キミニヨバレテ 最終話
2009/07/19 01:43 登録: 萌(。・_・。)絵
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『見て!このお花。似合うでしょ?』
『お、すっごく綺麗だお!』
『でしょー』
『もっとたくさんあったら、もっと綺麗だお』
『も、もっと綺麗になったら・・結婚してくれる?』
『するお!!』
『約束だよ!』
『ブーン!見て!今日はこんなに見つけたよ!!』
『ツン、やっぱりやめるお』
『どうして?』
『だって、お花さんがかわいそうだお』
『・・・だって、結婚してくれるって』
『んー。じゃあなかったことにするお』
『・・・でも』
『どうしたお?』
『ううん、なんでもない』
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<最終話 The course of life>
――――ガタン、ゴトン。
ブーンは馬の牽く荷台に寝そべりながら空を見ていた。
目的の場所に向かう途中、同じ方向へ向かう人と出逢ったのだ。
しばらくは一本道だから寝ててもいい。
その言葉に甘えていた。
そして見た夢。
恐らくそれが最後の部位、「心臓」の持ち主の記憶だと思うのだが何かがおかしかった。
それは人の記憶であってそうでないような。
そう、「自分も同じものを見たことがある」という感覚。
( -ω-)(それに、多分・・・会話をしていたのは僕だお)
日差しが強いので目を細める。
白く差す光は直視できない。
心臓――――。
足があっても、手があっても、これがなければ動かせない。
絶えず血を送り出してくれているからこうしていられる。
その持ち主だった人が自分に関係のある人。
そう考えると何とも云えない。
いくら感謝の気持ちを伝えたくても、面と向かっては言えないのだから。
気温は徐々に高くなり、夏の兆しが見えてきていた。
再び、旅が始まった季節になろうとしているのだ。
( ^ω^)「君は一体誰なんだお」
ぼそりと呟く。
独り言は誰にも聞こえていないだろう。
旅に出る前、ワカッテマスからメモを貰っていた。
各部位の持ち主が書かれた紙。
ただし、ロマネスクのだけは書かれていなかった。
なんでも、名前を知ることができなかったらしい。
そして、心臓の持ち主の名前を見る。
「心臓 ツン」
とだけ、短く書かれている。
( ^ω^)「ツン・・・たしかドクターも言ってたお」
だけどそれだけじゃない。
やはり夢と同じようにどこかで感じていた。
( ^ω^)「行けば分かるかお・・・」
上半身を起して、進んでいる方へ体を向ける。
荷台の前には人が座っており、その人が馬を操っている。
「ん?」
後方に違和感を感じたのか男が振り返る。
ミ,,゚Д゚彡「おお。起きたか」
癖っ毛の為か髪はぼさぼさとしている。
しかしながら、それがよく似合っていた。
彼の名前はフサギコ。
街から街へと渡り、物品の取引をしている行商人。
途中で立ち寄った街で仲良くなり、目的の方向も一緒と言うことで乗せてもらったのだ。
( ^ω^)「お疲れ様ですお」
ミ,,゚Д゚彡「どってことないさ。まだ寝てても平気だぜ?分かれ道が来たら教えるからよ」
( ^ω^)「いえ、起きてますお」
それを聞くとフサギコは笑いながら前に向きなおす。
ブーンもは横を向いて流れる景色を茫然と眺めていた。
そして思う。
今まで来た道を。
( ^ω^)(大変だったけど、嫌じゃなかったお)
楽しいことばかりじゃなかった。
怖かったこともあった。
それだけ濃く、たくさんの体験をしてきたのに。
( -ω-)「記憶が元に戻らないお」
凭れ掛かるようにしていた体をずるずると倒し、寝そべる。
再び仰向けにはなったが寝る気はない。
しかし、ブーンは考える。
今記憶が戻ったとして、どうなるのだろうか。
( ^ω^)(意外とこのままでもいいかもしれないお)
ぼんやりと眺める空はやはり晴れている。
鳥が太陽と重なり、黒く影が出来た。
そのまま道なりに進んでいくと、分かれ道に辿り着いた。
ミ,,゚Д゚彡「俺は右だけど、お前はどっちだ?」
( ^ω^)「左に行きますお。・・・本当にお世話になりました」
ミ,,゚Д゚彡「気にするな、またいつか会おう」
フサギコは白い歯を見せて笑い、大きく手を振りながら進んでいった。
見る見るうちに小さくなる影を見送り、ブーンも道を歩きはじめる。
( ^ω^)「ツン・・・。ツン」
顎に手を当て、物思いに耽る。
それが何時間が続くと、一つの建物が見えた。
緑の中に佇む、大きな建物。
白くどっしりと構えられたそれを、ブーンは見たことがあった。
( *^ω^)「お・・・。おお!
この旅のスタート地点。
その建物に近づき、扉を前にする。
そして、それにゆっくりと手をかけ開ける。
中からは独特の匂いが漂っていて、それが懐かしさを感じさせた。
( ^ω^)(でも、何で今さらここに?)
とは言っても、違和感については何も解らない。
ただ、感じたから行くというだけだった。
その結果、最後に感じた場所がここだったのだろう。
入口近くのカウンターに座る女性に話しかけ、ある人物を呼んでもらった。
近くのソファーに座り、辺りを見回す。
ほとんどが何も変わらずそのままだった。
しばらく外を眺めていると、一人の人物が近付いてきた。
くりくりとした大きな目。
身に纏う長い白衣。
( *^ω^)「久しぶりですお!ドクター」
( <●><●>)「本当に、お久しぶりです」
表情からはなかなか読み取れないが、声は笑っていた。
互いに手を取り、再会の喜びをかみしめる。
本当は走ってきたかったのですが。
そう言って、ワカッテマスが肩をすくめる。
壁には「走るな」というポスターが貼られていた。
それを見て、またしても小さな笑いがこぼれた。
( <●><●>)「逞しくなりましたね」
ワカッテマスは、ブーンをじっと見て言う。
その言葉に照れくささを覚えながらもブーンは頷く。
ゆっくり話そうということで、テラスに行くことになった。
大きなテラスに白く、丸いテーブル。
ちょうど日陰になっており、心地の良いものだった。
( <●><●>)「旅は終わったのですか?」
( ^ω^)「それが・・・」
( <●><●>)「話していただけますか?」
ブーンは静かに頷く。
右手の望みを叶えた後も、次々と違和感を感じたこと。
たくさんの街を歩いたこと。
色んな人と話したこと。
そしてそれらが自分を成長させてくれたこと。
話出したら限がないといったように次から次へと話す。
それを聞いてワカッテマスは楽しそうにしている。
( ^ω^)「そして、最後の――――、心臓の違和感に連れられてここに来たんですお」
( <●><●>)「・・・心臓の?」
(;^ω^)「え?・・・はい」:
心臓という言葉を口にしたとたんワカッテマスは言葉を強くした。
それが迫力をもっていたため、ブーンは少し躊躇う。
( <●><●>)「記憶は?」
( ^ω^)「まだ戻ってないですお」
そうですか、と、ワカッテマスは背もたれに寄りかかる。
テーブルに置かれている二つのコップには水滴が纏わりついている。
( ^ω^)「でも、思うんですお。このまま記憶が戻らなくてもいいかも、と」
( <●><●>)「それは本当ですか?」
( ^ω^)「はい」
ワカッテマスはどこか悲しげな顔をして、コップを手に取る。
中に入っている氷をカラカラと揺らし、そっと口に運ぶ。
水滴は静かに流れおち、砕け散った。
( <●><●>)「さて、話は一先ずここまでにしましょう」
時間も時間ですし、と付け足して中に入るよう促す。
いつの間にか外は赤くなっていた。
ブーンは返事をして、ワカッテマスの後を追った。
前に使っていた部屋とは違う部屋を使うことになった。
宿としても機能しているらしく、そちらを利用してくれとのこと。
懐かしかった。
旅を始めて最初の再会を経験した。
( ^ω^)「にしても・・・」
記憶が戻らなくてもいいかも、と言ったとき彼が見せた表情が気になった。
悲しそうで、寂しそうな、簡単に崩れてしまいそうな表情。
( ^ω^)「後は心臓だお」
ワカッテマスがその表情を見せたとき、心臓の違和感がふっと消えた。
存在はしている、それは確かだった。
だが、どこかに行こうという意思が無くなった。
まるで、記憶が戻らなくてもいいという言葉に反応したように。
『ツン、最近どこに行ってるんだお?』
『どこって?』
『僕に内緒にしてどこかに行くことがあるお』
『ブーンには、内緒です』
『なんでだおー』
『今度教えてあげるよ』
『絶対だお!』
『うん』
( ^ω^)「おー」
上半身を起こし窓から外を見る。
相変わらずの緑。
鳥の囀をしばらく聞いたあと、ベットからのそのそと降りる。
( ^ω^)「朝食、食べに行くかお」
建物内にある食堂に足を運ぶとワカッテマスを見つけた。
ブーンは彼に近づき、挨拶を交わす。
( <●><●>)「お早うございます。良く眠れましたか?」
( ^ω^)「はい、とっても」
( <●><●>)「それは何よりです」
ワカッテマスは微笑み、コーヒーを啜る。
そして、口を開きブーンに尋ねる。
( <●><●>)「ツンさんのことも思い出せないのですか?」
何度も夢に出てくる名前。
それを聞いても、今一ピンとこない。
( ^ω^)「何度も夢には出てくるんですお。だけど何と言いますか・・・」
しどろもどろになるブーンに、ワカッテマスは思わず苦笑いをする。
そして、完璧に記憶から消えているわけではないと安堵した。
( ^ω^)「あ、そうですお」
ブーンは軽く手を叩き、夢に出てきた花について聞く。
その花が何か手掛かりになれば、と思ったのだ。
(;<●><●>)「あの・・・もう一度説明してもらえますか」
(;^ω^)「だから・・・、車輪みたいで、紫色で、綺麗で、だけど一つじゃない花」
(;<●><●>)「さっぱりわかりません」
ワカッテマスは低く唸る。
それも無理はない。
この説明で分かる人はそうはいないだろう。
( <●><●>)「!!」
ワカッテマスは何かを思い出したかのように立ち上がる。
そして「待っていてください」と足早に進んでいった。
少しすると、何かを手にしながら戻ってきた。
紙と、様々な色をしたペンや鉛筆。
( <●><●>)「絵の具を使いたいのなら、場所を変えますが」
つまり「絵を描いて見せろ」ということなのだろう。
ブーンはこれで構いませんと言って、色鉛筆を手に取る。
( ^ω^)「夢の中だから、あまり自信ないですお」
( <●><●>)「構いません。どれだけ時間をかけてもいいので、出来るだけ丁寧にお願いします」
それからは実に静かなものだった。
ブーンは時折、何かを思い出すように目を閉じる。
ワカッテマスは、それをじっと見つめる。
そうやって時間が流た。
( ^ω^)「できましたお」
( <●><●>)「・・・!ここまででしたか」
ワカッテマスは絵を見て感嘆の声を漏らす。
とても綺麗な、紫色の花。
( *^ω^)「照れますお」
その時、ブーンの頭に声が響いた。
外側からではなく、内側から。
『あら、アンタそんなに上手だったの?』
( ω )「・・お」
『今度、私を描いてみてよ』
( ω )「・・・」
『今じゃなくて、今度。見せたい場所があるから、そこで描いて』
( ;ω;)「・・・お?」
( <●><●>)「どうしました?」
前にもこんな事があったな、なんて思いながら涙を拭う。
泣いていないつもりでも、それは流れ続けた。
( ;ω;)「何か、とっても大切なのに、なのに・・・」
( <●><●>)「ツンさんですか?」
ブーンは何度も頷く。
ワカッテマスはブーンを連れて昨日と同じようにテラスへ向かった。
( <●><●>)「泣きやんだようですね」
( ^ω^)「・・・はい」
鼻をすすりながら返事を返す。
ワカッテマスはゆっくりと、話を始める。
( <●><●>)「今は無くなってしまいましたが、近くに村があったのです。
あなたとツンさんは、そこの出身です」
少しずつ、ゆっくりと話す。
( <●><●>)「私がここに来た時、すでにあなたは冷凍状態にありました。
そして、いつもあなたを心配していたのもツンさんです」
( ^ω^)「・・・」
ブーンの心臓が痛む。
息苦しくてしょうがなかった。
心臓が、その話を聞きたがらないといったように。
( <●><●>)「彼女もまた、医者でした。私なんかよりずっと腕の良い。
彼女はいつもあなたの話をしていました」
ブーンが絵を描くのが上手いと聞いたのもその時だったそうだ。
( <●><●>)「ある時です、あなたの手術が可能になりました」
( ^ω^)「四肢がそろったんですかお?」
ワカッテマスは「ええ」と短く切り、頷く。
( <●><●>)「しかし、手術を終えたとおもった所で、問題が発生しました」
「――――あなたの心臓が機能を停止したのです」
そして、ブーンはよく考える。
よく考えなくたって分かってしまうのだが、否定したかった。
話を聞く感じ、ツンは生きていた。
その心臓が自分に繋げられているということは。
( ω )「なんで・・・、僕を助けたお」
( <●><●>)「・・・」
( ω )「どうしてツンから心臓をとってまで僕に繋げたお!!!!」
ブーンは力いっぱいにテーブルを叩く。
ワカッテマスは拳を強く握り辛そうに呟く。
( <●><●>)「それが、彼女の望みだったからです」
( ω )「なんで、ツンはそんなこと望んだお・・・」
それを聞いた途端ワカッテマスはブーンを睨みつけた。
目は心なしか潤んでいる。
そして一言、恐ろしいほど冷たく言い放つ。
「わからないのですか?」
ワカッテマスは答えを聞かないで白衣を揺らしながら歩いて行った。
ブーンは下を向いたまま、日差しに照らされる。
( ω )「ツン・・・」
何度呟いても思い出せない。
自分のために命を投げた人。
何度も夢に出てくる人。
そして――――。
( ω )「――――ッ」
頭に映像が走る。
ザラザラとした灰色の砂嵐がそれにかかるようになる。
それでもしっかりと景色は見える。
映像はまず、建物から出るところから始まった。
そのまま、まっすぐに進まず、建物の裏へと回る。
時折見える、陽を遮る細い腕。
ブーンは、「思い出せない大切な人」の視点だと理解する。
しばらく歩くと、突然茂みに足を運んだ。
そうして、道とは言えないところを進んでいく。
すると、突然ぽっかりと開いた空間が現れた。
その足元には――――。
( ^ω^)「!!」
すぐに立ち上がり、建物の中に入る。
そして、入口へと駆ける。
どこからか聞こえる「走らないで」という言葉はすべて無視した。
あの風景はとても大切なものなのだ。
そんなことでは止まっていられない。
『見て!このお花。似合うでしょ?』
頭の中に幼い声が響く。
金色の髪をふわりと揺らす彼女は笑っている。
院内から飛び出すと、映像と同じように裏口に回る。
そして、そのまままっすぐ走る。
『もっとたくさんあったら、もっと綺麗だお』
幼いころ彼女に言った、心からの声が蘇る。
二人はまだ子供だった。
( ;ω;)「・・・ッ」
涙を拭いながら走る。
拭き取り切れないそれは、頬を横に流れどこかに飛んでゆく。
『も、もっと綺麗になったら・・結婚してくれる?』
『するお!!』
2人の交わした口約束。
ブーンにとって何気ない一言。
だけど、彼女にはそれがとても大切なことだった。
茂みに飛び込み、草木をかき分けて進む。
そうしてる間にも記憶が流れる。
『今度、私を描いてみてよ』
そう言った彼女はもう居ない。
( ;ω;)「ごめんお」
再び記憶が流れてくる。
大人びた彼女が、子供らしく笑う。
振り返りながら、とても綺麗に。
『今じゃなくて、今度。見せたい場所があるから、そこで描いて』
見せたい場所――――。
ブーンはそこに向かっていた。
そして、そこに出た瞬間、ブーンは崩れ落ちる。
開ける視界。
綺麗な紫が風に揺れる。
彼女が育てた花畑。
ブーンは大きな声を出してしばらく泣き続けていた。
(;<●><●>)「ブーンを見ませんでしたか?」
ブーンが出て行ってから暫く経ち、ワカッテマスは焦っていた。
いくら探しても見つからないのだ。
「雨が降り始める前に、外に飛び出して行きましたが・・・」
(;<●><●>)「外に・・・?」
雨が降り始めたのはどれほど前だろうか。
夕暮れ時と重なっているせいで、外は暗い。
(;<●><●>)「どうして外に・・・」
ぼそぼそと呟いていると、扉の前に人影が現れた。
探していた人物だ。
(;<●><●>)「ブーン!」
( ω )「・・・お?ドクター――――」
そのままワカッテマスに体重を預けるように倒れこむ。
ブーンは消えていく意識の中、ツンの残した景色を思い出していた。
目を開ける。
真っ白な天井に、独特のにおい。
( ´ω`)「お・・・」
「目が覚めましたか」
ブーンは声のする方に顔を向ける。
白衣を着た、眼のくりくりした男。
( <●><●>)「心配しましたよ」
( ^ω^)「すみませんお」
( <●><●>)「いえ、私が悪かったんです。それに、無事で何よりです」
( ^ω^)「ドクター、僕言いましたお。記憶が戻らなくてもいいと」
( <●><●>)「・・・」
( ω )「全然よくなかったお・・・。記憶が無いのが、こんなにも辛いお」
ワカッテマスはブーンの頭にそっと手を乗せる。
「わかってますよ」という、優しい一言にブーンは再び涙を流した。
それから数日が経った。
ブーンの具合も良くなり、天気も至って良好だった。
( <●><●>)「行くのですね」
( ^ω^)「もっとたくさんの物を見たいんですお」
ブーンは再び旅をすることにした。
とはいっても、最初は部位に関係した人たちの元を訪る予定だ。
結局ブーンの記憶は元に戻らなかった。
それでも、確かなものを手に入れたことに変わりは無かった。
( <●><●>)「ツンさんはよく周りから、早く忘れた方がいいと言われていました」
忘れろというのはブーンのことである。
ブーンはそれを聞いて苦笑いをする。
( <●><●>)「彼女はそれを聞くたびに腹を立てていました。
そんなに忘れなくちゃいけないことかしら、と」
( <●><●>)「あいつが起きたとき喝を入れるのは私だから、とも言ってました」
その度に殴られてたのは私ですけどね、と付け足す。
そして、また口を開き、懐かしそうに話す。
( <●><●>)「私はツンさんが大好きでした。
だけど、彼女はたった1人を見ていたのですね」
( ^ω^)「ドクター・・・」
( <●><●>)「自分のことしか考えない私と、人のために動くあなたとじゃ――――」
そこでブーンが言葉を遮る。
力強く、凛とした声で。
( ^ω^)「違うお。ドクターは自分勝手じゃないお。
僕がこうして居られるのは、皆と、ドクターのおかげだお」
( <●><●>)「だって、それは、ツンさんに――――」
( ^ω^)「・・・ドクター?」
ワカッテマスの頬に涙がつたう。
( <●><●>)「ツンさんに言われたから・・・。ツンさんに・・あれ、どうしてですかね」
はは、と力なく笑って何度も目をこする。
それでも涙は止まらない。
( <●><●>)「え?」
ブーンがワカッテマスをそっと抱き寄せる。
そしてすぐに、肩に手を置き答える。
( ^ω^)「ドクターは勝手なんかじゃないお。僕が保証するお」
満面の笑みでブーンは言う。
それにつられて、ワカッテマスも笑う。
( <●><●>)「時間をとらせてすみません」
( ^ω^)「なんてことないですお。あと、これ」
ブーンは一枚の絵を渡す。
ワカッテマスがそれを受け取るとブーンはゆっくりと歩き出した。
( <●><●>)「なんでしょうね・・・」
そっと紙を広げる。
それを見て、どさりとソファーに腰をかけた。
「はは・・・。やっぱり、あなたにはかないませんよ」
ワカッテマスは目を押さえて涙を流す。
それでも、どこか嬉しそうだった。
「私は、彼女のこんな顔見たことありませんから・・・」
静かに一人呟き、外を見る。
木々に残った雨粒は、光を反射する。
キラキラと輝く外は、再び歩きだすものを歓迎していた。
蝉の鳴く季節――――。
('、`*川「あら・・・」
右腕の望みを叶えるため。
('ー`*川「お茶でも飲んでいきなさい」
一人の魔女に出会った。
('ー`*川「いい風が吹くでしょう」
風の吹かなかった森に、気持ちのいい風が吹く。
街が色づく季節――――。
左足の意識に従い、海を越えた。
@#_、_@
( ノ`)「おや・・・!よく来たね、さあ入りな」
それは素敵な家族との出会いをくれた。
l从*・∀・ノ!リ人「ひっさしぶりなのじゃ!!」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「兄者かい?あいつは、やっと大人になったよ」
そして、人の温かさというものをあらためて教えてくれた。
雪の降る季節――――。
雪の中をずっと歩いた。
右足は大切な者の最後を見届けるため、必死で急いでいた。
二つの墓の間に、小さな墓。
それらに雪は積もっていない。
周りには誰かの足跡がある。
春になったら綺麗な花が咲くのだろう。
新たな命が芽生える季節――――。
川 - )「よく来たな」
左腕は鬼に桜を見せようとした。
川 ー )「さあ、花見だ。そこらじゅうの者を呼ぶぞ」
誰よりも強く、弱いお姫様は喜んだ。
そして、友人が増えたと笑う。
全てが始まった季節――――。
( <●><●>) 「お久しぶりです」
彼は一枚の絵を見せる。
( <●><●>) 「少し休んだらまた行くのでしょう?」
絵に描かれているのは、紫色の絨毯。
( <●><●>) 「今度は違う道を行くのですか?新たな出逢いがありますね」
そして――――。
誰よりも僕を想い、誰よりも僕が想った人――――。
<最終話 The course of life> END
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<エピローグ>
高く昇った太陽がちりちりと地上を焼く。
そんな中、蝉の鳴く声に、子供たちの声が混じり合う。
「お姉ちゃん、今日はどんなお話聞かせてくれるの?」
少年が尋ねると、赤い髪をした女性はギターを脇に置く。
「んー、空を飛んだ男の話はどうだ?」
「それは昨日聞いたよー」
子供たちは拗ねたように言う。
それを見て女性は少し悩み、再び口を開く。
「じゃ、じゃあさ、妖怪が住んでる茶屋の話は?」
「それも昨日聞いたー」
「まったく・・・、わがままだなー」
すると女性は手を叩き、子供たちの注目を集めた。
「これはまだ誰にも聞かせてない」
「どんなお話?」
「聞きたいか?」
女性はいやらしく笑う。
子供はため息をついて、「聞きたい」と一言を吐き出す。
どちらが子供か分からない。
これはとても変わったお話。
どこかの誰かの右腕。
知らない誰かの左腕。
記憶にない人の心臓。
話したこともない人の左足。
逢ったこともない人の右足。
それらを繋げて旅に出た男がいた。
そしてこの話は今も続いている――――。
「そのお話のタイトルは?」
目を輝かせる子供の中の一人が尋ねた。
風が吹き、女性の髪が揺れる。
从 ゚∀从「タイトル?タイトルは、そう――――」
「キミニヨバレテ」
END
出典:( ^ω^)キミニヨバレテ、のようです
リンク:http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1222512304/

(・∀・): 132 | (・A・): 58
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