもしれないのです。
突き合いにはなりません。
だって、突くのはいつでもアナルビーズなのですから。
「あれ?」
アナルビーズは、自分のことを凝視している人間を見て疑問を抱きました。
人間はまばたき一つせずにアナルビーズを見ています。
「ねえ、ひとつだけ聞きたいんだけどさ」
人間の頬は夕日のせいだけではなく真紅に染まっています。
「キミってもしかして」
人間の可愛らしい顔は、今は好奇心に彩られています。
「女子中学生?」
アナルビーズは死にたいと思っていました。
アナルビーズはアヌスに入るのが嫌で嫌でたまりませんでした。
そんな中、ピンクローターと出会い、友達になりました。
奇妙な巡り合せで、ピンクローターの夢だった女子中学生に出会いました。
今のアナルビーズは死にたくなんかありません。
今のアナルビーズは人をきもちよくさせる大人の玩具としての自覚を持っています。
「……こんなのを入れて……本当に平気なのかな」
「だいじょうぶだよ、きんちょうしなくていいよ」
だって、目の前で怖がりながらも、自分に期待してくれている人間がいるのですから。
「ボクが、キミのアヌスに入ってきもちよくさせてあg」
ウィンウィンウィンウィンウィンウィンウィンウィン
アナルビーズの言葉は、アナルビーズ自身のいやらしい動きで最後まで紡がれることはありませんでした。
けれど、きっとアナルビーズは笑いながらアヌスに入れることでしょう。
だって、アナルビーズはもう立派なアナルビーズなのですから。
おわり
出典:VIP
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(・∀・): 240 | (・A・): 66
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