かくれんぼ
2009/07/28 02:19 登録: えっちな名無しさん
219 :219:2009/07/28(火) 01:55:45 ID:5r7eQ2HP0
小学校6年〜中学生の頃の話。
歩とは5年の時初めて同じクラスになった。
出席番号(あいうえお順)が同じだったから隣同士。
彼女はちいちゃくて、細くて、髪の毛と目の色がきれいな栗色で、どこか他の子と違う空気が漂っていた。
小学校時代の机は隣同士がピッタリくっついてるので、自然に話す機会も多くなる。
隣の席になって2ヶ月くらいで、歩の事が好きになった。ちょっと遅い初恋だった。
だが、口をついて出る言葉は「ばーか」「ちーび」などの暴言ばかりだった。
歩を含めた5〜7人の男女グループで遊んでる時なんかは余計に酷く、
サッカーボールをぶつけたり、軽く蹴ったり、殴るマネをしたり・・・
とにかく「好きな女の子イジメ」の典型みたいな事ばかりしてた。
220 :219:2009/07/28(火) 01:56:32 ID:5r7eQ2HP0
ある日、いつものように調子に乗って遊んでいたら、歩が泣いた。
「もぉ、なんでそんな事ばっかりするの?酷いよ・・・」とか言われてしまった。
流石にこれはマズイ!!と思ったが、
他の男の子達も居たから「ばーか、そんなんで泣いてんじゃねーよ」と吐き捨てて帰った。
歩は他の女の子にかこまれて慰められてた。
俺はそんな歩の姿を遠くから見てた。
221 :219:2009/07/28(火) 01:56:55 ID:5r7eQ2HP0
次の日、学校での歩は至って普通だった。
いつも通り机くっつけて授業を受け、いつもの笑顔で俺に微笑んでくれてる。
何だ、心配してソンした。なんてちょっと思ったが、やっぱり女心はムズカシイ。
学校帰り。2人になった途端歩が無言になった。
「何で黙ってるの?」
「なによいまさら。昨日は徹君に酷い目にあわされて、わたしまだ怒ってるんだからね!!」
「なんだよ、学校じゃ普通だったのに」
「あんなの、みんなの前だからだよー。べーだ」そう言って走って行ってしまった。
歩にソッポ向かれたのは初めてだった。
おくびにも出さなかったが、俺は内心泣きそうだった。
222 :219:2009/07/28(火) 01:58:10 ID:5r7eQ2HP0
どうすれば許してくれるんだろう。謝ればいいのか?
でも、女の子に謝るのは負けたみたいで凄く嫌だった。
悩んだ俺は、いつも皆で遊んでる園に行ってみることにした。
すると歩が一人でブランコに揺られていた。
俺は偶然を装って歩に話かける。
「何してんの」
「何って。ブランコ。」
夕日がまぶしいのか、俺が嫌なのか、下を向いてボソボソと喋る歩。
「昨日のことまだ怒ってるの?」
「・・・・・」
「ねぇ」
無言な状態が続いた。
好きな女の子に無視されるのって凄く痛いんだな、とこの時身をもって知った。
223 :219:2009/07/28(火) 02:00:46 ID:5r7eQ2HP0
「歩ちゃん。」
俺は立ち上がり、歩のブランコのチェーンを掴んで動きを静止させる。
「これ・・・あげるからゆるして。」
ポケットから歩の大好きな「シゲキックス(食べかけ)」を出して渡す。
歩は一瞬キョトンとした顔をした。
「ごめんね」
恥ずかしかったから少しだけ顔をあっちに向けて謝った。
「もぉ、徹君はバカだなぁ」
歩が顔をくしゃっとさせ笑った。今までの中で一番可愛い笑顔だった。
「バカって言うなよ」
「あはは。シゲキックスありがとう。これで仲直りだね」
「うん」
この後は2人で門限ギリギリまで遊んで帰った。
グっと距離が近くなった気がした。
224 :219:2009/07/28(火) 02:01:12 ID:5r7eQ2HP0
ある日いつもの遊びのメンバーで、いつもの公園でかくれんぼをしていた。
この公園は結構広く、物がいっぱいあったから隠れる所がたくさんあった。
俺は公園のわきにある細長い小さな物置(学校の掃除道具入れのような形)のような所に隠れた。
ちょっとキツかったけど、とっておきの隠れ場所だった。
皆が隠れ終わるのを待ってると、外に誰かがいる気配がした。
誰だよ、とチラっとドア開けると、歩がウロウロしてる。
いい隠れポイントを見つけられなかったんだろう。
「歩ちゃん!!」手を振った。歩みは俺に気付くと安心したような顔をして
「徹君、ごめん、隠れる場所ないからそこ入れて」と言って来た。
ドキっとした。しかし時間がない。早くしないと鬼が俺達を捜しはじめる。
すると誰かが「もういいよ」コールを出した。
やばい!!と思い歩を強引に引っ張り込む。
225 :219:2009/07/28(火) 02:02:12 ID:5r7eQ2HP0
何とか入れた・・・が、狭くてあまり身動きが取れない。
体勢は、立ってる状態なんだけど、2人の間にスペースがほぼない。
それでも俺は少しでもスペースを開けるためギリギリまで壁にもたれこんだ。
とにかくかくれんぼより、この状況が、やばすぎる。
歩がすぐそばにいる。髪も、唇も、大好きな歩の全てが手の届く距離にある。
俺の心臓は鐘がマラソンした時のようにガンガン鳴ってた。
当然会話は何もない、2人で必死に息を殺してる。
だんだん呼吸が苦しくなってきて、目を閉じた。多分顔は真っ赤だ。
歩は下を向いてる。俺の心臓のドキドキ音は間違いなく聞こえてるだろう。
226 :219:2009/07/28(火) 02:02:58 ID:5r7eQ2HP0
もうどうしようもないので目を強くつむった。
鬼よ、出来るならもうしばらくは見つけないでくれよ、と祈ったその時
歩が俺にもたれ、胸に顔をうずめた。
思いがけない行動に、俺の興奮度も120%だった。
「徹くん・・・なんか すごいドキドキするね・・・」
耳元でささやく様な声で言った。
「・・・うん・・・」
一言返すのが精一杯だった。
「なんか、わたし、のどかわいた・・・」
そんな事言われても、飲み物なんかない。
ドキドキでクラクラしてぶっ倒れそうだった
228 :219:2009/07/28(火) 02:04:36 ID:5r7eQ2HP0
急に思いたったような顔して、歩がスカートのポケットに手を突っ込んだ。
ゴソゴソ 中から出てきたのは・・・俺があげたシゲキックスだった。
それ、まだ持ってたの?小さくジェスチャーすると、笑ってうんうんと頷いた。
俺があげたものを大事そうに持っててくれて、うれしかった。
歩はパウチの袋をそーっと開けて一粒つまんで口に入れた。
おいしーって口を動かして、ニッコリ微笑む。ちょっとだけ空気が和んだ。
次に、手をあまり動かせない俺の為に口まで運んでくれた。
俺も緊張で口が渇いてたから、ありがたかった。何より歩に食べさせて貰えたから感無量。
俺も同じようにおいしーと口を動かしてニッコリ微笑んだ。
でもやっぱ気恥ずかしかったから、空気を誤魔化すように調子に乗って次から次へと食べまくった。
しかし元もと食いかけで中身が少なかった為、あっと言う間に残りがひとつになった。
229 :219:2009/07/28(火) 02:05:01 ID:5r7eQ2HP0
その一粒を見て 歩、食べろよ、とジェスチャーする。
いいの?と首をかしげる歩。うんうんと頷く俺。
最後の一粒を、歩がゆっくり口に入れた。ニッコリ笑ってる。
すると次の瞬間、歩の腕が俺の首に巻きついた。
「えっ?どうしたの?」動揺が隠せない俺
「徹君 これ たべたい・・・?」
歩が俺の耳元で囁いた。
考えるより先に、こくりとうなずいた
230 :219:2009/07/28(火) 02:06:01 ID:5r7eQ2HP0
歩は目いっぱい背伸びして、俺の唇に粒を届けた。
俺はどうしていいのかわからず、とにかくそれを歯で噛むようにしてキャッチした。
一瞬だけ唇が触れた。
正直、感触とか、味とか一切分からなかった。
ただ、ドキドキ感で胸がいっぱいだった。
これが初キスの思い出。
その後何事もなかったかのように過ごした。
キスもこの一度だけ。
当然「好き」だの「付き合う」だのそう言う会話はない。
ただお互い好き合ってるのは間違いなかった。
俺達はずっとそんな関係だった。
231 :219:2009/07/28(火) 02:10:44 ID:5r7eQ2HP0
そして歩は中2の時、親の転勤で遠くに行った。
はじめのうちは他愛のない文通もしたりしたが、すぐに途絶えた。
人の縁ってこんな簡単に切れるものなのかと寂しく思ったよ。
いや、でも俺の場合それ以前の問題だったんだが。
そして改めて「気持ちを言葉にする」意味を思い知った。
しかし歩とは何かの縁があったのかもしれない。
25歳の時、再会した。それも地元と全く違う場所で。
さすがにめぐり合わせというものを感じずにはいられなかった。
そしてまた俺は歩に惹かれ、幸運にも彼女も同じように思ってくれている。
初恋の人と結婚できるなんて、俺はしあわせものだと思う。
以上 お目汚しすまん ありがとう
出典:2CH
リンク:2CH

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