【ああっ女神さまっっ】For your love 第二夜、スクルド〜Pure Affection〜

2009/10/16 02:26 登録: えっちな名無しさん

螢一とベルダンディーは順調にドライブを進めた。

 埃っぽく騒々しく、人工の暑さに満ち満ちた市街から抜け、木々が生い茂って夏の熱気を快適に遮っている林道を駆け抜ける。澄んだ空気が愛撫のように心地よい。

 BMWも冷涼なフレッシュエアーを思う存分吸い込み、身震いしながら二人を乗せて力強く山道を進んだ。

 クネクネした林道を登り、起伏に富んだ山間の県道を突っ走り、緑色のパノラマが拡がる森を駆け抜けると…

「わあ…!」

 側車でベルダンディーが感動の声をあげた。道路を挟んで両側にはたちまち見渡す限りの草原が拡がったのだ。

 なだらかな稜線が海のうねりのように上がり、下がり…。バイクに乗って進むと、まるで緑色の海をクルージングしているかのような錯覚に陥る。

 ここはいくつかの牧場が共同で整備している放牧地帯であった。

 遠く向こうにポツン、と牛舎やサイロが見え始め、風車小屋まで備えている所もあったりする。高原を吹く強い風を利用してのものであろう。

「螢一さん、そろそろこの辺でお昼にしませんか?」

「え、ああもうこんな時間か…。う、時計を見た途端にお腹が空いてきた!」

「うふふ…螢一さんったら…!」

 出発してから休憩も挟まずガンガン走り詰めで、時間も空腹感もすっかり忘れていた。螢一は見晴らしの良いところを適当に見繕うと、路肩に寄せて停車し、エンジンを切った。ヘルメットとゴーグルを脱ぐと、冷水のような風が蒸せた頭に心地よい。

 二人は牧草地に入って並んで歩き、適当な場所にレジャーシートを広げ、そこでランチタイムとしゃれこむことにした。

 今日のお弁当はサンドイッチである。タマゴサンドにツナサンド、サラダサンドの他に炒めたタマネギやシメジ、ベーコンエッグやソーセージなどを挟み込んだホットドッグなんかもある。もちろんすべてベルダンディーの手作りだ。

 抜けるような青空と真っ白な太陽のもと、季節を錯覚しそうなほど心地良い風に吹かれながら広々とした景色のただ中で昼食を頂く…。都会で生活する者にとってはなんとも新鮮で、爽快で、贅沢で…格別しきりだ。

「螢一さん…?どうか、しましたか…?」

「い、いや…はぐはぐ…」

 ましてや最愛の女性と一緒なら…その味は何物にも代え難いものになる。

 螢一はベルダンディーに見とれつつ、口中に放り込んだサンドイッチを舌が小躍りするくらいに咀嚼し、幸せで胸が満たされながら嚥下した。

「…くううっ、これもおいしいっ!ベルダンディー、もうひとつ!」

 破顔しきりの表情と気持ちのいい食べっぷりが螢一の言葉にウソがないことを物語っている。ベルダンディーはニコニコしながら新たなサンドイッチを螢一に差し出した。

「はい、どうぞ。あ、螢一さん、お茶もいかがですか?今日はハーブティーを用意してみたんです。」

「へえ、ハーブティー?なんのハーブだい?」

「カモミールです。このあいだスクルドとお買い物に行ったら新しくオープンしたお店がありまして、そこから買ってきたものです。」

「あ、ぜひいただくよ!って…ねえ、ベルダンディーも食べてる?」

 さっきから給仕ばかりしているのが気になり、螢一は食の手を止めてベルダンディーを見た。バスケットから水筒を取り出しながら変わらぬ様子で答えるベルダンディー。

「ええ、わたしも頂いてますよ。」

「いくつ食べた?」

「まだひとくちですけど…ほら、このタマゴサンド。」

「…ベルダンディー、バスケットこっちに置こう。ほら、お茶もオレが注ぐよ。」

 螢一は困ったように頭を掻くと、ベルダンディーの横に置いてあったバスケットを背後からひったくり、自分の横に置き直した。ハーブティーの水筒も取り上げ、爽やかな芳香で満たしたコップを差し出す。ベルダンディーは露骨にすまなそうな表情を浮かべた。

「…なんだか悪いです、螢一さんにそんなこと…」

「いいからっ!はい、お茶。どんどん食べないと後でお腹がすくよ?」

「…申し訳ありません。気をつかわせてしまって…」

「もう…。オレが気を使いたいんだよ。デートだってオレから誘ったんだ、少しぐらいエスコートさせてくれよな…。」

 自分で言っておきながら照れた様子の螢一は、そそくさと自分のぶんのカモミールティーを注いだ。

 ベルダンディーは嬉しそうに表情を和ませると、そんな螢一の肩へ静かに寄りかかってきた。カモミールの香りとベルダンディー自身の香りが絶妙に混ざり合い、螢一の鼻孔に漂う。

「ベルダンディー…」

「ありがとうございます。じゃあ今日はこれから…もっともっと螢一さんに甘えることにします…。いっぱい甘えさせてくださいね…。」

「そうそう。せめて二人きりのときぐらいはたくさん甘えてくれよ。」

 そう言葉を交わし、二人してカモミールティーを飲んだ。爽やかな香りが鼻と舌を愛撫して、気分を落ち着かせる。

 

 盛夏の陽気。心地よい風。見渡せる視界。遠く聞こえる牛の声。

 適度な満腹感。カモミールがもたらすリラックス。

 そして、側にいる安らげる人…。

 二人がまどろむ条件としては十分すぎるほどの状況であった。

 

 森里屋敷も例外に漏れず、正午のランチタイムが訪れていた。

 しかしこちらにはハーブの芳香のように落ち着けるような雰囲気はなく、さながら煎れたてのハーブティーをひっくり返しでもしたかのように、騒々しくやっている。

「スクルド、お昼はどうするの?」

 ビスチェにカットジーンズ姿で居間に現れたウルドは隣接している台所に声をかけた。

 今日もまた惜しげもなく薄褐色の肌を晒すようなスタイルだ。なんとなく腰の辺り、そして胸の辺りに充足感が漂っているように見えるのは気のせいであろうか。

 ヒップの上向き加減、剥き出された胸元の張りなんかはいつになく色っぽさを醸し出しており、顔のツヤや唇の血色なんかも普段に輪をかけて健康そうに見える。

「それがねーっ、お姉様が作っておいたポテトピザ、たしかお台所にラップして置いてあったハズなんだけど無いのよねーっ。ウルド知らない?」

 折り返して台所から、パーカーTシャツにキュロット姿のスクルドが返事を寄こす。外にまで聞こえそうな通る声だ。もう少し大人びて成熟すればさぞ美しい声になるだろう。

 スクルドは台所の土間に敷かれたすのこの上をあっちへ行きこっちへ行き…冷蔵庫を開け、戸棚を覗き、流し台の上から下までをくまなく調べ上げ、目的とするポテトピザを捜索している真っ最中であった。

 ただのポテトピザではないぶん必死である。敬愛するベルダンディーの手製の昼食なのだ。それがないとあればもう一大事で、探しまくって汗をかくことなどスクルドには少しの苦にもならない。

 そんなスクルドを一撃の元に落胆させる言葉を、ウルドはしれっと口にした。

「あぁ、あれ。さっきあたいが食べちゃったけど…?いやー、ホント爆睡するとお腹が空くものねーっ!もうあっという間だったもんな…それもキリンラガー二本付きで!それでまだお腹が空くっていうんだから…夕べの、引いてんのかしら?」

「なーにぃそーれーっ!!あれ、今日のお昼だったのよーっ!!ちょっと待ってよ、それってまさか、全部ひとりで食べちゃったのっ!?」

 ウルドの満足そうな声を聞き咎め、スクルドは台所で悲鳴をあげるとダッシュで居間に駆け上がってきた。怒りに満ちてプンプンといった顔で、真っ向に睨み付ける両目にはうっすら涙まで光っている。よほどベルダンディー手製のポテトピザを奪われたことが悔しいらしい。

 ちなみに…ウルドのセリフにあったキリンラガーは大瓶だ。しかもどんなルートで入手しているのか、生ビールに切り替わる前のキリンラガーである。

「もちろん全部食べたわよぉ、あんなちっちゃなピザ。」

「ちっちゃいって…あれでウルドとあたしの二人分だったのよっ!もう、どうしてくれるのよっ!?自分だけお姉様のポテトピザ、食べちゃって!!」

「ごめんごめん。悪気があってしたことじゃないのよ?過失よ、過失!」

 スクルドの剣幕にも動じず、ウルドはニコニコ顔で切り返す。

「…過ちを認めるのなら賠償は約束してくれるんでしょうね?」

 軽薄なウルドの態度にスクルドはますます悔しさを募らせ、背伸びして姉の顔を睨みつけた。きゅっと唇を噛み締めている。両手は拳を固め、プルプル震えていた。

 あまり怒らせて泣かしてしまったらまた面倒なことになる。ベルダンディーすらも怒らせてしまうかも知れない。

 ここは素直に自分の非を認めることにし、ウルドは腕組みして深々と溜息を吐いた。

「…しかたないわね、和解に応じて頂戴。賠償額はおいくらかしら…?」

「お金じゃダメッ!お姉様のポテトピザッ!!」

「ハーゲンダッツのバニラ、チョコ、ストロベリーのミニカップ三種セットじゃダメ…?」

「お姉様のポテトピザッ!!」

「ハーゲンダッツのマルチパックひとつじゃダメ…?」

「…お姉様のポテトピザ!」

「マルチパックふたつ。」

「う…うう…っ!やっぱりお姉様のポテトピザァッ!」

「ええい、それにフォションのロイヤルミルクティーふたつもつけてどうだあっ!?」

「…ま、無いものをねだっても仕方がないものね、あたしだって子供じゃないもの。今回はそれで妥協しておくわ。」

 すとん、と背伸びを戻し、肩をすくめて見せながら和解案をのんだスクルド。ウルドはポケットからガマグチを取り出し、中身を確認してゲンナリした。

「…お昼探しも兼ねてコンビニ行ってくる…。」

「行ってらっしゃあい☆」

 すっかり機嫌をなおしたスクルドは、肩を落としたウルドをばんぺいくんと一緒に玄関まで見送りに出た。向こうの角を曲がって姿が見えなくなっても満面の笑みを崩さず、いつまでも右手を振っていた。

 

「帰るのはいつになるかわかんないけど、ね。」

 角を曲がったところでウルドはそうつぶやき、舌を出したのであった…。

 

 ウルドがアイスクリームを買ってくるまではしばらく間があるだろう。

 スクルドはとりあえず空腹の足しにしようと、フリーザーから在庫のハーゲンダッツ・ミニカップを取り出した。お気に入りのバニラとストロベリーだ。森永のラベル袋に入った板スプーンも携えて、居間にちょこんと腰を下ろす。

「日曜のお昼ってロクな番組がないからなぁ…」

 行儀悪くビニールフィルムの裏をぺろぺろ舐めながら、スクルドはなにかおもしろい番組でもやっていないものか、とテレビのリモコンをポンポン操作した。目まぐるしくチャンネルが切り替わるが、特別目を引くような番組は放送していない。

 ランダムに操作しているうち、うっかりビデオライン切り替えのボタンを押してしまった。画面が真っ暗になり、ありゃ、と言った自分の顔が写る。

「…ビデオっていえば…ひまわりくんのモニター忘れてたぁ!!」

 叫びながら立ち上がるスクルド。

 昨日ウルドに飛ばした超小型人工衛星は…マイクロサットひまわりくんはどうなったのだろう。

 今頃になって思い出した。ほんの少しだけ盗み聞きするつもりが、夕べ一晩の映像と音声を専用ハードディスクに記録してしまっている。

「爆睡とか言ってたから…きっと後半はイビキって名前のノイズと、乱れた寝相って名前の有害映像で埋まってるんだろうなぁ。確認するのもイヤだけど、一応新開発品だからチェックはしないと…。」

 ハーゲンダッツふたつと板スプーンを手に、スクルドはゲンナリしつつ自室に戻った。

 簡素なガラステーブルにアイスクリームを置き、あらためてひまわりくん専用ハードディスクを壁に掛けてある超薄型29インチモニターにつなぐ。このモニターはプラズマを利用した自作品で、場所をとらないスクルドお気に入りの逸品だ。微細な音を逃さぬようヘッドホンも用意する。

 これで昨日の悪巧みを暴く準備はできた。モニター正面の座布団に座り、アイスクリームを一口食べる。まるでホームシアターでくつろぐような悪事の検分だ。

「さぁて…映ってるとは思うけどぉ…よし、オッケー!」

 専用コントローラーをカチカチ操作すると…モニターには昨日の螢一の部屋の様子が映し出された。しかし録画した角度がいささか悪い。ウルドの頭の一部と障子度がいっぱいに映っているだけで、なにがなんだかさっぱりわからない。

「へへ〜、心配ご無用!高速周回によってあらゆる角度、位置からモニターしてあるのよ?だからハードディスクに記録された画像情報を解析して組み直すと…ほら、バッチリ!」

 なんと記録映像は本人の好みの位置から好みの角度で再生することができるらしい。スクルドが小さな胸を反らしてコントローラーを操作すると、モニターには天井の隅から見下ろして撮影したかのような螢一とウルドが映し出された。いやはや、なんともスグレモノを発明するものだ。

「えへへ、ほめてほめて!よし、完成度はバッチリね!ではさっそく開始…!」

 そっとボリュームを開けると…二人の会話がヘッドホンから聞こえてきた。

『で…それって本当なのか?』

『ええ、これは本当よ。実例もあるみたいだし。』

「なんの話かしら?ふたりともマジメな顔して。」

 ハーゲンダッツをパクつきながらスクルドはモニター映像をズームさせた。ウルドが手にしているのは『家庭の医学』という本である。こんな本を持ち出して何をしようというのか。そもそも実例とはなんのことだろう。

『だから一応警告。明日ヘンな雰囲気になってお泊まりってコトになってもこれだけは気をつけてあげて。こういうことは男がしっかりしてあげないといけないんだからね?』

『もちろんわかってるよ。まぁ…そんな雰囲気になれたとしたら、だけどね。』

『あら、ちゃんと分をわきまえてるんじゃない。おせっかいだったかしら?逆に今夜、悶々として眠れなかったりして!ああ、ベルダンディーの胸…ベルダンディーの腰…避妊しないと、避妊しないと…ああっ!!』

「避妊…っ!?それってまさか、今日のデートの…!?」

 スクルドはここまで確認して大まかな事情を把握した。恐らくウルドは螢一のデートに備えて、人間と神の間で交配が可能である事実を警告に来たのであろう。

 スクルドとて子供の作り方くらいは知識の一つとして知っている。神聖にして侵すべからずなベルダンディーが螢一とそんなことをするのかと思うと気が気でならない。

 螢一に限って、自分からベルダンディーにアプローチをしかけることなどできるわけがない、とスクルドは確信している。

 しかし…認めたくはないが相思相愛である二人のことだ、もしベルダンディーの方から螢一に求めたとしたら…。

「そんな…いやだよ、あたしそんなのイヤッ…モグモグ…」

 不愉快さが苛立ちを呼び起こし、スクルドはその苛立ちを吐き捨てながらヤケ食いとばかりにハーゲンダッツを食べきった。もうひとつのストロベリーのフタを開け、ビニールフィルムをぺろぺろ舐めながら打算を巡らせる。

「デートを妨害するとお姉様が悲しむから今日はもうどうしようもできないとして…まぁ、今日は夕食の鰻巻きもあることだから何事もなく帰ってくるハズだわ。だからまず螢一の方からそうできないように…なにか弱みでもつかめないかしら…う〜ん?」

 意味もなく流れてゆくモニターを見つめながら頭をひねるが、そうそう弱みなど落ちているはずもない。スクルドは溜息をひとつ吐き、気持ちを切り替えてひまわりくんの動作安定度を確かめることにした。コントローラーを操作し、早送りでウルドの一日を追う。

 テレビを見てバカ笑いし、バカ笑いしたかと思えば座布団を折って昼寝。

 そのうち目を覚まし、寝ぼけ眼をシャワーで完全に醒ます。イヤに入念に身体を洗っていたりする。そして四人して夕食を囲み…

「動作チェックのためとはいえ、よりによってウルドの一日をモニターすることになるなんて…。せっかくのアイスクリームも台無し…ん…?ウルド、なにしてんの…?」

 つまらなそうにスクルドがつぶやいた時であった。夕食を済ませて自室に引き返したウルドは…後ろ手に障子戸をしめ、寝間着代わりのTシャツの上から豊満なバストをわしづかんでいた。下からぎゅっぎゅっと寄せ上げるように揉みながら…親指と人差し指で乳首を摘み、くりくりいじっている。

「ねえ、ちょっと…ウルド、どうしたの…?」

 思わず早送り映像を通常再生に戻した。そうつぶやくスクルドにはウルドがなにをしているのか思い至らない。ウルドはなんとなく頬を赤くし、つらそうに目を閉じている。なにか具合でも悪いのだろうか。

「ちょっとウルド、大丈夫なのっ!?」

 パクパクッと一息にストロベリーも食べ終えると、スクルドは身を乗り出してモニターに映るウルドを心配そうに見つめた。ヘッドホンからは微かな声、苦しげな息づかいが聞こえてくる。

『はあ…はあっ…もうだめ、一秒も待ってられない…』

「もうだめって…なにがよ、しっかりしてよっ!あ、きゃあっ!!」

 モニターの向こうのウルドに声援を贈る。しかしスクルドの声援も虚しく、ウルドは敷いてあった布団の上にゴロン、と仰向けになった。倒れたのかと思い、スクルドは短い悲鳴をあげてしまう。

 ウルドはうっすら目を開け、頼りなく口元をハクハク開閉させながらTシャツをまくった。形のいいバストがぷるん、と現れると、じかにつかんで揉みはじめる。黒いTバックショーツのみをまとった腰がくねり、膝がみるみる擦り寄ってゆく…。

「ウルド…苦しいの…?」

 スクルドはすっかり涙ぐんでモニターを見守る。そっと両手を胸の前で組み、きゅっと唇を噛み締めて年長の姉の無事を祈った。

 そんなスクルドの耳に、少し異様な声が聞こえてきた。荒い息づかいに混じり、どうにも雰囲気違いな単語が現れる。

『あ、ああっ…はっ…!き、気持ちいい…きもち、いい…』

「…気持ちいい…?」

『もっと、もっと揉んで…あ、感じる、感じる…っ!アソコも触って…』

「あ、あ、アソコ…!?」

 当惑して両目をパチクリさせるスクルドの前で、ウルドは両脚をオタオタ上げながらTバックショーツをずり下げた。小さく縮んだそれを片足にまとわりつかせたまま、大きく脚を拡げて女性の真ん中に指を滑らせる。にちゅ、ぴちゅ…と濡れる音がスクルドの耳元で展開された。

「わ…ウルド、なにしてんの…?お、おもらししちゃったとか!?」

 そう勘違いしながらも…スクルドはウルドの繰り広げる嬌態に頬を熱くしていた。

 いつもケンカばかりしている姉が…破廉恥極まりない格好で、気持ちいい、を連呼しているのだ。見ているこちらまで照れくさく…恥ずかしくなってモジモジしてしまう。

「んっ…!な、なんでだろ、あたしも…胸が苦しい…」

 きゅん、と胸が痛んだ。姉の痴態、嬌声に心が掻き乱される。

 発展途上で小さな胸をパーカーTシャツごしに片手で押さえ、ぷにゃぷにゃ揉むとその痛みは暖かく溶けるように消え…代わりに呼吸を熱くさせた。

「…きもち、いい…」

 知らずモニターの姉と同じ言葉をつぶやく。微かに開いたままのスクルドの口から漏れる熱い吐息はたちまち回数を増してゆく。衝動にまかせて胸を揉む手はやがて両手へと…。気持ちよさは倍加した。膝立ちの膝も…いつのまにかぴっちり閉ざされている。

じゅん…。

「うわ…」

 キュロットパンツの奥…パンティーにしっかり包まれている内側が不快に湿ったような気がした。ベルトを外し、キュロットパンツを脱いで…水色パンティーの上からその部分を確かめてみる。割れ目にそって指を滑らせると…中心はじんわり濡れていた。

「おもらしじゃない…?あ、やだ…こんなところまで気持ちいい…どうしよう、ウルドといっしょだぁ…恥ずかしいよぉ…あたし、なんでこんな気分に…?」

 先ほど浮かべた不安の涙もあり、すっかり瞳を潤ませたスクルドがモニターを見上げると…ウルドはさらに異常な行動に出ていた。

 濡れた恥部からつうっ…と引いた粘つく糸をウットリした表情で見つめていたのだが、おもむろに右手の人差し指を真っ直ぐ裂け目にあてがい、プチュヂュ、と音立てて挿入し始めたのだ。

『い、いっぽんめ…』

「ゆ、ゆびっ!?ここに…指なんて入るの!?ウルドの、そんなに大きいの!?」

 スクルド自身もパンティーの上からではあるが、ウルドのしているように膣口の辺りに指をやり、ぷにゅ、と押してみた。じわ、と湿り気が増す。おもらししたようなイヤな感触だが、割れ目にそって指を動かすことは不快ではなかった。むしろ快感で…。

「思い出した…これって…マスターベーションってヤツ!?」

 人間界に来る以前に、とある勉強会で習った汚らわしい単語。スクルドはあの時の嫌悪感を思い出して愕然とした。

 その単語の意味を教わったときはなんて下品で、なんて意味が無くて、なんて恥ずかしい行為なのだろうと鳥肌が立ち、吐き気がした。

 故に今の今まで自分は絶対にしない、と信じ込んでいた。情欲に翻弄されたりなどしない、と確信していた。

 なのにどうであろう。自分の性器を…布地ごしではあるが指でいじり、快感を覚えてやめられなくなっているではないか。悔しさのあまりに溢れた涙が頬をこぼれ落ちる。

「最低…あたし、最低なことしてるっ…!でも…やめらんない…やめたくないっ…!どうして!?あたし…エッチな子だったの…?」

 しゅり、しゅり、がヌル、ヌル、に変わるまでそれほどの時間は必要なかった。感じたこともない快感に全身が反応を始め、どこか頭がぼうっとしてくる。

「ウソみたい…こんな、倦怠感…」

 小さく声を漏らしながらモニターを見ると、ウルドはさらに中指をも挿入しようと試みている。指先に力がこもり、きゅっとおとがいがそらされると…中指はヌヂュブ、と人差し指と並んで内側に潜り込んだ。

『ん、く…っ!に、にほん、め…!ふ、といよぉ…!』

「すごい…ウルド、どうしてそんなこと、できるの…?」

 パーカーTシャツの上から幼い乳房をさすり、右手でパンティーの真ん中に間断なく刺激を与えながらスクルドは物欲しそうにモニターを見つめた。

 モニターの中のウルドは…ゾクゾクッと身体を震えさせると、何を思ったか膣内から二本の指を引き抜いてしまった。マスターベーションを中断してしまうらしい。

 名残惜しむような目で濡れた指を見つめ、二本まとめて口に含む。

 ぷちゅ、くちゅ…と吸い付くように舐めつつ、濡れそぼった裂け目もそのままにTバックショーツをはいた。Tシャツの前も戻し、荒い息を落ち着かせようと深呼吸する。

「…もうこれで、後戻りできない…。」

 荒い息づかいも、潤んだ声も…ヘッドホンから丸聞こえだ。しかもTシャツの胸元で二つの突起がアクセントになっている。乳首がしこったままなのだ。モニター上からもスクルドにはそれとわかった。

「飽きちゃったのかな…あれ、どこ行くの?あ、また…螢一の部屋?」

 監視を続けると、おもむろにウルドは起きあがり、なにやらショーツの具合を気にしながら不安な足取りで螢一の部屋へと向かった。

 ノックしてから入室し、二言三言、なにやら言葉を交わすうち…なんと二人は寄り添って抱き合い始めたではないか。

「け、螢一っ!?お姉様というものがありながら、ウルドと何をしようっての!?」

 モニターの螢一がとった行動に激しい憤りを覚えるスクルド。しかしその憤りのすぐ裏には…焦燥感にくるまれた期待が隠れていた。

 このまま成り行きを見守ると…二人は最後までしてしまうのではないか…。

 子作り…。セックスを。

「螢一のヤツ、許せない…!お姉様に悪いとは思わないの…!?」

 怒りが言葉となって口をつく。そのわりに息づかいはいよいよ荒く、割れ目を擦る右手は思いもしない力でまだ若いクリトリスを慰めていた。パンティーごしではあったが、そこは自ずと見つけた一番気持ちのいい場所…。もう右手が引き離せなくなっていた。

 やがて螢一とウルドはシャツを脱がしあい…裸同然の格好で抱き合ってキスを交わし始めた。恋人どうしの甘いキスにはとうてい見えず、淫楽を求め合うだけのただれたキスにしか見えない。憧れていたキスとは似ても似つかぬキスであった。

「やだっ…!」

 スクルドは羞恥と憤激を極め、涙を散らしてモニターから顔を背けた。しかしスクルドの純心を惑わす要素はまだ完全に排除されていなかった。

『う、ウルドの唇、柔らかくっておいしい…!!』

『あ、け、螢一…嬉しい…!もっと頂戴、もっと…ちゅあ、む…かはぁ、ん、ちゅ…』

 耳元すぐで唇を、舌を味わっているかのような淫らな音が聞こえる。唾液の水音、それを嚥下する喉の音、息継ぎの音、舌が擦れる音、そして二人の上擦った声…。

「もうやめて…っ!!あたし、あたしは違うもん…!ウルドなんかと違うもん!あたしはウルドみたいなインランになりたくないっ…!!」

 スクルドは身悶えしながら泣き叫ぶと、ヘッドホンを両耳から引き剥がしてめくらめっぽうに投げ捨てた。ヘッドホンは真っ直ぐにクロゼットを直撃し、コードが伸びきってアンプからプラグを引き抜く。途端に二機のメインスピーカー、五機のサラウンドスピーカーからディープキスの淫らな音が飛び出し、立体音響となってスクルドに襲いかかった。

「あ…ああ…っ!やああっっ!!もうっ、もうだめえっっ!!」

 スクルドは頭を抱えて絶叫し、畳の上にのたうつと左手をパーカーTシャツの裾の中に突っ込み、小さなカップのブラをたくし上げてじかに乳房を揉んだ。

 無遠慮な猥褻映像と猥褻音響は経験のないスクルドを容易く錯乱状態に陥らせ、マスターベーションの汚らわしさを…至上の快感とともに受け入れさせた。

「一回だけ…なにごとも経験しておかないと…。一回だけなんだから…一回だけなら、きっとだいじょうぶ…一回だけならウルドみたいなインランにはならない…」

 自分自身を安心させるように強い口調でつぶやくと、スクルドはパンティーを引きむしるような勢いで脱ぎ捨てた。べちゃあっと粘液が糸を引き、内ももを濡らす。

 中指で直接クリトリスに触れると…今まで以上に痛烈な快感が精神を解体にかかった。身体はもはやモラルや理性といった…おおよそ潔癖を尊ぶものの所有を認めなかった。

 ヘッドホンの音声に混じって耳鳴りが聞こえてくる。興奮に高鳴る鼓動で目眩までする。

 まさか…セックスの実際まで目撃してしまうことになるのだろうか。

 知識としてどういうふうにするのか、というのはだいたいわかっている。だが実際にその場面を見たことはなかった。

 習った当時は恥ずかしすぎて詳しく調べる気にもならなかったのだが、ここまで気持ちが高ぶってしまうと見たいという気持ちがなにより優先してしまう。

「は、早送り…」

 もどかしげにコントローラーをつかみ、早送りで映像を進める。幾種類もの感情が混ざった涙で、ウルウルした瞳は期待にきらめいていた。

 早くみたい…早くみせてほしい…。男女の交わる姿を、男女の交尾を…。

「わあ…螢一の、おちん…ちん…。こんなに大きいの…?やだ、ウルド…舐めてる…!く、くわえてるうっ!!」

 スクルドの声が嫌悪に震える。ノイズレスの早送りシーンでは螢一とウルドが逆さまに重なり合い、互いの性器を舐め合っていた。スピーカーからの音声は早送りによるスキップを余儀なくされていたが、途切れ途切れに舌が互いの性器をくねる音が聞こえる。

 ひどく巨大な男性器をウルドが一生懸命に舐め、しゃぶり、頬張る光景にスクルドは不快を覚えながらも…両目はしっかり開かれ、釘付けにされていた。

…てろっ。

 あんぐり口を開けたスクルドは…無意識のうちにウルドの行為をシミュレートしていた。舌を少しだけ伸ばし、螢一のペニスを舐めるように小さく動く。

 ウルドになりきってしまいたい一心に駆られ、乱暴にパーカーTシャツもブラも脱ぎ捨てる。スクルドは少女の裸身をさらけ出してしまった。

 ほわっと甘く香るようなスクルドの裸…。まだメリハリの少ないボディラインだが、白い柔肌は清潔感に満ちている。

 無駄な肉の少ない二の腕に脚。

 魅力を内包して僅かながらに隆起しはじめたバスト。

 そのまま腰へとつながる、くびれの少ないウエスト。

 女性としての丸みを帯び始めたヒップ。

 うぶ毛程度しか生えていないが、それなりに盛り上がっている恥丘…

 もう何年か経てば二人の姉をしのぐほどの美しいプロポーションを備えるのではないだろうか。そう予感させる身体をすみずみまでせつなくさせ、スクルドは独語した。

「いいなぁ…あたしもしたい…してほしい…。わぁ、今度は胸に挟んで…?ウルドはいいなぁ、おっぱいおっきくて…あたし、マネできないよぉ…。」

 シックスナインから乳房を使った疑似性交…パイズリへと、スクルドが思いつきもしなかったふしだらな行為を螢一とウルドはこともなげにこなしてゆく。

 ウルドが羨ましくてならない。スクルドは必死で胸の周りから肉を寄せ上げてみるが、とても螢一のペニスを包み込めるほどの余裕は生まれない。

 身体が焦れる。おかしくなりたかった。右手を螢一の舌に見立てて濡れそぼった割れ目を撫で、左手でイメージ上のペニスをつかみ…舌で愛撫するようにする。ベルダンディーに近寄る螢一など好きなはずがないのに…今はふたりでいけないことをしたい。ウルドにしたことを自分にもしてほしい。

「悪い子になっちゃうよ…あたしも…お姉様に叱られる…仙太郎にも嫌われる…」

 その言葉は死にかけたモラルの悪あがきであった。尊敬してやまない姉の笑顔を…淡い恋心を抱きつつある少年の笑顔を脳裏に閃かせ、淫欲の虜になった理性を必死に思いとどまらせようとする最後の抵抗であった。

 しかし…その悪あがきにも最期の瞬間が訪れた。

 螢一のペニスから噴出した白液をウルドが顔いっぱいに受けたとき…スクルドの頭の中でなにかがプツン、と切れた。

 射精した…精液をっ…か、顔じゅうに浴びてっ…。

「あああああっっ!!けいいち、けいいちっ、けいいちぃっ!!あたしにも一緒なことしてえ…!精子いっぱいかけてよぉっ!びゅっびゅって、メチャクチャに汚してえっ!」

 スクルドは涎を垂らしながら床に転がり、悶えんばかりに涕泣した。何事をも理詰めで考えるしっかり者の女神は…とうとう発情と同時に発狂した。

 右手の中指に力を込める。今まで開いたこともなかった割れ目にぬぷ、と埋め、こじ開けるようにひねると…スクルドのヴァギナはとうとう開花してしまった。

 健康な濃桃色の裂け目が外気に触れ、身じろぎするようにクニュクニュうごめく。その奥の奥に隠されていた女神の泉からは…混じりけのない愛液が湯気となってほのかに舞った。ぬめって艶めいたクリトリスも…今は大きな快感のために萎縮を始めている。

 スクルドは仰向けで大きく脚を開くと、その向こうにモニターを臨む体勢をとった。ハーゲンダッツをお供にホームシアター気分、は何処へやら、である。腰を浮かせてお尻の穴までべとべとにしてしまうなど、十分前までは想像もできなかった。十分前どころか、まさか自分がマスターベーションに夢中になってしてしまうなど…。

 軽い絶頂感が小さな身体いっぱいに拡がりはじめたとき、待ち焦がれた時は来た。

 ウルドが形の良いおしりを突き出し、螢一に挿入を求める。

『つながるよ…?』

『うん…いっしょになって…!』

「いっしょになるって…するんだ…セックス、するんだ…ウルドのあそこに…螢一のおちんちんが…入っちゃうんだ…」

 映像を通常再生に戻し、モニターに見入るスクルド。自分も小指をか細い膣口に押し当てた。切りそろえてある爪の先がわずかに埋まる。

 ウルドが螢一に突き入れられ、随喜の鳴き声をあげた瞬間、スクルドも小指を膣内に挿入していた。

「あ、あっ!!あああああっっ!!」

 異物が聖域に押し入ってくる感触。痛みはないが、身体は小指を来るべきものと錯覚し、歓喜の涙を流した。スクルドは第一関節まで小指を挿入した時点で軽く達してしまった。

 大事なところだからいじったりしてはいけない。

 そう言い聞かされてきた今までに決別するには、その行為はあまりに儚かった。いじる程度をはるかにしのいだ小指は…快感に任せてニチ、ニチュ、と抜き差しを始める。

「気持ちいいっ!気持ちいいよぉっ!!あたし、あ…あたしっ…!!」

 感じるままによがり声をあげるスクルド。狭い膣が熱く波打つように痺れる。その心地の良い痺れが下半身から上半身、指の先にまで拡がると脳髄は淫欲に焼けただれ、スクルドをやみつきにしてしまった。

 ブリッジするように腰を浮かせ、無我夢中で小指のピストン運動にふける。小指はもう第二関節まで埋まっていた。溢れるラブジュースは小指と膣口で摺り合わされ、細かなムース状になってゆく。

 揉みっぱなしの左胸は小さな手の平の中ですっかり火照り、ちっちゃな乳首も精一杯強がるようにツンツンしこった。身体じゅうの隅々にまで熱が行き渡り、浮かんでしまうようなフワフワした感触に包まれ…気持ちいい一色になってしまう。スクルドは涙を流してむせび泣いた。

「お姉様ごめんなさい…おねえさまごめんなさい…あたし、あたし、悪い子になっちゃう…き、気持ちいいのが大好きな、えっちな子になっちゃう…!!」

 モニター映像そっちのけで恍惚に浸るスクルド。とうとう小指を根本まで挿入すると、いよいよスクルドは危険な領域に飲み込まれていった。きつく目を閉じ、お腹の中が暴れ出したかのように腰をガクガクさせ、痛々しいくらいにのけぞって叫ぶ。

「きゃあああっ!!ば、バクハツッ!!バクハツしちゃうっ!!アソコ、バクハツしちゃうよおっ!!あ、あっ!!ひぃっ…!!」

きゅううう…ぶちゅっ、ちゅっ…

「ひ…!!」

 スクルドは根本まで受け入れた小指を強烈に締め付け…指と薄膜との間から絶頂の雫をわずかに飛沫かせた。

 小指を挿入したまま、脱力したようにカクンと腰が落ちる。深い呼吸を繰り返しながらスクルドは初めてのエクスタシーに呆然となった。

 横を向いた顔では唇の端から唾液があふれて畳を濡らす。畳が濡れているのは今に始まったわけではなく、すでに彼女のおしりの下はコップの水をこぼしたかのようにびちょびちょだ。背中の下だって汗でじっとり変色している。

 気持ちいい、がいつまでたっても終わらない。膣内は熱く、狭く…くすぐったい感覚を数千倍に増幅して放り込まれたような感じが続いたままだ。

 快感にとろけきった頭は何かを考えるということができず、まるで夢うつつであるかのように、意識の奥で踊る光景をぼんやりと幻覚に見せていた。

「けいい、ち…」

 快感の大海に深く沈んだまま、左手の親指を噛みつつ名前をつぶやく。螢一が頬に唇を寄せ、そっとキスしてくれたような気がしたのだ。

 思いを寄せているわけでもないのに頭から離れない。優しくしてくれた記憶がいくつもいくつも蘇ってきて、果てたスクルドは興奮しきったままの気持ちを幾分か和ませることができた。怖いくらいにせつなさが募った胸に、いくばくかの安らぎが生ずる。

 よくよく考えたら優しくしてくれるのはいつものことではないか。意地悪された覚えなどない、と断言できるほどだ。

 ただベルダンディーと仲良くしているのが気に入らないだけで…ベルダンディーを自分から取り上げられてしまうのでは、と不安なだけで…。

「…掻き乱さないでよっ…!螢一のバカ…螢一のバカ…!」

 エクスタシーの余韻に浸りながら…スクルドは膝を抱えるように身を縮こまらせてそうつぶやいた。途方もない快感と安らぎが和らいでいくにつれ、もどかしいまでの焦燥感、後味の悪い虚無感がこみ上げてくる。一人遊びの後遺症であった。

 高ぶった気持ちがどんどん憂鬱になってゆく。しなきゃよかった、と後悔までしながらスクルドはすすり泣いた。

 螢一なんかキライ。ホントは大ッキライ。だけど自分は、もしかしたら螢一が…。

「つらい…つらいよぉ…!ホントに悪い子になっちゃいそう…!」

 敬愛してならない姉を裏切ってしまいそうで…。そう感じると涙はさらにとどまることを知らず、溢れるのであった。

 

 暖かな日差しと高原の風による二重の愛撫は…心地よく照りつけ、そして労るように吹き抜ける、を繰り返して二人のまどろみを深めていた。

 しかし心地の良い瞬間に絶妙なタイミングでジャミングを入れるものはどこにでもいるもので…螢一の頬に一匹の小さなバッタがぴょん、と飛び乗った。微かな違和感に眠りから覚める螢一。

「んん…?わっ…。」

 寝ぼけ眼の真ん前。風が止めば安らかな寝息が聞こえそうな位置にベルダンディーの寝顔が迫っていた。思わぬ緊張と興奮に一瞬たじろぐ螢一。

 昼食をとり、ハーブティーを飲んでから…あらゆる好条件のもと、睡魔の大挙襲来を許してしまい…いつのまにか向かい合わせで眠ってしまったらしい。

 悪戯者のバッタはそっと近付いてきた螢一の手の平にいち早く気付き、ひょい、とベルダンディーの頬に飛び移った。それに合わせて彼女もささやかな午睡から目覚める。頬の上でバッタがモソモソしているにもかかわらず、寝ぼけ眼で少しぽおっとしているところがたまらなくかわいらしい。

「ベルダンディー、バッタが起きろってさ。」

「螢一さん…ああ、バッタさんですか…。」

 意識を取り戻し、微笑したベルダンディーが頬に手をやる。するとバッタは逃げるどころかその手に乗り、ちょいちょい、と触覚を振って愛想を振りまいた。調子のいいヤツめ、と螢一は思わず苦笑する。

 こんな些細なことでも、こんなに幸せに思えるなんて…。

 心から好きな人と一緒にいるということは、ただそれだけですべてが満たされるようであった。ましてやこんな近くでとびきりの笑顔を見ることができるとあっては…男として至福の瞬間であろう。螢一はたちまち喜びに胸が満ち、熱く…熱く溜息を吐いた。それは感動の…陶酔の溜息。

「螢一さん…?」

 そっとバッタを放し、横になったまま小さく問いかけるベルダンディー。わずかにあごを引き、上目遣いになる。寝顔を見られたことがいささか照れくさいらしい。

 螢一の引っ込み思案な理性は…午睡から覚めたばかりでいまだ本調子を取り戻していなかった。

 だからかわいらしいしぐさでこちらを見るベルダンディーを前に…少しだけ積極的になれた。

「ベルダンディー…。」

「螢一さん…。」

 螢一の右手がベルダンディーの頬に触れる。滑らかですべすべな感触を確かめるとベルダンディーはさらに照れて、軽く日焼けした頬をいっそう赤らめた。

「…ベルダンディー…好きだよ。」

「…螢一さん…わたしも…です。螢一さんの気持ち、わかってましたけど…言葉にされると言霊がこもるぶん、直接心に響きます…ああ、本当に嬉しい…!」

 螢一の偽りのない気持ちの告白にベルダンディーははにかむように微笑してうつむいてしまった。耳まで真っ赤になってしまう。

 そっと彼女の左手が伸び、螢一の右手に触れる。螢一はその手を取ると、指を組むようにして繋いだ。手の平の温もりが…微かな湿り気がわかる。螢一もベルダンディーも…歓びの汗をかいていた。

「ベルダンディー…。」

「螢一さん、好きです。わたしも螢一さんが好きです…!」

 再び顔を上げるベルダンディー。汚れたものを見たことが無いかのような澄んだ瞳は普段に増して潤み、涙がいっぱい溜まっているようにも螢一には見えた。

ついっ…。

 ベルダンディーが唇を差し出す。瞳はまぶたに閉ざされたため、螢一は女神の嬉し涙を確認することができなかった。

 でも、もう十秒もあとには…そう、二人の唇が熱く重なった時には…彼女の嬉し涙を確認することができるような気がする。嬉し涙を拭ってあげられるような気がする。

 ベルダンディーは感情の芸術家なのだ。喜怒哀楽という油絵の具を大胆に使用して、身体全体をキャンバスに色鮮やかに感情を表現する。その色鮮やかさが穏やかな心に強すぎるためかとても涙もろいことを…長い付き合いを通して螢一はわかっていた。

 倣って目を閉じ、次第に鼓動が高鳴ってゆくのを感じながら唇を寄せ…

「あのお…お二人さん?」

「は、はっ、はいっ!?」

 心地の良い瞬間に絶妙なタイミングでジャミングを入れるものは…本当、どこにでもいるもので…あと数センチで唇どうしが接触する、というときに無粋極まりない声が二人にかけられた。見事にハモり、起きあがって正座までしてしまう螢一とベルダンディー。

 姿勢を正した二人の目の前には麦わら帽子にオーバーオール姿の、見事なまでに日焼けした老人が立っていた。

「お休みのトコロを申し訳ないんじゃが…そろそろこいつらのメシの時間なんでなぁ…。本当に申し訳ないんじゃが、場所を譲ってはいただけんかのう?」

んもおおお〜。

「うわ、わっ、わあっ!?い、いつのまに!?」

「あら…牛さんのお食事の邪魔をしていたんですね、こちらこそ申し訳ありません!」

 間近で響いたサイレンのような音に螢一は露骨に狼狽えた。立ち上がって周りを見渡すと、いつのまに放牧されたのか牛達がそこかしこで草をはんでいる。自分たちの周りもすっかり牛達に囲まれてしまっていた。

 ベルダンディーも状況を悟ると慌てて立ち上がり、牧場主と思しき老人に真っ赤な顔をして何度も何度も頭を下げた。

「いやいや…すまなんだのう。お気を悪くせんで、また遊びに来てくだされ。」

 そう言ってニカッと白い歯を見せた老人にいとまの挨拶をし、二人は気まずさでいっぱいのまま牧場を後にした。

 そそくさとバイクに乗り込み、帰路に就いた後も二人は照れくさくてならず、顔を合わせることができなかった。

 

「いろいろあったけど、今日はホントに楽しかった!なんかあの時のオレ、別人みたいだったよな…。ま、あらためて告白もできたし、明日から頑張って仕事仕事っと!」

 タンクトップとトランクスだけの…いわゆる寝間着姿に着替えた螢一は布団の上に寝転がり、今日一日を振り返って満足そうに破顔した。

 あれから螢一とベルダンディーは通りすがりのスーパーマーケットに寄り、夕食の材料を調達してから帰宅したのであった。

 帰宅してからシャワーで今日一日の汗を洗い流し、夕食を済ませ、食後のお茶でしばしくつろいでから、四人それぞれにプライベートタイムへと散らばったのである。

 余談ではあるが、夕食は予定通りの鰻巻きであった。ベルダンディーは自分で鰻をさばくこともできるのである。まな板を見せてもらえば釘の穴がいくつか開いているのがわかるだろう。

 閑話休題。ご機嫌そうにニコニコしていたベルダンディーや、終始言葉少なだったスクルドは自室に戻ったようであったが…ウルドだけはなにやらシケた面持ちで居間のテレビを見つめていた。螢一は気になって声をかけたりしてみたが、ちょっとね、と苦笑で返されただけであった。

「…なんかウルドのオレを見る目…変わったような気がするな。」

 寝転んだまま腕組みし、回想してつぶやく。

 朝は顔を合わようとしない自分を問いつめたりしておきながら…いざ帰宅してからはどうも真っ直ぐに眼を見てくれないようなのだ。それどころか、視線が合ったとしても、逆にあちらから目をそらしたりするのである。

「…もしかしたらオレ、夕べのヤツを顔に出しててスケベな目でウルドを見てたのかも…。なんか不安だなぁ…」

 寝転がったまま腕組みして疑心暗鬼に陥った、ちょうどその時であった。

とんとん。

 夕べに続いて今夜も何者かが障子戸をノックした。まさかまたウルド、と螢一は思わず身構えてしまう。

「どうぞ?」

「螢一…ちょっといい?」

 そう告げて障子戸を開けたのはスクルドであった。ブカッとしたお気に入りの水玉パジャマ姿である。赤地に白の水玉で、上着の裾の左右に大きなポケットがついていたりする。

 もう寝るばかりといった彼女は螢一に促されて入室し、後ろ手で障子戸を閉めた。

「…今日はお姉様とデート、楽しかった?」

「あ、ああ…。そりゃあもう楽しかったよ。牧場へ行ったんだけど、高原の空気ってのはやっぱおいしかったなぁ。」

「そう…」

「…とりあえず座りなよ。なんか番茶でも持ってこようか…?」

 変なコトしなかったでしょうねーっ、と疑ってかかるでもなく、スクルドは夕食の時から今に至るまで気味悪いくらいに口数が少ない。螢一はとりあえず座布団を勧めたが、彼女は後ろ手のまま答えもせず、じっと佇んでいた。

「どうしたんだよ、黙ったまんまで…。メシの時からなんかヘンだぞ?」

「夕べのウルドと今日のお姉様…どっちが楽しかった…?」

 螢一の問いかけには答えず、意味深な笑みを浮かべたスクルドはハッキリした口調でそうつぶやいた。心なしか頬が赤い。

 そんなスクルドの言葉に、螢一は一瞬で顔面を蒼白にした。スクルドの言葉は夕べの事情を知っているうえでの意地の悪い問いかけに違いなかったからだ。

 息が詰まる。言葉が出せない。

 螢一は悪魔の爪で背筋をなぞられたかのような悪寒にかられていた。言いようもない寒気がして、顔面からサーッ…と血が退いていくのがわかる。冷や汗までじっとり背中に滲みはじめた。

 スクルドはどうして夕べのウルドとの関係を知っているのだろう。ウルドの法術で物音は聞かれていないはずなのだが…。

 まさか覗き見られていたのか。トイレか何かで部屋の前を通りかかったときに、何とはなしに障子の穴からでも見られてしまったのだろうか。

「う、ウルドと楽しむって…何を楽しんだっていうんだよ、あいつとデートなんてしてないぞ?」

「最低…。とぼけないでよね、カマかけてるとでも思ってるの!?昨日の昼間、ウルドと二人で話してたでしょう?あの時ウルドにマイクロサットを飛ばしてたのよ!!」

 しらを切っては見たものの、スクルドにとっては無駄な行為でしかなかった。彼女はまぎれもなく行為のすべてを、彼女自身の発明品によって目撃しているのだ。

「ま、まさか…ぜんぶ知ってるのか…?」

「ええ、ぜんぶ!!声から…してたところから、何もかも見ちゃったわっ!!」

 目に見えて狼狽える螢一を前にスクルドはキッと顔を上げ、叫んだ。憤りと羞恥で興奮しているのか、ちっちゃな耳まで真っ赤である。

 螢一はそんな彼女から視線をそらさずにはいられなかった。忘れかけていた後ろめたさが強烈に襲ってくる。とにかく事情だけでも説明したかった。

「…だって、ウルドが…してくれなきゃ外に出ていくなんていうから…ウルドにそんなマネなんてさせられないから…」

「そんなの理由になるとでも思ってるの!?そんな言い訳でお姉様が納得すると、本気で思ってたワケ!?」

「…ごめん、本当にごめん…」

「バカみたい…あたしに謝ったってしょうがないでしょ?ま、誰に謝ったってしょうがないのは変わんないけどね。」

「…っ!」

 スクルドの言葉は凍てつき、微塵の容赦もなかった。絶望に唇を噛み締めたまま、ガックリとうなだれる螢一。

 スクルドの気持ちは痛いくらいにわかる。スクルドがどれだけ真摯にベルダンディーを慕っているか、知らないわけがないのだ。

 そんな姉思いの妹に糾弾されては、螢一はただ恐れ入り、恥じ入る他になかった。誰の言葉よりも重く、心を穿ってくる。もはや螢一にはなんの言葉も浮かんではこなかった。

「あたし、お姉様にバラすからね。」

「…」

 無機質に言い捨てるスクルドにも、螢一はただ押し黙ってうなだれたままであった。

 そんな螢一をしばし無言で見下ろしていたスクルドであったが…ふいに、ふふん、と小さく笑った。むしろ笑って見せた、というのが相応しいような笑い方である。

「でもね、螢一の態度と返答によっては…黙っててあげてもいいんだけど…?」

「…交換条件を出そうってのか…?」

 スクルドの言葉に思わず顔を上げた螢一は…もうすっかり泣き出す寸前であった。目は赤く、不安に溜まった涙が揺れていた。自責の渦に呑まれて溺れかけたらしく、声まですっかり震えてしまっている。

 そんな螢一の前にスクルドはそっと膝を下ろし、膝立ちの姿勢で自らの胸に両手を当てた。なにやらつらそうに呼吸が上擦っている。

「あ…あのね?あたしにも…ウルドと同じ事、してくれれば黙っててあげてもいいよ…?」

「なんだって…?」

「だから…あ、あたしにも…その、せ、せっくす…してくれたら…」

「ば、バカなコト言うなっ!!まだオレに後ろめたさを背負わせる気かよ!?」

「そっ、そんなんじゃないのっ!!」

 螢一はスクルドが何を言ったのか、一瞬理解に苦しんだ。そして、理解できたらできたで今度はスクルドの真意を計りかねて、ついつい声を荒げてしまう。

 その声を打ち消すようにスクルドも声を高くしていた。つい先程まで見せていた嫌悪の表情、氷の瞳はいつしかかき消え…媚びて火照った表情、口に含んでそのままのキャンディーのような瞳に変わっていた。

「黙ってるって言ったでしょ!?お姉様には絶対秘密にするって誓うから…ね、螢一…あたしだってもうオトナなんだよ?生理、来てるんだよ?」

「生理って…そういう問題じゃないっ!」

「やだやだっ!してくれなきゃバラす!絶対、今すぐバラしにいくからねっ!?それでもいいの!?」

 恥ずかしくてならない、といった表情で言い寄ったスクルドであったが、あくまで条件をのもうとしない螢一に焦れたようで、立ち上がって障子戸を開けた。廊下に片足を踏み出し、振り返って螢一の返事を待つ。

 しかし螢一は慌てもせず、ましてや追いすがろうともしなかった。

 じっと押し黙ったままうつむき、何かを思案していたようであったが…そのうち何かを決心したかのように、コクンと大きくうなづいた。深く溜息を吐いてからゆっくりと立ち上がり、スクルドの肩に右手をかける。

「…して…くれるの…?」

「ううん、オレの方からベルダンディーに打ち明けてくるよ。」

「…え…?」

 ふっきれたのか諦めたのか、寂しげな微笑で螢一はそう告げた。そのままスクルドの前を通り過ぎ、廊下に出ようとする。

「ちょ、ちょっと待ってよ、それって開き直り!?そんなことしてもムダだよっ!?」

「いや、そんなんじゃない…。許してもらおうなんて思ってないけど…とにかくそうしないとベルダンディーにもスクルドにも申し訳がたたないしね。悪いのはウルドに乗せられたオレなんだし。それで軽蔑されたとしても当然の報いだよ。」

「だ、だめえっ!!そんなのだめっ!!お姉様のところに行かないでっ!!」

 スクルドは取り乱すように叫ぶと、螢一のタンクトップの背中をつかんで激しく揺さぶった。イニシアチブに裏付けられた、先程までの自信に満ちた態度は焦りに包まれ、今にも壊れてしまいそうなほど儚げで頼りなくなっていた。

 こんなハズじゃない。

 スクルドはただ、そう考えて焦りを募らせていた。

 ウルドとの関係をタテに、螢一とふしだらな行為にふけりたい。

 マスターベーションよりも恥ずかしくて、淫らで、気持ちのいいことをしたい。

 脅しをかければ螢一は従わざるを得ないだろう。そして自分とも関係を持ってしまえば、ベルダンディーとも距離を置かざるを得なくなる…。

 スクルドの一挙両得を叶える打算はこうであった。

 しかし、スクルドの打算を知る由もない螢一は、ストレートな引き留めの言葉にも迷うことなく首を横に振った。

 実際開き直りなんかではなく、包み隠さずすべてを告白するためにベルダンディーの元へ行くつもりであった。一瞬でもベルダンディーを忘れ、ウルドの一身に愛情を注いでしまったことを告白するために…。

 だがそれではスクルドが困るのだ。罪を認め、ベルダンディーに事情を打ち明けられたりしたら困るのだ。それではせっかくの脅迫材料がなくなってしまうではないか。

「お願い、絶対言わないから行かないでっ!!一回だけ、一回だけでいいのっ!あたしにもウルドにしたことしてよおっ!!あたしも気持ちよくなりたいのっ!!セックスしてほしいのっ!!」

 スクルドはつかんだタンクトップの背中を乱暴に引っ張り、半ば泣きベソになって駄々をこねた。思い通りに事が運ばないことに対して苛立ちを募らせる幼子のような振る舞いである。

 すると螢一は突然身を翻し、スクルドの小さな身体を左手でひっかけながら布団の上に投げ転がした。スクルドが驚くいとまもなく螢一は彼女の上にのしかかり、両手をつかんで抗拒不能にしてしまう。

「…そんなに言うんならスクルド、オレの好きなようにするからな…」

 真上から覗き込み、押しつけるような声で螢一は唇を近づけてみせた。

 襲われる…。

 乱暴される…。

 そんな予感は多感なスクルドを怯えさせるに十分であった。

「ふぇ、ふええええ…!!あうっ、うぐっ、ううっ…!!」

 スクルドは大粒の涙をぽろぽろこぼし、声を上げて泣き出した。こうされることを望んでおきながら、いざとなると恐怖心が好奇心を上回ってしまったのだ。

 自分から望んだことであったから、泣き出しても大声を出さないよう努力した。できれば涙も流したくはなかったのだが…どれだけ堪えようとしても、欲望に駆られていた事に対する情けなさ、ベルダンディーを裏切ろうとした後悔がそうすることを認めなかった。堰を切ったように、いつまでも涙が止まらない。

「冗談だよ…泣くくらいならこんなことするんじゃない。」

「だってっ!だって怖かったんだもんっ!もっと優しくしてくれたって…」

ちゅ…。

 困惑した溜息を吐くと、螢一は泣きじゃくるスクルドの前髪を右手で退け、額の聖痕に唇を押し当てた。

 青い二重逆三角形の聖痕が熱くなる…。

 今、自分が何をされているのか気付いたスクルドはひくっと泣くのをやめたが…結局それは一瞬だけで、やはり涙は止まらなかった。

「スクルド、びっくりさせてごめん…。」

「ふぇ、ふえええっ…!ごめん、ごめんね、けいいちぃ…!ふええええっ…!!」

 幼い顔をくしゃくしゃにして…スクルドは螢一の背中に両手をまわして泣いた。螢一はささくれ立ったスクルドの感情を労るように、聖痕と唇との密着を維持し続けた。

 螢一の強い想いが聖痕を通し、スクルドの心に直接伝わってゆく。

 スクルドは冷たい涙を暖かな涙に変え、後から後から溢れさせた。

 どれだけ螢一が自分のことを大事にしてくれているのか…大切に思ってくれているのかがせつないほどにわかる。それがどうにも嬉しくてならない。

 唇を離して上体を起こすと、螢一は重くしないようにスクルドの横に並んで寝そべった。左腕で腕枕しながら、なだめるように小さな頭をゆっくりかいぐりする。ひくっ、ひくっと泣きじゃくるスクルドは螢一の撫で撫でを嫌がらず、それどころか甘えかかるように寄り添ってきた。

「ここだけの話だけど…正直、嫉妬しちゃうんだ。お姉様がうらやましいって。」

「どうして…?」

「だって…螢一のこんなに大っきな優しさを…独り占めできるんだもん…。」

 螢一の胸の上に左手を置くと、スクルドは夢見るようにそう言って目を閉じた。すっかり落ち着きを取り戻したようで、穏やかな微笑まで浮かべている。

 螢一はやれやれ、といった風に苦笑し、繰り返しスクルドの頭を撫でてあげた。

「オレはスクルドにだって優しくしてるだろ…?」

「スクルドにだって、じゃなくて、スクルドにだけ…優しくしてほしい…。」

「スクルド…そんなこと言われても…オレは…」

「ごめんね、イヤなこと言って…。」

 髪を撫でられながらスクルドはそう言うと、くすん、と鼻をすすり上げた。螢一の胸に置かれた左手が、ぎゅっとタンクトップを握りしめてくる。

 螢一はそんなスクルドの肩を右手で抱き寄せていた。

 少しの間だけなら…不安定な心の支えになってあげたい。

 今だけなら…スクルドの思うがままに甘えさせてあげたい。

 そんな気持ちに胸が満ちた。夕べウルドに対して抱いた感情にも似た、本能的に女性を労ってあげたくなる男としてのプログラムが走り始めたのであった。

「またオレ…ベルダンディーに悪いことしてる…。」

「…そんなことないよ。螢一は悪いことなんてしてない。あたしね、螢一が夕べ、ウルドにしてあげた理由が…なんとなくわかるような気がしてきた…。」

「え?」

「ほっとけない、んでしょ?あたし達も…。螢一の優しさが、ふふっ、お人好しな性格があたし達をほっとけないから…。」

 螢一に抱き寄せられても拒むことなく、スクルドは螢一の胸に左手を伸ばして抱きついてきた。

 スクルドの美しい黒髪から爽やかなシャンプーの香りがする。

 それに…間近に漂うボディーソープの匂いに混じり、ハーゲンダッツのバニラの匂いがするのがなんともかわいらしい。

 螢一の胸の中いっぱいに…目も眩むような愛しさがこみあげてきた。

「スクルド…」

「なぁに?」

ちゅっ…。

 呼びかけられて顔を上げたスクルドは…きょとんとした表情のままで唇を塞がれていた。遙か彼方まで意識が吹き飛ばされ、戻ってきたときにはもうすっかり顔面は紅潮しきっている。頬が熱くてならない。

 驚きにまぶたを何度もしばたかせるうち、恥ずかしさと照れくささによる涙がみるみる浮かんできたが…胸の奥に痛みはなかった。密着したままの螢一の唇にすっかり酔いしれると、ぽおっとした陶酔の表情でキスに応じる。

 憧れのファーストキス…。スクルドは呼吸も忘れてファーストキスを堪能した。まさか、いつも憎まれ口を叩いている螢一とキスしてしまうことになるなんて…。

 螢一を脅迫して強要する行為の予定にもキスはあったが…予想していたムードよりも遙かに穏やかなムードで、心地良い…。キスというものがここまで気持ちのいいものだったとは、あらためて自分の認識不足を痛感した。

 螢一の方からそっと唇を離しても、スクルドは薄目を開けたまま、いまだに密着が続いているような面持ちで余韻に浸っていた。金魚の口のように、僅かながら唇をひゅくひゅく開閉している。

「ごめん、あんまりかわいかったから…。イヤだった…?」

「…ううん…もういっかいして…」

「いいよ…。」

 抑揚のない、惚けたようなスクルドの求めに螢一は応えた。唇を押し当てたまま、呼吸も止めてじっと密着を維持する。スクルドの鼓動が早まるのがわかった。

 頃合いを見計らい、ちゅる、と舌を忍び込ませる。スクルドは思わず小さな悲鳴をあげたが、すぐさま舌どうしが触れあう感触に慣れると、螢一に倣って舌を入れ返した。

 唇の間で二人の舌がねばっこくもつれ、絡み合い…擦れ合う。スクルドはハーゲンダッツを食べてきたばかりのようで、彼女のキスはバニラ味であった。

 年端もいかない女の子の唇を奪っているようで…螢一はなんとも不可思議な気分に陥ったが、愛しさはまぎれもないものであった。

 精一杯かわいがってあげたい…。

 気が済むまで慰めてあげたい…。

 小さくて儚いながらも弾力を秘めたスクルドの唇は…触れあっているだけでも胸がときめいた。女の子の手を握ることにすら憧れた少年期に戻ったような気持ち…誰よりも朝早く登校し、こっそり好きな女の子の縦笛を舐めた…あの頃のような気持ちに螢一は戻っていた。スクルドとのキスで…初恋のせつない気持ちが蘇ってくる。

 だから螢一は積極的にスクルドの唇を確かめた。舌を差し入れたまま、狂おしく息継ぎして角度を変え、再び密着し…。

「ちゅ、ちゅう…ん、あ、スクルド…かわい、かわいいよ、スクルド…」

「あ、むぅ…ちゅ…ぷはぁ…あ、はぁ…んちゅ…け、いいち…」

 くみゅくみゅうごめくスクルドの舌は甘い唾液にまみれていた。螢一は執拗にスクルドの唾液を吸い、味わって嚥下する。暖めたミルクのような唾液に螢一自身の胸も高鳴り…自分からも唾液をゆっくり流し込んだ。拒むことなく、んく…んく…と細い喉を鳴らして螢一の唾液を飲み込むスクルド。そして二人して唾液を攪拌し、分け合ってすする…。

 唇を離すと二人は舌を伸ばし、突っつくようにしてじゃれあった。舌だけでなく、頬からあごからを舐め始めると、たちまち顔じゅうべとべとになってしまう。

「螢一、ちょっと待って…。」

 思い出したように起きあがると、スクルドはまず開いたままだった障子戸を閉め、パジャマの上着の右ポケットからフィルムケース大の物体を取り出した。

「それは…?」

「集音器、しずかちゃんよ。室内で作動させると、室内の音が一切このケースに吸収されて外部には漏れないってワケ。ま、夕べウルドが使った法術と同じことが起こるの。動作は実証済みよ。」

 スクルドは自信満々の笑みでそう説明すると、小さなプッシュスイッチを押し、テーブルの上に置いた。その途端に、心なしか室内の反響に違和感が生ずる。集音器が良好に物音を吸い込んでいる証拠だ。

 螢一はスクルドの手を取り、二人で膝立ちになって抱き合った。言葉を交わさず、ただただしっかと抱擁を続ける。

 互いの体温、鼓動が嬉しかった。間近で吐息を聞かれることがいささか照れくさかったが、そのぶん背中にまわした両手に力を込めれば耐えることができた。

 螢一は愛おしむように右手でスクルドの長い髪を梳いてあげた。柔らかく、指通りのいい黒髪は手入れが行き届いており、毛先に至るまで美しい。スクルドは髪を撫でられることを拒まず、丁寧な愛撫に身を任せてそっと目を閉じた。

「螢一、あたしも同罪だよ…。だから、今夜は絶対最後までしてよね…」

「螢一、あたしも同罪だよ…。だから、今夜は絶対最後までしてよね…」

「…まったく、スクルドもスケベなんだから…」

「あたしはウルドみたいじゃないもんっ!螢一とウルドがあんまり気持ちよさそうだったから、あたしもしてもらいたくって…それで…」

「それがスケベだって言ってるんだよ。」

「…せめてオトナになったな、くらいは言ってよね…」

「そんなのオトナって言えるかよ…」

 抱き合ったまま顔を見合わせ…再び口づけを交わす。ちゅ、ちゅっとついばむようにしながら飽きるでもなくキスを繰り返した。そっと目を伏せたスクルドはすっかりキスに馴染んでしまったらしく、螢一に負けないだけ率先して唇を重ねてくる。

 やがて唇が離れると…螢一は右手を伸ばし、愛おしむようにしてスクルドの火照った頬を撫でた。すべすべでニキビの一つもない、きめ細かな乙女の肌はいつまでもそうしていたいほどに手触りが良かった。くすぐったそうに目を細めるスクルドに、螢一も自然と微笑を浮かべてしまう。

 スクルドも右手を伸ばして螢一の頬を撫でた。柔らかな手の平でごしごし擦るように撫でてくる。少しチクチクするのはひげの剃り残しであろうか。

 男の肌、女の肌を確かめ合ってから、二人はくすっと笑った。

「…螢一、あたしもウルドみたいに扱ってくれるんだね…」

「いや、もうここまでにしよう…。やっぱりベルダンディーに悪いよ…」

「そんな…!ねえっ、螢一が本当に好きなのは…やっぱりお姉様なんでしょ!?」

「…やっぱりってのはなんだよ?」

 なんでもない螢一の揚げ足取りに、スクルドは顔を真っ赤にして首をブルブル振った。

「や、そ、それは…な、なんでもないよっ!とにかく今夜のは、あたしが螢一の部屋に遊びに来て、ただそれだけじゃない。未来を誓ったりするわけじゃないでしょ?気持ちいいことは誰だってしてるわ、ひとりでするかふたりでするかの違いだけ…」

「それがベルダンディーを傷つけることになると思うんだけど…うあ、ああっ!!」

 あくまでスクルドとのスキンシップを躊躇う螢一であったが、不満そうにぷう、と膨れて見せたスクルドがトランクスの隆起を右手でつかむと、思わず女の子のようなよがり声をあげてしまった。言葉とは裏腹に…螢一の下半身はスクルドを求めている。

「…説得力ないね。お姉様に見せて上げたいな、キレイゴト言ってても、あたしに…妹であるあたしに興奮してるんだって…」

 スクルドは意地悪くそうつぶやきながら、布地ごしの男性器をゆっくり上下に撫でさすった。不吉な形が手の平にわかる。熱く張りつめたそれは…スクルドの手の平に包まれてビクンビクン跳ねた。

「ああっ…す、スクル、ド…!やめろよっこのおっ!!」

「きゃっ!?」

 スクルドへの愛欲でいっぱいになった螢一はその言葉で理性を投げ捨てると、スクルドを抱き締めて布団に倒れこんだ。のしかかって唇を重ね、右手でスクルドのパジャマのボタンを外しにかかる。大きなボタンだから片手だけでも容易に外すことができた。

「けいいち、やだぁ…もっと優しくしてよぉ…!」

「…スクルド次第だね。意地悪言うから、こっちも意地悪くしてやる…!」

 容赦無しに前をはだけられたスクルドは羞恥で声を震わせて哀願した。

 そんな小さな女神に冷たい返事をよこすと、螢一は白と水色のストライプTブラの隙間に指を滑り込ませた。スポーツタイプのTブラは伸縮性がよく、ずるっ、と簡単にたくしあげられてしまう。それで真っ白な二つの膨らみは蛍光灯の下にさらけ出されてしまった。

「やだ、恥ずかしい…!」

 キスするのもやめて顔を背けるスクルド。異性に裸の胸を見せたのは今が初めてなのだ。

 ただでさえも発展途上だというのに、仰向けになると一層ぺったんこに見えてしまう。濃いピンク色の乳首と乳輪だけが、ここは乳房です、と訴えかけているようだ。

 螢一は右手でスクルドの腋から柔らかな肉を寄せ、それなりの膨らみを作ると指の腹でぷにゃぷにゃ揉んだ。爪を立てれば容易く破けてしまいそうなほど柔らかい。ウルドの胸も柔らかではあったが、中身がしっかり詰まっていないぶん、スクルドの胸の方が儚く、頼りなかった。

「スクルド、おっぱい大きくなるように一生懸命揉んであげる。」

「あんっ、くすぐったいよぉ…!うぅ、ゾクゾクするぅ…!」

 耳元でささやかれ、スクルドはモジモジ身をよじらせた。ぱくっと耳たぶをくわえられると、二の腕に薄く鳥肌を立ててしまう。

 螢一は寄せ上げた左胸の頂上にあるちっちゃな乳首にキスすると、唇で強く挟んだ。くい、くい、と痛くしない程度に引っ張る。

「ああっ、や、だ…め…ちぎれちゃう…!」

「あかちゃんできたらもっと乱暴に吸ってくるぞ?これくらいガマンしなきゃ…」

「あ、あかちゃん…うあ、や、ああ…っ!」

 螢一は乳首への愛撫を止めなかった。唇でひねっては、また引っ張る。ちっちゃかった乳首も休み無しに刺激されてはたまらなかった。ぷく、と動いたかと思うと螢一の唇の中で少しずつ大きく、固くなってくる。スクルドは乳首を勃起させてしまったのだ。

 螢一の言葉も少なからず影響していたのであろう。あかちゃん、という単語はスクルドにセックスという単語を…昼間見た光景を想起させ、パンティーの奥を一息に潤ませた。割れ目の奥からじわ、じわ、と愛液が滲み出て、内側の桃肉を火照らせる。マスターベーションの心地よさが戻ってきて、スクルドは艶めかしい鳴き声を…無意識下に迸るよがり声を漏らし始めていた。

「あぁ…はぁ、んっ…やだ、また…!けいいち、けいいちっ…んあ、はああ…っ!」

「気持ちよくなってきてるんだろ…?」

「…うん、気持ちいいの、けいいちぃ…もっとしてぇ…」

 螢一の言葉にスクルドは顔を背けたまま、何度もコクコクうなづいた。熱くなった呼吸が微かに開いた唇から聞こえてくる。幼い身体でありながらもスクルドは見事に発情をきたしていた。

 固くしこった乳首を吸う前に、螢一は舌を拡げて乳首の周りを舐めて慰めた。散々引っ張ったりしたお詫びではないが、そうされると乳首に凝縮された快感は心地よくほぐされ、柔らかな乳房いっぱいに暖かく拡がった。

「ああ、ホントに気持ちいいよぉ…。ひとりでするのと違う…」

 スクルドの喜悦の声は荒ぶった呼吸に混じり、それに合わせて小さな胸はふよふよ上下して揺れる。

 螢一はそんな乳房に乳輪ごとむしゃぶりつくと、ちゅう、ちゅうっと一定のペースで繰り返し吸った。白い柔肌の毛穴ひとつひとつからスクルドのフェロモンが醸し出され、螢一を愛欲の虜にさせる。きめ細かで滑らかな肌に舌を這わせながら、しつこいくらいに乳首を吸った。アイスクリームが大好物なスクルドだけに、バニラ味の母乳でも出てくるのではないかと螢一はくだらない妄想をしてしまう。

 重くさせないよう、スクルドの横で寄り添うようにうつぶせになった螢一は、彼女のズボンの中心に右手の中指と薬指をあてがった。ぷにぷにとした弾力を誇る恥丘、そしてその奥の隙間にはパジャマの上からでもわかるほどのすごい熱がこもっていた。

「ここもひとりで…したことあるのか…?」

「きょ、今日が…初めてだよ?今までしたことないんだよ、ホントだよ?」

 太ももの付け根に二本の指を進められると、スクルドは言い訳するようにそう言った。

 焦りの見え隠れする言い訳に人の悪い笑みを浮かべた螢一は、パジャマごしの割れ目に合わせてゆっくり指を前後させた。すりすりと女神の柔肉に刺激を与える。

「へえ、スクルドったら昼間っからオナニーしてたんだ?けっこうエッチだね。」

「お、オナ…って、え、エッチじゃないもんっ…あ、だめ…けいいち、あんまりしないで、ね、や、あっ…やあぁ…」

 螢一の淫らな決めつけにスクルドは強い口調で突っぱねてみせたが、指の動きがデリケートな突起にも刺激を与え始めたため、媚びた表情になって腰をくねらせた。薄いピンクのチェックパターンパンティーの内側で、じわっ、じわっと熱い湿り気が繰り返し拡がるのがわかる。

「エッチじゃないけど、キスは好きなんだよな。」

「ああん、うん…ちゅ、んむ…ちゅぷ、あ…もっとして…ちゅっ、ちゅう…」

 愛撫とキスを重ねてゆくうち、スクルドの熱いパジャマの股間は僅かながらにしっとりとしてきた。まろみを帯び始めている腰の奥で、びくん、と感じるたびにスクルドは膝を摺り合わせ、螢一の指をなんとか制止させようと試みる。

 しかしスクルドは膝を閉じても股間に隙間ができるほど細い脚線美を有していたため、モジモジするぶんいたずらにせつなくなるだけであった。パンティーはもうすっかりべちょべちょなのに、内側の濃桃肉はさらなる発情の雫を漏らそうとクニュクニュうごめいている。

「だめ、だめえっ…!か、感じるっ、感じるうっ!!」

「はは、かわいいよ…スクルド…!」

 スクルドの悶え方にすっかり気をよくした螢一は、右手を大きく拡げて彼女のおしりに当てた。さわさわ、とパジャマごしに撫でてから、親指をウエストにひっかける。親指はズボンのウエストを越え、内側のパンティーすらも引っかけていた。じり、じり、と右手が下げられてゆく。

「スクルド…おしり、出ちゃうよ…スクルドのおしり、出ちゃうよ…?」

「やだやだぁ…だめ、まだ脱がさないで…!」

「ほら、もう少し…真っ白なおしり、もう半分出ちゃってる…ほら、前だって裸になっちゃうよ…スクルドの割れ目、見えちゃうよ…」

「だめえ…!下げちゃだめえ…!」

 羞恥でいっぱいといった真っ赤な顔で、イヤイヤしながら拒むスクルド。慌てて螢一の右手をつかもうと左手を動かしたが、その動きは数瞬だけ遅かった。

 ズルッ、と衣擦れを残して下半身が剥き出しにされてしまう。遠く膝まで裸にされると、真っ白でつやつやのおしりは怯えるようにブルルッと震えた。

「どうせなら全部脱いじゃおう…」

「いや、恥ずかしい…恥ずかしいよぉ…!」

 真っ直ぐ見つめられながらそう言われたスクルドは、きゅっと目を閉じて横を向いた。そのワリにズボンを、濡れたパンティーを…そして上着とTブラを脱がす螢一の手を制止しなかったのは、意識が欲望に逆らえないところにまで達していたからだ。

 恥ずかしいという意識は確かにあるが、その一方で螢一に気持ちよくしてもらいたいという意識もある。生まれたままの姿をさらさないで気持ちよくしてもらえるのならその方がよかった。

 そしてスクルドは…とうとう産まれたままの姿にされてしまった。

「スクルド…キレイな身体してる…。」

「う、嬉しいケド…恥ずかしい…。あんまりジロジロ見ないで…。」

 右手で胸元を、左手で股間を隠しているが、一心に恥じらう姿がなんとも扇情的である。螢一は思ったままを口にしていた。スクルドはそう返答すると、無防備極まりない格好がどうにも落ち着かないらしく、唇を噛んでそっぽを向いた。

「…ぜんぶ見せて。」

 螢一の右手が内ももに触れると、スクルドはビクッと身体を強張らせる。

「ま、待って!あ、あたし…今度はあたしが、螢一を気持ちよくさせたい…。」

「え?」

 スクルドはそう言って起きあがり、螢一の顔を真っ直ぐに見つめた。そっと螢一のタンクトップに手をかけ、スルスルとめくる。

「螢一も裸になってよ、あたしだけ裸なの、フェアじゃない…」

「あ、ああ…」

 螢一もスクルドに倣って起きあがった。ばんざいしてタンクトップを脱がせてもらうと、スクルドはトランクスにも手をかけてきた。さすがに螢一にも先程のスクルドの気持ちがわかったようであり、そっと彼女の手を制する。

「ま、待って…自分で脱ぐよ…」

「ダメッ!そんなのズルイ!あたしが脱がせるのっ!!今度はあたしにさせてっ!!さ、螢一!スタンダップ!」

「た、立つの…?」

「そ!立って、あたし…してあげるから…」

 言われるままに立ち上がる螢一。トランクスの前を両手で包み隠すようにしているが、もうトランクスのゴムの辺りまでペニスはそそり立っている。ともすれば濡れ始めた先端が見えてしまうかも知れなかった。

 裸のスクルドは膝立ちになり、片手で髪を後ろに流してから螢一をムッと睨み付け、股間から彼の両手を退かせた。震える手でウエストに両手をかけ、一息に膝まで下げる。

「うわぁ…」

「は、恥ずかしいよ、スクルドッ!」

 艶めく先端がぬめり、無数に血管の走った醜怪な肉の棒…。スクルドは、これが本当に人間の身体の一部なのかと驚きで両目を真ん丸にし、感嘆の声を漏らした。

 螢一は螢一で、年端もいかない女の子に隆々と勃起したペニスをマジマジ見つめられている事実に今さらながら照れくさがる。

「これが…おちんちんなんだぁ…やだぁ、気持ち悪い!グロテスク…!」

「き、気持ち悪いはないだろぉ…?オレだって女の子の…その、ウルドの…初めて見たときはあんまりいい眺めだって思わなかったぞ?グロテスクは同じだよ…。」

「ウルドのはきっと汚いのよっ!あたしのやお姉様のは絶対にキレイよ!」

「う、あんまりベルダンディーのこと、言わないでくれ…。」

 いくつか性器にまつわる感想を交わしたあとで…スクルドは右手でペニスに触れ、螢一を見上げた。うなづくのを確認してからじかに握る…。

「かたぁい…。熱くって、血が巡ってるの、わかる…」

 トランクスごしよりもはるかにたくましさが…男らしさが感じられる。

 その固さは骨をつかんでいるのではなく、熱い血が駆けめぐることによる手応え。

 その熱さは作られたものではなく、まぎれもない自分に対しての愛欲の証。

 その愛欲は出任せなんかではなく、まさに今自分だけに降り注ぐ心地よい光。

かあっ…。

 スクルドは聖痕が黄昏色になるまで顔面を紅潮させた。のぼせてしまうような倦怠感の中、安らいだ微笑が浮かぶ。

 螢一の愛欲に応えたい…。スクルドはペニスの先端から滲んでいる愛液を指にまとわりつかせ、右手でかたどった筒で長太い幹をヌルヌルしごいた。くびれには指の一本一本をしっかりひっかけるようにし、ツヤツヤな先端を包み込むようにしてにゅぎゅっ、ぢゅっと揉んだ。螢一はたちまちだらしのない声をあげてしまう。

「うああ…す、スクルド…!スクルドの手、すっごい気持ちいい…!」

「わあ、ホントに気持ちいいんだ…。どんな感じなの?」

「ツヤツヤしてる先っぽ、あるだろ…?そこに気持ちいいのがジリジリ集中していくような…それで、根本から全体に…弾けそうなほど集まって…」

「…舐めて…頬張ってあげよっか?ウルドより気持ちよくしてあげるよ?」

 スクルドは愛撫の手をやめ、ちろ、と舌を出して上目遣いに螢一を見た。一見余裕ありげなスクルドだが、心臓は破裂しそうなほどのハイペースで高鳴っていた。耳鳴りまで感じるほどだ。

 本当にこんな大きなものをくわえることができるのだろうか。

 それにウルドより気持ちよくする、などと大見栄を切ってしまっていいのだろうか。

 螢一に飽きられはしないだろうか。

 息の詰まるような不安で、より一層胸が苦しくなる。

「…ムリしなくていいんだぞ?」

「あったりまえでしょ?じゃあ…するね?」

 螢一の気遣いに空元気で答え、勇気づけるように…決心するように強くうなづくと、スクルドは螢一のペニスを強く握って口元に寄せた。

ちゅぴ…。

 軽く口づけしてから目を閉じ、舌を伸ばして、ぺろっと先端を一舐めする。愛液の渋味がいささか不快ではあったが、昼間の記録映像での憧れが鮮明にフラッシュバックし、スクルドはウットリした目でペニスを見つめながら積極的に舌を動かした。

 先端を舌先で念入りに舐め上げ、滲む粘液を舌の腹に馴染ませ、くびれの裏側を大きく擦る。舌を拡げてグネグネ舐め、くびれにそって舌を絡めた。

 ペニスを上に向かせ、今度は幹全体を大きく舐めた。下から上、上から下への往復。恥ずかしさに満ちて呼吸を熱くしながらも、勇気を振り絞って袋をも頬張ってみた。袋の中にはころん、とした球が二つあり、一つは口中へ…もう一つは左手が弄んだ。右手は筒を作り、濡れたペニスをニチュニチュしごく。

「うわわぁ…!スクルド、そ、そこまでしてくれるなんて…っ!!」

 スクルドの髪を撫でていた螢一は思いもしない愛撫にあごをのけぞらせ、よがり声を響かせた。ペニスの根本がジクンジクンうずき始める。終わりは近そうであった。

 ぽあ、と袋を吐き出すと、スクルドは再びペニスを倒し、ツヤツヤな先端にキスした。水飲み鳥のようにちゅっちゅっと連発して唇の柔らかさを伝える。

 何度目かのキスで唇は密着を維持し、んく、と生唾を飲み込む音を小さく残して…スクルドは螢一のペニスを頬張りはじめた。

 食いしん坊で、おしゃべりで、だけど小さな口の中に…それに比べて巨大なペニスが徐々に飲み込まれてゆく。あこ、おこ…と苦しげな呼吸音とともに中程まで飲み込まれてしまうと、螢一はスクルドの頭を両手で押さえた。めくるめくほどの快楽を逃すまいとする、無意識下の非道であった。

「スクルド…オレの顔、見ながらしてくれ…」

「…ん…。」

 それは背徳ではなく、冒涜に値する行為であったろう。

 螢一の前でひざまづいた体勢のスクルドに性器をくわえさせ、そのうえ羞恥極まった彼女を上目遣いにして顔を見させるなど…。

 しかしその至上の冒涜行為は…幼い女神にペニスを頬張らせている行為は、裏を返せば至高の悦楽とも言えるだろう。螢一は感極まってつぶやいた。

「スクルド…かわいい、ホントにかわいいよ…!」

「ん…んっ…!」

 頬張ったままで感涙を浮かべるスクルド。単純な言葉であるぶん素直に嬉しいのか、螢一の腰を両手で押さえると、一生懸命に頭を動かし始めた。

 スクルドの狭い口中は加虐心も煽り立てられて最高の心地であった。きゅっとすぼまった唇にくびれがかかり、かと思うとざらつく舌の上を滑って狭い喉の奥につかえる。螢一はスクルドの頭を押さえて自らも腰を振っていた。

「きもち、いい…っ!!ウルドより入んないけど、すっごい狭い…きゅきゅって動いて…ああ、のど、にっ…入ってる…!」

「ん、んっ…!んかぁ、んぐ、んむ…っ!!」

 螢一が感じてくれている。見た目や声だけでなく、肌を通してそれは伝わってきた。

 口の中を占拠しているペニスが喉の奥を突くと、激しくむせこみたくなる。

 喉にまで入り込んでくると胃が痙攣し、嘔吐したくなる。

 しかし螢一が気持ちよくなってくれているのならそれでもよかった。我慢できた。

 その果てに…精液でべとべとに汚してほしかった。精液にまみれた自分の顔をイメージするだけでスクルドのヴァギナはきゅんきゅんうずき、膝まで愛液を滴らせるほど濡らてしまう。ウルドのように入れてほしい気持ちがふつふつと湧いてくる。

 淫らな欲望を押さえようもなく膨らませていると、腰を振っていた螢一のペニスが急激に膨張を始めた。ただでさえも窮屈だった口の中がきつきつの状態になり、舌が押しつぶされる。螢一はあごをガクガクさせ、よがりまくって鳴いた。

「スクルド、スクルドッ…!ごめん、出るっ、出ちまうっ!!」

「んんっ!!んーっ!!んんーっっ!!」

 このままだと螢一は口の中に射精してしまいそうだ。上目遣いにスクルドはイヤイヤと頭を振り、螢一の腰を引き離そうと両手をつっぱねた。しかし頭を押さえつける螢一の両手の方が力は強かった。

「ああっ!す、スクルド!スクルドッ!!」

ぶびゅるっ!どぷっ!びゅっ、びゅっ…

「…っ!!」

 喉の奥に粘つく熱いものが放たれ、たちまち口いっぱいに満ちてゆく。

 舌の裏から歯茎に至るまで、渋い精液はスクルドの口中すべてを浸した。目を見開き、嫌悪感に身震いするスクルド。汚らしい味が舌全体に染みついてしまう…。

 螢一の射精はいつ果てるともなく続いた。根本近くまでくわえこんでもらったところで射精したため、新鮮な精液が何度も何度も喉の入り口を灼く。螢一はスクルドの頭を強く押さえ、のけぞったまませつなく叫んだ。

「スクルド、お願い、飲んで…!オレのザーメン、ぜんぶ…飲んでくれ…!」

 非難されてしかるべき願いであった。性的虐待そのものであった。

 しかし…その許されざる哀願はスクルドの虐待嗜好癖、すなわちマゾッ気に強く作用していた。

 大量の精液をぜんぶ飲め、だなんて…。顔にかけられるよりも酷い仕打ち…。

ぞくぞくっ…。

 スクルドはヴァギナが激しくうずくのを身体全体で感じた。涙を一筋頬に滑らせつつ…

ご、くん…ごくん…ごくん…

 ペニスに歯を立てぬよう、くわえたままで粘つく精液を飲み込んでゆく。舌の根本にまで渋味が絡みついてきた。悪寒が酷いが、体内まで生臭く汚されているのかと思うとそれだけで恍惚に浸ることができた。惨めな自分の姿を想起して歓喜の涙を流す。

 射精した余韻から立ち直った螢一に、ちゅば…とペニスを引き抜いてもらうと、スクルドは脱力して布団に転がった。唇の端からなまっちろい雫がこぼれる。飲みきれなかったぶんが唾液とともに溢れたのだ。

 精神的ショックは大きかったが、満足感もまた大きかった。虐待されることがこんなに嬉しいことだったなんて…。

 信じられなかった。身体じゅうが興奮にざわついているような感じがする。

「ごめんっ!ごめんな、スクルドッ!とりあえずこれでも飲んで…!」

 螢一は枕元に置いてあった飲みかけのオープラスを手に取り、ペットボトルのキャップを開けてスクルドに差し出した。緩慢な動きでそれを受け取ると、スクルドは口中をゆすぎながらボトルの中身をきれいに飲み干した。

 それでようやく落ち着いたのか、ふう、と息を一つ吐く。落ち着いた風に見えるが、熱でも出しているかのような頬は真っ赤なままだ。

 なにしろ…精液を飲んでしまったのだから。しかも、普段から親しくしている螢一の精液を、それも大量に…。強い気付け薬でも飲まされたかのように胸が苦しい。

 おまけに、喉の奥に勢いよく射精された感触がいまだに残っている。たちまち口中いっぱいに満ちてゆく悪寒も…。この興奮はそう簡単には冷めそうにない。

 螢一はスクルドの口元をティッシュペーパーで拭うと、畳に額を擦り付けて非道を詫びた。狼狽えきり、すすり泣きまでしてしまう。

「本当にごめん!スクルドがあんまり気持ちよかったから、オレ、夢中になっちゃって…まずかったろ…本当にごめん!許してくれっ!」

「…もういいよ、気にしないで、けいいち…。そのかわり…お願い。」

 起きあがったスクルドの瞳の奥に、淫らな光が妖しく瞬く。

「な、なんだ?なんでもするぞ?」

 多少安請け合いの感もするが、螢一は泣きベソの顔を上げてスクルドの願いを聞いてやることにした。彼女が非道を咎めないのであれば、できうる限りの望みを叶えてやりたい心境であった。

 スクルドは放られたパジャマの上着を引き寄せ、左側のポケットから小さな小箱を取り出し、それを螢一に差し出した。

「これ、コンドーム…。ね、今すぐセックスして…。」

「な…す、スクルドお前、これ…!?」

 螢一は差し出された小箱をつまみ上げ、驚きの表情と声でスクルドに問いかけた。

 スクルドはころん、と仰向けに寝転がり、両手で胸元を覆ってつぶやく。

「やっぱり避妊はしてほしい…あたしだって、生理は来てるんだから…」

「そうじゃなくって!どうしてお前がこんなもの、持ってるんだよ!?」

 赤面しながら叫ぶ螢一の言葉に、スクルドは照れくさそうに…どこかすねたように横を向いて説明を続けた。

「…ばんぺいくんに頼んだの。自販機の場所をナビで探して…。ね、螢一…あたしもうこれっぽっちも待てないっ…。お願いだから今すぐセックスしてっ!」

「スクルドにこんなことできないよっ!こんなことはスクルドが本当に好きな人と…」

「なんでもするって言ったよっ!そんなキレイゴトなんていらない、あたし、螢一とセックスしたいの…!このままやめられたら…あたし、狂っちゃう…!!」

 スクルドの純潔を思って螢一は説得を試みたが、スクルドはもう後には引けない様子であった。膝をモジモジさせると、割れ目の奥からぴちゅ、ぷちゅ、と水っぽい音が聞こえてくる。受け入れ準備はとうにできているようであった。

 それでもなお戸惑い続ける螢一をキッと睨み付けると…スクルドの瞳の端から淫らな光の源がぽろろ、とこぼれ落ちた。

「してよぉ…。もうお子様なんかでいたくないっ…。ねえ、一生のお願いだから…ウルドみたいにして!あたしをウルドみたいに扱って!!」

「スクルド…わかってると思うけど、初めてはすごい痛いっていうぞ?それでもいいのか?覚悟、できてんのか?」

 螢一は心配そうな瞳で仰向けのスクルドを見たが、スクルドはそっと目を伏せ、大きくうなづいただけであった。もはや説得は不可能らしい。了承の言葉以外何を言おうが、今のスクルドは聞く耳を持たないだろう。

 覚悟を決めなければいけないのは螢一とて同じであった。

 夕べに続き、またしても最愛のベルダンディーを裏切ろうとしている。

 まして今夜はスクルドの初めてを遂げさせようとしているのだ…。

 姉と交わり、妹のヴァージンを終わらせてなおベルダンディーと親しくできる資格などあるのだろうか。

「自分の気持ちを信じてみて…。」

 思い惑っているうち、ふいにスクルドはそう言った。

「あたしのこと、嫌いじゃないからここまでしてくれたんでしょ…?だったらあともう少しだけ…あたしの気持ちに応えて。螢一は悪いことしてない。わかるよ。くれぐれも断っておくけど、あたしだって女神なんだからね?」

「スクルド…」

「螢一が邪な気持ちを持ってたとしたら…あたし、こんなこと絶対してない。」

 スクルドにそう言われ、螢一は自分自身に問いかけてみた。

 しかし答えはひとつと決まっていた。

 この胸を占拠しているスクルドへの愛しさはウソなんかではない。彼女と交わることに対する都合のいい口実なんかでは絶対にない。

 ウルドとの事にしても、間違っても性欲だけでそうしたのでは…彼女を劣情の処理道具として利用したのではなかった。三人の女神に誓ってもいい。

 彼女達に抱いた愛しさは間違いなく本物なのだ。

「じゃあ…本当にいいんだな、スクルド…?」

「うん…。」

 見つめ合ってうなづく。螢一もスクルドも、自分の気持ちを信じることにしたのだ。

 螢一は小箱から細長い袋をひとつ取り出し、ぴっと破いて中からピンク色の薄膜を取り出した。実際に装着するのは初めてだが、要領はわかっている。萎える様子を見せないペニスの先端に、できるだけ空気が入らないように気を付けながら当てがい、シュル、シュル…と引き下げてゆく。

「これでよし、と。ふぅ、なんか窮屈な感じ…。」

 キチンと根本まで押し下げると、ペニスは潤った淡いヴェールにしっかり包み込まれてしまった。思ったよりも簡単なものだが、圧迫感がどうにも落ち着かない。

 装着の一部始終を見つめていたスクルドは、そっと手を伸ばして指で具合を確かめてみた。先端の精液溜まりを指先で摘んでみたりする。

「なるほどね、これで精子の子宮への侵入を阻むわけだ。でもこれじゃあ直接擦れ合うわけじゃあないから、刺激による快感は少ないんじゃないのかな?」

「う〜ん、どうなんだろう?つけてしたことってないから…」

 螢一の言葉の中には、彼自身に対してあらぬ誤解を招くような部分があったが、まぎれもない事実である。とはいえ夕べの初体験が直接挿入した、というだけの話だ。

「じゃあ螢一、お願い…。」

「ああ…できるだけそおっとするからな?」

「当たり前でしょ、デリカシーがないんだから…」

「悪かったねぇ…」

 スクルドは螢一から顔を背けつつ、ゆっくりではあるが大きく脚を開き、腰を少しだけ浮かせた。螢一はスクルドの両脚に手を添えて完全なM字開脚にし、濡れそぼった女性の裂け目を丸見えにしてしまう。

「だ、ダメッ!!見ちゃダメッ!!」

「な、なんだよそれは…。」

「見なくてもわかるでしょ!?とにかく見ちゃダメ!!」

 照れくさくてならず、ぷい、とふくれっつらで横を向いてしまう。スクルドは両手で女の子の熱い割れ目を覆い隠してしまった。

 自分でもわかるのだが、割れ目どころか裂け目までぱっくり開いてしまっている。そっと覗かれただけで奥の奥まで見せてしまうことになるだろう。

 親しい螢一になにもかもを見られてしまうのかと思うと、自分で求めておきながらいてもたってもいられなくなったのだ。どれだけ身体がうずいても、恥ずかしいものはやはり恥ずかしい。

「…していいのかダメなのか、ハッキリしてくれよぉ…。」

「…だって恥ずかしいんだもん…。」

「さっき言ってたぜ?スクルドのおまんこ、ウルドよりもキレイなんだろ?だったらどこにも恥ずかしがる理由なんてないじゃないか。さ、自分で大きく開いて見せて…。スクルドのエッチなおまんこ、オレに見せてくれ…。」

「…け、けいいちのヘンタイッ!お、おまんこだなんてっ、う、ううっ…!」

 ウルド同様、淫らな言葉に恥じらうスクルド。螢一は彼女の両脚の間に進み、のしかかるようにしながら…再びスクルドの聖痕にキスした。

「そ、そこだめえ…っ!!いま、そこにキスされたら、あたしっ…!!」

「見せて、スクルドのおまんこ見せて…でないと…もっと強く…!」

ちゅうっ…。

「やっ!やあっ!あああああっっ!!」

 狂おしいまでに鳴き叫ぶと、スクルドは強く身震いしてのけぞり…覆い隠す両手の奥からびちゅっと愛液を噴出させた。ぼっ…と顔が真っ赤になる。スクルドは聖痕にキスされて達してしまったのだ。

 ぽた、ぽた、とスクルドの両手の指から放ったばかりの愛液が滴る。スクルドは荒い息を繰り返しながら、螢一の下でくったりと姿勢を元に戻してしまった。

 螢一はスクルドにのしかかったまま、彼女の燃えような体温を胸いっぱいに感じた。汗で湿った肌から湯気がのぼりそうなほどに火照っている。色白な身体は温泉上がりのように真っ赤であった。

「スクルド…ちゅ、ん…」

「ん、む…けいい、ち…」

 唇を塞いで正気を戻させる。絶頂は思ったより浅かったようで、スクルドの意識はハッキリとしていた。

「いま、イッたの?」

「うん…」

「すぐできる?」

「たぶん…」

 ねちっこく抱き締め合い、口づけを交わしながら短い会話を重ねる。ごろ、ごろ、と熱を伝え合うように転がり、もつれるようにキスを続ける。互いが愛しくてならなくなっていた。

「けいいち…好き、好きだよぉ…」

「スクルド、お前…」

 夢見るような表情でスクルドはそうつぶやいていた。螢一は四つん這いになって彼女から身体を離し、真上からスクルドの瞳を覗き込んで失語してしまう。

「好き…大好き…」

「仙太郎のことはどうすんだよ、それにお前、ベルダンディーのこと…」

「…きっとあたし、混乱してるんだと思う…。だからこれから言うのは予想外の言葉。」

 淡い恋心を抱いている少年の名を…敬愛する姉の名を出されてもスクルドはひるまない。すう、はああ…と深呼吸をひとつ、真っ直ぐに螢一を見た。

「あたし、螢一が好き。せめて今夜だけ…恋人になりたい。螢一だけの女神になりたい…。」

「スクルド…」

「こんな気持ち、自分でも信じられないよ…螢一なんて大嫌いだったのに…。でももう待てないの、本当の恋人が現れるまで待ってらんないのっ!優しいお兄ちゃん、じゃもう満足できない。お姉様には悪いと思うけど…螢一のその優しさ、今夜だけでも独り占めしたいのっ!」

 思い詰めた果てに生まれた気持ちを…スクルドは気取ることなく告白した。今なによりも螢一が欲しい。螢一の温もりに、無窮の優しさに触れていたい…。

 螢一はスクルドの頬をゆっくり撫でながら、小さくうなづいて微笑した。スクルドの募り募った切実なる想いが痛いほどに伝わってきたからだ。そこまで求められたのなら…応えられるだけ、応えてあげたい。

「そんなにまで…光栄の極みだよ、スクルド…」

「けいいち…」

ちゅっ…。

 唇が重なり合うと…スクルドは再び両脚をM字開脚に拡げた。今度はしおらしく両手の指を割れ目にくいこませ、むっちりした柔肉を健気にくつろがせる。恥ずかしさや照れくささは不思議なほどに感じなくなっていた。むしろ積極的に螢一に差し出したい気分であった。

 充血した粘膜状の濃桃肉が螢一の目の前で露わにされる。スクルドの指は深く、濡れた裂け目をもこじ開け…儚げな膣口を剥き出していた。

 怯えたクリトリスがひくっ、ひくっと震えるたびに処女膜の奥から愛液が滲み、うっすらとうぶ毛に覆われた恥丘へと流れてゆく。美少女のあられもない姿に螢一は生唾を飲んだ。コンドームに納まったペニスがはち切れんばかりに膨張を示す。

「じゃあ…するよ…?」

「…うん…!」

 スクルドの最終承認を受け、螢一はペニスの先端を、ぷちゅ…と膣口にあてがった。入り口はあまりに小さく、螢一自身も入るのかどうか不安に思ってしまうほどだ。

 それでもスクルドは覚悟ができているようで、螢一が両手をついて身体を支えると裂け目を割り開いたままの体勢できつく目を閉じ、破瓜の瞬間に備えた。

 螢一はいきなり腰を突き入れようとはせず、引力に任せて身体を寄せようと動いた。処女膜全体にじんわりと押し広げようとする外圧がかかる。

「いたっ!痛いっ!!」

「ほら、やっぱり痛いって…。スクルド、まだムリだよ…もうやめとこうよ。」

 半ば予想していた反応に、腰を引き戻した螢一はスクルドが思わずこぼした涙を親指で拭いながらささやきかけた。これ以上痛がる姿を見るのは忍びない。

 自分のサイズが特別大きいと自負しているわけでもないが、スクルドの性器とは歴然とした大人と子供の差があった。これだけサイズが違っているのを目の当たりにすると、スクルドの破瓜に伴う激痛がいかほどのものなのか想像に容易い。

「…大丈夫、大丈夫だから続けて!今のは、その…ビックリしただけよっ!」

 スクルドは気丈にもそう言った。そのわりに身体は性器どうしの密着を解き、十センチほども前方にいざっている。どう考えても強がりであった。

「ホントにホントかよ…?」

「ホントにホントなのっ!早くしてっ!!ゆっくりするからダメなのよ、もう一息に根本まで押し込んでっ!!」

 先程の意見を百八十度翻したスクルドであったが…螢一がそっと進み出、あらためて挿入を試みても結果は同じであった。身体が性欲よりも激痛による反応を選んでしまうのである。

 スクルドは螢一を受け入れようとしない自分自身に歯噛みして悔し涙を流した。

「…悔しいっ!なんでこんなに痛いの!?ウルドは痛くなかったの!?」

「ウルドは…前にしたことあるって言ってたから…。」

「…ウルドも初めはこんなに痛かったのかな…」

「たぶん…としか言えない。でも気にするなよ、スクルドだってそのうちできるようになるから…。こんなことは焦ってするものじゃないよ。」

 初めての結合を断念したスクルドは、ぺったりおしりをつけたお姉さん座りに起き上がってえぐえぐ泣きじゃくった。螢一も彼女に並んで座り、抱き寄せるようにしながら片手で頭を撫でてやる。

 大人の女性として見てもらいたいプライド。

 至高の快感を得たいという欲求。

 自分に対して向けられる、好意よりもはるかに暖かな愛情。

 そんなスクルドの気持ちは彼女の言動やしぐさはおろか、聖痕や唇を介してまで伝わってきている。それらは胸が痛むほど強く、螢一には感じ取ることができた。

 しかしスクルドにはまだまだ成長の余地があるのだ。様々な経験を踏む時間的余裕だってある。螢一の常識で考えれば、身体を求めるには彼女は若すぎた。

「早く大人になりたい。螢一を受け入れられる身体になりたい。」

 頭を撫でられているうち、高ぶった気持ちがおさまってきたのかスクルドは確かな口調でそう言った。螢一は笑いかけながら彼女の頭をくしゃくしゃ撫でる。

「心配いらないって!育ち盛りだからあっというまだよ。そのうちベルダンディーやウルドにだって負けないプロポーションが身に付くって。はは、まぁ…もっともその頃にはオレよりいい男が見つかってるだろうけどね。」

「…ありがとう。慰めでも嬉しい…」

 そう言ったスクルドは…ぱっと身を翻すなり、螢一に口づけた。頭を抱きかかえて深く密着し、積極的に舌を差し入れてくる。

「んっ、んんっ…!んっ!んむーっ!?」

 不意を突かれたキスに螢一の方が戸惑ってしまう。そしてその戸惑いは…すっかり萎えてコンドームも外したペニスを強く握られることで激しさを増した。

「…す、スクルド!?」

「…螢一の気持ち、嬉しいよ…あたしのこと真剣に考えてくれて…。でもオトナになるまで待てないよっ!螢一と一緒に気持ちよくなりたいっ!」

 甘えた美少女の顔と…乳搾りをするように握ってくる右手に螢一は反応せざるをえなかった。いかに貞操観念の高い男であろうが、これで興奮しなければ異常であろう。

むくっ、くっ、ぐっ…。

「す、スクルドッ…!」

 スクルドの右手の中で螢一のペニスは再び臨戦態勢を整えた。スクルドはガチガチになったペニスをゆっくり前後にしごきながら、螢一の唇に自らの唇を寄せる。発情しきって媚びた表情を見るまい、と螢一は理性を振り絞って目をきつく閉じた。

「けいいち…いいの…。無理矢理でもいいから…乱暴して…!」

ちゅっ…。

 その言葉はスクルドの本心であった。日頃押さえ込んでいた恋愛感情が暴走を始めている。それによる破滅願望の発現であった。

 次の瞬間、スクルドは暴力と呼べるほどの力で布団のうえに押し倒されていた。力任せにねじ伏せられ、パジャマのズボンできつく後ろ手に縛り上げられる。

「いやっ…!」

 そう叫びながらもスクルドの顔は拒んでなどいなかった。むしろ歓喜に満たされた表情である。スクルドの内に潜むマゾッ気は確実なものであった。

 螢一はさらにタンクトップを使ってスクルドに目隠しする。視界がブラックアウトし、得体も知れない不吉な予感にスクルドはうつぶせで打ち震えた。

「あ、はぁ…!けいいちに…けいいちに乱暴されるよぉ…!」

 異常なほど艶めいた声をあげるスクルド。どこから何をされるのかわからない不安で身体中に緊張を張り巡らせ、螢一の次のリアクションを待ちわびる。

ちゅっ。

「ひゃあっ!お、おしりっ!おしりぃっ!」

 螢一は一言も発せずスクルドの真っ白なヒップに口づけした。右手でそのまろやかさを確かめるよう、すべすべと撫でる。柔らかなおしりの手触りは胸に負けないほどよかった。

 そのまま撫で続ける右手を内ももに滑らせると、スクルドは両脚をバタバタさせてよがった。びゅ、と処女膜の奥から搾りたての愛液が噴き出る。

「だめだめえっ!くすぐったいよぉっ!!」

「…立てよ。」

「え、え…?」

 ふいに身体を離し、螢一は命令口調でそう告げた。乱暴される悦楽にぐったりしてしまったスクルドは、力無く声のした方に振り返る。

「立てって言ったんだ。そこの壁に頭をついて、こっちにしりを突き出せ。」

 きつい命令口調でそう指示され、スクルドは支配される快感に身悶えした。歪な笑顔を浮かべながらフラフラと起きあがり、やっとの思いで立ち上がる。

 が、後ろ手に縛り上げられているためにバランスが取れず、畳の上にドサリと転がってしまった。

「何をしてんだよ、さっさと立て!」

「ごめん…」

「ごめん、じゃねえっ!ごめんなさい、だろう!?敬語を使え!」

「ご、ごめんなさいっ!」

 見えない螢一からの怒声にゾクゾクしながらスクルドは慌てて立ち上がった。今度は上手くバランスを保つことができ、壁に頭をついておしりをくいっと突き出す。

「こ、こうですか…?」

 乱暴に挿入される予感に震えながら、スクルドは振り返って尋ねた。返事はなく、その代わりに長い黒髪を横に流され、汗ばんだ両手が強くおしりをつかんでくる。

「ひっ…!」

 そのままおしりの肉を割り開かれると、濡れた舌がスクルドの小さなすぼまりに触れてきた。ぴちゃ、ぴちゃ、と舐められ、舌をとがらせて侵入してこようとする。

「いやっ!だめだめえっ!!お、おしりの穴にそんなことしないでえっ!!」

 泣き叫ぶスクルドであったが、螢一は容赦しなかった。今度は中指をすぼまりに押し当て、ゆっくり緊張を解きほぐすようにぐりぐり圧力をかける。

 やんわりやんわり緊張が解けてゆくスクルドのおしりの穴は、やがて螢一の中指を第一関節まで受け入れてしまった。異物の侵入にスクルドは敏感な反応を示し、きゅきゅっとおしりの穴を強くすぼませる。

「すぼめてもダメだ。このまま入ってくぜ…?」

「だめだめえ…!抜いてぇ…!あふっ!!」

 スクルドの予想に反して中指はあっさり引き抜かれてしまった。すぽ、とおしりの穴を解放されたときも、スクルドはきゅんっとおしりの穴をすぼませてしまう。

「じゃあここならいいんだな…?」

「あ…」

 螢一が低い声でつぶやくと、今度は膣口に小指があてがわれた。返事も待たず、小指の先はチュヌ、と濡れた内側に潜り込んでしまう。温かくて、狭くて、襞が高い…。

「螢一、待って!ダメ!!指じゃイヤ!」

「なんならいいんだ?なにをどこに入れて欲しいんだよ?」

「そ、それは…」

「言えないのか?言えるまで小指は止めないぞ?」

 ずぷ、ずぶ、と小指がどんどん埋まってゆく。処女膜がピリピリ痛い。スクルドは激しくイヤイヤしながら謝った。

「ごめんなさい、言いますっ!言いますから指はやめてえっ!!」

「よぉし、言ってみな?」

 小指は第二関節まで埋まったところで侵入を中断した。膣口が小指をヒクヒクしながら締め付けるのがわかる。スクルドは焦燥と羞恥に掻き乱され、目隠しのタンクトップからぽろぽろ涙をこぼしつつ…

「あ、アソコに…け、けいいちのを…」

「アソコってなんだ?それに、オレのなんなんだよ?」

「あ、あああっ!!だめ、指曲げちゃだめえっ!!」

 意地悪く言いながら、螢一は埋め込んだ小指の先をくいっと曲げた。敏感に反応してよがるスクルド。

「お、おまんこに…」

…ぎゅっ。

「けいいちの…ぺ、ペニスを…」

…きゅきゅっ。

「入れてください…!」

…ぎゅうっ、ぷじゅ…。

 スクルドがはしたない単語を口にするたびにヴァギナも同調して恥じらい、螢一の小指は小気味よく締め付けた。雫が隙間から溢れると、内側の温もりは熱に変わってゆく。

「わかった。じゃあお望み通り、してやるよ!」

 にちゅ、と糸を引かせながら、螢一は小指をスクルドから引き抜いた。せつなさからの開放感にスクルドが一息つくいとまもなく、あらためてヒップが両手でわしづかまれる。

 とうとう奪われる。今度は否応なく…。

 スクルドは耐え難い痛みに備え、きゅっと身を強張らせた。目隠しをされているために一層恐怖と期待が膨れ上がる。

ぬ、ち…。

 ガチガチに張りつめたペニスが濃桃肉の裂け目に真っ直ぐ割り込んできた。先端は膣口を探り当て、処女膜に狙いが定められる。なにげなく腰を突き出すだけでスクルドの純潔は螢一のものになってしまうだろう。

 そこでスクルドはあることを思いだし、慌てて振り返って叫んだ。

「ま、待ってください!コンドームつけて…!ひ、避妊してくださいっ!!」

「関係ないね。」

 背後からよこされたのは永久凍土もかくやと思しき無情な返事であった。スクルドは絶望感に打ちひしがれながらも、精一杯の力でかぶりを振った。

「だめ、だめですぅ…!あかちゃんできちゃうからぁ…どうか、どうかお願いします!避妊してください…!」

「…ウソだよ、乱暴してごめんね、スクルド…。」

 そのとき耳元で聞こえた声は…普段の優しい螢一の声であった。拍子を抜かれた瞬間、股間でペニスがズルッ、と動く。

「ひっ…あれ…?」

「…擦れるだけでも気持ちいいハズだよ…?もう少しまっすぐ立って…。」

 螢一のペニスは処女膜を突き破ってはいなかった。狭い膣内に侵入してはいなかった。

 長太い全長は裂け目にそってぴったりあてがわれ、ヌル、ヌル、と柔肉を擦るだけである。螢一は挿入しなかったのだ。

「どうしてっ…」

「痛がるスクルドより…気持ちよくなってるスクルドが見たいからね。」

 反論しかけたスクルドであったが、背後で微笑んだ様子の螢一の言葉にチクン、と胸が痛み、言葉を続けることができなくなった。目隠しの奥から…今度は温かい嬉し涙がぽろぽろこぼれ落ちてくる。

「ごめんね、最後までごめんね、けいいちっ…!」

「いいんだよ、謝ることなんてないよ…。」

 泣きじゃくりながらスクルドは腰を戻し、直立の姿勢になって螢一のペニスを太ももの間に挟み込んだ。熱くて太い異物感が落ち着かず、膝をモジモジ擦り寄せてしまう。

「動くね…。」

「ん…。」

 螢一はスクルドから戒めと目隠しを解き、背後から乳房を両手にして静かにグラインドを開始した。

 太ももと裂け目に包まれたペニスが…ぬりゅ、ぬりゅ、とデリケートな濃桃肉を擦ってゆく。先端とくびれがスクルドのクリトリスを直接弾き、容赦もない快感を与えて彼女をよがらせた。スクルドは壁に両手をつき、くっと爪をくいこませる。

「あはぁっ!気持ちいい…気持ちいい…!」

「はあ…スクルド…身体、すっごい熱いよ、感じてるんだろ…?」

「うん…螢一の、擦れてるもん…身体じゅう、ピリピリしてくる…。あそこも、胸も、すっごい気持ちいいのっ!」

「オレも気持ちいいよ…どんどんヌルヌルになってく…!」

 ささやかな乳房を押しこねるようにされながら、スクルドはどんどん高ぶっていった。昨日一人で慰めた以上に急激な快感が、安らげる心地よさが…ペニスが一回往復するたびに身体全体に拡がってゆく。立っていられなくなりそうだった。

 螢一もスクルドの素股で擦られながら大きな快感を得ていた。ぺた、ぺた、とおしりとへそをぶつけながら夢中で美少女の内ももを確かめる。太ももも裂け目もせつなさが凝縮されているかのように熱い。

 ウルドの膣内ほどの快適さはないが、幼い女神と淫行にふけっている…スクルドと疑似性交を重ねているという犯罪的な興奮は違う意味で螢一を高ぶらせた。スクルドの小さな身体を持ち上げんばかりにペニスは猛々しくそそり立とうとする。

 スクルドの乳房もまた絶品であった。ぷにゃぷにゃと揉みしだく乳房は薄く、柔らかで…すぐ下に彼女の肋骨を確かめることができる。しっとりと汗ばんだ柔肌に手の平を当てると…ドキドキと激しくビートを刻む心音も感じられた。

「スクルド…かわいいだけじゃないね、素敵だよ…」

「あん、やだ…急に、何言って…」

「ホントだよ…ウソなんてついてない…」

「…螢一だって素敵だよ、かっこいいよ…!ね、キスして…」

「いいよ…ちょっと身体ひねって…お、そうそう…」

ちゅっ、ぷちゅ、ちゅうっ…むちゅ、ぷぁ、ちゅ…。

 スクルドは上体をひねるようにし、左腕を螢一の肩に掛けて狂おしくキスした。唇を押し当て、ついばみ、舌を絡めて…唾液を交わし合う。もう螢一が愛しくてならない。自らも螢一の動きに追随するよう、ゆっくり腰を振り始める。

 憑かれたようにキスしながら、螢一は左手でスクルドの身体を撫で回した。乳房から脇腹、へそ…。きめ細かな女神の肌を楽しむようにごしごし撫でる。

 撫で回してゆくほどに、いかにスクルドがちっちゃな身体をしているかがわかった。背後から抱き締めれば包み込まれて見えなくなってしまうかのように小さい。

 小さいのは紛れもない事実であり、螢一自身は心持ち中腰になるようにして動いているのだが…スクルドは健気にも精一杯つま先立ちして螢一に合わせてくれていたのだ。

「スクルド、立ったままで大丈夫か…?」

「だいじょうぶだよ、この方が…けいいち、強く感じるから…」

 今さらながらそのことに気付いた螢一に、スクルドは間近で強がる笑顔を見せた。天真爛漫そのものの笑顔…。今度は螢一がたまらなくなり、夢中で彼女の唇を塞ぐ。汗まみれの身体どうしを擦り合わせるように愛撫の手を一層強めた。

 右手で桜餅のように火照ったスクルドの乳房を揉みつつ、アクセントを添えるツンツンの乳首を指先で摘む。ころんころん弾くたびにスクルドの瞳は甘えんぼのそれに変わり、惚けたように愛撫に浸った。

 螢一は唇を離すとスクルドの腋の下に顔を埋め、汗ばんだ部分に舌を踊らせた。スクルドの汗を舐めとるたびに頬が熱くなってゆく。甘く香り立つようなスクルドのフェロモンはすでに大人の女性のそれであった。仙太郎が間近で嗅いだりしたら、翌日から真っ直ぐに顔を合わせられなくなるであろうことが容易く想像できる。

「わ、わきのしたなんてっ…!け、けいいちっ!や、あああ…っ!!」

 スクルドは思いも寄らなかった愛撫で二の腕にうっすらと鳥肌を立てた。口元からよだれをこぼし、普段よりも張りつめた高い声で鳴く。きゅっ、きゅっと腰の奥から振動を伝わらせ、擦れ合う性器の間にぴちゃぴちゃ愛液を漏らした。

「か、感じちゃうよぉ…!もっと、もっとしてっ!」

すり、すり…。

 姿勢を戻し、壁に両手をついてよがるスクルドは、螢一のグラインドをより強く感じようとみるみる膝を擦り寄せていった。スラリと細いスクルドの太ももであったが、さすがに隙間が狭くなる。そのぶんペニスが受ける刺激も増すこととなり、螢一はスクルドの腰に両手をかけ、あごをそらしてつらそうに目を閉じた。

 狭まってはいたものの、スクルドが漏らした愛情の潤滑油のおかげで太い先端部分はニチュ、ニヂュッと粘つく音を響かせながら、彼女の恥丘の下で出たり入ったりを繰り返している。擦れ合った愛液は細かな泡状になり、白っぽくなってスクルドの膝まで流れ落ちた。

「け、けいいちっ!もう立ってられないよぉっ!」

「もうちょっと頑張って!最後まで頑張らないと、もうやめちゃうぞ!?」

「だって、気持ちよすぎるんだもんっ!!昨日みたいになっちゃう、真っ白になっちゃうよおっ!あ、あ、あっ、け、けいいち、けえいちぃっ!!」

 スクルドは激しく身をよじり、膝をモジモジさせながら絶叫した。汗と涙を滴らせながら無意識に腰を突き出す。螢一はそんなスクルドの腰にしっかと指を食い込ませ、ベチッ、バチッ、ベチュッ、と怒濤の勢いで下腹を打ち付けた。ペニスがちぎれ落ちてしまうほどの快感が幹から先端にかけ、いっぱいに満ちてゆく…。

「ああ、ああっスクルドッ!出る、出るっ…!!」

「け、いいち…あ、ひ…ひぃっ…!!」

 スクルドの意識の中に真っ白な大津波が襲いかかり…一瞬で何もかもをさらい尽くしてしまう。次の瞬間、膣の奥の奥に火傷しそうなほどの熱が放り込まれたような気がした。

「あ、ついっっ…!!」

ボッ…。

 スクルドの小さな身体がビクンッと跳ねた瞬間、うなだれた泣きベソ顔は燃えるように真っ赤になり、随喜の涙をポタタッと落とした。引きつったように締まった膣内からビヂュッ、と音立てて最後の愛液が噴出される。幼い女神の射精であった。

「あ、ああっ、あああ…」

 わななくようにか細い声でうめくスクルド。カリ、カリ…と壁を引っ掻く。小さな身体は燃えるように熱い。つま先立ちの両脚はピインと張りつめ…彼女がイキまくっている最中であることを螢一に示していた。

 そして…スクルドは絶大な快感に溺れきってしまった。

ぴちゃ、ぴちゃぴちゃぴちゃ…。

「うわぁ…!」

 ペニスから両脚からが熱く濡れてくるのを感じ、螢一は何が起こっているのかを悟って驚きを声にしていた。

 スクルドは立ったまま失禁してしまったのだ。

 絶頂に飲み込まれたままのスクルドは堪えようとも恥じらおうともせず、それこそ思う様、漏らしたいだけ漏らし…すっかり二人の下半身をびちょびちょにしてしまった。ハーゲンダッツとオープラスによる熱い雫が畳の上で匂いを放つ染みになる。

「はわ、ああっ!スクルドッ!スクルド…ッ!!」

びゅうっ!!びゅびゅっ!どぷ、どぷ…

 女神の失禁に次いで螢一も達した。精製したての熱い白濁が力強く迸るたび、快感が体内で激しくスパークを起こす。どくん、どくん、と二度、三度…。

 今宵二度目の射精にもかかわらず、最初よりも量が多いような気がする。

 耐えに耐えた後に放たれた精液は放物線を描いて壁を何度も汚し、勢いを失った残りはポタポタ畳に落ちてスクルドの雫と混じった。脱力して壁に折り重なった二人を見ると、まるでペニスの生えたスクルドが射精したかのようにも見える。

「…イッた…スクルド、と…」

 螢一は背後からスクルドの身体を抱き締めながら感動に震えていた。

 口中で達した時よりも快感が強い。間違いなく二度目の方が感じ過ぎていた。

 身震いしながら射精の余韻に浸っていた螢一であったが、スクルドを抱き締めたままその身を引力に任せると…ドサッ、と背中から布団の上に倒れ込んだ。

はあっ、はあっ、はあっ…はあっ…。

 汗まみれのまま、二人して荒ぶった呼吸を繰り返す。

 熱い身体。熱い汗。熱い鼓動。熱い快感…。

 螢一は一身にスクルドを感じた。左手の下で心臓がバクバクしているのを…。右手を乗せた胸がふよふよ上下しているのをぼやけたような意識で確かめる。愛しさとともに嬉しさが胸の奥に湧いてきた。

 スクルドに乗っかられたままであったが、さして重くはなかった。なによりも気持ちよさだけがリアルに感じられ…そのためか、あれだけ盛大に放ったはずのペニスはスクルドの太ももの狭間でまだ勃起を維持したままであった。真上を向かされた先端から、なおも精液が滲み出てくる。

「…けいいち…」

 そのうち意識を取り戻したスクルドは、身体をよじって螢一の上から降りた。飛びつくように螢一に寄り添い、寝そべった肩に手をかけて唇を押し当ててくる。螢一は拒むはずもなく、労るように彼女の黒髪を、背中を撫でてあげた。

「螢一の部屋、汚しちゃった…。ごめんね。」

「いいよ、そんなの…。気持ちよかったかい?」

「ん、とっても…。ふふ、今もまだ気持ちいいんだよ?螢一にこうされて…ふしぎ…。」

「ふしぎ、かぁ…。」

「ね、もっとキスしたい…」

「はいはい…」

 いくつかのおしゃべりを交わし、笑顔を見せ合うとスクルドはしつこいほどにキスをせがんできた。苦笑混じりに応じる螢一。スクルドはすっかりキスに馴染んでしまったようだ。

「おいで…」

「ん…」

 キスしながら螢一はスクルドに右腕で腕枕し、そっと彼女の頭を包み込む。

 あの時手荒に振る舞ったのは、あくまで演技であったらしい。事が終わった後の螢一はいつもとかわらず、ひたむきに憧れていた優しさを以て自分を迎えてくれている…。

 スクルドはもっともっと螢一のことが好きになってしまいそうだった。ベルダンディーには悪いが、恋のライバルとして名乗り出たくなってしまう。

 そんな思いを抱くスクルドに気付く風もなく、螢一はスクルドの柔らかな前髪をいじってから、敏感な聖痕を指先でくすぐった。ご満悦の表情でイヤイヤするスクルド。

「螢一、今夜のこと、誰にも秘密だからね?」

「わかってる。スクルドこそ、ついうっかり、なんてダメだからな?」

「わかってるわよ、もう…!」

 そう言うとスクルドは、ぷう、と頬を膨らませてみせるのだが…すぐにまた甘えた顔に戻ってキスを求めてくる。いつになったら解放してくれるのかな、と困惑しながらも…螢一はついつい満更でもない顔をして応じてしまう。

 一瞬だけ薄目を開けて覗き見たのだが…スクルドはキスをしている間じゅう、本当に安らいだ顔をしているのだ。安心しきった、とびきりかわいらしい笑顔を…。

 螢一はスクルドがキスに夢中になる理由がなんとなくわかったような気がして、少々むずがゆくなるのであった。

 

 あれからスクルドが、いつ部屋に戻ったのか螢一は覚えていなかった。

 枕元の目覚まし時計が午前七時の訪れをベルの乱打で知らせたとき、スクルドの姿はすでになかった。

 寝ぼけ眼を擦りながら、障子ごしの朝の光で明るい室内を見回す。

 まだなんとなく湿っぽい室内には、夕べの光景が夢ではなかったことを諭すかのように女性の匂いが残っていた。相当長い黒髪も何本か布団の上で見つかる。

 そういえば、と室内の一点を見る。そこは二人が狂ったように身体を重ね、様々な雫を滴らせた場所であった。が、汚したはずの畳は美しく、代わりに見慣れぬ機械がひとつ置いてあった。

 それはいつぞやスクルドが発明した吸引マシン『キュポンバキュームZ』という液体回収機であった。畳の上の染みはすっかり失せていたが、鼻を近づけると淫らな匂いはそこかしこに残っていた。

 機械の下にはなにやら走り書きも一枚置いてあった。

『おはよ。できるだけキレイにしておいたから、後は4649!』

と記されていて、その裏には、

『P.S 夕べは39!K1、気持ちよかったよ!』

とまで書いてあった。夕べのスクルドの乱れ様、甘え様を思いだし、微笑してしまう。

 そんな時であった。トタトタトタ、と誰かが廊下を走ってきて、ノックもなしに部屋の障子戸を開いた。

 元気よく障子戸を開けたのはスクルドであった。逆光の中、満面の笑顔がたちまち照れ笑いに変わる。

「スクルド…」

「あ…お、おはよ…。あの…そこに書いてあるとおり…。」

 スクルドは少しうつむきながら螢一を見つめ、両手で指をモジモジさせながらポソリとつぶやいた。早起きしてベルダンディーと朝食の準備をしていたらしく、ピンクのセーラーシャツと白いスカートの上に、フリルがいくつもついたエプロンを身につけている。

 螢一もスクルド同様、真っ直ぐに相手を見ることができなかった。夕べの彼女との記憶は、ささやいた言葉の一語一句に至るまで確かなのである。

 あれだけ夢中に抱き合い、キスしあったのに…今朝はもう照れくさくてならない。全裸のままであることにもようやく気づき、慌ててタオルケットで前を隠す。

 黙り込む二人を笑うように…ふわぅ、とそよ風がよどんだ室内の空気を押し出した。

「あ、あのっ、朝ご飯できたからっ…早く着替えてきてよねっ!今日のおみおつけはあたしの手作りなんだからっ!」

 そよ風に促されたようにスクルドは早口にそれだけ言うと、真っ赤な顔を背けるようにして来た道を駆け戻っていった。

 スクルドはどうやら自分を起こしに来てくれたらしかったが…そうだとしたら悪いことをしたな、と螢一は思った。どうにもばつが悪く、頬を指でカリカリかく。

 どのみち、あまり遅れたらみんなに悪い。とりあえずタンクトップとトランクスを身につけると、螢一は立ち上がって部屋を出た。

「あれ…?」

 部屋を出てすぐの曲がり角で…スクルドは螢一が来るのを待っているかのように佇んでいた。角の柱に背中を預け、後ろ手に指を組んでうつむいている。足音を忍ばせた螢一は素早く左手を伸ばし、ぽん、と彼女の肩に手を置いた。

「スクルド、あらためておはよう。」

「あ、お、おはよ、螢一…!ゆうべは、あの…あ、ありがと…。それで、えっと…」

 クルリと振り返り、ぱっと笑顔を開かせるスクルドであったが…続けようとする言葉にはどうしてもはにかみがこもるらしく、照れ隠しに小さく舌を出してみたりする。

「書き置き残してたんだけど…やっぱりね、おはようのキスしてから、言葉で言いたかったし…それで、起こしにいったんだけど…」

 しどろもどろで真っ赤になりながらも、スクルドはそう言った。そしてそのまま目を閉じ…螢一に唇を差し出す。

「ね、今のうち、おはようのキスさせて…」

「…させてって…スクルドからせがんでるんじゃないか…。」

ちゅっ…。

 苦笑しながらも、小さな女神のおねだりに応じてあげる螢一であった…。
 



出典:不明
リンク:不明

(・∀・): 37 | (・A・): 42

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