兄貴

2009/11/22 06:40 登録: えっちな名無しさん

小学校高学年まで虐められっ子だった。

その頃の俺は小学5年にもなるのに身長が女子もふくめてクラスで一番小さかった。
体も小さかったが気も小さい俺はクラスの男子からは勿論女子からも小ばかにされていた。

あだ名も○子○子と女みたいなあだ名で呼ばれて教科書隠されたりとか落書きされたり
まさにやりたい放題にされていた。

当時高校生だった兄はサッカー部で大会とかにもでてる人だった。
僕も兄に憧れてサッカー部に入っていたがそこでも当然ずっと補欠
体格のでかいクラスメイトに敵わず何時もバカにされていた。

有るとき学校で散々虐められて帰り
自分の部屋で一人で泣いていると兄貴がやってきた。
「なんだ○雄また虐められたのか」
「お前はグジグジしてばっかりいるからそんな目にあうんだよ」
「兄ちゃんはデカイからそんなことがいえるんじゃ!」
「あいつ等皆俺よりデカイ奴ばっかりだ!勝てるわけない!」

兄は僕と違って体格はいい方だった。

「サッカーも辞めたいって母さんに言ったらしいな?」
「お前が自分でやりたいって言ったんじゃないのか?」
「サッカー部おっても試合にでれんし・・俺みたいな小さい奴が幾ら練習しても敵うわけ無い」
「母ちゃんないとったぞ・・小さく生んだ私が悪いって」
「お前は自分だけじゃなくて母ちゃんも泣かすのか?」

「小さく生まれたのは俺のせいじゃない!」
「だいたいサッカーなんか無駄だよ!日本代表なんか負けてばっかりだろ!」
「日本人はどうせ頑張ってもWCで優勝なかできん!恥かいてばっかりだ!」
「兄ちゃんもサッカーなんかしてても無駄なんだよ!」

僕は身長が小さいせいで虐められたり満足にサッカーができないと思っていた。
そして小さい自分をせめ小さく生んだ親を恨んでいた。
兄に憧れて始めたサッカーも上手く行かない、全部身長のせいにしていた。

そんな事をまくしたてる僕を兄は怒らずに黙ってみていた。
そして僕がいう事がなくなると静かに話し出した。

「確かに日本のサッカーは弱いかもしれん」
「お前の言うとおり負けることの方が多い、ソレは今のお前と同じかもしれん」
「でも、兄ちゃんは負けてばかりだからこそあの人たちは凄い強い人たちだと思ってる」
「なんでね!負けてばっかりなのに強いはずないやん!」

「負けてばかりなのに諦めないからだ」
「いつか勝てるって信じて、それまで負け続ける事がお前は出来ないだろ?」
「・・・・・・・・・・・」
「あの人たちは信じてるんだよ、いつか勝てるいつか優勝できる」
「お前と同じ負けてばっかりかもしれんが、お前と違って諦めてない」
「お前と同じように日本のサッカーは弱いってバカにする人は多い」
「恵まれた身体能力を他の競技で活かせば活躍できる人は多いかもしれん」
「それでもサッカーで日本代表として負け続けて、それでも諦めんあの人たちは本当に強い人なんだよ」

「強いやつが勝つのは当たり前だ、でも本当に大事なのはそこじゃない」
「負けても負けても諦めん奴がいる事が大事なんだ」
「負けた奴がお前みたいに皆諦めてたら何も成り立たん」
「日本代表の負けは価値の有る負けや、諦めたらいかんという事の証明だ」



「お前に日本代表をバカにする資格は無い」


「お前はどうせ勝てんからサッカーも辞めるし、どうせ勝てっこないから虐められっぱなしだという」
「お前はそんな風にいってるから日本代表みたいに強くなれんのだ」
「喧嘩で負けてもサッカーでまけても良いんだよ、でもいつか勝つって思って諦めんかったら心では負けて無いってことだ」
「お前とクラスの連中の身長差なんか大したことじゃない」
「世界には2メートル近い選手もおるし、そんな選手と比べればはるかに小さい選手もいる」
「お前の身長なんか何の言い訳にもならん」
「お前にたらんのは、身長じゃなくて負けん気だよ」

それから兄は毎日僕の練習に付き合ってくれました。
サッカーだけじゃなくて喧嘩の特訓もしてくれました。
今思うと空手のようなボクシングのような寄せ集めみたいな特訓だったから
兄もそんなに格闘技に詳しいわけじゃなく、本当にただの気休めみたいなもので
はたから見たら凄く馬鹿馬鹿しい特訓だったかもしれません
でも、兄は本当に真剣に相手をしてくれました。
まるで映画ベストキッドの師匠と弟子のように毎日真剣に特訓していました。
そして、学校でどんなに虐められても泣かない決して参ったといわないと誓いました。

サッカーでもクラスでも
相変わらず負けることばかりでしたが
僕は兄に言われた言葉を思い出して
絶対に気持ちで負けた気にならないように頑張りました。

そのうちそんな僕をバカにしていたクラスメイト達も
虐める事がなくなりそれどころか少しずつ認めてくれるようになりました。

中学に入ってからの僕は一転していました。
ソレまで虐められていた自分は何時しか虐める側に立っていました。
調子ついていたのだと思います。
自分でも気がつかないうちにいじめっ子達の仲間の一員になっていて
それまで虐められっぱなしだった自分と逆の立場になって勘違いしていました。
有るときベットの兄と話しててつい、調子に乗って学校の話をしているときに
つい、その時虐めていた子の話をバカにするようにしてしまいました。
すると兄は、静かに言いました。

「○雄、お前を兄ちゃんが特訓したのは、弱い奴と戦うためだったか?」

なんとも寂しい目で僕をみていました。
僕はバカでした・・・しんそこバカでした。
兄にすまないと心底思いました。

兄はガンになっていました。
末期でした。
小学校を卒業する時突然兄から打ち明けられました。
突然の事で意味が解りませんでした。
「あと半年くらいなんだ・・・」

兄を心配させたくない、俺はもう強い男なんだと
そう兄に示したかっただけだったのに
いつの間にか兄をがっかりさせている自分を死ぬほど悔やみました。
僕はサッカーを死ぬほど頑張りました。
兄に見直してもらうにはソレしかないと思いました。

バカみたいに毎日ボールをけり続けていました。
上手くなれるかどうかに関わらず色んな事を試しました。
兄はそんな僕を嬉しそうに応援してくれました。
そんな兄の反応が嬉しくて僕はもっと頑張りました。
相変わらずサッカー部のレギュラーにはなれなかったけれど
全然気になりませんでした。

翌年の春兄が亡くなりました。
余命宣告からさらに半年近く兄は頑張りました。
恐ろしい苦痛のなかそれでも兄は最後まで諦めずに戦い抜きました。

その年の終わり僕は初めて試合にでました。
試合には負けたけれど本当に嬉しかった。

高校でも続けましたいつか絶対に日本代表になってやると
兄に負けないサッカー選手になってやると

もう二度と諦めないと兄と誓いました。
勝つまで負け続ける事が兄との約束だったから

出典:さっきこんな感じの夢をみたのでベットから飛び起きて書き込んだ
リンク:確り

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