【ああっ女神さまっっ】For your love 第一夜、ウルド〜Illicit love〜
2009/10/16 02:16 登録: えっちな名無しさん
「け・い・い・ち・さんっ…!」
背後から暖かな手の平が伸びてきて、スッと螢一の視界を塞いだ。
明日に控えた二人きりのドライブに備え、ロードマップを眺めていた螢一であったが…慣れない戯れ言に恥じらいの漂う声を聞いて思わず頬が緩んでしまった。期待に弾んでいた胸がたちまち苦しいくらいに乱打する。
「ど、どうしたんだよぉ、ベルダン、ディー…!?」
「あっはぁ〜ん、けいいちさぁ〜ん!」
「どわあっ!う、う、ウルド!!」
手をかけて目隠しをどかし、すっかり緩みきってフニャフニャな表情で振り返った先にいたのは…愛しのベルダンディーその人ではなく、彼女の姉であるウルドであった。
チビTにミニスカ姿の彼女は、螢一の見事なほどの狼狽えぶりに脇腹を抱え、涙まで浮かべて哄笑を始める。
「あはっ!あははははっ!あーはっはっは…!あた、あたたたた…ひ、ひひひ…っ!!」
「な、な、な、なんだってんだよもう!声マネまでしてっ!!」
「あははははっ!あーおかしいっ!ど、どうしたんだよぉ、ですって!ま、まさかここまでとろけそうな顔するとはもう予想外!!あーっはっはっは!!」
「ウルドッ!!からかいにきただけなら帰ってくれ!!」
恥ずかしさと照れくささと憤りに顔面を紅潮させた螢一は、身振りも激しくウルドを追い返そうとした。もっともこういった戯れ合いは日常茶飯事なのである。ウルドにしてみれば螢一は実に体の良いヒマつぶし相手なのだ。
「あら、そんな冷たい言い方しなくてもいいでしょう?せっかく重要なコトを警告しにきてあげたのに。」
「重要?警告?またなんか悪巧みかよ?」
「人聞きが悪いわねぇっ!この本を見なさいっ!!」
頭から疑ってかかる螢一にへそを曲げて見せたウルドは、さっさと座布団を一枚引き寄せるとその上にどっかとあぐらをかき、手にしていた一冊の本を螢一に示した。
ひょい、と螢一は無言で手に取る。その本は分厚く重く、ハードカバーでしっかりした装丁の…ちょうどなにかの辞典のような本であった。ウルドの持ってきた本とはいえ、魔術書のように古めかしいものでもない。螢一はいぶかしげに表紙から中身からをなんとなく眺めてみて…
「あのね、神聖語とか言われてもわかんないんだけど?」
「読めとまでは言ってないでしょう?それはあたい達の世界版…まぁ、家庭の医学みたいなモノなのよ。」
人間には解読不能な神聖語でかかれた本をウルドはひょい、と取り戻し、紙芝居でも見せるかのように表紙から目次からをひとつひとつ指でトントン指示しながら螢一に説明した。それでも螢一は警戒するように、怪訝な表情を崩そうとしない。
「家庭の医学ぅ?なんでまた?」
「ふふん、明日のあなた達を思って…ま、あなた達に限ってそんなことはあるはずもないとは思うんだけど、一応気になったから調べてみたのよ。」
冒頭にも触れたが、螢一は明日、ベルダンディーとドライブに出る予定なのだ。言い換えれば久しぶりのデートである。予定では放牧場のある高原に向かうつもりだ。
夏の緑が映える山道を登り、都会の喧噪から遠く離れた高原で二人きりの昼食でも、という螢一の計画にベルダンディーもすこぶる乗り気で、準備に余念がないらしい。
「調べてみたって…家庭の医学なんかで何を調べてたんだよ?」
「いいからいいから、まぁ待ちなさいよ…」
デートと家庭の医学がどう関係してくるのか。螢一は訝しい目で睨め付けるようにウルドを見たが…真顔でページをめくりだしたウルドはそれに気付かないようであった。
「付箋くらいつけてくればよかったのに…ひもしおりだってあるじゃないか。」
「うっ、うるさいわねぇ…あ、あったあった…ここよ、ここ!!」
螢一の鋭い指摘にちょっぴり憮然としながらも、ウルドはページをくり続け…ようやく目的のページにたどりつけたらしい。そのページを大きく見開き、突きつけるように提示しながらニヤリと笑う。
「ジャーン!タイトルはズバリ、妊娠について。」
「に、に、ニンシン!?」
予想もしなかったページに螢一は素っ頓狂な声をあげ、再び顔面を紅潮させた。
「そう、妊娠!まぁ家庭の医学だから体位がどうとか出てるわけじゃないんだけど…」
「た、た、体位って…あ、あのなぁっ!」
今度は耳まで真っ赤になってしまう。最近の若者にしては妙にシャイな螢一だが、そんなところは大学を卒業した今でもほとんど変わっていない。
「それよりも、ほらここ!ここの予備知識がポイントなのよ、今の場合!」
「だーかーらー、わかんないって。」
ページの一角を人差し指でトントンするしたり顔のウルドに、螢一は小さく溜息を吐いて答えた。四角く区切ってあることくらいははわかるのだが、理解できそうな文字はひとつも見あたらない。
「いいかしら?この本によるとね、あたい達女神…いや、女神に関係なくあまねく神族は人間種との交配が可能、とあるわ。」
「それって…人間が神の子を受胎したり、またその逆もあるってことか?」
螢一はウルドの語った内容をしっかり吟味したうえでそう確認した。いつの間にか真顔に戻っていたウルドは螢一の目を見つめながら無言でうなづく。
ところでこの古寺…通称森里屋敷には四人の住人がいた。
まずこの森里螢一。猫見工業大学を卒業後、バイクチューン専門ショップに就職、現在に至っている。純情で心の優しい…どちらかといえばお人好しな好青年だ。
そして残りの三人なのだが…彼女たちはひょんなきっかけがひょんな理由を生んで螢一の元にやってきた純然たる女神達なのである。
最初に訪れたのはベルダンディーという名の女神であった。
温厚で慈愛に満ち、それでいて世間知らずなためにどこか抜けている印象を与える彼女だが、その実一級神の肩書きを持つ高位の女神であり、螢一とのある契約によって彼と生活を営んでいる。
もっとも現在ではその契約も二人の愛情の間で意味を失い、お互いが心から必要としあっているからこそ、彼女は人間界に留まっているのだが。
次に訪れたのはウルドという名の女神。
薄褐色の肌を持ち、妖艶な色気を漂わせる彼女はベルダンディーの姉であり、女神でありながら魔族の血をも引いている。軽い性格ではあるが、状況によっては人が変わるほどの冷静沈着さを発揮する。
彼女もまた高位の女神クラスの実力を有しているのだが、職務態度が悪いとかでその能力は著しく制限されている。
そして、最後に訪れたのはスクルドという名の女神だ。
彼女はベルダンディーやウルドの妹であり、天真爛漫で、ちょっとした自信家で…面白いコトとかわいいモノ、アイスクリームがなにより好きという性格をしている。そのうえ螢一をはるかにしのぐメカマニアだ。
そんなスクルドだが…ちょうど今螢一の部屋の外で耳をそばだてている最中であった。
「またウルドのヤツ…螢一をたぶらかして悪事を働こうとしてるわねぇ…」
ふと螢一の部屋の前を通りかかったとき、室内からウルドの声が聞こえてきたのだ。
本心は二人の話に混ぜて欲しいだけなのだが…素直にそう言い出すことができないスクルドは二人の会話を悪巧みと決めつけ、聞き耳を立て始めたのである。
この、人間にして小学校高学年程度のうら若き女神は…普段から年長の姉とは仲が悪い。いや、これは本人達がそう思っているだけで、端から見ればすこぶる仲の良い姉妹としてうつるはずだ。
「ウルドが螢一の部屋に行くと必ずロクでもないことになるんだから…ここはお姉様に迷惑が及ぶ前にこのあたし、スクルドが悪の種を摘み取るっ!!最新究極発明の…あれ?えっと、あっと…あれ?持ってたハズなのに…?」
お姉様、とはベルダンディーのことである。スクルドはベルダンディーを心の底から慕って…あくまで姉として慕っており、姉に近づこうとするものは螢一であろうが何であろうが排除しないと気が済まない性質を持っている。そのためには手段さえ厭わない。
今も一人で使命に燃え、自ら開発した道具を取り出そうとしているのだが…なかなか取り出せない様子だ。薄手のオーバースカートにはポケットがたくさんあしらわれており、あっちこっちと手を突っ込んで目的のものをまさぐっているのだが…手応えがないらしい。よほど小さいモノなのだろうか。
「あ、あったあった!じゃじゃーん!マイクロサット、ひまわりくーん!!」
ようやく見つかったらしいのだが…高々と上げられた手の平にはひまわりくんどころか塵一つ乗っていないように見える。
「えへへー、これはね、超小型人口衛生なの!目標とする相手に向けて放ると自動的に飛行、追尾。その後目標を一秒間におよそ百回という高回転で周回し、モニタリングマシンによってリアルタイムでクォドラホニック音声と、あらゆる角度からの映像を確認することができるスグレモノなんだから!ちなみにひまわりくん自体の寿命は約二十四時間。任意に破壊も可能。魔力で関知することは不可。ふふふ、ウルドを観察するにはうってつけのアイテムねっ!!ではさっそく…」
自ら設計した発明品に陶酔するよう、スクルドは誰にともなく長々と、声まで出してひまわりくんのスペックを説明した。小指の先をちゅぷ、と口に含み、音もなく障子に穴を開ける。そこに右手を構え、手の平に乗っているらしいひまわりくんに口元を寄せ…
「目標ウルド、発射!…やった!軌道に乗ったわ!!」」
発射は、ふっ…と息を吹きかけるだけでいいらしい。なんの軌道に乗ったのかはわからないが、とにかくスパイ衛星をウルドにくっつけることに成功したようだ。
「さ、ではモニター…って、ああっ!!カンパンマンの始まる時間じゃないの!!いっけない、モニターは録画して後で見ようっと!カンパンマンカンパンマンッ!!」
腕時計のようなモニターに視線を落とした瞬間、時刻が楽しみにしている番組の始まる時間になっていたらしい。いつぞや映画もみたことのある番組だ。スクルドは慌ててきびすを返し、小走りに居間の方へと去っていった。
「…スクルド、行っちゃったね。」
「…ま、お子様には関係ない話だからね。その方が都合がいいわ。」
話を中断し、障子の向こうでモソモソしていたシルエットを見つめていた螢一とウルドであったが、シルエットが居間の方に駆けていったのを確認して話を再開した。
「で…それって本当なのか?」
「ええ、これは本当よ。実例もあるみたいだし。」
ウルドはあくまで真顔だ。真顔すらもウソである場合があるが、さすがにこんな重要な話を冗談のネタにはしないだろう。彼女とてひとりの女性だ。
「だから一応警告。明日ヘンな雰囲気になってお泊まりってコトになってもこれだけは気をつけてあげて。こういうことは男がしっかりしてないといけないんだからね?」
ウルドは真剣そのものの口調で螢一に語った。二人の仲を尊重しつつ、妹の身をひたむきに案じるように。
ウルドは普段から軽い性格ではあるものの、二人の妹を思いやる気持ちだけはベルダンディーのそれにも劣りはしない。
螢一もそれはわかっている。もとよりベルダンディーは大切な人だから、おざなりに扱うつもりなど毛頭ない。あらためて言われるまでもないことであった。
「もちろんわかってるよ。まぁ…そんな雰囲気になれたとしたら、だけどね。」
「あら、ちゃんと分をわきまえてるじゃない。おせっかいだったかしら?逆に今夜、悶々として眠れなくなったりして!ああ、ベルダンディーの胸…ベルダンディーの腰…避妊しないと、避妊しないと…ああっ!!」
螢一の耳元に整った唇を寄せ、艶めかしい声でクネクネ身をよじらせながら煽りたてるウルド。くいっとのけぞった拍子にチビTの裾から彼女の柔らかそうな膨らみが二つ、螢一の視界に飛び込んでくる。
「うわ…っ!」
一瞬の悩ましい光景にくわえ、ウルドの香りが螢一の鼻孔をくすぐってきた。その場で淫らな行為にふけりたくなるほどウルドのフェロモンは官能的で、誘惑的だ。
いかに螢一がベルダンディー一途とはいえ、彼も健全な男子のひとりなのだ。理性とは裏腹に、身体は自然と反応を示す…。
むくっ…。ぐっ、ぐうぅっ…。
「わああっ!や、やめやめっ!!もうわかった!気をつけるのはわかったから!!もう出てってくれよっ!!」
「あははっ!夜中に妄想して変なことしたらダメよ!寝坊してたら行けるデートも行けなくなるんだからねっ!!」
ウルドの色香にしどろもどろになってしまった螢一は、怒ったように彼女の右手をつかむと引きずり出すようにして自室から追い出した。女性相手に手荒な行為だが、これもまた日常茶飯事だ。
ウルドにしても乱暴に扱われながら、嬉々とした笑声をあげている。ぽい、と廊下に放り出されてからも、勢い良く閉められた障子戸の向こうでしばらく愉快そうに笑っていた。
「はーっはっはっはっ…あ〜笑った笑った。とにかくそうゆうワケだからね。」
「はあ…はあ…ったくもう…」
ウルドが廊下を歩き去ってゆくのを聞きながら…螢一は胸元を押さえて深呼吸した。
どきん、どきん、どきん…
胸が高鳴り、苦しくてならない。ぼうっとしてうなだれた視線の先に見えているものは…はき慣れたジーンズの膨らみであった。デニムの生地を内側から突き破らんばかりに、若い男性器は猛々しく怒張している。指先で弾くと、トントン、と固い音がした。
「男って悲しい生き物だよな…。オレもオレでいちいち反応するなよっ!わかってんのか、森里螢一!!明日はベルダンディーとデートなんだゾッ!!」
胸の奥から沸き上がった劣情に歯がみする。自らを諫めるように叫ぶと、螢一はドスンと机の前に腰を下ろした。ロードマップを見つめ、必死でベルダンディーとのデート風景をイメージする。
サイドカーに乗り、風に吹かれながら微笑むベルダンディー。そんな行為なんて考えもつかないような清純な笑顔…。
淫魔を追い払うには十分な効果があった。淫魔にとり憑かれていた身体の一部分は、ハッと我に返ったようにみるみる萎縮してゆく…。
「ふう…。避妊だなんて…オレ達、まだそんなの早いよな。ただ一緒にドライブに行って、一緒に景色を眺めて、一緒にお弁当を食べて…。それで十分すぎるくらい幸せじゃないか、これ以上望むのは高望みってもんだ!」
結局いつもの螢一におさまってしまった。しかし本人がそれで納得し、それが一番心地が良いのだから第三者が口を挟むことなど不要なのである。
求める時期が来れば自ずと求め合うようになるだろう。いたずらに惑わすのは勝手知ったるウルドであろうが御免被りたかった。
「ウルドなんかにいちいち欲情してちゃ…ベルダンディーに申し訳ないよな。」
ごろ、と仰向けになり、螢一は目を閉じてひとりごちた。
「ウルドなんか、かぁ…。言ってくれるわね、螢一も。それだけベルダンディーひとすじってことなのよね…。」
中庭に面した廊下の角でウルドはつぶやき、爽やかに晴れわたった夏空を見上げて腕組みした。チビTでみっちり締め付けられた乳房がむにゅっと寄せ上げられる。
切れ長の瞳は眩しげに細められ、微かに開いていたが…それに対して唇は少しだけ噛み締められるように閉ざされている。なにかを思い詰めているようにも見えなくはない。
ふと例の辞典を眺める。
からかうつもりで調べたのではなかった。
螢一にも知っておいてほしかったのだ。人間と女神でも交配が可能であることを…。たとえそれがベルダンディー相手であれ…そして、自分相手であれ…。
ずきん…ずきん…。
胸の奥が痛みだす。焦れったい気持ちが呼吸を早めさせた。押さえ込もうとすればするだけ、せつない感覚がゆっくりとこみ上げてくる…。
「あんなもの…試してみるんじゃなかった…。」
腕を組み直すつもりが…なぜか手の平が胸の膨らみを輪郭に沿って包み込んでしまう。そっと指をすぼめて揉んだ。敏感になっている乳房にむぎゅっと力を込めるたび、焦れったい鈍痛は和らいだ。しかしせつなさはより強さを増してゆく…。
「こんなに…こんなになるまで思い詰めちゃうなんて…いや、違う…ずっと前からこうだった…あたい、あの娘のために…んんっ!!」
じわり…。
ショーツの真ん中に湿り気が拡がる。ウルドは立ったままで発情していた。
充血し、強くはみ出ようとショーツの中身がジクジクうごめき、膝をすりすり擦り寄せないといられなくなる。己の真央を…思いきり慰めたくなる…。
「こ…こんな真っ昼間から…?いけない、いけない…また、つらくなるだけ…!!」
角の柱に寄りかかってしまった。立っていられなくなりそうであった。ぽおっとした顔で切れ長の瞳が媚びるように細まる。火照った頬に似つかしく吐息も燃えるようであった。
それでもウルドは理性をフル稼働させて両手を後ろ手に持っていき、自慰行為の誘惑から強引に引き離した。しかしその行為は、彼女にある決断をさせてしまう…。
「…もう決めた…。あの娘には悪いけど…」
危険な…背徳的な予感に頬が熱くなる。ウルドの鼻の頭に浮かぶ汗は夏の熱気によるものばかりではなかった。
夜も深まり、通りは静けさに満ち…虫の声だけが僅かに聞こえる。
ベルダンディーと最終打ち合わせを済ませると、螢一は明日に備えて早めに床につこうとしていた。
布団を敷き、蚊取り線香に火をつけてほのかな煙を立ち上らせる。タンクトップとトランクスだけで眠るのが常だから、この緑色の渦巻きだけは欠かせない。
「これでよし、と。居眠り運転はしないと思うけど…ま、明日も早いし、早めに寝ておくにこしたことはないよな。ではおやすみなさい…」
と照明のスイッチひもを引こうとしたときであった。
「螢一、ちょっといいかしら?」
「ウルド…?」
ひもを引こうとした手が戻される。夜の来訪者の声に螢一は障子戸の方を向いた。
聞こえた声はまぎれもないウルドのものであった。昼間のワンシーンが鮮明に蘇り、思わず、んぐ、と喉を鳴らしてしまう。
「どうぞ?」
「悪いわね…寝ようとしてたんでしょ?」
促されて入室したウルドは…黒のTシャツにTバックショーツ姿であった。
普段彼女はネイキッドで眠る習慣があるので、就寝前にはいつでもこの程度の軽装だ。
さすがの螢一とてこのスタイルにはもうすっかり慣れてしまっているのだが…今夜に限っては昼間の件もあり、どうにも直視ができない。
「い、いや、まだ早い時間だから大丈夫だけど…今度はなんだ?」
「う、ううん、そんな難しいことじゃないの…ちょっと、ね。頼み事…。」
ウルドは少し上気しているように頬を染めていた。今夜がいつになく暑いせいか、Tシャツを見ると微かに汗ばんでもいるようであった。もちろんノーブラなのだが…それにしたとしても二つのアクセントがやけに目立つ。螢一は口元をハクハク開閉させてそっぽを向いた。
「あ、な、な…とりあえず座れよ、いま麦茶でも持ってくるから…」
「いや、気を使わないで…。あたい…いま、ね?座れないのよ…。」
ウルドにつられたわけでもないが、軽く汗ばみかけた螢一は座布団を勧めて立ち上がった。しかしウルドは辞退するでもなく、極めて不自然で不可解な返答をよこしたきり、腰を下ろそうとしない。薄褐色の頬を赤らめ、うつむいてしまう。モジモジするような両手を後ろ手にした身体は…微かに震えてもいた。
「どうしたんだよ…まさか熱でもあるんじゃないだろうな?」
体調でも崩しているのではないか。そう思うと螢一はたちまち猥雑な感情を払拭させ、心配そうな表情でウルドに歩み寄った。そっと彼女の前髪をよけて額に手を当てる。じっとり汗ばんではいるが、熱があるほどでもない。
そんなウルドは…ふらっと倒れ込むようにして螢一に寄り添ってきた。両手を螢一の肩にかけ、彼の耳元でつらそうにささやく。
「あの…ね?あたい…」
「おい大丈夫かっ!?熱はないみたいだけど、身体、すっごい熱いぞ!?」
真剣な口調でウルドを気遣う螢一。耳にかかる吐息も深く…熱くなっている。
なにか女神特有の体調不良なのかもしれない。この場合は人間に処方する薬を投与しても無意味であることはすでに解っている。
どうすることもできない自分に対する苛立ちが湧いてきた。無意識にウルドの背中に右手を伸ばし、少しでも落ち着いてくれるよう、労るように優しく撫でてあげる。
「しっかりしてくれウルド…。困ったな、ベルダンディー起きてるかな…?」
「うふ…螢一、優しくしてくれるんだね…あたい、嬉しい…」
背中から伝わってくる手の平の感触に、ウルドはホッ…と安らぐような息を吐いた。つらそうだった表情が僅かながら、なごむ。
『手当』という言葉の語源の通りで…螢一の手の平から染みわたる柔らかな温もりはウルドをつらく苛んでいる痛みを…せつない胸の痛みを癒してくれるようであった。
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ…?とりあえずオレの布団に横になっててくれるか?ベルダンディー呼んでくるから、それまで待っててくれ。
「気にしないで、病気じゃないから…いや、病気なのかもね…。」
「おいウルド、しっかりしてくれよ!なんか言動がおかしいぞ?」
「座れない理由ってね…」
「え?」
不意をうつようにウルドの右手が螢一の左手を取った。突然のことで力を抜いていた左手は…真っ直ぐにショーツの真ん中へ導かれた。すごい熱を孕んだ柔らかな中心は…ショーツ越しでもねっとり濡れていた。
「うっ、ウルド!?」
「だめっ…しばらくこのまま…」
あからさまに狼狽える螢一。慌てて左手を引っ込めようとしたが、ウルドはそうさせてはくれなかった。熱い吐息を繰り返し、寄り添ったままつぶやく。
「ね…?こんなになってるから…座布団に染みができちゃうでしょ…?」
「ちょ、な、なんで!?な…何を考えてるんだよっ…!?」
大声を出そうとした事に気付き、慌てて螢一は声を潜めて訊いた。左手の指はウルドの中心に押し当てられたまま、彼女の熱と湿り気だけを感じている。指の腹には…小さな突起の存在も感じられた。クリトリス、という単語が螢一の記憶野から浮かび上がり、興奮で彼に息をのませる。
螢一の問いかけにウルドは即答せず、寄り添っていた身体をそっと離し、一息置いた。
「ウル、ド…」
螢一は思いもかけない胸のときめきを上擦りかけた声にしていた。螢一は見てしまったのだ。
潤んだ切れ長の瞳。濃紫の、吸い込まれてしまいそうな瞳。
火照りきった頬。滑らかで、汗の粒が浮かんだ薄褐色の頬。
額と目尻についた逆三角形の聖痕。青から…黄昏色へと充血した聖痕。
熱く湿っぽい吐息、上擦って震える声。
インセンスのようにたゆたう…彼女だけのフェロモン。
間違いなかった。ウルドはひとりの女性として、強く発情していた。
かわいい…。
自分でも信じられない感情に、螢一は支配された。
「ウルド…どうして…?」
「あたい…ついさっきまで、オナニー…してたの…」
「お、オナ…!?」
カタパルトで弾かれるような勢いで急激に高ぶる螢一。反応しかけていたペニスは、ウルドの淫らな告白を前に一瞬でガチガチに強張ってしまった。
発情した女性に寄り添われ、淫靡に潤んだ言葉をささやかれては反応するなというのが無理な話である。いかに螢一がベルダンディー一途とはいえ、先程も述べたが彼も健全な男子のひとりなのだ。ましてや左手はウルドの発情の現場に強く押し当てられている。
「ど、どういうつもりだよこれはっ!!あ、またオレをハメようとしてるな!?明日のデートの邪魔をしようってことなんだろ!?な、そうなんだろ!?」
「そんなつもりなんてないわ…ハメてほしいのはあたい…。こっちに来てから御無沙汰でさぁ…。ね、しよおよぉ、けいいちぃ…」
「は、ハメ…って!?ば、バカなこと言うなっ!!」
猥褻な冗句を紡ぐウルド。螢一はそんな彼女を見るまいときつく目を閉じ、激しくかぶりを振って誘惑を振り切ろうとあがいた。欲情してはいけない、ベルダンディーに申し訳がない、と心中説得を開始する。
しかしウルドは本気であった。そんな螢一の肩をつかみ、激しく揺さぶって必死にせがんでくる。色欲は女神である彼女すらも狂わせるらしい。
「なんで?したくないのっ!?まさか…そっちのケが…」
「ち、違う違うっ!したいのはやまやまだけど、オレにはベルダンディーが…!!」
螢一が妹の名前を口に出すと、ウルドは幾分か表情を翳らせた。こと恋愛に関してはまったくもって甲斐性なしの螢一であったが、そのぶん一途さ、重厚さには信じるに足るものがあった。
「つれないこと言わないで、なぁけいいちぃ、あの娘には…ベルダンディーには秘密で…一回だけでいいからしてよぉ…?」
「な、なにを言ってんだ!?ベルダンディーを裏切れってのか…?オレに浮気しろって言ってんのか!?」
「…そ…いや、そんな深く考えないで!気持ちいいことするだけじゃない…。」
「ふざけるなよっ!オレにそんなことできるわけないだろっ!!」
「きゃっ…!」
螢一は厳しい口調で叫び、思った以上の力でウルドを突き飛ばしてしまった。ウルドは力無くよろめき、パソコンのモニターに両手をかけてなんとか身体を支える。
「あ…ご、ごめん…つい…」
「いいの…。」
人の良さが螢一に謝辞の言葉を吐かせる。うつむいたウルドは首を横に振りながら苦笑し…今にも泣き崩れてしまいそうな表情を見せ、ふらり、と頼りない足取りで螢一に追いすがろうとした。
しかし螢一は潔癖さをむねとする信条に一切妥協などしなかった。キッとウルドを睨み付け、追い払うように右腕を振るう。
「来るな!これ以上近付くなっ!やめてくれよ…オレを困らせてそんなに楽しいか…?」
「そんなんじゃないのっ!オナニーなんて…一人で慰めるなんて…もう二度とゴメンなのっ!あんな寂しくて、虚しい事なんてもうイヤッ!」
「ぜ、ゼイタク言うなよっ!そんなの誰だって同じだよ…!!」
まるで思春期の男の子の気持ちを代弁するかのようにウルドは叫んだ。
女の子でも…たとえ女神といえど性欲は持ち合わせているし、欲情だってするのだ。
しかし螢一はウルドの背徳に満ちた求愛を頑なに拒否した。
確かに…今のウルドはすこぶるかわいく見えてしまう。思う様慰めてあげたい。
しかしベルダンディーを裏切るわけにはいかない。ベルダンディーを悲しませるわけにはいかない。彼女の大切な想いを踏みにじるようなマネは、絶対にしたくない。
が、一方で膨れ上がった肉体的欲望を滅することは容易ではなかった。ここ数週間分の性欲を凝縮したかのようにペニスは強く勃起し、萎える様子を見せない。
相手が悪かった。相手が悪すぎた。
ウルドという女神は…本人に自覚が無くとも、誘惑という名の切れ味鋭い凶器をいくつもいくつもその身に備えているのである。
彼女がその気になればそれらを容赦なくふるい、いかなる潔癖さをも昇華させ、男を狂わせることができるだろう。大切な恋人を忘れさせ、不義に走らせることができるだろう。人間程度の理性では、本来なら一秒たりとも耐えてなどいられないはずなのだ。
螢一はあらゆる良心を、道徳心を試されているかのような気になった。
「頼むから…もう許してくれ…!」
忘我し、欲望に支配される自分の姿が見えたような気がした。うめきながら後ずさる螢一を…ウルドはすり足で追う。螢一が一歩退けばウルドは二歩進み出て…少しずつ間合いが詰まってゆく。
とん…。
背中が壁に触れる。螢一は後ずさるうち、部屋の隅に追いやられていたことに気付いた。
そんな螢一の前で…ウルドは懇願するように胸の前で手を組み合わせ、ひくっとかわいらしくしゃくり上げた。
「じゃあ…じゃああたいが…螢一のこと、好きって言ったら…抱いてくれる…?」
「好きって、お前…待てよ…待ってくれよ…!いけないってば、ウルド…ッ!!」
止まった時間の中を泳ぐように…ウルドが最後の間合いを詰める。
「螢一…っ!!」
「ウルドッ…い、いけ…ない…!!」
ぽろろ、と涙をこぼしたウルドは…真っ直ぐに螢一の胸に飛び込んだ。どうすることもできず、ウルドの身体を抱き留めてしまう螢一。
くすん、くすんと…耳元ですすり泣く声を聞かされた。聞いたこともないウルドの泣き声は…不安に満ち満ちた声であった。
「お願い…一生のお願い…今夜だけ、あたいを愛して…。このままじゃあたい、待てなくって…外に出てっちゃうかもしれない…。」
「な、なに言って…!!」
「これは脅しよっ!?素性の知れない男とするくらいなら螢一がいい…いえ、螢一だからしたいの、してほしいの!ねぇ、お願いよ、螢一…今夜一回だけでいいの、一回だけでいいから…お願い…」
「ウルド…」
「お願い、助けて…!一夜だけでいいから…普段あの娘にしてあげてるように、あたいにも優しくして…!このままじゃ、このままじゃあたい…女神の資格、自分から捨てちゃいかねないっ!!」
ウルドはせつなさに耐えるよう、螢一の背中に強く指を食い込ませてきた。求愛の泣き声は出任せでも、その場しのぎでもない本物であった。ガクガク震えるウルドの両脚には…もう膝にまで発情の雫が伝い落ちている。
螢一はまぶたを閉じ、覚悟を決めるように小さく息を吐いた。
ウルドを…満たしてあげたい。できる限りの力で彼女を癒してあげたい。
それは傲慢などではなかった。男としての本性…女性に優しくしたいという生まれながらに備わっているプログラム。女性と愛し合いたいというプログラム。
螢一はウルドの背中に右手を伸ばし、力を込めて抱き寄せた。
「わかったよ、ウルド…。ウルドにそんなこと、させたくない。」
「じゃあ…それじゃあ…」
「ああ…。そのかわり、絶対に今夜一回だけだからな?キスもしない。」
「…いいわ、それで…。唇は…あの娘だけのものだものね…。」
唇を重ねることだけはしないという合意のもと…螢一もウルドの身体を抱き締めた。彼女の顔に…歓びに満ちた安らぎの表情が花開くように浮かぶ。
それは情熱的なウルドにはおおよそ似つかわしくないアーケイックスマイルであった。普段ベルダンディーが見せるような穏やかな微笑…。
螢一の耳元に、はあ…と熱い歓喜の吐息がかかる。と、ふいにウルドは何事か呟いた。たちまち彼女の指先から霧のようなものが立ちのぼり、渦巻くように室内に満ちると…隅々へ溶け込むように掻き消えた。なにかの法術であったらしい。
「今のは…?」
「静寂をこの部屋に満たしたの。部屋の外には衣擦れ一つ聞こえないわ。どんな声をあげようと…どんな音をたてようと、誰にも聞こえたりしない。」
「…じゃあ…本当にオレで、いいんだな…?」
「さっきから言ってるでしょう…?あなただから、抱いて欲しいの…!」
そこまで言葉を交わすと、螢一はウルドを愛おしむように抱き締めなおし、転がるようにして布団に倒れこんだ。二人は両手両脚を絡め、ゴロゴロ転がり合いながら夢中で抱擁に浸る。
ちゅっ…ちゅうっ…ちゅ…
唇以外、おおよそ顔にあるパーツすべてにキスを撃ちあう。
頬に…鼻先に…まぶたに…。特に額の逆三角形をした聖痕に熱く唇を押し当てられ、強く吸われると…ウルドは身悶えしてか細い悲鳴をあげた。
そのうち…どうしても互いの唇の感触が確かめたくなる。狂おしく口を塞ぎ、柔らかな内側で舌を絡めてみたくなる…。
しかし、それは決して越えてはならない最後の一線であった。越えたが最後、二人ともベルダンディーの顔を直視できなくなるような気がしたからだ。
「螢一…嬉しい…。」
「よかった…やっとウルドの笑顔が戻ってきた…!」
布団の上できつく抱き締め合い、頬摺りしながら感動を伝えあう。胸どうしが強く密着すると、互いの高揚による高鳴りがわかった。
積極的に愛撫に出たのは螢一のほうであった。許可も得ずにウルドの乳房をTシャツの上から包み込み、揉む。手に余る大きな膨らみは予想以上に柔らかであった。
「ふふ、螢一ったら思春期のガキみたい…。やっぱりしたくてウズウズだったんじゃないの!素直じゃないんだから!」
「…やっぱりやめよう…。」
「ああん、ウソウソ!怒んないでよぉ…!」
「さっきも言ったけど…女神様に売春婦のようなマネをさせるわけにはいかないからね。罰があたる…というか、そのぅ…他人がするくらいならオレがしたかった…。」
「螢一…」
普段のように軽口を叩いたものの…螢一が素直な気持ちを言葉にすると、ウルドは突然トロン…と陶酔したような顔になった。
「ウルド…オレを…こんなに求めて…かわいいよ、ウルド…!!」
ウルドがこんなにかわいらしかったなんて…。感じたこともない愛しさがこみ上げてきて、螢一はついつい調子に乗ってしまう。しかしそれは本心であった。
螢一はウルドの頭を抱き寄せ、頬に強くキスした。ウルドもそれに倣う。ちゅ、ちゅっと音まで立てて…あごに、首筋にキスを撃ちまくった。
「ウルド…上、脱ごっか…?」
「脱がせてくれる…?」
「じゃあ脱がしっこしよう。」
抱擁の手をしばし止め、二人は上体を起こした。互いをばんざいさせてタンクトップを、Tシャツを脱がしあう。特に螢一は、ウルドの長く美しい銀髪を気遣って丁寧に脱がせてあげた。
「うわあ…」
「な、なによぉ…?」
「あ、ちょっと待って。もっと見せてよ…」
「もう…。」
薄褐色の乳房が露わになったとき、螢一は思わず感嘆の声を漏らした。ウルドはそそくさと両手で胸元を覆い、恥じらいつつ口元をとがらせる。しかし螢一が求めるとウルドは拒もうとせず、そっと両手を下ろしてあるがままを晒した…。
大きく、張りのあるドーム形の乳房は…すでに乳首が充血して桃色を呈しており、少し身をよじるだけでも重そうに揺れた。
んぐ…。
息を飲み、真っ直ぐに見入る螢一。今までのどんなグラビアでも、ここまで美しい乳房を持った女性はいなかった。興奮を通り越し、惚れ惚れするほどの絶対美を感じる…。
さすがにそうまじまじと見つめられるのは恥ずかしいようで、ウルドはそっぽを向きながらも上体をそらして螢一に差し出した。
「キレイだ…真ん丸で、おっきくて…さすが女神さま…。」
「じゃあ早く…早く女神の乳房に触れて…。好きなようにしていいんだから…!」
「こんな素晴らしい胸に…触れられるなんて…!!」
感動に打ち震えた螢一は再びウルドを寝かせると、無我夢中で彼女の左胸をつかんだ。右手の指が吸い付くほどの手触りをそっちのけに、真っ先に乳首を口に含む。
ちゅうちゅうと音まで立てて吸ってみた。懐かしい感覚がこみあげ…かつて母にしたように、甘えた気持ちで一生懸命吸う。彼女の使っているボディーソープの匂いと…発情による極上のフェロモンが混ざり合って螢一を冒し、どんどん夢中にさせてしまう。
「んっ…!け、螢一ったら…もっと、触って…。もっと、痛いくらい…!」
喜悦の声をあげるウルド。螢一はもうすっかり虜になっていた。ウルドの母性に…淫靡さに…。
空いている左手で強く右胸をつかむと、搾るように握りながら親指と人差し指とで乳首を摘み、ひねった。一点に集中する苦痛と快感に顔をしかめながらも、ウルドは蒸し暑い室内に女性の鳴き声を響かせる。
「いひいいっ!!」
「ウルドのおっぱい、おいしい…!オレを…狂わせて…」
「もっと狂っていいのよ、誰も来やしない…今夜だけ、今夜だけ特別…。今夜だけはあたいだけに剥き出しの螢一を見せて…。思うさま、乱暴に…!!」
「ウルド…ッ!!」
螢一はウルドの求める声に魅惑され、さらに乳房への愛撫を強くした。健気にしこった乳首を吸い、唇で挟んで引っ張り、押し転がすように舐め…その周りを舌で擦る。
左手は手の平いっぱいに包み込んだ右胸を乱暴に揉み、こね、揺さぶった。たぽん、たぽん…と微かに音がする。すべすべで優しい手触りと、むにっ、むにゅっとした絶妙な弾力は危険な常用性を秘めており、何度も何度も撫でては揉む、を繰り返してしまう。
「やわらかい…ウルド、ぽにゃぽにゃしてる…こっちも吸わせて…」
「いいけど、どうしてそんな一生懸命吸うの?こっちだって、なんにも出ないわよぉ…」
「美味しいんだもん…ウルドの汗と、肌の味だけでも…!」
「…なぁんかヘンタイっぽいわねぇ…。」
ウルドの言葉は聞き流し、螢一は手と口を左右入れ替え、女神の乳房を堪能した。執拗に吸われた左の乳首はすっかりしこり、指で押し転がすと、ツンッ、と固く戻った。右手の平にも滑らかな手触りを、みっちりした質量による弾力を覚え込ませる。
右胸も乳首を吸われ、素直に反応してきた。小さかった乳首は螢一の唇の中で固くしこり、ちゅうっちゅうっと吸い上げられるたびに張りつめてくるのが感じられる。しこった先端を舌先でちろちろされると、ウルドはクッ…と身体をそらし、たぽん、と乳房を波打たせた。
螢一に乳房のすべてを独占されてしまったウルドは…優しく、だけどねちっこい愛撫にすっかり感じてしまっているらしい。のしかかる螢一の身体を持ち上げるように、腰を浮かせてよがり鳴いた。
「い、いいわっ、けいいちっ!はぁ…っ、もっと、もっとおっ!」
「うわ…んむ、んん…っ!!」
螢一の頭を両手で押さえ込んでくるウルド。乳房の気持ちよさに比例した力がどんどん込められ、螢一はむにゅっ…と柔肌に顔を押しつけられた。呼吸を苦しくさせているのにも気付かず、ウルドは離したくない一心で強く抱え込む。
「ああっ、ん、けいいちっ!強く、もっと強く吸って!ねえ、けいいちぃっ!!」
「ん、んんーっ!苦し…ウルド…!」
「あ、あっ、螢一っ!?」
さすがに螢一の肺腑にも限界が訪れた。拘束してくる両手から頭を引き抜くようにして、ウルドの暖かな膨らみから逃れる。顔中唾液でベトベトにした螢一はつらそうに肩で息をして、思う様新鮮な酸素を体内に取り込んだ。
「…ごめん、螢一…。あんまり気持ちよかったから…」
「はあ、はあっ…いや、いいんだよ…。はぁ、息するの忘れて夢中になってた…。でもさ、ウルドのおっぱいで窒息なんかしたら、天国と地獄、どっちに行けるのかな?」
「あら、あたいは女神なのよ?決まってるじゃない。」
「じゃあ…たぶん地獄だろぉな。」
「なんでそうなるのよぉ…?」
くすっと微笑を交わし、そのまま見つめ合う二人。照れくさくてならない気持ちですら心地よい刺激となって興奮を誘う。
これは恋に落ちた錯覚…。恋人どうしのような錯覚…。
じぃっと対峙した二人を、しばし沈黙が包み込む…。
「螢一…」
先に沈黙を破ったのはのしかかられた体勢のウルドであった。うわめづかいに螢一を見、思春期の男の子なら聞いただけで果ててしまいそうな甘えた声で…
「やっぱり唇に…キス…して…。」
とおねだりした。螢一からの禁じられた愛撫を求めるよう、震えるように唇が開閉する。
螢一は表情を引き締めてウルドを見つめ直した。困惑の色が目元に漂う。
「…ウルド、お前がそんなこと言っていいのかよ…?姉だろ、お前は…。オレの気持ちを知っててそんなこと言うんだから…」
「いやっ!お願い…キスしてほしいの…。今だけっ…今だけ、あの娘を忘れて…っ!」
そう涙声で駄々をこねると、ウルドは右手の人差し指で焦れた唇を慰めた。風呂上がりですっぴんの唇を押し割るように擦り、上から下からをまんべんなくいじりまわして…ちゅぷ、と口に含む。
唇をとがらせるようにすぼめながら細い指をちゅうちゅうしゃぶり、泣きベソ顔で上目遣いに螢一を見上げた。すん、と鼻をすすり上げたりする。
ぱきん…。
そんなウルドを見てしまった螢一の奥で…何かが潰れる音がした。
それは金剛石もかくやと思われた螢一の理性が圧壊し、潰れてゆく音であった。あごが背徳の歓びにわななくのを必死に耐えていたが…所詮悪あがきであった。右手が彼女の指を唇から強引に引き離す。
もう…ウルドが愛しくてならなかった。
「…ウルド、頼むよ…もうオレを困らせないでくれ…!」
ちゅっ…。
禁断のラインを越える音が…室内に響いた。
戸惑い果てた螢一が押し当てた唇はウルドの整った唇に強く密着し、いつまでも離れなかった。互いが鼻でブレスするのを頬に感じながら、二人は一分を超えてキスを続けた。
胸が苦しい…。最愛の女性以外の女性と唇を交わしたことに螢一は自責に苛まれたが、その奥からこみあげてくる感動がすごかった。忘我を繰り返してしまう。
ウルドも感激のあまり…感涙を溢れさせていた。螢一の唇があまりに心地よくて…焦れたヴァギナはおもわずしおを噴いてしまった。黒いTバックショーツの布地を通り越し、膣口を覆う辺りから、ぬむ…と愛液が漏れ出る。
螢一の方から唇を離すと…ウルドはすっかりのぼせたようになっていた。んく、と小さく喉を鳴らし、さらに両手を差し伸べてくる。
「けいいち…もっとキスして…もっと深く、もっとたくさん…」
「もっとかよっ、じゃあもっともっと、ウルドがイヤッて言うまでしてやるっ!」
苛立つように告げた螢一は再びウルドの唇に吸い付いた。螢一もウルドとのキスにのぼせてしまっていた。もうそのままのウルドしか見えない。
螢一は唇の隙間から、くぴ…と唾液を流し込んだ。ウルドはそれを受け入れ、舌で自らの唾液と攪拌してから送り返す。
互いに舌を差し込み合って何度も何度も唾液を交換し…媚薬めいた雫を味わった。脳が沸騰してしまいそうなくらいに悩ましい味に、二人して身悶えする。
螢一にはそれとはわからないのだが、ウルドにはキスを通して螢一の気持ちが如実に伝わっていた。熱い欲望、冷たいうしろめたさ…その奥に見える、確かな好意…。
ベルダンディーへの想いはうしろめたさもあいまって圧倒的であったが、自分への好意も欲望と同時に光を放っていたことはなにより嬉しかった。安心したように身体中の緊張を解き、螢一が貪欲に繰り出すキスに応える。
「う、ウルドの唇、柔らかくっておいしい…!!」
「あ、け、螢一…嬉しい…!もっと頂戴、もっと…ちゅあ、む…かはぁ、ん、ちゅ…」
舌を深く潜らせながら何度も重なる角度を変え…息継ぎしてはまた舌を絡み合わせる。唾液の味は舌の先から根本までくまなく染み込み、背徳の美味を忘れられなくさせた。
口の周りがベトベトになるまでキスを交わすと、螢一はウルドの胸元に唇をあて、強く吸った。螢一の頭を押さえつけ、せつなくおとがいをそらすウルド。
ずらすように唇をどけると…そこにはもう鮮やかなキスマークが残されている。螢一はウルドの首筋にも唇を押し当てようとした。
「だめ…キスマークつけないで…。ふたりにバレちゃう…」
「襟の付いた服、着てればいいだろ…それか、部屋にこもってるか。」
「だったら螢一にもつけたげようか?同じトコロに…?」
「わ、わかったよ!キスマークつけるの、やめる…」
明日がデートだというのに、キスマークなど見つけられたらどうなることか想像に容易い。螢一は不満そうにつぶやき、唇を別の場所に移動させた。そこはウルドの額の聖痕であった。
「じゃあここなら…いいよね?」
「ウソ、ちょ、ダメッ!そこ弱いのっ!!だ、だめ…あ、あ…あはあああっっ…!!」
ウルドはどうもこの聖痕が性感帯らしい。唇を当てただけで身を強張らせ、強く吸われると狂おしい絶叫を迸らせた。ぽろろ、と涙をこぼし、ボッと顔面を紅潮させる。
螢一の下でウルドは腰をガクガクさせると、例によってTバックショーツの布地から愛液を染み出させた。立て続けにしおを噴いたらしく、大量に染み出た愛液はとろ…とハチミツのように流れ落ちる。
ちゅぱっ、と唇を離しても、螢一の見立てではそれほど目立つ跡は残っていなかった。逆三角形の部分は相変わらず黄昏色に充血しているのみである。
ウルドは軽く達してしまったようで、惚けた顔でぐったりしてしまった。女神の聖痕はよっぽど敏感なところであるらしい。ベルダンディーやスクルドも同様なのだろうか。
「ウルド、大丈夫か…?ちょっとやりすぎた?」
「だめって…だめって言ったのに…あ、やだっ!噛んじゃだめ…っ!!」
息も絶え絶えに非難するウルドであったが、その頃にはもう螢一は聞く耳を持ち合わせておらず、さっさと次の愛撫に取りかかっている。
非難を言い終える間もなく、ウルドは鋭い鳴き声をあげた。螢一の唇は彼女のしこった右胸の乳首を口に含み、そっと歯を立てたのだ。もちろん噛みつきなどしない。少しだけ歯先の感触を与え、意地悪しただけだ。
螢一はだらしなく唾液を乳首にこぼし、それと一緒に強く吸い上げた。ぢゅ、ちゅっ、ちゅうっ、と刺激と音でウルドを攻めたてる。
「ん、んはあああっ!や、も、け、けいいちっ…!!」
乳首もそうとう敏感なのか、ウルドは艶やかによがり声をあげ、もう片方の乳房も自ら愛撫した。手の平いっぱいに包み込んでムニムニ揉み、指先で乳首をくりくりひねり上げて刺激をくわえてから、ぐい、と膨らみを前に引き寄せ…精一杯うなだれて口に含む。
ちゅうっ…ちゅっちゅっ、ちゅうっ…
自分で自分の乳首を吸いはじめるウルド。一度に両方の乳房を吸われ、困惑しきった顔で頬を真っ赤に染めた。小振りな耳まで火傷しそうなほどに真っ赤である。
「ウルド、オレにも気持ちいいこと、して…」
「ええ、わかってる…腰、寄せて…」
螢一もすっかり待てなくなり、ウルドの太ももにトランクスごしの強ばりを押しつけて求めた。彼女に言われたとおり腰を前に寄せる。
すると、ウルドのしなやかな右手の指が、待ち焦がれて痙攣していたペニスをトランクスの上から優しく包み込んできた。
すり、すり、と指がくねり、布地ごしにペニスを愛撫する。直接でなくともわかる大きなくびれに指をひっかけ、何度も弾いては先端部分をつかみ、揉んだ。快感に震えるペニスはウルドの手の平の中で何度も何度も反り返るように飛び跳ねる。
「うわ、わあ…っ!ウルド…すごい気持ちいい…!」
「わかるわ…だっておもらししてるもの…」
螢一の声は世辞なんかではない。現にウルドの手の平の中、螢一は無意識に腰を動かし始めている。本能が膣と錯覚を起こしているのであった。もうこのまま彼女の手の平で果てたくなる…。
ビクン、ビクン、と力強く反応を示していたペニスは盛大に逸り水を漏らしていた。トランクスの前を変色させ、ヌルヌルが生地を通過し、ウルドの手の平を濡らす。それを彼女はおもらし、と茶化してみたのだ。
「…直接触ってもいい…?」
「ああ、頼むよ…じかに…じかに握ってくれ…っ!」
哀願するような螢一の求めに応じ、ウルドは右手をトランクスの内側に差し入れた。熱くてガチガチのペニスは…予想以上に太々としていた。
一本ずつ細い指を絡め…ぎゅ、とじかにつかむ。螢一の愛液を手の平いっぱいに受け取り、ウルドはツヤツヤな先端を搾るようにしごきはじめた。
ヌル、ル、ル、ル、と指の一本一本がくびれにひっかかり、さらなる愛液を搾り出させるかのごとく先端を締め付ける。右手はゆっくり、だけど確実にペニスを往復した。ぬめる音が次第に大きくなってゆく。螢一はウルドへの愛撫も忘れ、のけぞって鳴いた。
「うあ、ああ…っ!ウルドッ、ま、待って…!出ちまう…!!」
「ふふふ、敏感ね!どう、自分でするのとは違うでしょう?」
「ち、違うから、ちょっと待って!ねぇ、ウルド…一緒にしようよ…。じかにおまんこ、触ってあげる…」
「ちょ、やめてよぉ、お、おまんこだなんて…!」
螢一の吐いたある単語にウルドは目を真ん丸にし、左手で口元を覆って恥じらった。意外なしぐさに螢一はついつい調子に乗ってしまう。
「おまんこって、恥ずかしい?オレ、ウルドのおまんこ…どんな具合になってるか見たいなぁ…。ね、ウルドのおまんこ見せてよぉ…。」
「やだあ、もう…!」
「はは、ウルド、かわいい…!」
恥じらうウルドに満足したような笑みを浮かべ、螢一は右手をウルドのTバックショーツの中に滑り込ませた。
濃いめの性毛に覆われた、むっちりした恥丘に指がさしかかる。そこで少し侵攻を休め、柔らかな隆起を指の腹でぷにぷに指圧してみた。両側から摘むようにしてみると、ウルドはそっと目を閉じ、ひくく、とあごをわななかせる。
「ぷにぷに柔らかぁい…。けっこうもりもりしてるもんなんだね、ここって…」
「し、知らないっ、そんなこと…!」
気にしているのか恥ずかしいのか、ウルドは目を閉じたままで、ぷい、と横を向いてしまう。そんなウルドにますます愛しさが増した螢一は頬に軽くキスしてから、女神の性毛をもしゃもしゃ指先で撫で、恥丘より向こうへ右手を進ませた。
濡れたショーツの布地を手の甲に感じながら進むと…中指と薬指が快感に震える柔肉に触れた。すっかりびちょびちょになっている裂け目の感触を探ろうと、中指を線に沿ってなぞった矢先、中指の先はむちゅ…と狭間に潜り込んで膣口にひっかかった。そのままヌプ、と滑り込んでしまう。くつろいだ、大人の女性器であった…。
「や、ゆび、入ってる…!」
「熱い…!うわあ、中ってこんなにプリプリしてるんだ…狭くって…けっこう深い…」
「螢一、待って!あんまり深く入れちゃダメよ…出てきちゃうから…」
「出…って、な、なにが…?」
螢一は予想外の言葉に驚き、両目をパチパチさせてウルドを見た。出てくる、とは一体何のことなのか。中指を慌てて引っ込め、ウルドを見つめる。
ウルドは照れくさくてならないのか…ペニスへの愛撫も中断して、そっぽを向きながら少し早口に説明した。
「今日…薬局へ行ってきたの。人間界の避妊具を買いに、ね?で、いろいろあったんだけど…螢一に手間かけさせたくなかったから…マイルーラ、買ってきたの。知ってる?」
「ま、マイルーラ!?」
螢一は驚きのあまり、大声で避妊具の名前を叫んでいた。ウルドも自分で行使した法術を忘れたのか、口元に人差し指を立てて、しーっと螢一をたしなめる。
マイルーラとは円いフィルム状の女性用避妊具だ。円錐状に折ってから膣の奥まで挿入すると、中で溶けだして子宮口を塞ぎ、精子の子宮への侵入を防ぐものである。それと同時に殺精子作用も有しているので二重の避妊システムと言えよう。
螢一もその手の雑誌でマイルーラについては見知っており、具体的な形状、使用法は知っている。
しかし女神がそんなものを使うとは…もう意外としか言えない。
「まさかそのために…さっきまでオナニーしてたのか?」
「まあ、そんなとこ…。でもあれって挿入が難しいのよね?手間取ってたら溶けだしちゃって…。だから今あたいの中に入ってるの、実は二つ目…。」
横目で螢一を見、照れ隠しに舌を出してみせるウルド。普段の彼女からは想像もできない愛くるしいしぐさだが、そのぶんキューピッドの矢となる条件は満たしており、螢一の胸の奥に深々と食い込んだ。動悸が増し、ぽっと頬を染めてしまう。
「あ、あ、や…コンドームでよかったのに…」
「あら、螢一ったら、もう持ってるっていうの?それともあたいがコンドーム頂戴って薬局の人に言えっていうわけ?どちらが買いやすいか想像できないの?」
「う、コンドームは…買えないよなぁ…」
「でしょ…?」
ウルドの左手が伸び、恥じらう顔を見せまいと螢一の顔を引き寄せ…思い出したようにキスする。唇を重ねたまま、ウルドは片手で螢一のトランクスを下げた。強く反り返ったペニスがへそにあたり、ヌルヌルと雫をつける。
「ね、螢一…本番の前に舌の感触も味わっておく…?」
「し、舌っ!?そ、そんなっ、いいよっ!悪いよっ!」
「悪くなんかないわ…あなたにもしてもらうもの…。さ、ハダカになりましょう?」
そう言うとウルドは腰を浮かせつつ、自らスル…と薄物を脱ぎ捨てた。ねっとりと愛液の糸を引かせたTバックショーツがぽい、と放られると…ウルドはもう生まれたままの姿を螢一にさらけ出していた。
洗い立てで美しく光る銀色の髪。
魅惑の言葉を紡ぐ形の良い唇。
はちきれんばかりに熟した、迫力あるドーム形のバスト。
無駄なたるみがなく、しかし筋張ってもいない絶妙にくびれたウエスト。
美しく弧を描く、余裕に満ちたヒップ。
ふっくらした恥丘を翳りで覆うヘアー。
そして…太ももの隙間でねっとり潤っている生命の裂け目。
女神の裸体は完璧であった。
螢一も彼女に倣ってトランクスを脱ぎ捨てた。上背はないがそれなりに引き締まり、筋肉質な体格をしている。そそり立つペニスは逸る気持ちでいっぱいで、一生懸命背伸びをするように性毛から突出し、天井を仰いでいる。
「螢一が仰向けになって…。あたいが上からしてあげるから、あたいにも…ね?」
「わかった…」
言われるまま布団に寝そべる螢一の上にウルドが天地逆にのしかかり、シックスナインの体勢をとる。ウルドは眼前のペニスを待ち焦がれた瞳で見つめ、そっと手にすると濡れた先端に唇をあてた。すぼめた唇でスタンプを押すように何度も何度もキスを撃つ。ちゅっちゅっちゅっ…と連発するたび、唇と先端の間で逸り水が糸を引いた。
「うあっ、う、ウルドッ!!」
「あたいにもして頂戴…はやく、はやくぅ…」
女神に性器を口づけしてもらっている。ゾクゾクするほどの背徳感と唇の柔らかい感触に螢一は女の子のような高い声でうめいた。ウルドも待ちきれない様子で、おしりを振って愛撫を求めてくる。
かぶりを振って気を取り直す螢一。とりあえずは初めて目の当たりにしたヴァギナを事細かに観察することにした。
濃いめの性毛をたどり、むっちりした肉の内側からはみ出すように開いている濃い桜色の粘膜。その縁に見えているクリトリス。そして、新たな生命の生まれくる膣口…。
螢一にとって刺激の強すぎるその光景は、まさに猥褻美とでも言うべき存在であった。見た目はそれほど素敵ではなく、むしろグロテスクな感じなのだが…淫靡な雰囲気が錯覚させ、目が離せなくなってしまう。
誘い込まれるようウルドのヒップに手をかけ、螢一はゆっくり顔を持ち上げた。ヒップもサラサラでつるん、としており、触り心地は乳房に劣らず良い。いつまでも撫でていたい手触りだが、それだけではウルドは満足してくれないだろう。
独特の女性の匂いがわかるくらいに鼻面を近づけ、裂け目に吸い付くように唇を押し当てた。その奥で、れるん、と舌を翻し、女神の愛液を味わう。
「ひ、そ、そこ…!ああ、もっとベロベロ舐めてっ!」
ウルドは腰に電流を走らせたように、ブルブルッと震えてよがった。びゅ、と膣内から愛液が絞り出され、螢一の顔を濡らす。
ひるむことなく螢一は執拗に舌をくねらせ、情欲の匂うラブジュースを舌の根本の辺りで堪能した。ウルドのラブジュースは白っぽく、汗の味の他にほのかな酸味があった。
もっと濃いラブジュースを求めるかのように…螢一は充血した粘膜肉を指で押し開き、生命の穴に唇を当ててちゅぢゅうっと吸い出す。
粘膜肉の縁で光る紅玉のようなクリトリスをも舌先で弾いてみた。敏感な本体をくるんでいる包皮に指先をかけ、挟みこむように押すとニュリ、と剥き出てしまう。螢一は女神のクリトリスに口づけし、舌でくりゅくりゅ転がしてから強く吸った。
「ひいっ、い、痛いっ!だめ、皮むいちゃだめ!あ、そ、そう…皮の上から、あ、ああっ!やだ、気持ちよすぎるぅ…っ!」
恍惚の鳴き声を漏らしながら、ウルドも懸命に螢一のペニスを舐めていた。大きく舌を広げ、先端の広い部分にまんべんなくざらざら感を擦り込む。右手で強く根本をつかみ、左手はフニャフニャな袋をころころ弄んだ。
「うふ…螢一の、すっごい男らしいわ…。かたくて、こんなに大きい…!」
「そ、そうかなぁ…?」
「自信持っていいわよぉ…?女神のあたいが太鼓判押すんだから…。」
ウルドは螢一のたくましいペニスに惚れ惚れしながら、ぺちょぺちょ音立てて先端を舐めあげた。表から裏かられろっれろっと、滲む逸り水を乗せながら強く舐める。
右手で作った筒で幹をしごきながらペニスの角度を変え、くびれにもグネグネ舌を絡めた。幹にキスを撃ち、はぷ、と唇で挟んだりして必死に愛撫する。螢一もたまらずあえいでしまった。
「舌がこんなに柔らかいなんて…ウルド、もっともっと舐めてくれ…!」
「ふふ、舐めるだけじゃないわよ…特大ソーセージ、いただきまぁす…!」
「え…?わ、わあっ!?」
ウルドは言い聞かせるようにそう言うと、大きく口を開け…はぽっ、と螢一のペニスを頬張った。螢一はあまりの気持ちよさに、思わずウルドへの愛撫を中断してしまう。
それほどまでにウルドの口中はよかった。右手なんかとは比べものにならない。腰を引くようにしてのけぞり、背中と布団の間に隙間を作ってしまう。
ウルドの唇を押し割るように、長太いペニスは中程まで飲み込まれてしまった。そこがウルドの口中の許容いっぱいのラインであった。狭い喉の入り口が、きゅきゅ、とペニスの先端を確かめている。
むせこみたくなるギリギリの奥深くまで男性器を飲み込むと、ウルドは頬をすぼめたりしながら舌でもぎゅもぎゅと味わい、ゆっくり頭を上下させた。繰り返してしごかれるたびに舌の上に逸り水があふれ、独特の渋みがいっぱいに拡がってくる…。
「あわ、あわああっ!う、ウルド待って…!口の中に出しちまうっ!!」
腰を引かせっぱなしの螢一はすっかりウルドへの愛撫を忘れていた。肛門を締めるようにして力を込め、射精したくなる衝動に耐えるのだが…限界が近い。女神のフェラチオに酔いしれ、恥じらいも忘れて情けないよがり声をあげる。
「くそぉ、待ってって言ってるだろぉ…!」
たまらず螢一は左手の中指をウルドの入り口へと乱暴にねじこんだ。中指を来るべき物と錯覚したウルドのヴァギナは、きゅうっと中指を締め付けてくる。
第二関節まで埋め込んだところで、螢一は強引に指を曲げて襞の隙間をぐりぐりとかき分けた。熱く、狭い膣内が感じているのが指先から伝わってくる。
「んむーっ!!んんーっ!!」
ペニスで口を塞いだままウルドは頭をフルフルして悶えた。待ちきれなくなった涙がひとすじ、頬を伝う。
螢一が曲げたままの中指をちゅぽっと音立てて引き抜くと、ウルドも顔を上げてペニスを解放した。抜け出たペニスは粘液と唾液にまみれ、ベタンと螢一のへそを叩く。
「はあ…はあ…螢一、もうあたい、待てない…っ!」
発情しきって泣きベソになったウルドは四つん這いで前に這い進むと、くい、と腰を突きだして後背位の体勢で螢一を求めた。
「螢一は…したことないの…よね?」
「あ…ああ…」
「これなら場所、わかるでしょう?早く、早く入れて…!マイルーラが溶けてなくなっちゃう前に…ね、早く入ってきてぇ…。」
淫欲に堕ちた女神に誘われて…螢一も上体を起こした。膝立ちになってウルドに寄り、あらためて欲情した彼女を見つめる。
潤んだ濃紫の瞳、真っ赤に火照った頬。
銀色に艶めく長い髪、小さな汗の粒。
しなやかな背中、誘惑的なおしり。
熱く開いた裂け目、愛欲の雫、彼女の…彼女だけの匂い。
女性はかくも艶やかになれるものなのか…。螢一は古来より欠かすことなく続いてきた男女の営みの理由がわかるような気がした。
「ウルド…きれいだ…」
その言葉は無意識下に口をついていた賛辞の言葉。まぎれもない螢一の本心であった。ウルドの表情が幾分ゆるみ、瞳のウルウルが増す。
「…嬉しい…螢一、きて…」
「…嬉しい…螢一、きて…」
四つん這いのウルドは髪を横に流し、そっと目を伏せて交尾を望んだ。
一方で螢一は童貞を卒業しようとしている興奮に目眩まで覚えていた。
こんな妖艶な女神とこれから交わろうとしているなんて…。
こんな妖艶な女神が初めての相手だなんて…。
ベルダンディーの事が気にかかりはしたが、ウルドへの愛欲はすでに理性の息の根を止めていた。一回だけ…一回だけならなにも変わりはしない。自分ながらに意味深な説得を心中繰り返す。
決心がついた。そっとウルドのおしりに触れる。
「い、いいんだな?するぞ…?」
「ええ…あたい初めてじゃないから、もう一気に入れて…!」
その瞬間をうなだれて待つウルド。螢一は舌で愛撫されて興奮しきりのペニスをしっかり握り、慎重に目標を定めた。先端が裂け目に埋まり、ヌプ、と一部入り込む。
「そこよ…お願い、ひとつになって…!」
感触に、せつなく求めるウルド。初体験の緊張に螢一はあごが震えた。
ふざけ友達感覚で今まで過ごしてきたウルドと…艶やかではあるが、刺激が強すぎて敬遠していたウルドと、まさかこんなことになるなんて…。
螢一はきゅっと目を閉じると、一息に腰を突き入れた。
ずぶっぷぷ、ぬぷぷぷ…
「あはああっ!い、いいのっ、けえいちぃっ!!」
「うわあ、あっ、す、すげ…っ!!」
ウルドも螢一も、結合の感動を叫び声にしていた。螢一の長太いペニスはいっぺんにウルドの膣内深く潜り込み、こつん、と行き止まりにつっかえてしまう。腰とおしりはぺた、とくっついてしまっていた。
細かな襞が生暖かくぬめりながらくびれに吸い付いてきて、まるで搾るように絡まってくる。そのあまりの心地よさに螢一は童貞卒業の歓びを隠そうともせず、上擦った声を漏らしながら腰をとすんとすん動かした。両手でウルドのおしりをつかみ、ぢゅぷ、ぢゅぷっと膣口から愛液をかき出して…交尾の歓びに浸る。
「ああっ、ああっ!!ウルド、気持ちいいっ!あっ、う、ウルドッ!ウルドッ!!」
「あんっ、やぁねえ、あたいはここにいるでしょうっ…!?」
「すごい、すごい、すごいよおっ…!や、ヤバイッ、出ちゃうっ!!」
ものの十秒も動いていられただろうか。螢一はウルドの想像を絶した気持ちよさに躍らされ、感極まったあまり興奮がリミットを越えた。深く没入したままのペニスは最高に強張り、凄まじいまでの高ぶりが根本に殺到する。ぴた…と腰の動きは止まってしまった。
ウルドはきつく目を閉じたままイヤイヤして、
「いいのっ、一回出して!このまま中に出していいからっ!!」
と膣内射精を促した。自ら擦れるようくい、くいっとおしりを振るが…螢一は左手で根本の管を押さえつけ、肛門を締めるようにして最後の瞬間を堪えつつ、ずぽぷ、とウルドからペニスを引き抜いてしまった。ぬめる先端も慌てて右手で塞ぐ。
「…そんなぁ…マイルーラ入れてあるんだから、そのまま出してもよかったのに…」
「ごめん…だけど…ああ、もうヤバイッ!手を離した途端にイッちまいそうだっ…!!」
「けいいちぃ…」
一方的に中断されたウルドは不満そうに溜息を吐くと、身体を向き直して螢一の顔を見上げた。四つん這いのままだからほんの少し上目遣いぎみになる。
「ね、螢一…もう少し待てる?」
「あ、ああ…でももう、今にも…ごめん、ごめんな、ウルド…!!」
「謝らないで、それだけあたいが気持ちよかったってことでしょう?気にしないでいいの、初めてだったんだし…それに、元気いっぱいな証拠…。」
うなだれて泣き出しそうな螢一にウルドは上体を起こし、両手で自らの乳房を寄せて見せた。はちきれそうな乳房と、くっきり作られた谷間が螢一の目の前に迫る。
「ね…胸でイッてみない?あたいの…女神の胸で…。」
「なっ…!?」
螢一はあごを微震させながら誘われた内容に打ち震えた。その言葉だけで果てそうになったが、左手で管が堰き止められているため終わりはこない。
目を閉じて深呼吸を繰り返し、どうにか波を引かせる…。
なんとか落ち着きは戻ってきたが、それで興奮がおさまったわけではなかった。
螢一の身体は確実に、一回イキそこなったのだ。次回の射精に備え、腰の奥でドロドロしたわだかまりが蓄積する。
おそるおそる両手を離しても、もう暴発の気配はなかった。代わりに粘液状でない、サラサラな白液が右手の平にこぼれていた。
「ほら、あたいの上をまたいで…螢一の特大ソーセージでホットドッグを作るの。」
「いいのか、ウルド…?オレだけ気持ちよくなっても…」
「一回スッキリしたいでしょう?もちろん…後であたいも気持ちよくしてくれる、のが前提よ…?」
「ううっ、ウルド、ゴメン!!」
先に横たわったウルドの言葉に、いてもたってもいられなくなった螢一は彼女の胸の上をまたいだ。乳房の狭間にペニスをあて…両側からむにゅ、と包み込んでもらう。なるほど、こんがり焼き上がったパンでつくったホットドッグのようになってしまった。しかしホットドッグというにはボリュームがありすぎる感もなくはない。
そんな特大ソーセージを挟み込むパンは柔らかく暖かく…最高の食材であった。形も、きめの細かさも一級品である。
それにしてもウルドに…女神にこんなはしたないことをさせているなんて…。背徳感、冒涜感が螢一の心の奥に潜む暗い欲望を揺り起こし、たまらなく満たしてくれる。
「うわぁ…や、やわらかくって…いい気持ちっ!」
「ほら、抜け出ないように動いてみて。きっと凄いわよぉ…!」
螢一は仰向けのウルドとできるだけ平行になるように身体を倒し、ゆっくり…しかし深く腰を動かした。くびれが谷間をを抜け出るたびに感じたこともない快感が脳髄をひっかきまわしにかかる。螢一が無色透明のソースでパンの間をヌルヌルにすると、ソーセージの動きは一層滑らかになり、大きさは迫力を増した。
「あっ、ああっ、あああっ!き、気持ちいい、ウルドの胸、最高っ!!」
「うふふ、喜んでもらえて嬉しいわ!あたいに気にしないで、イキたかったら思いっきりイッていいわよ…?」
「そんな、か、顔にかかるよ…汚しちまう…」
「いいから…早くイッて、つ、続きを…!」
そうせつなげにつぶやくウルド。欲しくてたまらないペニスは…先程交尾を中断されたペニスは目の前でぬっちゅぬっちゅと出たり入ったりしている。
早くこれでかき回してほしい。デタラメにえぐってほしい。そして…。
そう思うだけでヴァギナはきゅんきゅんうずき、狭く締まって想いのこもったラブジュースを噴き出した。
「はやく…はやくほしい…!」
そうつぶやくとウルドは頭を起こし、精一杯舌を伸ばして情欲のソースに濡れた螢一のソーセージをチロチロ舐めた。尖った舌先が逸り水を舐め、尾てい骨の辺りにまで鋭い刺激を叩き込む。
刹那さえあればことたりた。
「ああっ、う、ウルド!ウルド!!ああ、出る!出るうっ!!」
びゅううっ!!びちゃっ!びちゃ、べちゃ…
「ひっ…!!」
それで淫乱のホットドッグは調理を完了した。歯ごたえのありそうな熱々ソーセージは、ふんわりホカホカのパンの狭間奥深くから抜け出た瞬間、黄ばみかけた白濁のスペシャルソースを…耐えに耐えたぶんまとめて放出した。一切の躊躇い無く、グルメな女神の顔いっぱいに…それはもう額、まぶた、鼻、頬、唇、あご…。顔のあらゆる部分に心ゆくまでぶちまけ、その味を披露する。
射精の瞬間に備え、きゅっと目を閉じたままウルドは顔じゅうに精液を浴びた。べとべとにまみれたまぶたを開け、汚された事実で呆けたようにペニスを見つめていたが…
ぷぁ…ぴちゅ…
脱力して頭を寝かせ、唇についた精液を舌を伸ばして舐め取った。渋味が喉に絡みながら胃に流れ込んでゆく。
「けいいちの…精液…」
「ウルド…ごめん、ごめんな…」
射精した余韻に包まれたままの螢一は左手を伸ばしてティッシュペーパーを大量に引き出し、腰を離してウルドの顔から精液を拭き取りにかかった。
薄褐色の肌に白はよく映えており、あらためて盛大に放出したことに気付く。ぼうっとしたままのウルドの顔は、二回分の生臭い精液ですっかりドロドロだ。
「けいいち…あたいの胸、よかったでしょう?」
「うん、最高だった…。ひどいことしてごめんな。」
自らの性器も入念に拭い、螢一は深々と頭を下げた。
「ううん、そう思うのならあたいを満足させて…?」
「…わかったよ。オレ、頑張るから。」
自信はなかったが…螢一はそう約束せずにはいられなかった。そっと差し出された左手を右手でつなぎ、しっかとうなづく。
そのときウルドが浮かべた微笑は…胸が破裂しそうになるほどかわいらしいものだった。
大人の女性とばかり思っていた。
自分なんかにはいささかの興味も示してくれないものと思っていた。
だから敬遠していた。
異性としていくばくかの憧れは抱いていたが、それを見透かされては手玉に取られ、挙げ句の果てには妹との仲にまで茶々を入れてくる彼女を…正直な話、疎ましくさえ思っていた。
なのに…今はこんなに愛しい。
発情の標的に定められたためか、男性としての本能は彼女に応え始めていた。ウルドがかわいくてならない。ウルドが愛しくてならない。ウルドが…ウルドが…
「ウルドッ…」
「んっ…」
綺麗に精液を拭き取られた頬にキスし、そして唇どうしを重ねる。大量に放っておきながらも螢一のシンボルは萎えることを知らず、強く硬直したままであった。
「したい…。」
「あ…」
螢一は手を取ってウルドを起こし、あらためて四つん這いにさせた。挿入を待ちきれなくて溢れかえった愛液は、おしりの穴から太ももからをすっかりべちょべちょにさせている。裂け目はくんにゅりと開き、深奥の薄膜はひくっひくっと螢一を手招きしているようであった。
「すぐにいいの…?休憩しないで大丈夫?」
「…ウルドだって待てないんだろ?オレなら大丈夫。もういつだってできるよ。」
「うふ…素敵よ、けいいち…。」
「ありがとう。じゃあ今度こそ…最後まで…」
「うん…」
普段のウルドからは聞き慣れない了解の言葉。すっかり螢一に甘えるように、自分からそろそろと腰を近づけてくる。
螢一は連戦に応じようと武者震いするペニスをつかみ、ウルドへの入り口に押し当てた。ひちゅ…と先端を埋めて固定する。両手でまろやかさを確かめるようにウルドのおしりを撫でてから、ぎゅっと指を食い込ませてつかんだ。
「いいね…?」
「うん…つながって…!」
体重を前方に移動させながら、ずっ…と腰を突き出す。パンパンにつやめくペニスの先端は先程同様容易く膣口を割り拡げ、ヌルルルッ…と潜り込む。
「んんんっ…!!」
「ウル、ド…!」
つらそうに声を漏らすウルド。しかし苦痛では無かった。待たされたぶん快感が大きすぎただけである。こなれたウルドの内側は螢一が押し込めば押し込むだけ、ズプヌプと熱い深奥へと導き込んだ。
かといって狭さは絶妙で、螢一のペニスは全体でその寵愛を拝受した。でこぼこした膣壁に擦られながらヌル、ヌルル、と突き進み…再び終点を探り当てる。
射精直後で感覚は鈍っているとはいえ、中枢がナタで叩き切られたような感触に背筋がゾクッとする。先程放ったばかりだというのに、信じられないくらい気持ちいい。
あまりの快感にペニスの感覚は一層鈍くなり、ウルドのヴァギナの中で熔けてしまったような錯覚に見舞われた。
「あったかぁい…。ね、ウルド…つらくさせてる?」
「ううん、すごいいいの…さっきよりもいいの…!この感じ、久しぶり…!いっぱい、押し広げられてるっ…!ね、螢一…初めての感想はどう?」
「なんていえばいいのか…もう、メチャクチャ気持ちよくって…これがセックスなんだなぁって、感動のほうがすごくって…!ああ、ずうっとこうしていたい…!」
童貞卒業の感想を上手く言葉にできず、螢一は納まったままの体勢でウルドの背中を撫でてあげた。明らかに男とは作りの違う肌。触るだけでゾクゾク感じてしまう。
螢一は繋がったままで上体をゆっくり前方に倒し、左手で支え、右手でウルドの乳房をつかんだ。下を向かされたぶん胸の膨らみはいっそうボリュームを増し、螢一の手の平にみっしりと質量を感じさせてくる。
「…ああ、ウルドとセックスしてるんだ…ウルドと…ウルドとっ…!!」
「けいいち、動かないとセックスじゃないわ…?早く動いて…!行ったり来たりして!!」
「あ、ああ…じゃあ動くぞ…?」
ぺた…ぺた…
腰とお尻が密着しては離れ、密着しては離れ…。螢一の不慣れなピストン運動は極めて短いストロークでウルドの深奥を刺激した。こつん、こつんと子宮口がノックされる。
「うはぁ、すっごい入ってる…!ここ、ウルドの一番奥なんだろ…!?」
「ああ…そ、そうっ…!すごい深いわ…螢一、もっと強くしてみて…!」
「も、もっとだな…よぉし…。」
ウルドの求めに応じようと、螢一は乳房をつかむ右手にさらなる力を込め、徐々にテンポとストロークを増していった。行ったり来たりと擦れる時間が長くなるぶんペニスが受ける快感も増す。螢一の中枢は間断なくズタズタにされ、油断するといっぺんに達してしまいそうであった。ペニスは最高潮の大きさを持続させられたままだ。
そんなはちきれんばかりのペニスで掘り返されるウルドもまた、腰の中身が熔けだしそうな心地に打ち震えた。ズンズンと深奥を突かれるたびにあん、あんっと声を漏らす。
「ああっ、感じるぅ…っ!そうよ、もっとして、けいいちっ!やんっ、上手っ!ねえ、どうしたの…?けいいちの…なんかすっごい大っきくない…?」
「ウルドの中があんまり気持ちいいからだよっ…こんな、ぐにゅっ、ぐにゅってなって…ああっ、もっと…もっとしたいっ!」
緩やかな動きに満足できなくなった螢一はウルドの乳房から右手を離すと、彼女の腰にしっかりと両手をかけた。少し膝立ちの位置を整えると、感じたいまましたいままに腰を動かし始める。
ペース配分なんか考えない、デタラメなストロークとテンポ…。ぬぺん、ぢゅぺん、とぬかるむ音と肌の打ち合う音が響く。それにつれてウルドの声も大きくなっていった。
「ひいいっ!!け、螢一っ!すごいわぁ…!こんなの、ホントに久しぶりっ!すっごい燃えちゃうっ!中身が…で、出ちゃいそうよ…!!」
「もう出ちゃってるよ、ウルドのおまんこ…。びるびるって出たり、押し込むと一緒に隠れたり…。オレの動きに合わせて、め、めくれ出てる…!」
螢一が見下ろす結合部は艶めかしくもありながら、どこか痛々しい感もあった。太々としたペニスが儚げな桜肉に突き刺さっているうえ、それが引き抜かれると内側の襞が少しだけつられてはみ出てしまうのだ。押し込むとまた、引っ込む。それが繰り返されるたびに女神の愛液は彼女の太ももをつたい、あるいは螢一の袋を濡らし、やがてシーツに染みを拡げていった。
「も、もうだめ…っ!」
ブルルッとかぶりを振ると、ウルドは上体をガクッと落とした。両腕で上体を支えていられなくなったのだ。布団の上で乳房をむぎゅっとたわませ、おしりを高々と突き出す格好になってしまう。
「あっと、う、ウルド…気持ちいいの?」
「メチャクチャ気持ちいいわ…ね、螢一…ホントに初めて…?」
「ホントに初めてだよ…。一回出してるからね、余裕があるからできるみたい。」
そう言うと螢一は激しいピストン運動のテンポを緩め、とうとう完全に停止してしまった。そしてそのまま…何を思ったのか、ウルドのおしりを突き放すようにしてペニスを引き抜いてしまう。
ズルッ、と跳ね上がるように抜け出た弾みに、彼女の膣から、ぽぶっ、という空気音がした。螢一のサイズとウルドの締まり、双方の相性がよっぽどよかった証である。膣内はほぼ密封状態で抜け出るのにも一苦労だった。
「どうして…?抜かないでよぉ…!」
息も絶え絶えな顔で見上げ、恨みがましくつぶやくウルド。真っ赤に頬を染め、興奮の最中にあるのがわかる。螢一はウルドのおしりをぺちぺち叩いて言った。
「ウルド、今度は前からしたい。ウルドの気持ちいい時の顔、見たいんだ…。」
「…スケベ。」
「イヤならもうやめちゃうよ。明日は早いんだからね。」
「…イジワル。」
ウルドは唇をとがらせてすねたようにそう言ったが…やはりしてほしい気持ちは変わらないらしい。ころん、と布団の上に仰向けに寝転がる。スラリと長く、しなやかな両脚を優雅に開き、その間に螢一が進み寄ると…ウルドは両手を差し出した。
「来て…。」
「ん…」
螢一も素直に応じる。彼女の横に肘を置き、互いに目を閉じて口づけを交わした。
ウルドのうなじを撫でると、彼女は両手を螢一の背中に回して応えてきた。そのまま抱き寄せられると、二人の胸の間で乳房がむにゅっと押しつぶされ、その形を柔らかに変化させる。
「今度は最後までするよ…?どう、もうそろそろキテる?」
「かなり…。でもイクときは一緒にイキましょ…?」
「ウルドが先にイッてほしいな…。オレはウルドのイクときの顔と声、確かめてからイクつもりだし、ね。」
「ふふ、そんなコト言ってて、あたいだけ置いてイッちゃダメよ…?」
身体を重ねる雰囲気に馴染んだ二人は、互いを慈しむような笑みを浮かべながらいくつかのおしゃべりを交わした。恋人どうしのような錯覚はどんどん深まり…
ちゅ…。
自然に顔が近付いただけのキスひとつで胸の奥が暖かく満たされるようになる。
螢一はウルドの右手で膣口へと導いてもらい、再度の挿入に備えて四肢の位置を整えた。
「入れるよ…。」
「うん…んっ、んあ、はうっ!!」
ヌブ、ププッ…。
恥じらう顔を見下ろしながら腰を突き出し、螢一がゆっくりと侵入してくると、それだけでウルドは小さく悲鳴を上げた。何度も中断されることで、ヴァギナはすっかり過敏になっている。挿入されたときの満足感は初めよりも大きくなっていた。
狭まってきているヴァギナの奥深くまでペニスを没入させると、ウルドの顔は大きな快感を持てあまし、しかめられた。螢一は心配そうな眼差しで彼女の頬を撫でてあげる。
「痛くしてる…?」
「違うの、さっきよりずうっと感じてるから…。さ、続き…!」
「うん…」
ちゅ…っ。
何度目か覚えていないほどのキスを重ね、螢一はウルドの深奥からゆっくりと腰を引き戻していった。
体位を変えただけだというのにデコボコしたウルドの襞がペニスのくびれに一層ひっかかり、何とも言えぬ刺激を与えてきてくれる。そんな襞の群れがペニスを逃すまいとすがりつくようにクニュクニュ動いてくるのだ。
中程まで引き抜き、また奥まで差し込む。ゆっくり、ゆっくり…螢一はできるだけ時間をかけてウルドの内側をえぐった。ヌルル、じゅぷぶ、ヌルル、じゅぷぷ、の繰り返し。
さざ波が寄せては返すような優しいピストン運動にウルドはすっかり酔いしれ、螢一の背中に夢中でしがみついていた。後日を慮って爪は立てないよう努力している。豊満な乳房は先程より強く形を歪めていた。
「ウルド、こんな感じか?気持ちいい?」
「まだまだ…もっと強く動いていいわ…。マイルーラは入れてあるんだから気にしないで駆け抜けてもいいのよ…?」
「ありがとう…じゃあもう少し早くなるから、身体、起こさせて…」
螢一は上体を解放してもらい、ウルドの顔の横に両手を突くと、ぺた、ぺた、と腰をならすほどの勢いをつけてグラインドを強めた。下肢に力を込め、リズミカルにグラインドを繰り返す。ヂプ、ヂュプ、プブ、とぬかるむ音が大きくなるにつれ、自分にも大きな快感が生まれてくる。
高揚してきたウルドの膣内はすこぶる快適だ。正常位の方がフィットしてくると思っていたのは、どうやらウルドが程良く感じ始めているかららしい。後背位で交わっていたときよりも膣の径が狭まっているため、襞も高くなったように感じられるのだ。
「こう?こんな感じか、ウルド…?ああっ、すっげえイイ…!」
「あ、そ、そうっ…!ん、イイ感じよ、けいいち、すごい上手になったわ!あん、あ、んふっ!素敵よ、もっとしてぇ…!」
ウルドもウルドで遠慮無しによがり声をあげ、布団カバーを握りしめながら快感にむせびないた。じわじわかき出されるラブジュースはおしりの穴を伝い、シーツにべっとりとぬかるみを作っている。螢一の上体が離れたおかげでカタチをとりもどした乳房は前後運動に合わせ、たぽんたぽんと波打つように揺れた。
「ああ…ぴっちりしてる…さっきよりもいいよ、気持ちいい…!」
「け、けいいち、あ、あたいも…すごいの、気持ちいいのっ!!」
「ウルド、どこが気持ちよくなってるの?教えて…気持ちいいところ、教えて…!」
「んっ、ちゅ…いやよ、そんなの…そんなこと、言えない…!」
螢一はウルドにキスしながら、彼女の耳元に淫らな睦言をささやき始めた。ウルドが照れて身をくねらせると結合の具合もグネグネ変化し、螢一をさらに酔わせる。
「じゃあオレが言おうか…ウルドの気持ちいいところ、おまんこだろ…?」
「…そ、そうよ…」
「おまんこって言ってよ、一番淫らなウルドを見せて…ね、おまんこって言ってよ…」
「お…まん、こ…」
本気で恥ずかしいのか、途切れ途切れにそう言うとウルドはプイ、と横を向いてしまった。すねたように鼻をスン、と鳴らすと、目元がすぐさまウルウルしてくる。
螢一は満足そうに微笑むと、ウルドのおしりに両手をまわし、ぐい、と膝立ちになって持ち上げた。持ち上げた彼女の下半身に乱暴なほどの力で腰を打ち付ける。ぢゅぽっ、ぬぼっとピストン運動を繰り返すペニスの先端は何度も何度も女神の子宮口を叩いた。
「ウルド…オレ達、いっちばん深いところでひとつになってる…!」
「うん、うんっ!やだ、けいいちすごい!もうきちゃいそ…ね、もっと強く…!」
腰だけを持ち上げられ、さながら性欲処理の道具のように扱われたウルドだが、意外にもその待遇が気に入ったらしい。拒みもせず、きゅっと目を閉じてあんあん鳴いた。狭い部屋いっぱいにウルドの嬌声が響く。真ん丸の乳房はぷるんぷるんと円を描きながら痛々しく揺さぶられ、ラブジュースはおしりの割れ目から背中へと伝い落ちていった。
「…ね、もう一回教えて?いま、ウルドがいっちばん気持ちよくなってるの…どこなの?ここまで気持ちよさそうなんだもん、今度こそ教えてくれるよね…?」
「…お、おっ…おまん、こ…。おまんこ、気持ちいいのっ…。やだ、もう…キスして…っ」
言い切ってから恥じらい、ウルドがキスをせがむと螢一は彼女の腰をそっと降ろして楽にさせた。しばらく腰の動きを止め、荒い息をそのままに口づけする。息継ぎしては重ね、息継ぎしては重ね…何度も唇を貪りあった。汗でしっとりした肌を擦り合い、積極的なスキンシップも試みる。
「ふう…ふぅ…んっ、んっ、んん…!!」
「んふ、んむ、んふぅ…んっ!んんっ!ぷあ、けいいちっ!嬉し…んむっ、んっっ!!」
やがてキスをしながら…螢一はグラインドを再開した。動き出した途端にウルドの襞のひとつひとつがリズミカルに収縮を繰り返し始める。熱いウルドの身体からも、彼女がすっかり後戻りできないところにまで来ていることが予想された。
「ウルド、ん…んっ、感じるよ、ウルドが感じてるの…オレの、ジクジク締め付けて…」
「ん…ちゅ、ちゅ、ん…あたい、あたいっ…!あ、イキそ…!ホントにイキそっ!!ね、けいいちっ、あたいでイッて、このまま抜かないで、思いっきり…っ!」
「はあっ、嬉しいよウルド!ウルド…ウルドッ…ああ、う、ウルドッ!!」
「…けいいちったら、あたいはここにいるってばぁ…!こんな近くにいるじゃない…。ね、一緒にイこ、一緒にイこうっ!いっしょ、にぃっ…あ、はあっ…くはあっ!ああっ!!」
無我夢中で腰を前後していた螢一だが、ウルドの鳴き声、表情、しぐさを前にしてすっかりペース配分を乱していた。はしたない女神が見せる恍惚の表情に溺れてしまう…。
ウルドも思いも寄らない螢一のペース、サイズにすっかり酔いしれていた。結合の相性は最高で、痛みも不満もなく襞が押し広げられ、擦られる。積極的にペニスを求めようと、ウルドは長い両脚をバタバタさせて腰を浮かせた。今までにも交わった経験はあったが、ここまで気持ちよくなれたのは初めてであった。
ずっぽり食い込んでいる結合部はいつしか鉛直状態になっていた。ウルドは身体を曲げて腰を真上に上げ、螢一はその真上から両手両脚をつっぱねて身体を支え、猛烈にペニスを打ち込んでいる。奥深く結合できる、杭打ち機のような屈曲位だ。
螢一は本能の指令のもと、思う様に腰を操った。ストロークは長く、ズルルーッと引き抜いてはドスンと行き止まりにぶち当てる。想像もできないほどの快感に二人は我を忘れた。発情期の犬より下品に求めあい、与え合う…。
「くあっ、気持ちいいっ!ウルドのおまんこっ、き、気持ちいいっ!!」
「け、螢一っ!あ、あたいも最高っ!!あ、おく、そこっ、お、おまんこのおく感じるっ!ひいいっ!そ、そこっ!おまんこの、おまんこのおく、もっとぉ!」
「ここ?ここなんだな、ウルドッ!?おまんこのいっちばん奥がウルドの感じるところなんだな!?つっかえてるところ、感じるんだな!?」
「ええっ、そうよっ!強く、もっと強くぅっ!すごいっ、こんなにすごいの初めてっ!!いいよけいいち、突き破っていいの、もっとゴツンゴツンしてえ…!!ああっ、いや、すごいのくる、くる、くるぅっ!!」
異常な交わり様であった。部屋いっぱいに二人の熱気と湿気がこもり、この部屋だけ不快指数がとんでもない数値を示している。何も知らない思春期の男の子がこの部屋の空気を吸ったとしたら、きっとそれだけで勃起して情欲の処理に困ることだろう。
そんな環境の中、二人はあげられるだけのあえぎ声をあげて押し寄せる快感の奔流に身を任せていた。ぢゅ、ぢゅぬっ、ぢゅぷっと性器どうしをきしませ、どんどん終わりに近付いてゆく。
「せ、狭いよウルドッ!!もうヤバイ、出そ、出そう…ね、ウルド、そろそろどう?イキそう?ウルド、ねえ、ウルド…?」
「イク…イク…イクッ…あ、あたい、だめ、だめに…な、なっちゃ、う…!」
螢一がつらそうに尋ねたとき、もうウルドはこちらの世界にいなかった。虚ろにつぶやき続けるだけで判然とした返事をよこさなくなっていた。
ウルドはすっかり意識を失ってしまったようであったが、来るべきものを逃すまいと締め付ける本能だけは最高潮に働いていた。きつきつに締め上げられ、螢一は下肢にかなりの力を込めないと引き上げることすらできないほどに吸い込まれてしまう。
「…ウルド…もしかして、いま、イッてる最中なんじゃないの…?」
螢一が息を殺すと、ウルドの深い呼吸とうめき声だけが微かに聞こえ、あとはぢゅぽぢゅぽぬかるむ音と、ぺたぺたと腰とおしりがぶつかる音が狭い室内に響くだけだ。あれだけよがりまくっていたウルドは、今やウソのようにぐったりしてしまっている。
ふいにウルドは寝ぼけ眼のようにうっすらとまぶたを開いた。濃紫の瞳はもう焦点があっていない。身体はぐったりしたまま小刻みに震え…よだれをこぼしている口元からは深い呼吸を繰り返しているだけだ。
そして…
シュパーン…と真っ白な閃光のただ中に意識を叩き落とされ、ウルドはとうとう絶頂に達してしまった。ヒクン、と大きく腰をケイレンさせたかと思うと、ぎゅっとシーツを握りしめ…そして同じように、ぎゅうううっ…とヴァギナを収縮させる。繋がったままエクスタシーに登り詰めた弾みで、ウルドはぽろろ、と随喜の涙をあふれさせた。
「い、イクッッ…!!」
最後に…ウルドは螢一の下で、普段より一オクターブ高い声で鳴いた。その瞬間きゅっと目を閉じ、顔じゅうをボッと紅潮させる。
女神のイッた声。女神のイッた表情。そして…女神のイッた時のすがりつき。
所詮人間である螢一ひとりを果てさせるには十分過ぎる要素であった。
「ああっ…う、ウルドッ、ウルドッッ…!!」
下肢に力を込めて立ち上がるようにし、螢一は絶大な収縮を始めているウルドの膣内から、ズボッ、とペニスを引き抜いた。破裂寸前の性器を自らしごき…
びゅしゅっ!!びゅるっ!びゅうっ、どぷ、どぷ…
「うあっ、あああっっ!!」
爆ぜるように鳴き、音立てて精液を飛沫かせる。
火照った頬…。
柔らかな乳房…。
その谷間…。
みぞおちからへそ…。
性毛に覆われた恥丘…。
ウルドの薄褐色の身体いっぱいに大量の精液がふりかけられた。螢一自身、二度目とは思えないほどの激しい射精であった。
「あ…は…」
余韻がすごい。螢一はのけぞったまま、かろうじてそれだけ声にすることができた。
初体験であったことも大きいが、なによりパートナーがウルドであったことが決定的であった。鼓膜に残るほどの嬌声、網膜に焼き付くほどの痴態、そして今でもまだ納まったままのような、相性のいいヴァギナ…。初体験には、ウルドは刺激が強すぎたのだ。
「…どうして?」
失神の縁から戻ってきたウルドは、ひとことだけそう訊いた。いまだ絶頂の快感に包まれているようで、つらそうな顔をしたまま胸元にかかった精液を指ですくい、ちゅぷ…と口に含む。腰が抜けてしまったのか、それが精一杯の動きのようだ。
「マイルーラ入れたって言ったのに…どうして二回も外出ししたの?」
「…オレにも少しはフェミニズムってヤツがあるんだぜ…?」
「え?」
きょとんとした風に問い返すウルド。ウットリしたまま微笑を見せた螢一は彼女の身体を仰向けに戻し、寄り添うように横たわって彼女の頬を撫でた。
「万が一、があるんだろ?人間と女神には。それにマイルーラって、コンドームより避妊の成功率、低いらしいんだよ?」
「でも…」
「ウルドの気持ちはとても嬉しいよ。でも楽しむだけのセックスはリスクが少ないほうがいい。それでも気持ちよかっただろ…?イクときの顔も声も、ぜんぶ確かめたよ。」
「バカ…あたいは完全にイッてないわよっ…。やっぱり置いてイッたじゃない。」
「はいはい…。」
プイ、と照れたように言って顔を背けるウルド。螢一は苦笑しながらティッシュペーパーで彼女の身体にぶちまけた精液から…裂け目で細かい泡状になっているラブジュースからを丁寧に拭きとってあげた。
その間もずっと顔を背けていたウルドであったが、
「置いてイッたこと…」
「ん?」
「あなたのフェミニズムに免じて目をつぶってあげる。」
と耳まで赤くなりながらつぶやいた。螢一はそんな紅潮した頬にちゅっとキスして、
「はいはい…。ウルド、ありがとう。本当に素敵だったよ。」
と、いつもの調子で苦笑したのであった。
おまけの一言はお世辞などではなく、感じたままを単純に告げただけだったのだが…そのぶんウルドの胸の奥に強く伝わり、すっかり舞い上がらせてしまう。
「な、なによ急に…びっくりするじゃない…!」
顔を背けたまま、ウルドはすねたような口調でそう言った。瞳を潤ませ、すん、と鼻まですすりはじめる。横顔が真っ赤であるところから、どうやら泣いているらしい。
「ウルド…かわいいっ…。」
そんなしぐさがたまらなく愛しく、螢一はウルドの頭を抱え込んで夢中で頬どうしをすりすり擦り合わせた。汗でしめった熱い頬はさらさらで心地よく、いつまでもこうしていたいほどだ。頬摺りするたびに、どんどん愛しさが増してゆく…。
「やめてよもう…くすぐったいわねぇ…!」
ウルドは真っ赤な顔を涙でくしゃくしゃにして…実にかわいらしいはにかみ笑いを浮かべた。嫌がりながらも螢一の頭を押さえ、夢中で抱擁に浸る。エクスタシーの余韻で気怠い身体に、螢一の頬摺りは最高のアフターケアであった。
「…ね、螢一…今夜のこと、他言は無用よ?」
「当たり前だろ?ウルドこそ、絶対に秘密だからな?」
「わかってるわ…。ね、螢一…今夜はありがと。最後にもう一回だけ…。」
まっすぐ見つめ合った後で…ウルドは今さらながら恥じらうように目を伏せ、唇をせがんできた。
「はいはい…。」
苦笑混じりに溜息を吐く螢一。ウルドの頬に右手を当てながら唇を近づけ…
ちゅ…。
今宵、この二人は最後の一線を何度越えたのであろうか…。
ドァッドッドッドッドッド…
クルマ好き、特にバイク好きなら熱い血がたぎるような重低音が辺りに響いている。
螢一の愛車、BMW RSオスカー・リーブマン・スペシャル(ただしレプリカ)は今朝もすこぶるご機嫌であった。
フォーストローク水平対向エンジンはキャブレターから早朝の澄んだ空気を元気よく吸気し、これからの仕事に備えて意気高揚しているようである。
「螢一さん、お待たせしました。」
ゴーグルの汚れを拭いていた螢一は声のした方に振り向く。
視線の先の玄関から、螢一の最愛の女神、ベルダンディーが笑顔とともに出てくるところであった。清楚なワンピースに風避け用のカーディガン姿で、籐のバスケットを片手にしている。バスケットの中身は早起きして準備したお弁当であろう。
「用意はできた?」
「ええ。お弁当も水筒も持ちましたし、忘れ物はありません。」
螢一の問いかけに身の回りをきょろきょろ確かめ、バスケットを掲げて答えるベルダンディー。自然な微笑が朝の日差しによく映える。螢一もつられて微笑んでしまった。
「いい、螢一?調子に乗って事故なんかおこすんじゃないわよっ!?」
ベルダンディーの後ろにはスクルドも一緒だ。いついかなる状況でも、二人の和やかな雰囲気を妨害せずにはいられないらしい。
「わーかってるよ。」
「それからっ!くれぐれもお姉様にヘンな気をおこすんじゃないわよっ!?」
「わーかってるって、もう。」
「ホントにわかってるんでしょうねっ!?」
「わかってますって。」
見送りのために出て来たらしいが、気をつけてね、の一言で済むところを事細かに指示して何度も念を押す。螢一は困ったようにうなだれ、はぁ…と溜息を吐いた。
そんな二人のやり取りを見ながらベルダンディーはバスケットをサイドカーに積み込み、ばくん、とトランクフードを閉めてからスクルドに笑いかけた。ぱっ、と小さな花が開くようなかわいらしい笑顔である。
「じゃあスクルド、姉さんと留守番、お願いね。」
「はいっ、お姉様!!螢一には気を付けてね!!」
「螢一には、は余計だよ!」
そうこうおしゃべりしながらベルダンディーがサイドカーに乗り込み、螢一がヘルメットをかぶったところで、玄関からウルドが姿を現した。
「…おはよぉ…ふあ〜あ、落ち着いて寝てられやしない…」
豪快なあくびをしながらガリガリ頭をかき、すぺんすぺんとサンダルを鳴らしながらゆったりとした足取りでこちらへ歩み寄ってくる。
今の今まで寝てました、というような髪の乱れ様と表情だ。なんのてらいもなくTシャツと、ホワイトレースのショーツ姿で現れるところが、まだ半分寝ています、と注釈しているだろう。
「おはよう…ウルド。」
「あ、姉さんおはようございます。これから行ってきますね。」
「ウルドは寝てなさいよっ。そんな格好でわざわざ見送りに来なくたっていいのに。」
三人三様の挨拶を受け、ウルドはもう一度あくびをしてから、
「…くあ〜あ…っ!しっかしよく寝た…ひっさびさの爆睡だったわ!」
と誰にともなくそう言い、屈託無くニカッと笑った。そんな笑顔が眩しすぎるように…螢一は思わずウルドから逃げるようにして顔を背けてしまう。
どうにも気恥ずかしい。夕べあれだけキスを交わし、あれだけ激しく睦み合ったというのに…。いや、だからこそウルドに対する免疫は一層弱くなってしまったらしい。
結局あれからウルドは、Tシャツとショーツ、汚れて取り替えたシーツを片手に、おやすみ、と自室に戻っていったのだ。
「お礼にシーツ、洗っといたげるわ。」
と去り際に残した微笑みが充実感で輝いていたのを、螢一は深く印象に残している。
心地の良い疲労感に満ちた螢一はそのまま眠り込んだのだが…ウルドもまた久しぶりに充足し、しこたま眠っていたらしい。同じ熟睡でも深酒明けの朝と違い、瞳は爛々と輝いている。
「何時頃戻ってくるの?」
「…螢一さん、何時頃に戻る予定なんですか?」
ウルドの質問を受けるように、サイドカーのベルダンディーが顔を上げて問いかけてくる。螢一はゴーグルに手をかけたままウルドの方を見ようとせず、
「ゆ、夕食までには絶対戻るよ。」
と素っ気なく答えた。ウルドはさらに質問を続ける。
「夕食はなんにするつもり?」
「そうですね…鰻巻きでもつくりましょうか。帰りにスーパーにでも寄ってもらいます。螢一さん、よろしいですか?」
「か、かまわないけど…。」
「ふうん…気ぃつけてね。」
それだけ聞いてそれだけ言うと、ウルドはきびすを返して玄関へと戻っていった。彼女がその時、ほんの少しだけ憂いを秘めた表情をしていたのだが、顔を背けていた螢一には気付くはずもないことであった。
少し後ろめたい想いが螢一をかすめる。なんだか…無視してしまったような後味の悪さが残った。
「螢一さん、そろそろ行きませんか?」
「そ、そうだね…じゃあスクルド、ウルドと留守番、よろしく頼むよ。」
ベルダンディーにうながされ、螢一が気まずい気持ちのままBMWのクラッチをミートしようとしたまさにその時であった。
「けーいちーっ!!ほらほら、忘れ物だよーっ!!」
玄関の奥からウルドのよく通る声が聞こえてきた。美声と言うほどではないが、ムチが固い床を叩くような鋭い声ではある。
「まあ、なんでしょう?まだなにか忘れてたかしら…?」
「まったく、そんな大きな声出さなくてもいいじゃない。下品なんだから!」
姉妹でもこれだけ感想が違う。とりあえず螢一はベルダンディーにもう少し待っていてもらうことにし、ヘルメットを脱ぎながら玄関に駆け込んだ。
「ウルド、忘れ物って!?」
玄関を上がったところでウルドは腕組みし、螢一を待っていた。彼女は忘れ物を差し出すでも、提示するでもなく…スッと右手を伸ばして螢一の額にデコピンを見舞う。
「いてっ!!な、なにするんだよ…」
「螢一、なんであたいと顔を合わせようとしないのさぁ…?」
寂しげにウルドはそう言うと、裸足で土間へと降りた。螢一の肩に両手を置き、今にも泣きだしそうな瞳で見つめてくる。やっぱり気にしていたらしい。
「けいいちぃ、夕べのあたい…そんなにイヤだった…?」
「そ、そんなんじゃないっ!」
「じゃあなんで…っ!?」
いけない。このままでは罪もないウルドを泣かせてしまう。自分が意識をしっかり持ち、真っ直ぐに彼女を見つめ返してあげればそれだけですむ話ではないか。
螢一はきゅっと唇を噛むと、照れくさいのを必死に堪えて心中を打ち明けた。
「だって…思い出しちまうんだもん、すごいドキドキして…。」
「思い出す…?ベルダンディーの前でも…?」
「だからこそ…わかるだろ、この気持ちっ!」
赤くなって照れくさがる螢一を前にして、ようやくウルドは不敵な笑顔を見せた。どこで微笑んだのかわからないような、意味深な笑顔を…。
「…ふぅん、悪いヤツだね、これからデートだってときに…。ほら、忘れ物…!」
ちゅっ…。
舞い上がっている螢一の時間を止めたまま、ウルドは音もなく寄り添い、顔を近づけて唇を押しつけた。螢一のうなじに手をかけ、強く強く重なり合う…。
唇どうしが密着してからたっぷり五秒も過ぎた後で、慌てて螢一はウルドの身体を突き放した。手荒に扱われても、ウルドは頬をほんのり上気させて微笑んでいた。
「な、な、なにをするんだよっ!夕べだけって話だったろ!?」
「今のは『いってらっしゃい』のキス!女神さまの唇は旅の安全に効果バツグンだよ?」
「な、何を言ってんだよっ!まったく、悪いヤツはどっちだよ!これからデートだってときに…。それに『いってらっしゃい』のキスしたって顔、してないぞっ!?トロ〜ンとしちゃって!」
「いいでしょう?これは役得…じゃなくって余録ってヤツよ!」
「なんだよそりゃあ…。」
そこまで言葉を交わし、ふと見つめ合ってから二人してぷっと噴き出した。
これが普段通りなのではないか。螢一はようやく気持ちに余裕を見いだしていた。
煩わしさもありはしたが、それに勝る好意はいつだって持ち合わせている。夕べはたまたま好意がオーバーブーストを起こしたに過ぎないのだ。
ひとしきり声を出して笑ってから、二人はようやくいつもの自分達らしく振る舞えるようになった。微笑を浮かべたままもう一度だけ見つめ合い、小さくうなづきあう。
「…気ぃつけてね。」
「…ああ、行って来るよ。」
彼女の何気ない口調に、螢一も何気ない口調で答えたのであった。
BMWのエンジン音が遠ざかってゆくのを…ウルドは玄関の壁に背中を預けながら聞いていた。ゆったりと腕組みしたまま、なんとはなしに天井の一角を見つめていたのだが…頭は引力に従い、そろ、そろ、と…
やがてうつむいてしまう。寂しげな声が漏れ出た。
「フェミニズム、じゃないわよ…」
左手で目元を拭う。
どうにもできない…どうにもなってくれないこの気持ちを…自分はこれからどうすればいいのだろう。
ブレスレット一個分だけ軽くなった左手で…ウルドはいつまでも目元を拭っていた。
出典:不明
リンク:不明

(・∀・): 26 | (・A・): 32
TOP