キャバ嬢を愛して4
2009/11/07 11:37 登録: えっちな名無しさん
「そろそろさ、Eさんってのやめようよ」
「ああ、そうね。じゃあ、なんて呼ぼう?」
気が付けば寒さもゆるみ、春一番の吹くころ。
俺と千佳の交際は順調に続いていました。
毎週、1〜2回千佳と呑んで、2週間に1回ぐらい田上さんの付き合いで『春菜』に会って。
あれ以来、まだ千佳とセックスする機会はありませんでしたが、それはそれ。
獣のようだった行為の反省や、「セックスが苦手」な千佳への拝領もあって、
そこまで千佳を抱くことそのものに執着はしていませんでした。
「んー。普通にいくと、フミくんとか?」
俺の名前の代表的な渾名です。
「それだと、元奥さんと同じ呼び方なんで、遠慮したい」
「そっかー。じゃあ、ふっくん」
「……それは呼ばれたことないな」
「じゃ、それでいこ。ふっくん」
「うーん、耳慣れない響きだな」
「そのうち慣れるよ」
とかなんとか。
千佳と呑みながらの会話は中身があるんだか、ないんだか。いつもこんな感じです。
「Eさんとふっくん。これでお客さんと彼氏の立場使い分けできるんじゃない?」
「……そんなもんかねえ」
「そそ。『春菜』の素敵なお客さんのEさんと、千佳の大事な彼氏ふっくん。これでどうよ?」
「んじゃ、それで……」
どうよ、といわれても、正直困ってしまいますが、どっちも『Eさん』よりはずいぶんマシな気がしてしまったのは事実です。
「ところで、来週末なんだけど、やっぱり『春菜』さん?」
「そうね。金、土は稼ぎ時だしねー」
俺と付き合うようになって、千佳が『春菜』になる頻度はずいぶんと減りました。
これまで週4日だったのが、週末の2日のみになっていました。
「今週、休まない? たまにはご一緒に旅行でもどう?」
「うーん。そうね……」
なんとも歯切れが悪い返事です。
絶対無理だった場合、即答で断わるのが千佳のパターンですから、可能性は大、ということだと判断しました。
「休むのはいいけど。ちょっとお金がないんで、旅行は……ね」
「気にしなくていいよ。女誘うのに旅費出させるわけないじゃん」
「そっか……。んじゃ、甘えちゃおうかな」
そんなやり取りをしながら、ふと、気になったことがありました。
「なあ。千佳がキャバ辞められない理由って、 やっぱ金?」
「ああ……。そうね。説明しないとね」
いつも疑問に思っていても、ずっと聞けなかったことでした。
「まあ、見てればわかると思うけど、私って貧乏なの」
たしかに千佳は「夜の女」にしては、身につけるものやバッグなどが地味な女でした。
もちろん、まったくブランド品を持っていない、というわけではありませんが、普通のOLに比べても、アクセ類など圧倒的に少ないのです。
しかし、安物であろうがなんであろうが、千佳は自分に似合ったものを上手に着こなしているので、あまり気になったことはありません。
少なくとも「貧乏ったらしい」というイメージを与えることはないでしょう。
「……私が20歳の時にお父さんが車で事故起こしてね。交通刑務所に入れられちゃって……。なんだかんだで、借金がいっぱいあるんだ」
「そっか……」
「派遣のお給料だと、自分が暮らすのでいっぱいいっぱいでさ」
寂しそうに自嘲する千佳。
改めて、テーブルの脇に置かれた愛用のビトンのバッグを見ると、それはかなり使い込まれていましたし、
意識すれば、隠れていた「生活の厳しさ」を臭わせるヒントはいくつも見つけられました。
「すまんなあ、嫌なこと聞いて」
「ん。いいってことよ。ホントはもっと早くちゃんと言っとかなきゃいけなかったことだし」
そういうと、千佳は残り少なくなっていた梅酒のロックを一気に呷りました。
「とにかく、千佳さんはお金ないのさ! 酒のませろ!」
そういって、元気な声で梅酒のお代わりを頼む姿は、どこか痛々しさを纏っていました。
「同情とかいらないからね。……ただ、もうちょっと、借金終わるまでは夜働かせてください」
千佳はぴょこっと、コミカルに頭を下げました。
「わかった。そばで見守ってるよ。ただし無理はするな。
……たぶん、金貸すとかそういうの、おまえ嫌だろうからやんないけど、酒とメシぐらいはいつでもおごるぞ」
「ありがと。よくわかってるじゃん」
そういって、お代わりの梅酒もあっさりと飲み干してしまいました。
ぐでんぐでんになった千佳を抱え、家に着いたのは0時前でした。
基本的に酒には強い千佳が、これほど早く酔いつぶれたのははじめてのことです。
ベッドに寝かし、ブラウスのボタンを外し、ベルトを緩めてあげていると、抱きついてきます。
「んー……ふっくん、だいすき〜」
「はいはい。俺もだいすき、だいすき」
「なんだーその言い方は〜!」
完全に酔っぱらいです。
「なんかね、今日あたしエッチなの」
そういって、のしかかってくると、唇をふさがれました。
下から突き上げると長い髪を振り乱して千佳が悶えます。
抱えた腰の細さ、細かく震える骨張った肩、すっぽりと手のひらに収まる小ぶりな胸。
全力で抱きしめると壊れてしまうような線の細さを持ちながら、身体のすべては柔らかな曲線で構成されています。
背も低く、すべてのつくりが小さい。俺はこういった女性が大好きです。
……というと、ロリコンと勘違いされることもありますが、それはまったくの間違いです。
未成熟ゆえ凹凸のない体型とはまったく異なる、「これが完成型」であることを感じさせてくれるスレンダーな身体が大好物なのです。
一見すれば、ロリコンが好む体型といえるかもしれませんが、抱いてみるとそれは紛れもなく27歳の女の肉体です。
濡れすぎる秘部は、確実に男を虜にする術を心得ているし、優しく俺を愛撫する指先の動きにもこれまで経験がにじみ出ています。
「ん……ああ……いいっ……」
「ここがいいのか?」
「そ、そこっ、すごいっ……」
前回のセックスでも、今回も、千佳は艶声を挙げることはあっても、
具体的な単語で快感を表明することはほとんどありません。
例外的に乳首を攻めている時に「きもちいい」ということはあっても、
挿入時は寡黙になり、うめき声のみで反応を示していました。
そんな千佳がついに見せたストレートな反応。ついに見つけ出した弱点。
俺は嬉しくなって、その角度で何度も激しく突き上げます。
「やぁ……やだっ、そこぉ……」
「思いっきり感じろよ」
「ああん、そんな……いやあ……す……ごい……」
「イケそうか?」
「わか、んな……い」
腰を強くつかむと、強制的に上下に揺さぶります。
「あっ……い、く……」
その瞬間、千佳の中がうごめき、とてつもない快感が俺を襲いました。
「はじめてだわ」
俯せでぐったりとしながら、千佳がぼそりと言いました。
「こんなすごいのはじめてだわ」
「身体の相性いいんじゃないの?」
「んー。ふっくんのべつだん大きいわけでもないし、カリ高っていうわけでもないし……」
「……粗チンで悪かったな!」
「あはは。モノじゃなくてやっぱり愛情かな?」
「そこは嘘でも否定しろよ……」
「まあ、いいってことよ」
「よくないっ!」
「いいじゃん。すごい感じたんだから。ホント、こんなのはじめてだわ」
「これで少しはセックスが得意になるんじゃないの?」
「好きになるとは思うけど、得意、っていうのはどうかな? 」
いろいろツッコみたい話ではありましたが、前回のことを思い出し、その話はそこまでで切り上げることにしました。
「ところで、ひとつ提案があるんだが」
「なに?」
「……すぐに、とは言わないが、一緒に住まないか?」
「え?」
千佳の実家は千葉で、都内でひとり暮らしをしていました。
「今日もこれからお互い仕事だろ? いつもそんな感じだ。 いっそ、そばにいてくれると助かるんだが」
それに家賃も浮くだろ? というのは言うのを辞めました。
「今は無理」
なんらかの事情があるのでしょう。いつもの即答でした。
そういえば、千佳の家、行ったことないな。
いろいろ聞きたいことだらけ。でも、結局、なにも聞けていない。
いや、聞きたくないのかもしれません。
身体の距離はこんなに近いのに、心の距離はまだまだ遠いなあ、と思いました。
スタートが既婚の客とキャバ嬢だった、ということもあってか、ここに至っても千佳への接し方に、微妙な遠慮がありました。
それだけではなく、いろいろワケアリらしい千佳の過去に対し、知ることに臆病になっている部分もあったのです。
ついこないだ、信頼していた妻に裏切られた男の、自己防衛本能なのかもしれません。
「まあ、そのうちな。考えてみてくれよ」
そういって、長い髪をかき上げ、額にキスしました。その唇は震えていたかもしれません。
「ごめんなさい……」
ぼそりと言った千佳の言葉が、妙に胸に突き刺さりました。
出典:萌えちゃんねる
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