不思議とは何だ?4
2009/12/07 13:50 登録: 居栗とリス
演劇部には演技を極めたかもしれないY部長がいた。
彼は毎回必ず舞台に立っただろう。
二年生ながら三年生に引けを取らない。むしろ三年生より上手い。
彼は当然の如く部長のバトンを受け取ったと思う。
私が留年復帰した最初の大会にY部長はキャストとして出た。
だが彼女はキャストにはなれなかった。
だけど裏方で一年生部員を引っ張ってくれた頼もしい存在だった。
その大会後、打ち上げが開催された。一同はあるラーメン店に向かった。
そこで部員たちで美味しくラーメンを食べていた。
のだが私は見てはいけないもの見てしまった。
彼女が先輩の三年に甘えていたのだ。
あぐらをかいた太股に首を添えて気持ちよさそうに目を瞑っていた。
これには拍子抜けした。ただチラッチラッと見てはラーメンを
ズルルとすすった。こんな一面もあるんだね。
律儀、気配りさん、甘えん坊かぁ・・・。いい奥さんになるね。
だけど最初から意識てなかったから何とも思わなかった。
それは私にムーブを起こさなかった。当然と言えば当然かもしれない。
ましてやそんなところを見せられたら大抵は幻滅するだろう。
だけど俺には幻滅も糞もない。いつの間に寛大な気持ちを持っていたのだろう。
クズの俺に。最下層のゴミに。
ただ人間は外見を変えるのは大変だけど中身はすぐに変えられるんだよと潜在意識は語った。
それからやけに彼女が色んな部員の先輩に抱き付いて小さくなるのを見掛ける。
まともな人と捉えていたからギャップが激しい。
それが良いやら悪いのやら、またその行為が良いのやら悪いのやら。
結局判断しなかった。いや、できなかった。
バカだからと言ってしまえばそれで終わりだが、感情が善悪を判断することを許さなかった。
男性はつい理性的に考える。私とて例外ではない。
だがこれはオ○○ー以外で感情に負けた唯一の出来事だった。
それからすぐに次の大会に向けて台本が練られた。
部員たちは台本を必死に書いた。投票の結果、Y部長の台本が選ばれた。部員全員で祝福した。その後オーディションがあった。Y
部長は出ないと公言していた通り出なかった。
ただ演出という演技を教える一番難しい役目をした。
彼女はというと見事合格してた。珍しく楽しそうだった。
もう男には見えない。髪が伸びたのもあるが、雰囲気が完全に変わっていたのだ。
私も心の中で喜び、祝福した。
彼女が瞳をキラキラさせながら台本を黙読していると突然わあっと泣き出した。
彼女は「Yくん・・・」
と泣き声で言う。彼女をモデルにしたU子が彼女の心境を語るシーンだった。
台本のU子「私ね・・・ずっと前からキャストになりたかったの・・・。それを部
長に言ったらね・・・。とても嫌そうな顔をされたの・・・私じゃ無理だよね・・・。」
と女子部員に涙ながらに語るセリフ。
これには私もグッときた。涙が溢れ出てきた。誰にも見えないように背中を向け
てそっと腕で滴を掬った。
それから夏休みに入り、夏季の合宿の日がきた。駅に集合して早速電車に乗り込
む。時がたつほど回りの景色の田舎色が濃くなる。
田舎か。コンビニねえ。くらいにあしらっていた。
泊まるところは昔学校だった場所。確かに古いわ蜘蛛の巣だらけ。
「まるでトトロの森・・・」誰かがそう呟いた気がした。
ここで二泊三日だ。頭がいいM部員がサボッた理由がわかる。
その日の夕食、古びた学校の机を小学生のときのように十個くっつく。
両端にひとつずつ、間に四つ同士が対になる。それが2グループ。
私と部長と彼女は同じグループ。当然部長は上座端の椅子に腰掛ける。
彼女は部長の右側前に座った。彼女の右隣とその前の机は料理を置くところになった。
私はその料理の隣でやや右斜めには彼女が見える席を意図もなくゲットする。
こういうのは早い者勝ちだ。
部員の母親が作った美味しい料理を食べていると
なんか右側から視線感じるな、
と思ったら彼女が私の食べ方を平静な様子で見つめていた。
ドキッとしたが動揺してない振りをした。
なぜか真顔はできず左側を見て友達にニコニコしてしまう。
いつの間にか彼女は彼女の目の前にいる男の食べ方を見ていた。かわいそうに。
ソイツは運悪く大きく輪切りされたトマトと格闘中だった。
横になってて汁がヤバいほど垂れてる。
滑るからかなかなか箸で掬えない。
(ああ神よ。どうかこの男を助けたまえ・・・南無南無。)
効果は今一つ。ソイツは輪切りされたトマトを箸で裂いて持ちやすくした。
(無礼な・・・そして無様な・・・お前が顔を上げたら終わりだ・・・
そう・・下を向いてトマトを口に入れろ・・いいぞ・・・今だ!飲み込め!)
彼女は残酷な天使のような顔をしていた。
その次の日また別の姿を見た。
出典:皆様申し訳ありません
リンク:あなたたちじゃないですよw

(・∀・): 13 | (・A・): 25
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