ひどくない話
2009/08/03 09:54 登録: えっちな名無しさん
もう20年以上前の事でオンボロアパートで一人暮らしをしていた時の事だ。
安月給で金は無かったが無いは無いなりに何とか喰ってはいけた。
隣の部屋には50代くらいのお父さんと小学2年生の女の子が暮らしていて、お父さんとは会えば挨拶する程度だったが娘の陽子ちゃんは仕事から帰ってくるといつも共同スペースの洗濯場で洗濯をしていたので、会う機会も多く、良く話はした。
いつかの夕方「今日はお父さん遅いの?」「うん」などと会話をしてたら俺の腹が「グーー」
「あれ?お兄ちゃんお腹空いてるの?」
「まあね」
ちょっと待ってて、と言うと部屋に入り、まもなくして 形の「いびつ」なおにぎりを持ってきてくれた。味も何も無いおにぎりだったけど俺はありがと、と言ってたいらげ、
お礼にってことで、すぐ近所のマクドナルドまで走ってハッピーセットを買ってきてあげたら、女の子はものすごく美味しそうにかぶりついてた。
そんなに喜んでくれるなら、ということでそれからは時々、会社帰りに買って帰った。
そのたびにすごく喜んでくれた。
ある日、早番の仕事から帰ると救急車が止まっていた。
何だ何だと覗いて見る。
「何かあったんですか」駆けつけてた大家さんに聞くと
「脳卒中だって」
まいったよ、他所で死んでくれれば良いのにと大家は吐き捨てるように言った。
やがて救急隊が担架を運んでくる。顔までかけられた毛布が既に死んでいるのを物語る。後から判った事だが、お父さんは病気がちで仕事も出来ず、ガスも水道も止められていたらしい。 最後の電気が止められる時、事情を聞きに来た市役所の職員が大家と訪問して倒れているのをを発見したそうだ。
ちなみに女の子はその時、まだ学校にいたらしい。
大家が手を尽くして探したが、親子には身寄りと呼べるものが全くなく、
付き合いのある親戚は皆無だったらしい。
女の子は施設に引き取られることになり、俺は施設に時々差し入れを持っていった。
もちろん、他の子の分も。
安月給の身では10人超分のマクドナルドやミスドは結構な痛手だったが、
もっと頻繁に差し入れしたい一心で仕事をがんばったら
それまで部内で下から数えた方が早かった営業成績が不思議なぐらい伸びていき、
月間トップで所長報奨をもらえるぐらいになった。
自分自身、営業に向いてないと思っていただけに実に不思議だった。
今思えば何か見えない力がはたらいていたのかもしれない。
その後、女の子は施設から苦学して高校を卒業し、バイトで学費を稼ぎつつ看護士を目指した。父親のような人を救いたいというのが看護士を目指した動機だったようだ。
その後、女の子は夢を実現し看護士になった。そして今は俺の隣で俺の赤ちゃんを抱きながらニッコリと幸せそうに微笑んでいる。
出典:話の中だけでも
リンク:幸せに

(・∀・): 368 | (・A・): 100
TOP