ひどい話

2009/08/02 03:49 登録: おバカな名無しさん

 もう20年以上前の事でオンボロアパートで一人暮らしをしていた時の事だ。
 安月給で金は無かったが無いは無いなりに何とか喰ってはいけた。
 隣の部屋には50代くらいのお父さんと小学2年生の女の子が暮らしていて、お父さんとは会えば挨拶する程度だったが娘の陽子ちゃんは仕事から帰ってくるといつも共同スペースの洗濯場で洗濯をしていたので、会う機会も多く、良く話はした。
 いつかの夕方「今日はお父さん遅いの?」「うん」などと会話をしてたら俺の腹が「グーー」
「あれ?お兄ちゃんお腹空いてるの?」
「まあね」
ちょっと待ってて、と言うと部屋に入り、まもなくして 形の「いびつ」なおにぎりを持ってきてくれた。味も何も無いおにぎりだったけど俺はありがと、と言ってたいらげた。
 それから、彼女と会わない日が続いた。どうしたのかな、と思う程度で気にはしなかった。
 ある日、仕事から帰ると救急車が止まっていた。
 何だ何だと覗いて見る
「何かあったんですか」駆けつけてた大家さんに聞くと
「無理心中だよ」
まいったよ、他所で死んでくれれば良いのにと吐き捨てるように言った。
 やがて救急隊が担架を運んでくる。顔までかけられた毛布が既に死んでいるのを物語る。
 あれ、担架に納まる身体が小さい・・・子供?・・・まさか!!
 後から判った事だが、お父さんは病気がちで仕事も出来ず、ガスも水道も止められていたらしい。
 最後の電気が止められる時、事情を聞きに市役所の職員が大家さんと訪問して事件が発覚したそうだ。
 食べる物も無く米どころか食品は何も無かったそうだ。
「あれ?お兄ちゃんお腹空いてるの?」
あの言葉が脳裏をよぎった。
 あの時既に食べる物はもう無かったんじゃないのだろうか?たまたまお腹を空かしてた俺を可愛そうに思い、あの小さな手で一生懸命おにぎりを作ってくれたんじゃないだろうか、自分の食べる分も無いのに・・・・・・
 涙がこみ上げてきた。やるせなかった。
 その後、間をおかず引越ししたが、今でもあのアパートの近くを通ると思い出す。


出典:2ch
リンク:2ch

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