悪魔のTVショッピング?

2010/03/13 01:25 登録: えっちな名無しさん

『こんばんわー、今日も始まりました深夜の不定期海賊放送テレビショッピング“悪魔の囁き”。
 今夜はここフ○テレビのスタジオをお借りしての放送となりまーす!』
突然聞こえたけたたましい声に、俺は深酒による眠りから強制的に叩き起こされた。
「な、なんだ?」
何事かと思えば、つけっぱなしになっていたテレビの画面に、声の主と思われる少女の顔がこれ以上はないというほどドアップで映っている。
非の打ち所のない完璧な営業スマイル。
ニカっと笑った口元に、随分尖った八重歯が覗く。
というか、八重歯というより、もう立派な牙のようだ。
『初めての皆さんはじめまして、常連の皆さん3ヶ月ほどのご無沙汰でした、今夜も進行を務めますのはもちろん私、悪魔のキッカ』
キッカと名乗った少女が身を引き、その全身が画面に映るようになる。
大胆に肌を露出させたチューブトップにホットパンツ。
なるほど悪魔という設定だけあって、いかにもな感じのファッションだった。
ご丁寧に背後にはデフォルメされた小さな蝙蝠の羽がぷかぷか浮かび、黒い尻尾まで付いている。
――あの尻尾、本物みたいだな。
せわしなくくねくねと動く尻尾を見ていると、なにやら猫じゃらしを目の前で振られた猫にでもなったようにうずうずしてきた。
ただ惜しむらくは、せっかくの露出度の高い服装も、それを着ているのが10歳にも満たないだろう少女なせいで、色気というより活発さをまず意識させてしまうことだろうか。
妖艶な女悪魔というよりは、悪戯好きの小悪魔といった印象だ。
『さて、それでは次に皆さんお待ちかねだと思います、今夜あたしのお手伝いをしてくれる子を紹介しましょう』
キッカが手に持った紐を引くのを横目に見ながら、俺はテーブルの上に置かれた大量のビール缶の中から、まだ中身が残っているのを探し当てて口に運ぶ。
――ん、紐ってなんだ?
ビールの苦さを味わいながら、アルコールで麻痺しかかった頭でもわずかな違和感を覚えた直後――、
「ぶっ!?」
画面に現れた“アシスタント”の姿に、俺は思わず口に含んでいたビールを噴き出してしまった。
鼻につーんとした痛みが生まれ、涙で視界が滲んでいく。
『て、天使のセラフィ、です。
 今日は皆さんに、商品のことをわかっていただけるよう、い、一生懸命レポートします。
 よ、よろしくおねがいします……』
たたらを踏んで画面に入ってきた1人の少女。
キッカの手でカメラの方を向かせられた彼女は震える声で自己紹介をして、ぺこりと深いお辞儀をした。
肩にかかる程度のふわふわした金髪。
その上には輪っかが浮かび、背中にはデフォルメされた鳥の翼が生えている。
清楚な感じの白いワンピースは、確かに天使というイメージにはぴたりと合うものだ。
だがその一方で、天使というイメージに全くそぐわない物も彼女はいくつか身に着けていた。
「いくら深夜でも、これはまずいんじゃないか……?」
キッカが握っている紐の先が通された赤い首輪、目元を覆う黒い布。
いくらなんでもフェティッシュに過ぎる。
セラフィの身長はキッカよりも拳1つ高い程度。
まだ幼げな外見が、より一層の背徳感を醸し出していた。

『さあ、アシスタントの紹介も終わったところで、さっそく今日の商品の紹介に入りましょう。
 今日の商品はこちら!』
セラフィの姿に唖然としている俺なんか無視して――テレビなんだから当たり前だが――キッカが元気よく右手を挙げる。
高く掲げたその手の先が一瞬光を放ったかと思うと、次の瞬間そこに長方形の箱がひとつ現れた。
「うお!?」
よく考えればこれはテレビなんだから別に驚くことではなかったのだが、さっきの衝撃のせいでついついリアクションが大きくなってしまう。
『だららららららららら……』
キッカによる口頭でのドラムロール。
『じゃーん!』
「マジですか!?」
彼女が箱から取り出したものに、俺はもう今日何度目だよって感じの驚愕の声を漏らしてしまう。
アルコールの後押しもあって通販番組のサクラも真っ青な好反応だと我ながら思う。
だがまあ、今問題なのはそんなことではなく、キッカが箱から取り出した長さ10センチ強、先端が膨らんだ形状のそれがどう見ても疑いようなく卑猥なことに用いられる大人の玩具だったことだ。
『今日の商品は、このバイブでーす!』
あっけらかんと宣言するキッカの姿に、開いた口が塞がらなくなる。
『基本的な使い方は今更説明する必要もありませんよねー? ただ、常連さんには説明するまではないと思いますが、これはそんじょそこらで手に入るバイブとはわけが違いますよー』
にやりと笑って、ずいっとカメラにバイブを突き付けてくるキッカ。
画面に大写しになった、思わず目を逸らしたくなるほどの異様に精巧な造形。
その全面が見えるように、キッカはバイブを回していく。
『どうですか? 電池を入れるための蓋とかないでしょう?』
確かにキッカの説明通り、見た感じ継ぎ目のようなものは一切なかった。
『このバイブはですねー、なんと電気じゃなくて魔力で動くんです。
 パワーチャージの方法は接触吸収型で、天使のあそこに突っ込んでおけば勝手に魔力が溜まっていくという驚異のお手軽さを実現しました!』
「ま、魔力ぅ?」
突然出てきた突拍子もない言葉。
いや、天使とか悪魔な時点でもう十分突拍子もなかったが。
『天使相手に使う場合、使用中に同時にチャージができますので半永久的に連続使用できちゃいますし、人間相手でもフルチャージからなら100時間は余裕です。
 もちろん、動きを抑えることで連続使用時間を延ばそうなんて、小賢しいことはしていませんのでご安心ください』
キッカが自信まんまんに言った直後、横で所在無さげにおろおろしていたセラフィがびくりと身を震わせた。
『と、口で言っても信じていただけないかもしれませんので、いつものようにさっそく実演してみましょう!』
キッカが手に持ったバイブで、セラフィの頬をぴたぴたと叩く。
『それじゃーセラフィ、まずは準備からだよ。
 どうしたらいいか、わかってるよね?』
『は、はい……』
蚊の鳴くような声で答え、頬を引き攣らせながらも舌を出すセラフィ。
首輪を嵌められ目隠しされた少女の小さな舌が、見るもおぞましいバイブの上を往復する。
その映像に、俺は思わず生唾を飲み込んでいた。
ただでさえ本物そっくりだったバイブの表面が、セラフィの唾液でてらてらと濡れ光り、より一層生々しさを増していく。
『そうそうその調子……カメラさん、もうちょっと寄ってくださーい』
キッカの指示で、一心不乱にバイブに舌を這わせるセラフィの口元がアップになった。
柔らかそうな唇から差し出された真っ赤な舌が、浮いた血管まで再現されているグロテスクな擬似男根を舐め上げる。
ぴちゃぴちゃという音までもがちゃんとマイクに拾われ聞こえてきた。
『はい、じゃあ口開けてー』
言われるがまま、精一杯大きく開けられた口の中にバイブの先端が潜りこんでいく。
キッカがバイブを前後に動かすと、それに合わせてセラフィの頬が形を変える様はひどく卑猥で目が釘付けになった。
じゅぷじゅぷと音を立てるほどの激しいピストン運動。
しばらくして、ようやくバイブが引き抜かれる。
それに合わせて2人の全身が映るあたりまでカメラが引いたことで、俺もわずかに正気を取り戻すことができた。
いつのまにかテレビに齧り付くような状態で没頭していたらしい。
股間にはすでに突っ張るような感覚がある。
『とまあ、準備はこれくらいでいいでしょうか。
 ちなみにパワーチャージ用の天使はすでにこちらで調教済みですので、バイブを見せれば勝手に濡れますからいきなり突っ込んじゃっても大丈夫です』
キッカが何かを説明している。
それはわかっていてもその声は右から左に通り抜け、その内容は全く理解できなかった。
なにせ、その横でセラフィがワンピースの裾をたくし上げはじめたのだ。
裾が膝を越え太股を越え、最終的にはへそが見えるあたりまで上がっていく。
そこまで行けば当然股間が露わになった。
「ぱ、ぱんつはいてない……」
俺の思考をトレースしたように、1度引いていたカメラが今度はセラフィの股間に寄っていく。
わずかに開いた大陰唇の隙間。
そこから肉の色が辛うじて窺える無毛の性器に、再び意識が吸い込まれる。
モザイクもなしに大写しになったその場所に、アルコールのせいではなく眩暈を起こしそうになった。
と、不意にカメラが引きセラフィの全身が再び画面に収まるようになる。
俯き、頬を染めて唇を噛み締めているその表情。
目元を覆う黒い布は、よく見ればかなりの範囲で色が濃くなっていた。
最も恥ずかしい場所をカメラに捉えられ、羞恥に震えながら涙を流す天使の少女に、俺の股間のものはますます硬度を増していく。
『それじゃー、本番いってみましょー!』
対照的に元気いっぱいな悪魔の少女が、手に持ったバイブをセラフィの股間に宛がった。
テレビの前、俺はまた生唾を呑み込んで次の瞬間を待つ。
『ふ……うう……あ……はぁう……』
見る見るうちにバイブを根元近くまで飲み込んでいくセラフィのあそこ。
痛みなのか快感なのか、とにかく何かを堪えるように内股気味になった足が震えているのが見て取れた。
『ほら、ちゃんとレポートしないとだめでしょ?』
『あ……す、すごく太くて、それに固くて、……ど、どうにかなってしまいそうです……はぅん!?』
セラフィの体がビクンとはねる。
見るからに触りごこちがよさそうな、白く滑らかな肌。
それに覆われたセラフィの下腹部が、ぐねぐねとうねるように蠢いていた。
『あ、ああ、中で……中でうねってますぅ……』
『動きのオンオフはユーザー登録した方の思念によって切り換えられます。
 パターンの変化なども全てイメージするだけで対応してくれる簡単操作』
『ふああ、振動までぇ……』
キッカはもうバイブから手を離している。
それなのに、突き立っていたバイブは勝手に細かな振動を開始した。
『さらには動きの変化だけでなく……』
『ひあ、あああ、こ、これだめ、こんなの激しすぎ……』
セラフィの喘ぎ声が一際高く切羽詰ったものになる。
『ほらほら、そんな説明じゃ見てくれてる人に伝わらないよ。
 ちゃんとどうなってるか具体的に説明しないと』
『は、はい……バ、バイブの、ふぁ……表……面にぃ……ああん』
とろりとした粘液が溢れ、思わず頬擦りしたくなるようなセラフィの太股を伝い落ちていく。
それが、俺にはまるで彼女が流す歓喜の涙のように感じられた。
『表面に、なに?』
『ぶつぶつが……ぶつぶつがいっぱい……ぃあ……できて動きまわって、かきまぜ……ひやああ、だめですそんなしたらぁ!』
『さらにはさらに、こーんなことまでできちゃいます!』
キッカの言葉を合図に、バイブがひとりでにピストン運動を開始する。
ずるりと、あと少しで抜け落ちそうなところまで下がったバイブの表面には、確かにセラフィの言葉通り細かい突起が無数に生まれて蠢いていた。
それが確認できたのも束の間、バイブは再び少女の秘奥に潜り込んでいく。
『ふあ、あ……もう……ひあぅ!?』
バイブを放して自由になったキッカの魔手が、今度はセラフィの胸に襲いかかった。
目隠しをされ、一切の心構えができていなかったセラフィが全身を痙攣させて身悶える。
股間同様そちらも下着は着けていないらしく、白いワンピースには2つの突起が浮き出ていた。
服の上からそれぞれを摘んで擦り、押し潰すキッカの指。
『ひぁん、イク、イク、イッちゃいますぅ!』
ぶるぶると内股を震わせ、潮まで吹いて絶頂を迎えたセラフィがついに床の上に崩れ落ちた。
『あ、ああ、だ、だめ……』
いったい何が駄目なのか。
それはすぐに目に見える形で提示された。
ぺたりと座り込んだセラフィの足の下に、薄黄色の水溜まりが見る見るうちに広がっていく。
『はぁぁぁぁぁぁぁ……』
どこか満足げな吐息を漏らすセラフィのアップ。
それをしばらく映していたカメラが、相変わらず完璧な営業スマイルを浮かべたキッカへと向きを変えた。
『いかがでしたか? お堅い天使が思わず失禁するほどの気持ち良さ。
 これだけの高性能で、お値段なんと寿命3ヶ月分! 今回はこのバイブ本体に、パワーチャージ用の天使を1人お付けしての販売になります。
 この天使、本来の用途はパワーチャージ用ではありますが、単体でも十分愛玩用としてお使いいただける1級品ばかりを揃えさせていただきました』
画面が分割され、20人分の少女の顔が映し出される。
そのどれもが、パターンの違いはあれど息をのむほどに愛らしい容貌の美少女だった。
『限定数は20。
 注文数が予定に達し次第締め切りとさせていただきますので、ご注文はお早めに。
 なお原則としてお届けする天使はこちらで選ばせていただくことになっておりますので、予めご了承ください』
再び画面がスタジオに戻る。
『電話番号はこちら』
キッカが胸の前で指を下に向けて左右に往復させると、画面下部に携帯のものと思しき電話番号が表示された。
『さて、そろそろお別れの時間が近づいてまいりました。
 進行を務めましたのは私、悪魔のキッカと……』
キッカが足元のセラフィに視線を送る。
だが彼女の方はカメラの前での絶頂と、それに続く失禁のショックで完全に放心状態になっているらしく何の反応も返さなかった。
『あちゃー、完全に逝っちゃってますね。
 えーでは改めまして、この番組は私、悪魔のキッカと、アシスタントの天使のセラフィでお送りしました。
 それではまた、いつかどこかのチャンネルでお会いしましょう。
 さよーならー!』
ぶんぶんと必要以上に大きく手を振るキッカを中心に画面がズームアウトする。
そして次の瞬間、画面は砂嵐に包まれていた。
耳障りなノイズの音に、俺はようやく我に返る。
「やべ」
下着の中に冷たい感触。
「な、なんだったんだ、今のは……」
夢、にしてはあまりにも鮮明すぎる。
耳にこびりついたセラフィの嬌声。
身悶えるその姿。
頭には最後に表示された電話番号が焼き付いていた。
そしてパワーチャージ用の天使たちの顔も。
テーブルの上に放り出してある携帯が目に入る。
俺は震える手を伸ばし――。
「くそっ、またダメだ」
相手方が通話中であることを示す忌々しい音。
あれから何度も電話をかけているのだが、毎回その調子で一向に繋がる気配がなかった。
こうしている間にも、1つまた1つと売れていってしまっていると考えると焦る気持ちばかりが胸の中に募っていく。
祈るような気持ちでリダイヤル。
何十回も聞いた規則正しい電子音の配列、そして――、
「やった!」
思わず小躍りしそうになる。
携帯からコール音が聞こえたのだ。
1回、2回――、
『お電話ありがとうございます。
 こちらは――』
聞こえてきたのはテレビと電話では多少印象が異なるが、ほぼ間違いなくあのキッカという少女の声だった。
逸る気持ちをなんとか抑えて咳払いを1つ。
「あ、あの、さっきの――」
『申し訳ありません。
 本日の商品はご好評を頂き、すでに完売となっておりまして……』
「そ、そんな……」
目の前が真っ暗になるというのは正にこういう状況だろう。
頭の中でセラフィという少女の痴態や、画面に並んでいた20人の天使の顔がフラッシュバックする。
逃した魚のあまりの大きさに眩暈すら覚えそうだ。
『誠に申し訳ありません。
 またの――』
『ご、ご主人様!』
電話を切ることも忘れ悲嘆に暮れる俺の耳に、たぶんそのセラフィのものだろう切羽詰った叫び声が聞こえてきた。
『なに? 今、電話の応対ちゅ――のわっと!?』
キッカの慌てたような声と、直後に聞こえた風を切るような音。
突然慌しくなった向こう側の状況がわかるわけもなく、俺は混乱することしかできない。
『あ、お客様、大変申し訳ありません。
 ただいま少々取り込んで――ああもう!』
またキッカの声が悪態とともに途切れてしまう。
『すみませんお客様、もしよろしければ、このままお待ちいただけませんでしょうか?』
「え、あ、いや、それは構わないんですけど、いいんですか?」
どうやら電話の向こうは妙な事になっているらしい。
さっさと切るべきだろうかと思っていた矢先のキッカからの提案に、俺はますます困惑を深めてしまう。
『ええ、何とかもう1セットご用意できそうな目処が――よっと……セラフィ! ちょっとだけでいいからあいつの動き止めといて!』
『そ、そんなご主人様ぁ……』
『ああ、すみません、それでですね、バイブの方は番組で実演に使ったもの、天使の方は番組で紹介した20人とは別のになりますが、それでよろしければお譲りいたしますがいかがでしょう?』
「いいんですか!?」
もうダメだと思っていた所に差し伸べられた救いの手に、俺はもちろん縋り付いた。

それから数分間、電話の向こうでは色々と大変なことになっていたらしい。
もちろん俺が得られる情報は電話口から聞こえる音だけでしかないのだが、どうやら誰かに襲われて応戦しているようなのだ。
そして、その戦いは実際にその場にいたわけでもない俺ですら戦慄を禁じ得ないほど酸鼻に満ちたものだったことが容易に窺えた。
『エンジェルバリヤー!』
『いたたたたたた! ご、ご主人様ぁ……』
だの――、
『エンジェルブーメラン!』
『あ〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜』
だの、聞いているだけであの天使の少女が不憫でたまらなくなる。
やがて――、
『エンジェルスマーーッシュ!!』
『あぐっ!?』
鈍い打撃音と、悲運の少女のくぐもった呻き声をともなったその技で、凄惨な戦いはようやく決着がついたらしい。
『お待たせしました、お客様。
 それではこれよりそちらに参りますので、受話器を通話口を上にして床の上に置き、なるべくそこから離れていてください』
多少息の上がった声で告げられたキッカの指示。
俺がそれに従って部屋の壁まで下がっていると――、
「うおおお!?」
なんとなく予想していたとはいえ、実際にその現象を目の前にすると驚愕の声を抑えられなかった。
なにせ床に置いた携帯から、両肩にそれぞれ天使を担いだキッカがテレビで見たままの姿で現れたのだから。
「よっと、ととと……」
さすがに自分と同じか、むしろ少し大きいくらい2人の体を担いでいるせいかバランスを崩しそうになるがぎりぎりの所で持ちこたえる。
そしてあの完璧な営業スマイルを浮かべると――、
「この度はお買い上げありがとうございます! いやー、それにしてもお客様は運がいいですよ。
 たまたま新しい天使が入荷致しまして……」
などと言いながら肩に担いでいた荷物を下ろす。
どちらも意識を失っているらしく、床の上でぐったりとしたままぴくりとも動かない2人の天使。
片方は既に目隠しを取ってはいるが、あのセラフィという天使だった。
白いワンピースの裾がかなり際どいところまでめくれていて、彼女が下着を穿いていないことを思うとついつい生唾を飲み込んでしまう。
もう1人の天使は俺から窺える横顔を見るかぎり、セラフィよりも少し大人びた感じの天使。
腰くらいまであるブロンドが、床の上に広がって蛍光灯の光を反射しているのが印象的だった。
「あ、あの、パワーチャージ用の天使ってこの人、なんですか?」
「はい、そうですよ。
 どうです、なかなかのものでしょう?」
薄い胸をこれでもかと反らして誇らしげに言うキッカの言葉は、確かにその通りだった。
長い睫毛。
すらりとした頬の輪郭。
着ているのは飾り気のない白い服。
その上に、胸や肩、肘や膝などの要所要所にプロテクターらしきものを装着している彼女は本当にこの世のものとは思えない神々しさを湛えていた。
「いやー参りました。
 セラフィったら放送のあれ以来、ずっと気を失ったままで……。
 まったく、運ぶ方の身にもなってほしいですよねー」
あはは、と笑いながら言うキッカだが、それは間違いなく嘘だろう。
――なにせ、さっきまで声聞こえてたしなぁ……。
セラフィのこともそうなのだが、それよりさらに問題なのはもう1人の方だった。
どう考えてもこの新しい天使はさっきキッカが戦っていた相手のはずで、つまりこの取引が本人の意思を無視したものであるだろうことは容易に想像できる。
とすると、あの20人や、もしかするとセラフィだって最初は……。
「あらら? どうかされたんですか、お客様。
 お顔の色が優れないようですが」
「い、いや……」
テレビで見た非日常的な映像に沸騰していた頭が、冷水をかけられたように冷えてくる。
今更になって悪魔と取引をするという事に対する恐怖や罪悪感が湧いてきた。
「もしかして、今更キャンセルしようなんて、考えてたりはしませんよねぇ?」
俺の思考を先回りするような台詞。
目を細め、幾分トーンを落とした声で告げられたそれは、俺の背筋を震えさせるには十分な力を持っている。
口元には笑みを張り付けたままなのが、今の俺にはかえって恐ろしかった。
その背後にはぷかぷか浮かぶ蝙蝠の羽と、うねうね動く真っ黒な尻尾。
目の前の少女が、人知を超えた存在であることを証明するもの。
背中に嫌な汗がじっとりと浮いてくる。
「ん、んん……」
自分の胸あたりまでしかない小柄な少女に圧倒されていた俺を呪縛から解放してくれたのは、足元から聞こえた小さな呻き声だった。
キッカの視線から逃げるように下を向くと、セラフィがもぞもぞと体を動かし上半身を起こそうとしている。
「あ、あれ? ここはどこでしょう?」
大きな瞳。
初めて見る彼女の瞳は、その髪と同じく金の色をしている。
何度かぱちくり瞬きをして、きょろきょろあたりを見渡す姿はなんとも愛らしく俺の心を和ませてくれた。
「ここはお客様の家。
 さっき調達できた最後の1セットをお買い上げくださったんだよ」
俺が買ったということを強調する。
彼女が今どんな顔をしているのか、確認するだけの勇気は俺にはなかった。
「あ、そうなんですか? あ、あの、お買い上げありがとうございます」
立ち上がり、ワンピースの裾をぱっぱと払い俺に向かって頭を下げるセラフィ。
――まずい、なし崩し的に既成事実が……。
なんとかしないととは思うのだが、一体どうすればこの状況を打破できるのか、具体的な案が何一つ思い浮かばない。
「ということでセラフィ、さっさとバイブ出して。
 あれはもうこのお客様の物なんだから」
キッカがそう言いながら、セラフィのワンピースの裾を不意打ちで摘み上げる。
露わになる股間。
そこにある少女の秘園からは、深々と刺さったままのバイブの根元が顔を覗かせていた。
「あ、やだ!」
釘付けになった俺の視線に気づいたセラフィがそこを隠すように、ワンピースの前を押さえて座り込んでしまう。
「何恥ずかしがってんだか。
 もうぜーんぶ見られちゃってるのに」
「そ、そんなぁ……」
呆れたようなキッカの口調と、今にも泣き出しそうなセラフィの口調。
悪魔と天使ということを抜きにしても、随分対照的な2人の様子だった。
「ほらほら、さっさとしないと。
 お客様だって待ちくたびれてるし」
もう1度促され、セラフィは座ったままで服の下に片手を入れると、中にある異物を抜き始めた。
もう片方の手で裾を押さえているおかげで俺からはその中の様子は見えないのだが、それが逆に俺の想像力をひどく活発にさせる。
「ん……ふぅ……」
かすかに聞こえる押し殺した吐息がまた扇情的だ。
股間に再び血液が集まっていき、我ながらどうかと思うが、それに反比例するようにさっきまでの恐怖やらなにやらが小さくなっていくのを感じる。
やがて少女の体液で塗れ光るバイブがセラフィの手に握られて姿を現すと、湯気が立ちそうなほどのそれが手に入るなら悪魔との取引ぐらいと思えてしまうほどになった。
「はい、じゃあセラフィはお客様の方の準備お願いね。
 こっちはあたしが準備しとくから」
用心深く裾を押さえながら立ち上がったセラフィからバイブを受け取ると、代わりに何か指輪のようなものを渡しながらキッカが言う。
その指輪を見たセラフィは、なぜか血相を変えて悪魔の少女に耳元に口を寄せた。
「こ、これを使うんですか!?」
「そうだよ。
 だって、最初の1回でそれなりにがっつりやっとかないとまずいじゃん。
 あたし達がいるのは今回だけなんだし」
目の前で交わされる内緒話。
ただ、動転しているせいかセラフィの声は微妙に大きくその内容がばっちり聞こえてきてしまう。
キッカの方はむしろわざと聞こえる音量でやってる気がするんだが。
「それはそうですけど、でも……」
「へーきへーき、その辺はセラフィがちゃんとサポートしてあげればさ。
 随分気に入られてるみたいだし」
横目でこちらをちらりと窺うキッカの視線。
最初顔に来たのが、ついっと下に移動するのが見て取れた。
おまけにくんくんと小さく鼻を鳴らす仕草まで。
放送を見ていた際の粗相まで見透かされているようで、というか間違いなく見透かされてさすがに俺はバツの悪さを感じずにはいられなかった。

「あの、手を出していただけますか?」
微妙に物騒な気配がする内緒話の後、セラフィが俺の前までやってきた。
少し潤んだつぶらな瞳で上目遣いという反則じみたオプション付きのそのお願いは、無条件で従ってしまいたくなる魔性の魅力を伴っている。
さっきのあの内緒話さえなければ、言われるがままにそうしていただろう。
「あ、あの、さっきの指輪みたいなのはめるのか?」
「あ、はい、そうですけど、別にそんなに危険だったりはしませんから。
 ちょっとだけ、その……色々と……」
安心させたいなら途中で言葉を萎めさせないでほしかった。
というか“そんなに”ってなんだ、“そんなに”って。
ああ、でもそんな姿もいじらしく、困らせている自分がものすごく悪者になったような気がしてくる。
――本当に大丈夫なんだろうな……。
結局不安を拭いきれたわけではないが、罪悪感に負けるようにして手を差し出してしまう。
飾り気のない銀色のリング。
彼女の指に摘まれたそれは、まるで俺の為にあつらえたように中指にはまり、きらりと光を反射した。
「なんだ……?」
緊張していたわりに、はめても特に変化はない……ように感じられた。
もちろん問題がなければないに越したことはないのだが、それでも少し拍子抜けした感じで彼女の小さな両手が添えられた自分の手を眺めていると――、
「それじゃ、起動しますね」
セラフィは指輪がはめられた手に顔を近づけていくと、そっと口付けを施した。
「何を……ぐぅっ!?」
彼女の唇が触れた瞬間、指輪にいきなり異変が起こった。
一瞬その内径が縮んで指が締め付けられたのかと思うほどの痛みが走ったのだ。
「きゃっ!?」
驚きのあまり乱暴に彼女の手を振り解くようにして自分の顔の前へ手を引き寄せるが、リングのサイズ自体は変わっていない。
締め付けられたりも、少なくとも見る限りではしていない。
「つ……」
なのに、また指に痛みが走る。
ドクン、ドクンと心臓の鼓動に合わせたように規則正しく痛みが生まれ全身を駆け抜けていく。
それはまるで指にもう1つ心臓ができてしまったかのような感覚だった。
それと同時に、指輪から根のようなものが生えて全身に蔓延っていくようなイメージが頭の中に描かれる。
「な、なんだ、これ……」
それを抑えようと反対の手で握り締めてもそれは一向に収まらない。
むしろ1度拍を打つたびに痛みは強く、そして火傷しそうなほど指輪が熱く感じられるようにすらなってきた。
「お、落ち付いてください! 一時的なものですから」
どんどん増していく熱と痛みに思わず屈み込んでしまった俺の頭の上から、セラフィの慌てた声が聞こえてくる。
「落ち付けったって……」
搾り出すように呟いた直後、全身を温かい何かに包み込まれる感覚が生まれた。
今も全身を駆け巡る激痛を、その外側からふわりと包み、和らげていく温かさ。
「大丈夫ですから、落ち付いて受け入れてください……」
痛みを堪えるために丸めた背中。
そこに2本の細い腕が回されていることに気づく。
額に当たる感触は、まだ発育途上ではあるものの確かに女性を感じさせる柔らかさを持っていた。
かすかに香る甘酸っぱい少女の体臭。
怯える子どもを安心させるように、天使の少女が俺を抱き締めていたのだ。
氷が溶けるように、俺の中の痛みや熱、未知の事態への恐怖が和らいでいく。
まあ、彼女の香りの中にはほんの少しのアンモニアの香りやらも混ざってはいたのだが、そんなことが考えられる程度には、俺の中に余裕のようなものが生まれていた。
体内に広がっていく根の先端が、指輪をつけていない方の手の先、そして両足の先にまで到達したイメージ。
そして、それはついに頭の中心にまで――。

突然指先から全身にまで広がっていた痛みが嘘のように引き、俺は固く瞑っていた瞼を開いた。
目の前にはセラフィの顔。
息がかかりそうなほどの距離で、不安そうに眉を寄せてこちらを見つめていた。
「あの、私の言っていること、ちゃんとわかりますか?」
と、彼女はいまいち意味がわからない質問をしてきた。
もちろん言葉がわからないというわけではなく、さっきまでちゃんと会話できていたのに今更なぜそんなことを聞くのかがわからないという意味だ。
「キシャー?」
質問の意図を問い質そうとした俺の耳に、奇妙な音が聞こえてきた。
一方で俺が口にしようとしていた言葉は自分の耳には聞こえない。
「あ、そうですね、これだと私の方があなたの言葉がわからないんですよね。
 すみませんけど、はいなら1回、いいえなら2回短く鳴いてみてください。
 できますか?」
「キシャー?」
何を言っているんだ? と言おうとしたのに、またも聞こえてくるのは奇妙なこの音。
なぜか俺が喋ろうとすると代わりに聞こえてくるこの音の発生源はいったいどこなんだろう。
「や、やっぱり自我がなくなってしまったんでしょうか……」
セラフィの眉がますますひそめられ、声も潤みを帯びていく。
「自分の姿を見せてやったら? どんな状態なのかわかってないんじゃない?」
突然横からかけられた声にそちらを向くと、キッカは部屋の隅に一昔前にはやったぶらさがり健康器のようなものを組み立てている最中だった。
「そう、ですね。
 少し失礼しますね」
耳元で聞こえたセラフィの声に顔を戻すと、ただでさえ近かった彼女の顔がさらに一層寄ってくる。
「キ、キシャッ!?」
何を、と言おうとしたのにまたもこの音。
3度目でようやく、この音がなんとなく自分の頭のてっぺんのあたりから聞こえてくることに気づいた。
ただ、今はそれどころではなく、目を閉じて顔を寄せてくる少女から逃げるべきかどうかが重要だ。
見るからに柔らかそうな桜色の唇。
それが自分のものに合わせられる未来を思い描いた矢先、こつんとお互いの額がぶつかった。
――な、なんだ、驚かせないでくれ……。
熱を計る時のように、そこでセラフィが動きを止めたことに、俺は安堵半分失望半分といった気持ちで内心胸を撫で下ろす。
触れ合わせた皮膚を通じて、さっき抱かれている時にも感じた少女の高めの体温と、そしてそれ以外の何かが流れ込んでいるような感覚があった。
「私の見ているものをあなたにも送りますから」
10秒ほど額を合わせていただろうか、セラフィはそう囁いて離れていった。
彼女が下ろしていた瞼を上げる。
と、それに合わせて俺の頭の中に異変が起きた。
右目と左目が全く別のものを見ているような感覚と言えばいいのか、頭の中にスクリーンが2つできたような感じと言えばいいんだろうか。
さっきのセラフィの言葉を思い出すと、片方がもともと俺が見ているもので、もう片方は彼女が見ているものなんだろう。
とにかく、いきなり視覚からの情報が2倍になった俺の中に、不思議と混乱は起きなかった。
ただ、ある疑問だけは湧いてくる。
2つのスクリーン、片方にはセラフィの可愛らしい顔がアップで映っている。
それは元々俺が見ていたものだ。
その金色の瞳はまっすぐにこちらに向けられている。
つまり、もう片方が彼女の見ているものだとするなら、当然そこには俺の顔がアップで映っていなければいけないはずだった。
なのにそこには奇妙な物体が映っているだけで、俺の姿がどこにもないのだ。
表面に凹凸のあるぶよぶよとした赤黒い壁。
俺の視界の中でセラフィが身を引くと、彼女の視界の中でそれの全体像が確認できるようになる。
それは円筒形の肉の塊だった。
サイズはちょうどドラム缶くらいだろうか。
それが彼女の目の前でぷるぷると身を震わせている。
「どうですか? ちゃんと見えていますか?」
理性は徐々に今の状況を理解しつつあった。
ただ感情はそう簡単にはついていけない。
今彼女の目の前にあるこの肉の塊が自分だなんて、認められるはずがなかった。
「キシャ、キシャシャシャ、キシャー!?」
いったいなんなんだこれは、と言ったつもりだった。
なのに言葉は出ず、何度目かの奇妙な音が聞こえ、彼女の視界の中で肉筒がその上部をぐねぐねと動かしただけ。
――これが、俺の声……。
彼女の目を通して、自分が喋る、いや鳴く姿を確認してようやくそれが理解できた。
理解できてしまった。
これが目先の欲望に負けて悪魔と取引しようとした人間の末路なんだろうか。
セラフィの前で前屈みに肉筒を折るその姿は、我がことながらあまりにも惨めで、哀れだった。
「お、落ち付いてください。
 この変身は一時的なもので、朝になれば元に戻れますから」
「キシャ?」
これから一生この姿で、と絶望していた俺に、セラフィのその言葉は正に天から射し込んだ一筋の光明だった。
というか、それならそうと先に言って欲しかったというのが正直なところだ。
「もう1度聞きますけど、私の言葉、わかりますよね? はいなら1回、短く鳴いてみてください」
「キシャッ!」
「よかった……」
俺が言われた通りに反応したことに、セラフィの顔がぱっと明るさを取り戻す。
「体は戻るんですけど、たまにリングの効果を無理に拒絶しようとして心が壊れてしまう場合がありますから心配したんですよ」
さっきまでと違い、今度は安堵の涙を目尻にためて物騒なことを言うセラフィ。
だから、そういう大事なことは先に言って欲しかったんだが……。
「それじゃ、その体の使い方を説明しますね」
セラフィが目の前にある肉筒の中に手を差し入れる。
肉筒の中は、元の体で言えば口の中のような感じだろうか。
自分の体の中を触られるくすぐったいような奇妙な感覚に自然と身じろぎをしてしまう。
彼女の細い指が何かを摘むと、俺にとっては指先を摘まれたような感覚があった。
口の中に指があるというのも妙な感覚だが、なぜかそんな風に感じられるのだ。
それを言うと頭のてっぺんに口がある感覚がすでに異常ではあるんだが。
肉筒の表面に目があるようには見えないのに、ちゃんと目の前のセラフィの姿が“見えて”いるのも不思議といえば不思議だった。
「ゆっくり引っ張りますから、それに合わせてこれが伸びる感じをイメージしてください」
そんなふうに俺が考えていると、言葉とともにその指先のような突起に優しく力がかけられる。
俺はそれに抵抗しないように、その擬似的な指が伸びていく様を思い描く。
「キシャッ!?」
肉筒から引き出されたセラフィの指には、外皮と同じ赤黒い肉色の細い紐が摘まれていた。
太さはちょうどそれを摘む彼女の人差し指くらい。
透明な液体で濡れ光るその紐を、セラフィは自分の胸へと導いていく。
内側からわずかに布地を押し上げるだけのなだらかな丘陵。
そこへ俺の肉紐を螺旋状に巻き付けると、セラフィは恥ずかしそうに頬を染めながら言葉を紡いだ。
「力を入れてみてください。
 あ、でもなるべく優しくお願いしますね」
俺は言われるまま、その紐が彼女の胸を緩く圧迫するイメージを思い描く。
それに反応し、それまでおとなしく彼女に導かれるままだったそれがぐねぐねと動き出し、少女の胸の控えめな膨らみを変形させ始めた。
「そ、そうです……次は」
微妙に声を上擦らせながら、再びセラフィが俺の中に手を伸ばす。
その指が、今彼女の右胸に巻き付いている肉紐の根元、そのすぐそばの別の突起に触れてきた。
「ここにもありますから、今度は伸ばすところから……んん……ご自分でやってみてください」
悩ましげな吐息を織り交ぜながらの言葉。
さっきので多少感覚を掴んでいた俺は、すぐに言われた通り自力で肉紐を伸ばし、今度はセラフィの左の胸に新しい肉紐を巻き付けていった。
「そ、そう、上手……です」
白いワンピースの胸に、2本の赤黒い肉紐が螺旋状に巻き付いている光景。
誰も足を踏み入れてない処女雪を荒らすような感覚に、徐々に俺の中で嗜虐的な興奮が高まってくる。
乳房と呼ぶのは躊躇われるほどの慎ましやかなそれを縊り出すように、少し力を強めて絞り上げると、その中心にこれもまた控えめながら確かにピンク色の突起が布の下でしこり立っているのが見て取れるようになった。
「ひゃんっ!?」
肉紐の先端でそれを服の上から押してみると、面白いようにセラフィがびくんと全身を痙攣させる。
「あ、ああ、ちょ、ちょっと、まって……くださ……ああん」
ぐりぐりと先端を押しつけると、肉紐が纏っていた粘液が服に染み込み、より一層その敏感な突起の色が透けて見えるようになった。
「お、お願いですから、まって……まってください」
あまりの反応の良さに、思わず行為に没頭していた俺はセラフィの泣きそうな声での懇願にようやく我に返って動きを止めた。
「ま、まだ……説明することがありますから……もう少し待ってくださいね」
頬を上気させ、息遣いを荒くした少女の姿は、見ているだけでまた我を忘れてしまいそうなほど扇情的だった。
その衝動をなんとか抑えこみ、次の言葉を待つ。
もちろん、自分のこの新しい体の機能をもっと知れば、さらに彼女を感じさせることができるだろうという打算もあった。
「これの先、細い線があるのが見えますか?」
直前まで彼女の乳首を虐めていた肉紐の先端を摘み、セラフィは彼女自身の顔に向けさせた。
相手の視界を通してその線というのを確認した俺は、さっき言われた通りキシャっ! と1回短く鳴いて意思を伝える。
「ここは口みたいに開いて、ものを吸ったりできるんです」
その説明を聞き、指の先に口がついているようなイメージでそこが開く姿を想像する。
最初はうまくいかなかった。
それでも何度か繰り返していると、彼女の目の前でその肉紐の先端にぱっくりと口を開けさせることに成功する。
粘液の糸を引きながら精一杯大きく開いた異形の口。
「試しに私の指を吸ってみてください」
摘んでいるのとは反対の手の指先を近づけられる。
素直に従おうとした俺の心に、不意に悪戯心が湧きあがってきた。
一応は彼女の指に摘まれて固定されているとはいえ、肉紐の表面はぬるぬるした粘液で包まれていて、その気になればその指から自由になることは簡単だった。
つるりと指の間から抜け出すと、俺は指なんかよりもっと吸いたいあれに肉紐の先端を向けたのだ。
「あっ! だ、だめ……きゃぅぅぅ!?」
半透明になった布地に浮き出る淫突起にむしゃぶりつくと、それだけでセラフィは可愛い嬌声をあげ、俺は心の中でガッツポーズを決めた。
「だ、だめですったら……ああん、も、もう……」
咥え込むだけでなく教えられたように吸引も施し、さらに反対の胸にも同じように責めを加えていく。
「ひあ……や……ひぃん」
セラフィの言葉の中で意味のある単語と喘ぎの割合が変わっていく。
確実に頂点に向けて昇りつめていくセラフィ。
1時間ほど前はテレビで見ていることしかできなかったそれを、今は自分が為しているんだと思うと、得も言われぬ充実感が俺の胸を満たしていった。
「だ、だめ……ですぅ……本当にイッちゃいますからぁ……」
セラフィの声が甘えるような媚びた色を帯び始める。
その変化に調子に乗った俺は、2本の肉紐で休むことなく少女の両胸を責め上げながら、同時に自分の体の中にも意識を向けた。
――思った通りだ。
案の定、口の中には他にもたくさんの肉紐の芽とでも言うべきものが存在することを自力で感じることができた。
「そ、そんなに……いっぺんになんてぇ……」
彼女の目を通し、肉筒から数えきれない肉紐がぞわぞわと這い出していくのを確認する。
今や、本来の両手の指をはるかに上回る数の肉紐ですら、自由に動かせるようになっていた。
まずは両胸から込み上げる快感に足をがくがく震わせ、今にも崩れ落ちそうだったセラフィの体を支えるべく腕の付け根に新たな紐を巻き付かせる。
そのついでにつるつるの腋の下に、肉紐の先端の口で吸いついてみるのも忘れなかった。
「はあぁん……」
胸とは違い、キスマークを付けるくらいの強さで肌を直に吸引すると、セラフィは鼻から抜けるような吐息を漏らして身悶えする。
そのまま両手両足に何本もの肉紐を巻き付け、無数の口でキスを施していった。
「あ、ああん、……え?」
もう抵抗することなくその刺激に身を委ねていたセラフィは、俺が1本の紐でワンピースの裾を咥えてひらひら揺らすと、一瞬きょとんとした表情を浮かべてそこを見下ろした。
彼女自身の視界の中、肉紐が直に巻き付いてその身を擦り付けたり先端の口で吸い付いているのは、両手や両足など露出している部分だけだ。
それが言葉を話せない俺からの、服の中に入っていいかという質問だと気づくとほんのわずかに恥じらうような迷いを見せ、そして小さくこくんと頷いた。
「キシャー!」
本人の了承を得て、俺が心の中で喝采をあげてセラフィの秘められた場所に潜り込もうとした、まさにその時だった。
「はーい、ストップストーーップ!」
その存在をすっかり失念していた悪魔の少女の声が、突然部屋に響き渡ったのだ。

「はぇ?」
「キシャ?」
期せずして同じタイミングで疑問の声をあげ、2人揃って声のした方に視線を向ける。
ずかずかと近寄ってくるキッカの後ろには、件のぶらさがり健康器に逆さ吊りになったもう1人の天使の姿があった。
「はいはい、とりあえずセラフィを放してくださいね、お客様」
穏やかな口調なのに、どこか有無を言わせない迫力を感じた俺は素直に従ってしまう。
セラフィの体に巻き付けていた肉紐を引き上げさせると、彼女は立ち続ける体力も残っていないかのように床に崩れ落ちた。
「もう、あんたまでその気になっててどうするの」
「す、すみません……」
首から下、露出した両手足は粘液にぬらぬらと光らせ、ワンピースもほぼ全面が半透明に透けて肌にぴったり貼り付くような状態のセラフィ。
ぺしっと頭を叩かれ弱々しく謝罪する。
と、それまで見えていたセラフィの視界が不意に見えなくなった。
どうやら接続が切れたらしい。
「お客様も、あくまで本番は向こうですからね」
その事を残念に思う暇もなくキッカに促され、俺は逆さに吊られた天使の方に視線を向けた。
服やプロテクターはキッカの手で剥ぎ取られ、ぶらさがり健康器もどきの横棒に膝をくくり付けられて全裸で吊るされている。
手は左右に広げられて支柱にくくり付けられていて、ちょうど大の字を上下逆にしたような体勢だ。
口には太い棒のようなものを噛まされているのに、それでも美しさを失わない少女の姿に俺は思わず見蕩れてしまう。
さっき感じた罪悪感のようなものは、もうほとんど俺の中には残っていなかった。
今胸の中で燃え盛っているのは、中途半端なところでお預けをくらった欲望を新たな獲物に叩きつけたいという思いだけ。
わずかに残っていた理性すら――、
「思いっきりやっちゃって大丈夫ですよ。
 セラフィだって最初は結構手を焼きましたけど、快楽を覚え込ませちゃえば天使ってものすごく従順になりますから」
その悪魔の囁きによって完全に打ち砕かれる。
俺は行き場を失って宙をさまよっていた全ての肉紐を、一斉に逆さ吊りの天使に向かって解き放った。

セラフィに勝るとも劣らないほど白い肌。
その全身にグロテスクな赤黒い肉紐を絡み付けていく。
そのコントラストにひどく興奮をそそられた。
「ふ……うぅ……」
全身を這いずるぬるぬるとした感触に天使が小さく吐息を漏らし、ゆっくりと目を開いていく。
目覚めたばかりでぼんやりとしていた瞳が、自分の状況を認識して次の瞬間かっと見開かれた。
「んぅ!? んーー!!」
何かを言おうとしているのだろうが、噛まされた棒のせいでまともな言葉は何一つ聞き取れない。
ただその言葉の代わりとでも言うように、天使の口の端から薄緑の液体がつうっと溢れて零れ落ちていく。
捕らえられているということに怯えるかと思ったが、むしろこちらを射抜く勢いで睨み付けてきたのが少し意外だった。
意思の強さを表すような少し太めの眉。
そんな彼女がやがてセラフィのように従順になるかと思うと、胸の内からどす黒い悦びが込み上げてくる。
「あー、あんまり喋ろうとしない方がいいと思うよ。
 それ、圧迫されると催淫液が滲み出てくる仕掛けになってるから。
 もちろんさっさと気持ち良くなりたいんなら止めないけどさ」
どうやら彼女が咥えている棒は、言葉を封じるだけが目的ではないらしい。
俺の背後からキッカがそう説明すると、それを聞いた天使が表情を強張らせた。
その間も俺は彼女の体を思うままに貪っていく。
セラフィにもしたように、ただし今回は直に量感のある双丘に肉紐を巻き付け絞り上げた。
螺旋状の紐の隙間からむっちりとはみ出した柔肉を、別の紐の先端で時に押し込み、時に口を開いて吸引し解していく。
捕われの天使は棒を圧迫しないよう、必死に鼻から空気を抜くようにして自分の胸が蹂躙される屈辱に耐えているようだ。
「はひぃっ!?」
それでも立ち上がりつつあったその頂きを咥えこみ吸い上げてやると、さすがに反応を抑えきれなくなる。
また口の端から薄緑のとろりとした粘液が溢れ出した。
身を捩って逃げようとしても、その程度で伸縮自在の肉紐から逃げられるはずがない。
バタバタ動く膝から先を絡め取り、その指の隙間まで丹念に丹念に舐めしゃぶっていく。
太股や腹、腋の下なども余さず巻き付き、吸い付き、刺激していくと、何度も分泌された催淫液の効果もあってか少しずつ天使の様子が変わりつつあった。
目が覚めるほど白く透き通っていた肌がほんのりと赤みを帯びてきている。
それを否定するように、そして内から込み上げる何かに耐えるように目を固く閉じ、いやいやをするように首を振っていた。
「ご、ご主人様……あの……」
背後から聞こえるセラフィの遠慮がちな声。
「なに、見てるだけで我慢できなくなっちゃったの?」
からかうようなキッカの声音に、真っ赤になっているセラフィの顔は直接そちらを見ないでも容易に想像できた。
俺と同様、彼女もさっきは中途半端なところで止められてしまったのだ。
その直後に、目の前でこれだけの光景を見せ付けられてしまえば、我慢できなくなるのもしかたないことだろう。
「なら、何をどうしてほしいのか、ちゃーんと言ってごらん? そしたら考えてあげる」
「あ、あうぅぅ……。
 ……ご、ご主人様の太い尻尾で……はしたないセラフィの……え、エッチなところを……つ、突いて、ほしいんですぅ……」
ところどころでどもりながら、セラフィが卑猥なおねだりを口にしている。
「はーい、よく言えました。
 それじゃあ……」
「ひゃああぁん!」
魂が抜けてしまいそうなほどの歓喜の声が聞こえてくる。
「はひぃ……いいぃ……いいですぅ、ご主人様ぁ!」
続けてじゅぼじゅぼという水音が生まれ、それに合わせてセラフィが悶えているのが伝わってきた。
そこにあるのは俺と、そして今目の前で逆さ吊りにされている天使の最終到達地点と言っていいものだ。
勝ち気な瞳でこちらを睨み付けていた彼女が、俺が与える快楽に依存しきって縋り付いてくる姿を思い浮かべると自然と笑みが零れてしまう。
笑みといっても、今の俺の体では肉筒の上部を不気味に蠢かすことぐらいしかできないのだが。
――と、いかんいかん……。
意識を背後に向けていたせいで、いつのまにか肉紐の動きが惰性に近いものになっていたことに気づく。
緩くなった責めに天使が目を開け、またこちらを睨み付けていた。
その瞳に宿る意思はまだ確かだ。
――それならそろそろ。
何本かの肉紐を縒り合わせ、擬似的に1本の極太の凶器へと変貌させる。
それを目の前に突き付けると、さすがに彼女も顔を引き攣らせた。
その反応に内心ほくそ笑みながら、喉、胸の谷間、へその上と、焦らすように、脅すようにことさらゆっくり彼女の身体の中心線を移動させていく。
天使というのはそういうものなのか、セラフィと同様に彼女の下腹部にはわずかな茂みも存在していなかった。
女性器自体はそれなりに成熟していることとのギャップが、妙に俺を興奮させる。
割れ目の両側、ふっくらと盛り上がった土手に何本かの肉紐を吸い付かせ左右に引っぱると天使が全身を震わせた。
蛍光灯の光の下、完全に曝け出されたサーモンピンクの肉色。
今まであえて触れないようにしていたそこは、わずかに染み出した液体ですでに濡れ光っていた。
極太の逸物で膣口を捏ねるようにマッサージする。
その一方で女性器の一端、薄皮に包まれ隠れるように存在している突起にも1本の肉紐を向かわせた。
敏感過ぎるそこは、口でやさしく含んだだけでも捕われの天使に無視できないだけの衝撃を与える。
まして一切の容赦なく思いきり吸引してやったりすれば、意思の力だけで堪えることなんてできるはずがなかった。
「はぅぅぅ!?」
全身をがくがくと痙攣させ、口の端から唾液と催淫液が混ざり合ったものを滝のように溢れさせる少女。
捕われてなお気丈にこちらを睨み付けていたその瞳からも、ついに大粒の涙が零れ落ちた。
「ひあああああ!」
追い討ちをかけるように、陰核への刺激で新たな蜜を吐き出した膣口に擬似性器を潜り込ませる。
必死に閉じようとする肉壁を力任せに押し開き、蛇のようにその身をうねらせて中へ中へと入っていく。
複数の肉紐で構成されたそれには、当然のことながら幾つも口が存在していた。
身を進めながら、周囲にある細かな襞を啄ばみ、引っ張り、吸引する。
ずるずると愛液を吸い取る下品な音が少女の秘所から絶え間なく生まれ、それでも飲み干しきれなかった分が結合部から溢れ出した。
「ふむぅ!? んむ!? うんんっ!?」
体奥を一掻きするごとに、少女の瞳が焦点を失っていく。
そして――、
「んんんぅぅぅぅぅ!」
口枷のせいでくぐもった絶叫をあげながら、彼女は今夜最初の頂点へと昇り詰めた。
いや、もしかするとこれは彼女にとって生涯最初の絶頂だったかもしれない。
それを示すように、彼女の秘奥から掻き出される愛液には、かすかに赤の色彩が混ざり込んでいた。
両手両足の拘束を引き千切るほどの勢いで全身を痙攣させ、なかば白目を剥くような状態で悦楽の波に翻弄される。
その姿と、膣の収縮によりそれまで以上に強烈に締め付けられたことで、俺の中でも何かが爆発した。
肉紐の中を熱い塊が通り抜けていく。
「キシャアァァァッ!」
全ての肉紐の先端、そこにある口から黄味がかった白濁液が噴き出していく。
人間の体のときとは比べ物にならないほどの射精感。
それが何十本も同時に、そして何十秒も持続する。
頭が煮えたぎるような快楽からようやく覚めた時には、少女の体は全身生臭い汚濁液でコーティングされたような状態になっていた。
その姿がまた俺の中の炎を燃え上がらせる。
射精後の脱力感とは無縁のこの体なら、まだいくらでも続けられることを感じ取り、俺は喜びに身を震わせた。
元の体に戻る朝までには、まだまだ十分な時間があるのだ――。

「お……おねがい、もう……ゆるして……」
猿轡を外した後の彼女の第一声に、俺は軽い失望を覚えていた。
――まだ足りないんだ……。
あれから俺の方も10回を優に越える、そして彼女の方はその数倍、下手をすると数十倍の絶頂を経験した。
もうそろそろ自分から求めるようになったかとも思ったのだが、その読みはまだまだ甘かったらしい。
ただ、失望を感じる一方で、それ以上に闘争心が燃え滾るのも感じていた。
こちらはまだ全然疲れてはいない。
まだ足りないというのなら、もっともっと責め続ければいいだけなのだ。
「ひぐぅ……おねが……おねがい、すこし、ひあぅ……やす、ませてぇ……」
膣への無慈悲で一方的な抽送を再開すると、彼女は息も絶え絶えに喘ぎと懇願を繰り返すことしかできなくなる。
限界以上に感じやすくなった体は、すぐにまた少女を頂きへと押し上げていく。
その、はずだった。
「キシャッ!?」
突然、彼女の体に絡み付かせていた無数の肉紐が、ほのかな光を放ち始め、驚いた俺は思わず動きを止めてしまう。
徐々に強くなっていく光。
と、何度目かの絶頂でセラフィが一際高く鳴いて失神した後、静かに俺達の様子を見守っていたキッカが久しぶりに声をかけてくる。
その内容は、俺にとっては絶望的なものだった。
「あー、お客様、そろそろタイムリミットみたいですねー」
――そんな!? まだ終わっていないのに……。
いつのまにか、窓からはカーテン越しに朝日が射し込む時間帯になっていた。
その爽やかな朝の光に対抗するように、俺を包む光もさらに強さを増していく。
「まぁ、これぐらい仕込んでおけば、後は自力でもなんとかなるんじゃないですか?」
俺を迂回して逆さ吊りの天使に歩み寄ったキッカが気楽な調子で言う。
「キシャー! キシャシャー!!」
光がますます強くなっていく。
もう目の前にいるキッカ達の姿すら見えないほどだ。
――まだだ! まだ終わりじゃないんだ!心の中でそう叫んだのとほぼ同時、視界が完全な白一色に包まれた。



「イッちゃいます……セラフィ、もうイッちゃいますぅ!」
束ね合わせた俺の肉紐に胎内を掻き回されたセラフィが、全身を痙攣させて何十回目かの絶頂に打ち上げられる。
全身に巻き付いた肉紐によって、まるで神に捧げられる生贄のように宙に掲げられた状態。
股間から盛大に潮を吹き、しかもその後には少量ながら薄黄色の液体までもぽたぽたと滴らさせる。
床には俺と彼女、2人分のありとあらゆる体液が水溜まりを作り、なんともいえない性臭を発散させていた。
「も、もうだめですぅ……」
誰に言うでもなくそう呟き、首を力なく垂れさせる。
失禁と同じくいつものことなのだが、どうやら快感のあまり失神してしまったらしい。
また少し刺激を与えてやれば目を覚まさせることもできるのだが、俺はとりあえず彼女の体を床に下ろし、全身に纏わりつく肉紐を引き上げさせることにした。
体中を粘液でどろどろにしながらも、対照的にどこまでも安らいだ表情で静かに眠る天使の少女。
とある廃ビルの一室で、俺達は数時間にも渡り本能の赴くまま交わっていた。
あの日、部屋を満たした光が消えた後も、俺はこの怪物の姿のままで、元の姿に戻ることはなかった。
指輪の効果が切れそうになった時、心の中で必死に抵抗したのが影響したらしいのだが詳しいところはもちろん俺にはわからない。
これはキッカにとってすら意外だったらしく、唖然としてこちらを見つめる彼女の表情は今思うとなかなかに貴重なものだった。
あの、俺が買うはずだった天使はもう別の人間に売られてしまい、ここにはいない。
その事に別に思うところはなかった。
キッカはセラフィのように特に気に入った場合は例外として、捕らえてきた天使のほとんどは快楽を覚え込ませた後、いかがわしいアイテムと一緒に売り払ってしまう。
そして俺は今、その調教を手伝う助手としてキッカに雇われて――いや、飼われていた。
人間だった頃への未練も特段ない。
というより、いつの頃からか、この体になる前のことはおぼろげにしか思い出せなくなっていた。
もしかすると人間だったというのは何かの思い違いなのかもしれないとさえ思ってしまう。
もしくは今こうしていること自体が夢の中の出来事なのか。
「たっだいまー!」
そんな風に物思いに耽っていたちょうどその時、扉を開けてキッカが部屋に入ってくる。
「あーもう、人がせっせと働いている時にあんた達はー」
そして入ってくるなり眉を顰めて、俺達がやっていたことに対して文句を言ってきた。
まあ気持ちはわからないでもないんだが、天使の調達はキッカにしかできないのだからこればっかりは仕方のないことだ。
当然その辺はキッカだってわかっていて、すぐに表情を戻す。
「まあいいけどね。
 よっこらしょっと」
あの日のように両肩に担いでいた荷物を置いて息をつくキッカ。
双子なのだろうか、ぱっと見では区別がつかないほどうりふたつの少女達。
この2人が今回の俺の担当らしい。
「キシャー!」
「はいはい、相変わらず返事はいいんだよね。
 とりあえず3日ぐらいで仕上げといて」
それだけ言い置いて部屋から出ていってしまう。
別の部屋にいる天使達の様子でも見に行くんだろうか。
まあ、どうでもいいことだ。
俺は俺の仕事をするだけ。
双子は調教の時の反応も似ているんだろうか。
そんなことを考えながら、俺は任された仕事を果たすため、眠り続ける少女達目掛けて肉紐を伸ばしていった。


「ひぁ……あふぁ……ぃ……」
「お、おねがいだから……もうやめてあげてよぉ……」
一時的な拠点としている廃ビルの1室に、2つの声が響いていた。
片方は声と吐息の中間とでも言うべき意味の取れない喘ぎ声で、もう片方は時折しゃくりあげる音を伴った弱々しい懇願だ。
他に室内に存在している音といえば、俺の肉紐と双子の天使達の体が奏でるぐちょぐちょという湿った音ぐらい。
セラフィは意識を取り戻した後、俺が仕事に入っているのを見て退室していた。
たぶん、今頃は天使の捕獲という一仕事を終えたキッカと睦み合っているんだろう。
あれだけ俺とやっていたというのに、その辺セラフィは底無しというか貪欲というか。
それでいて普段はむしろ清楚な感じなあたり、彼女を教育したキッカの手腕は見事なものだと感嘆するより他にない。
「マイカが……マイカが死んじゃうよう……」
そんなことを考えていると、不意に双子の天使の内、ミルカというらしい片方の天使がそんな失礼なことを言ってくる。
その言葉にちょっとカチンと来た俺。
そりゃ、最初の内はちょっと欲望のままやりすぎて、後でキッカにしこたま怒られる羽目になったことも何度かあったけど、さすがに最近は随分経験を積んできたことでその辺の匙加減は把握できるようになってきているのだ。
どうせ口にしようとしてもキシャーしか言えないので、心の中だけで愚痴ってみる。
――それにしても、あの時のお仕置きといったら……。
思い出してはいけないと頭ではわかっているのに、ついついキッカにされたお仕置きを思い出して身震いをしてしまう。
「ひはぁぁあ!」
その動きが肉紐に伝わり、膣内と腸内を同時に掻き混ぜられたマイカがまたしても心を飛ばして絶叫した。
肉紐による拘束を振りほどかんばかりの激しい痙攣。
それがしばらく続いた後、天を仰いでいた首をかくりと落としてマイカの体は一切の反応を断ってしまう。
「マイカぁ!」
その様子に最悪の事態を想像したのか、それまでの弱々しさとは一転してミルカの方も絶叫する。
全くもって失礼極まりない。
――まあ、マイカの方はこれくらいか……。
最後を俺の意思ではないイレギュラーな動きでイカせてしまったのが少々不本意ではあったけれど、マイカの方は今はこの辺が限界だろう。
両腕を左右に広げ、足はMの字に固められた姿勢で持ち上げられた状態。
マイカの外見は、ここに運び込まれた時からは随分かけ離れたものになってしまっていた。
全身をたっぷりと白濁液にコーティングされ、敏感な3つの芽を痛いほどの張り詰めさせている。
膣口も肛門も、複数の肉紐を縒り合わせて作った極太の肉棒で限界ギリギリまで広げられ、それどころか極めて細いものではあるが尿口にすら肉紐が1本潜り込んでいる始末だ。
「ぅ……」
それらをずるずる引き抜いていくと、単純な肉体的反射によってマイカが小さく呻き声を漏らす。
「マイカ……」
その事に束の間の安堵を覚えたらしいミルカだが、挿入されていた異物が抜けても、すぐには閉じられなくなった3つの穴から大量の白濁液が溢れ出す様を見て再び辛そうに顔を歪めていく。
それでも決して目は逸らさない。
この辺は俺の教育の賜物だ。
気を失うまで蹂躙してきたマイカとは違って、ミルカに対しては動けないように拘束しただけで、少なくとも肉体的にはそれ以上のことをまだ何もしていなかった。
外見がそっくりな双子だけにちょうど鏡に映したようにマイカと向き合う場所に持ち上げ、後はひたすらマイカだけを責め続けてきたのだ。
ミルカに対して強制したのは、目の前で犯される相手の姿をただひたすら見続けることだけ。
当然ではあるが、最初の内は顔を背け、目も固く固く瞑っていた。
俺のこの体が持っている欠点の一つは、こちらからは言葉で意思を伝えることができないことだ。
だから、こちらから指示を伝える場合、基本的には実力行使という形にならざるをえない。
と言っても、今回に関しては俺としてはある目論見があったから、いつものようにこちらの意に反した行動に対して直接ミルカに体罰を与えるというわけにはいかなった。
その結果、本来は雪のように白く透き通っていたマイカの尻は、今ではべっとりと付着する白濁の上からでもわかるくらい赤く痛々しく腫れている。
こういうのは体罰ならぬ心罰とでも言うんだろうか。
自分が目を逸らせば大切な相手が鞭打たれる。
何度か繰り返す内にそれを理解したミルカは、それでもしばらく時間がかかったが、最終的にはこちらの意図通り瞬きすらほとんどせずに、目の前で繰り広げられる陵辱劇から目を離さないようになっていた。



「ひ、ぃ……」
肉棒を目の前に突き付けると、ついに自分の番が来たと悟ったのか、ミルカが滑稽なほどに顔を引きつらせる。
マイカの時は、その肉棒を2本、ろくに前戯も施さずにいきなり両方の穴に挿入した。
当然そんな無茶をすればマイカが感じる苦痛は相当なもので、彼女は半狂乱になって泣き叫んだものだ。
今のミルカの顔から読み取れる感情は、それを目の前で見せ付けられていたことからくる苦痛への純粋な恐怖が大半ではあるが、その裏にはもう一つ、同じ恐怖でも多少色合いの異なるものが見え隠れしていた。
もう1人の自分とでもいうべきマイカがたどった悲惨な道筋。
いつしか、この肉棒による暴虐的な抽送にすら快楽を感じて歓喜の涙に咽び泣くようになるという、未来の自分への根源的な恐れ。
今のミルカにしてみれば、それは自分が自分でなくなるような、そんな気分なんだろう。
この表情だけでも、ミルカを後回しにしていた意味があると思えてしまうくらい、その表情は今の俺には魅力的だった。
だが、それを心行くまで堪能した後、俺は突き付けていた肉棒を解き、一旦細い肉紐へと戻してみせる。
「……ぇ?」
マイカと同様、それをそのまま挿入されると思っていたんだろう、予想外の変化にミルカの緊張がわずかに緩む。
もちろん、俺としては別にミルカを安心させようなどとは思っていなかった。
俺には俺なりの考えがあるのだ。
それも知らずに、わずかとはいえ安堵しているその様子がおかしくてたまらなかった。
こんな体じゃなかったら思わず噴き出していたかもしれない。
最初、キッカがこの2人を連れてきた時、同時に犯して喘ぎ声の聞き比べでもしようかと思った。
実際、その直前までは行ったのだが、そこでもっと面白そうなアイデアが閃いたのだ。
俺はその案をこそ実行するために、まずはマイカだけを、しかもデモンストレーションの意味も込めていつも以上に乱暴に犯してみせた。
実際には細心の注意を払いながらやっていたのだが、ミルカから見れば化け物が本能のままにマイカの体を貪っているように見えただろう。
バラした肉紐を、そこからさらに分解してより細くより細く解いていった。
その内の1本を、焦らすようにゆっくりとミルカの股間に近づけていくと、いくら細いとはいってもさすがにミルカの顔に浮かぶ恐怖の色が濃くなっていく。
1度も触れてはいないのに、それでもミルカのそこはかすかな湿りを帯びていた。
別にめちゃくちゃに嬲られるマイカの姿を見て欲情していたとか、そんなエロ漫画ドリームな反応ではないんだろう。
そこを乱暴に扱われるマイカの姿を見せられて、デリケートな粘膜を守ろうとしたミルカの本能が分泌させた液体だ。
肉紐自身が粘液を帯びているからなくても別に問題ないが、別にあって困るものでもない。
M字に開脚させているせいで、細く開いた秘唇の隙間。
狙いを定めて極細の1本をそこに挿入させていく。
「い、ぃゃぁ……」
蚊の鳴くような声で拒絶するミルカ。
多少の異物感はあるだろうが、指よりもはるかに細い肉紐ならば痛みはないはず。
実際、その声に肉体的な苦痛の色は感じ取ることはできなかった。
その細さを活かし、処女膜すらも傷付けないまま侵入を続け、あるポイントを目指していく。
初めて入る場所でありながら、俺の頭の中にはその場所への道筋が既にはっきり描けている。
「やだ……もうそれ以上入ってこないでよう……」
ミルカの哀願を聞き入れたわけでもないが、一旦肉紐の動きを止める。
「み、ミルカの言葉、わかるの……?」
あまりにもタイミングが良すぎたせいで自分の願いが聞き入れられたとでも思ったのか、そんなことを口走る。
溺れているところに流れてきた藁みたいなものなのか、あまりに絶望的な状況に本来ならありえないはずの可能性にすら縋ってしまうんだろう。
まあ、自分が止まってと言った途端に、ミルカにしてみれば中途半端な場所で動きを止めたら希望を持つのも無理はないのかもしれないが。
俺としてはただ単にそこが目的地だっただけだ。
そこに意味があるということを、本人がまだ知らないだけ。
知っているのは俺と、そして気を失ったままのマイカぐらいだろうか。
続いて、さらに細くした肉紐を、今度は尿道に侵入させる。
こちらも痛みを感じないよう、かなり限界近くまで細くしたものだ。
「だ、だめ、そんなとこ……」
本来は液体が通過するだけの狭穴を、細くはあっても確かな触感を持つ肉紐が逆方向に進んでいく違和感に声を上擦らせるミルカ。
これもまた、最奥まではいかないあたりで動きを止める。
「な、なにをするの……」
股間から2本の肉紐を生やした状態で、震えながら問いかけてくる。
その答えを、俺は言葉ではなく行動で示してやった。
「ひきぃぃぃ!?」
ミルカが喉を反り返らせて悲鳴をあげる。
挿入した肉紐は細くはあっても、ちゃんとその先に口を備えている。
それを使って、ある一点を尿道と膣内の両側からピンポイントに吸い上げたのだ。
そこから生まれた刺激によって、ミルカは一瞬忘我の極地へと跳ね上げられる。
筋肉が1度ぎゅっと収縮し、次の瞬間反動のように弛緩した。
それに合わせて尿道の中を熱い液体が駆け抜けていくことが、文字通り手に取るように俺にはわかる。
「は、ぁ……ぇ――」
我に返ったミルカが、恥ずかし過ぎる粗相を防ごうと再び筋肉を緊張させようとする。
そこへ――、
「――――!?」
もう1度さっきの場所を吸い上げる。
またしても一瞬とはいえ意識を飛ばし、そしてその一瞬が致命傷になった。
「あ、ああ……いや、いやぁ……」
肉紐を咥え込んだ尿道が内側から押し広げられ、そこから薄黄色の迸りがアーチを描く。
俺がマイカの相手をしている間、ずっと我慢していたんだろう。
その量はかなりのもので、いつまで経っても終わりが見えない。
その間も、ミルカの心の防壁の隙を突くように、タイミングを見計いながら吸引を繰り返す。
「あぃっ!? な、なにこれ、い!? ……や、やめてぇ!」
放尿の羞恥と、自分の体が送ってくる未知の感覚に翻弄されているのか、ミルカが身も世もなく悲鳴を振り絞る。
そんなミルカの体は、本人の意思とは別の所で反応を返し始めていた。
小さな芽が体積を増し始め、秘口からも新たな蜜を分泌させる。
ミルカ自身もそろそろわかってきているはずだ。
自分の出している声が、まぎれもなく快感によるものだということを。
なにせ、ついさっきまでマイカの声をその耳でずっと聞いていたのだから。
マイカの場合は苦痛から快楽へ、徐々に徐々にその色を変化させていった。
だけど、ミルカはいきなり快楽一色の声を上げている。
目論見通りの反応に、俺は心の中でだけほくそ笑む。
天使といっても、背中や頭の上にぷかぷか浮いているオプションはともかくとして、体の作り自体は人間のものと変わらない。
性感を得るために効率のいい場所も、基本的には人間と同じだ。
だから、ただ快楽に溺れさせるだけならば、俺のこの体を持ってすればもう何も考えなくてもこなすことができる。
だけどそれじゃ俺としてはつまらない。
せっかくこんな極上の素材を与えられたら、色々試してみたくなるのが人情ってものだ。
いや、もう人間じゃないんだけどさ。
ともかく、淫核あたりを重点的に責めてやれば、それだけで気をやらせることは簡単だった。
ある程度肉悦の味を覚えさせてしまえば、後は膣内を極太の肉棒で抉ってやれば切れ間なく続く絶頂地獄に追いやることも難しくない。
だけど、一口に膣内といっても、場所によって感じ方にかなりの差があることを俺はこの体になって初めて実感したんだ。
もちろん以前だってGスポットの存在とか漠然とした知識はあったものの、そこだけをピンポイントで責めるということは人間の体の構造上不可能だった。
だけどこの体、この肉紐を活用すればそれも可能だ。
ただし、1番感じるポイントの正確な位置というのは個人差があって、それを探るためにそれなりの時間を要してしまう。
それなりのサイズのものであたりを付け、そこからさらに絞り込んでいく作業。
いわば最上階に向けて地道に階段を昇っていくような行程だ。
今までは、その間に天使の少女達の方が快楽に対し順応してしまうという問題があった。
まあ、快楽を仕込むのが俺の仕事なんだから、問題っていうも微妙な感じだけど。
それでもずっと俺の中にあったのは、いきなりそのポイントを責めたらどんな反応をするのだろうという、そんな疑問だった。
そこへもたらされた福音が、このミルカとマイカという双子の天使達だった。
もしそっくりなのが外見だけじゃなかったら。
いざ責めを開始しようとした時、天恵のように俺の頭にそんな考えが閃いたのだ。
目の前には、全く同じ体が2つもある。
片方を使ってその性質を調べ尽くし、それをもう片方に反映させる。
調査の過程をすっ飛ばし、自分でも知らなかったはずの最大の弱点をいきなり責め抜く。
アクションゲームで言えば、安全な天井裏を通ってゴールを目指すみたいな、そんな反則技。
これこそが、今回の俺の目論見だった。
名付けて、キンタ○リオ作戦!!

…………人間だった頃の記憶は随分薄れてきているはずなのに、なんでこんなことばっか憶えているかな、俺は。

「はひぃ! ああ!? だ、だめぇ!?」
キンタ○リオ作戦に為す術もなく翻弄される1人の少女。
今の彼女を貫いているのは、その体で得られる中で最も純粋な快楽なのだ。
堪えようと思っても、到底堪え切れるものではない。
ようやく勢いを弱めてきた放尿の後を継ぐように、どろどろと愛液が溢れ出し始める。
その様子は、まるで壊れた蛇口を連想させるほど。
正直、さすがにここまでハマるとは思っていなかった。
いきり立った3つの肉芽。
物欲しげにヒクヒク震えるそれらにも、今回はあえて触れることはしない。
そんなことをしなくても、今のミルカは大きく開いた口からだらだら涎を垂れ流し、舌を突き出して悶絶する。
体積にしたら小指の先にもはるかに及ばないその1点に、今や彼女の全てが集約されていた。
「あ、かはっ……か……」
ミルカの呼吸音が危険なレベルに到達する。
マイカがそれなりの時間をかけて到達した場所。
それに何十分の一にも満たないわずかな時間で追いついて、いやそんな場所なんてほんの一瞬で抜き去っていた。
頭の中、冷静な部分はそろそろ止めろと警告する。
だけど別の、もっと情熱的な部分がもっと先へもっと先へと急き立てる。
あんなに恐ろしかったキッカのお仕置きすら、今の俺には大した障害にはなりえなかった。
「ひ、ひむぅ……もう、ひんじゃふぅ……」
発音も怪しいその言葉を、もう失礼なものだとは笑えなくなっていた。



「で、せっかくの双子なのに片方壊しちゃったんだ?」
腕組みをしてこちらを見下ろすキッカの視線がめちゃくちゃ痛い。
「き、きしゃー……」
命こそ取り止めたものの、すっかり正気を失ってしまったミルカを見て、キッカは随分おかんむりだった。
まあ、キッカからの注文は『あくまで意思は失わず、だけど体は火照って抑えられないの!』
的な感じだったんだから無理はない。
完全に心を壊してしまうと商品価値は大暴落、というわけだ。
しかも今回は双子の片割れ。
こうなってしまうとマイカの方も双子という付加価値なしで扱わなくてはいけないから、キッカにとっては2重の痛手だったんだろう。
背景に炎なり稲妻なりを背負っていそうなキッカの後ろで、優しい優しいセラフィは心配そうにこちらを見つめてくれている。
ありがたいけど、でもだからといってキッカを宥めてくれるわけではない。
そこまで期待するのはさすがに酷というものだ。
「まったく……やっと多少は使えるようになってきたかと思ったのに……この役立たず!」
げしげしと足蹴にされる。
そのことに屈辱とかそんなものは感じなかった。
それどころか、この程度で終わってくれたらどれだけ幸せか。
「なにニヤニヤしてんのよ、このドM!」
表情なんてわからないはずなのに、そんなことまで言われてしまう。
ベ、別に足蹴にされたことが嬉しいわけじゃないんだぞ。
「決めた! あんた、もうセラフィとするの禁止!」
「キシャッ!?」
「えっ!?」
俺と、あととばっちりを食らったセラフィの声が室内に響き渡る。
俺にとって、セラフィとの行為は商品となる天使達相手のものとはまた別の意味を持つ特別なものだった。
セラフィもセラフィで、天使を調達するためにキッカが長く留守にする時は疼く体を持て余してしまうから、それなり以上に俺を必要としてくれているはず。
ていうか、必要としてくれているといいなぁという、かなり都合のいい願望があったりしたんだけど。
「キ、キシャー、キシャシャー――、
キシャキシャキシャー」
お代官様どうかそれだけはご勘弁をと、もはや恥も外聞もなくぺこぺこ体を折る俺。
「ふん、行くよセラフィ」
「あ、は、はい……」
そんな俺を不機嫌そうに一瞥して、後はもう振り返りもせず出て行ってしまうキッカ。
何度か心配そうに振り返ってくれたけど、結局はキッカの後を追って部屋を出ていくセラフィの背中。
残された俺は、絶望の淵で肉紐をうねうねと蠢かすことしかできなかった。


「んっ……は、ぁ……」
ドアの向こうから、セラフィの声がかすかに聞こえてくる。
押し殺そうとして、それでも抑え切れていない甘い喘ぎ声。
普段ならそれを聞いているだけで俺の方も興奮してくるはずだった。
なのに、今それを聞いている俺の心は、不思議と冷め切っている。
まるで芯から凍りついてしまったかのように。
肉紐の1本をドアノブに伸ばし――、
「……ぇ?」
ドアを開けると、中にいたセラフィが一瞬指を止めてこちらにぼうっとした視線を投げかけてきた。
この部屋に入るのは、初めてこの廃ビルに来た時以来だ。
それからはずっと自分に割り当てられた部屋で売り物用の天使の調教と、そして今目の前にいる彼女との行為に耽っていた。
あの時にはなかったと思う壁際の粗末なベッドの上で、熱に浮かされているように頬を紅潮させ瞳を潤ませているセラフィ。
清楚な白いワンピースと、その裾をたくし上げ秘部に指を添えて自らを慰めているという淫猥さのギャップ。
それを見てもなお、俺の心はざわめかない。
「ど、どうしたんですか?」
ようやく事態を理解したのか、慌てて服を整えて手を後ろに隠すセラフィ。
その表情は俺がいきなりこの部屋に来たことに対する当惑と、恥ずかしい行為を見られた羞恥に彩られていた。
そんな彼女に俺はじりじりと近づいていく。
何本もの肉紐を蠢かせながら――。
「――!? だ、駄目です!」
俺がセラフィに対して肉紐を伸ばすということがどういうことなのか、それは彼女も十分過ぎるほど知っている。
そしてそれは今、キッカによって禁止されていることだ。
それでも俺は動きを止めなかった。
「ご主人様に知られたら、今度こそ――あ!?」
反射的に後ろに下がろうとしたセラフィの背中が壁に当たる。
そのことが、俺の中で最後の引き金を引いた。
逃げ場のない彼女に俺は一斉に無数の肉紐を差し向けたのだ。
「ヤケになったら駄目です。
 我慢していれば、きっとご主人様だってわかって――ぁぷ!?」
一瞬で手足の自由を奪い、小さな口に何本もの肉紐を捩じ込んで言葉すらも奪いとる。
俺の方からは一切の言葉を放たず続けられる荒々しい行為。
セラフィの瞳に俺のことを心配する気持ちとは別に、自分自身のことを案じる色が浮かぶ。
それを感じ取り、一瞬だけ気持ちが揺らぎそうになった。
覚悟は決めてきたはずなのに、この期に及んで――。
迷いを断ち切るために、彼女自身の手によってすでに熱く濡れそぼっているぬかるみに肉紐を送りこむ。
元々、セラフィは快感に対してどうしようもなく弱い。
そうなるように調教されきっている。
そして、俺はそんなセラフィの性感帯を知り尽くしていた。
だから手足や言葉に続いて、彼女から思考の自由まで奪うのにもそれほどの時間は必要ない。
キッカが帰ってきたのは、度重なる絶頂の末にセラフィが意識を失ってからしばらくしてのことだった。



「当然、覚悟はできてるんだよね?」
部屋に入ってくるなり捕らえてきた天使を無造作に放り投げ、こちらを見据えたキッカの瞳に浮かんでいるのがどんな感情なのか俺には読み取ることができなかった。
怒りなのか、呆れなのか、哀れみなのか、それとも全く別の何かなのか。
「でもまあ、最期に愛しのセラフィと散々やれたんだから思い残すことはないよねぇ?」
キッカの唇の端が吊り上がり、目が細められる。
それに合わせて腕がすうっと上がり、その指先が俺に向けられた。
それだけで、俺はまるで銃口を向けられているような気分に陥り、背筋を駆け抜けていく死の恐怖に全身を震わせる。
いや、実際正真正銘の悪魔であるキッカの指先は、拳銃なんかよりはるかに危険な代物だった。
そこから逃げるには俺の体の動きは鈍過ぎる。
肉紐はともかく、本体の方はそれこそカタツムリのようにじりじりとしか動けないのだ。
だから俺は、捕らえたままだったセラフィの体をとっさに自分の前に引き寄せた。
キッカからの攻撃に対する盾にするように。
罪悪感を感じているだけの余裕はない。
今更言い訳にもならないが、今は手段を選んでいられる状況ではなかったのだ。
もう後戻りはできない以上、どんな小さな可能性でも拾っていく必要があった。
ただ、この方法に対する不安もある。
セラフィが本当にキッカに対する盾になるのか。
言ってみれば、これは1つの賭けだった。
短いながらも共に行動して、分は決して悪くないとは思っていたが、それでもセラフィごと殺される可能性だって小さくはなかったからだ。
「ちっ……」
けれど数秒の沈黙の後、セラフィの体の向こう側から聞こえてきた小さな舌打ちに、俺はその賭けに勝ったことを確信する。
それでも最初の賭けには勝ったことを喜んでいられるだけの余裕はなかった。
まだ細い綱の上にいることに変わりはないのだ。
完全に渡りきるまで足を止めることはできなかった。
本体をセラフィの体で隠しながら、その盾を迂回させるように肉紐達を繰り出していく。
「このっ!」
何本もの肉紐の先端に同時に鋭い痛みが走った。
いつのまにかナイフのように伸びていたキッカの赤い爪が俺の肉紐を切り裂いていく。
爪による一閃がセラフィの体越しにちらちらと見える度、頭の中にノイズのような痛みが駆け抜けていく。
それでも俺は矢継ぎ早にさらなる肉紐を生み出していった。
1本切られたならば2本を追加し、2本切られたならば3本を追加する。
俺が生み出し、キッカが切断する。
いつ終わるとも知れない鬼ごっこのように、俺達は狭い部屋の中で攻防を繰り返す。
そのペースは、最初の内は拮抗していた。
けれど、その天秤が徐々に徐々に傾いていく。
1本1本ならまだ我慢できた痛みが、積み重なることでさすがに無視できるレベルを超え始めたのだ。
こんなことをしていてもただ苦しむ時間を延ばしているだけじゃないのか。
足を止めれば、待っているのは俺自身の死以外にありえない。
だけど、それなら一瞬で済むんじゃないか。
恐れていたはずの自分の死。
それが、ひどく魅力的に思えてくる。
キッカの動きに合わせ、常に俺の本体が完全に隠れるように掲げていたセラフィの体。
心が折れかけたせいだろうか、それを移動させるのが一瞬遅れてしまう。
長く伸ばした爪だけではなく、それを振りかざすキッカの姿が一瞬だけだが垣間見える。
その顔にあったのは、今まで見たことがない焦りの表情だった。
俺の痛みのように、キッカの方も疲労が積み重なっていたんだ。
考えてみれば、肉紐だけを動かせばいい俺とは違って、キッカは全身を動かして殺到する肉紐達を防がなければならない。
加えて、セラフィの体によって俺の本体には攻撃できないというのは精神的に辛いはず。
攻めているのは、俺なんだ。
現金なもので、その認識にたどり付いた瞬間に俺の心が再び立ち上がるだけ気力を取り戻す。
我慢できないと思っていた激痛が、まだ少しだけなら耐えられそうに思えてきた。
いちかばちかセラフィの体を持ち上げていた肉紐までをも攻撃に回す。
その瞬間を狙われたならば終わりだったが、俺の予想通り、今のキッカにその隙を突くだけの余裕はなかったらしい。
今回の賭けも俺の勝ち。
そして、今回の賭けは、この攻防自体の勝敗を決するほどに重要なものだった。
「しまった!?」
一気に数を増やした肉紐の1本が、爪を逃れて彼女の細い足首に絡み付く。
そこからは、もう一方的だった。
一気に引き倒し、残った手足にも次々に肉紐を巻き付けていく。
「このっ! 離せ! 離しなさいよ!」
必死にもがくキッカ。
だけど、当然のことながらその程度で解放したりするつもりはなかった。
そう、最も危険な部分は乗り越えたとはいえ、まだ全てが終わったわけではないのだ。
今からキッカの体にしっかり教え込む必要があった。
これからは、俺こそが彼女の主なんだということを――。



絨毯のようにひしめいている肉紐に手足と羽、そして尻尾を埋没させた仰向けの状態で、それでもキッカは俺を睨み付けていた。
ただ、その眼光にはどこか鋭さが足りていない。
それもそのはずで、今この瞬間もキッカは手足や尻尾の表面を無数の肉紐に這い回られている状態なのだ。
十分に開発した後の天使なら、これだけでも絶頂に導くことができた。
今のキッカではおぞましさぐらいしか感じられないかもしれないが、すぐにその境地に追いやってみせる。
そう、思っていたのだが――。
「あ、くふぅ……」
予想に反し、不意にキッカの口から妙に艶かしい吐息が零れ落ちる。
次の瞬間には悔いるように唇を噛み締めるが、さっきのは紛れもなく――。
そこで俺の頭に1つの仮説が閃いた。
以前、セラフィのあそこにキッカが尻尾を挿入していたことを思い出したのだ。
天使にはない尻尾という器官。
ちょうど男にとってのペニスや今の俺の肉紐のように、もしかして挿入されたセラフィだけでなく、キッカの方も快感を感じていたのではないだろうか。
「な、なにす……ひぁう!?」
それを裏付けるために手足を嬲っていた肉紐の動きを止め、尻尾だけを重点的に嬲り回してみると案の定キッカはあられもない反応を返してきた。
すぐに悔しそうに顔を歪めるが、それすら次の瞬間には快楽に緩みはしたない嬌声を溢れさせてしまう。
間違いなく、尻尾は彼女にとっての性感帯だった。
それも、かなり感度のいい。
「ひっ……こ、この、やめっ……く、っぁ」
肉紐の絨毯の中、ディープキスで舌を絡めるように、複数を融合させた極太の1本を纏わりつかせ扱きあげる。
ぐねぐねと動き回るしなやかな尻尾はキッカにしてみたら逃げようとしているのかもしれないが、俺からすれば積極的に絡め合わせようとしているとしか思えなかった。
いや、実際に俺の思っている通りなのかもしれない。
さらにその極太の隙間を細い肉紐の先端の口で何箇所も一斉に啄ばんでいく。
「ひあぁ、だめ、それ……やめないと、くぁん!?」
するとキッカの胴体が打ち揚げられた魚のようにビクビク跳ね上がり、尻尾から生まれる肉悦が俺の想像以上に大きいことを、もはや声を抑え切れずよだれの玉を撒き散らしている口以上に教えてくれた。
元々たいして面積の広くなかった布地を取り去ると、露わになった割れ目からはすでにとろとろと蜜が溢れ出し、平坦な胸やその割れ目の上端にある3つの突起も生意気に勃起し始めている。
その3個所にそれぞれ肉紐を伸ばしていくと、さすがにキッカの頬が引き攣った。
その先端にある口の威力は、尻尾で十分思い知っているからだろう。
だが、尖った牙が覗くその口から制止の言葉が放たれるよりも、俺がその敏感な肉豆に吸い付く方が先だった。
「はひぃぃ!?」
ちゅうちゅうと音を立てて吸い上げながら、釣り糸を引くように時折ピンと引き上げる。
それも、キッカが予想できないように3箇所のタイミングを微妙にずらしながらだ。
操り人形のように上から垂れ下がる肉紐に為す術もなく翻弄される悪魔の少女。
今まで自分が従ったきた相手を思うがままにできる黒い喜び。
それに急き立てられるように俺は新たな責めを繰り出した。
新たに生み出した極太のそれを、死角から一気にアナルに突き立てたのだ。
「あぐぅ!」
体内にうまれた圧迫感からか、キッカが苦しそうな呻き声をあげる。
けれどそれも結局は一瞬だった。
「はぐっ……な、なに、これぇ!?」
次の瞬間には目を白黒させながら悲鳴を迸らせる。
尻尾を扱かれたり、敏感な突起を吸い上げられる程度ならセラフィとの行為でもやっていたかもしれない。
だけど、尻尾の付け根を裏側から、腸の側から抉られるのなんて初めてのはず。
まして、そこをピンポイントに吸い立てられるなんて、俺のこの肉紐ぐらいでしかできるはずがない。
秘園からはますます量を増した蜜が途切れることなく伝い落ち、手加減のない抽送によって捲くれ上がった肛穴に巻きこまれていく。
腸液と愛液が攪拌され、じゅぶじゅぶと卑猥な音を響かせながら聴覚からもキッカの心を蝕んでいった。
「はひっ……ダメ、これ以上されたらぁ!」
初めて聞くキッカの懇願するような声音に、とめどなく込み上げてくる征服感。
あえて膣には挿入しない。
そこは、完全に彼女が屈服して、自ら求めてくるまで取っておくのだ。
いつも上の立場から俺に命令していたあのキッカが、俺に入れてほしいと弱々しく、情けなく哀願してくる。
思い描いただけで心が沸き立ってくる想像。
数時間前、セラフィを犯していた時が嘘のようだった。
あの時は精神的に追い詰められていて、こちらが愉悦を感じているだけの余裕なんてなかったからただただ必死でセラフィの体を貪っていた。
そう考えるともったいないことをしたとも思う。
だが、これからは好きな時にキッカもセラフィも、そして他の天使も犯せるんだ。
「い、イカされちゃう!? ……こんなの、悔しいのにぃ!」
ついには大粒の涙を零しながら、一気に性の高みへと駆け上がっていくキッカの体。
そこへ俺の方も追随していく。
「はああああああ!」
キッカの絶叫を聞きながら、俺は彼女の全身と腸内に、ありったけの欲望を叩き付けていた。



その瞬間、世界が一瞬で切り替わる。
そこはあの廃ビルの一室のままで、けれどさっきまでよがり泣いていたはずのキッカは何事もなかったかのように目の前に平然と立っていた。
奪い取ったはずの服も、快楽によってぐずぐずに熔かしたはずの表情も、さっきまでのことが幻のようにいつものまま。
いや、本当に幻だったのか。
「あんたが考えてることはだいたい想像がつくけど、まあそんなとこよね」
キッカの唇の端がにぃっと吊り上がり、猫のように目が細められる。
それに合わせて腕がすうっと上がり、その指先が俺に向けられた。
今でも幻だったなんて信じられないあの瞬間の再現。
俺はとっさにセラフィの体を引き寄せようとして、体がぴくりとも動かないことに気がついた。
「ムダムダ。
 あんたの神経は、もう指先――じゃなくて今は触手か――触手の先までズタズタになってるから」
キッカの笑みがますます深くなる。
口の端から覗くのは、獰猛な肉食獣を連想させる尖った牙。
余裕の笑みを浮かべながら平然と立つ彼女と、微動だにできない俺。
格が違うということを心の底から思い知らされる。
それこそ、お釈迦様の手の平の上にいることに気づいた孫悟空のように。
鳳凰を前にした1羽の鴉のように。
「最期にいい夢見れたでしょ? まあ短い間だけど仕事を手伝ってくれたから退職金代わりってやつ?」
キッカの指先、綺麗に手入れされた赤い爪が滑るように俺に向かって伸びてくる。
「じゃあね」
短い別れの言葉が俺の意識に、そして爪の先端が俺の体に食い込んできて、その瞬間俺の意識は断ち切られていた。



「……むぁ?」
顔を上げると、目の前にはビールの缶が並んでいた。
どうやら酔っ払った挙句に、そのままテーブルに突っ伏して眠ってしまっていたらしい。
とっくに放送時間は終わっているようで、付けっぱなしのテレビは空しく砂嵐を映し続けている。
ザーザーという耳障りなノイズに意識が掻き乱され、さっきまでひどく長い夢を見ていた気がするのにその内容が全く思い出せなくなっていた。
内容は憶えていないのに、それがひどく残念に思えて、それと同時にそのことにどこか安堵しているような妙な気分。
「……あ…………ただい…………スト中……」
と、不意にそのノイズの中に人の声らしきものが混ざり始めて、俺の注意を引き寄せる。
それに合わせて砂嵐にも乱れが生じ、次の瞬間にはちゃんとしたスタジオの映像が映し出されるようになっていた。
反射的に時計を見るが、朝というにはまだ早いはずなのに。
『こんばんわー、今日も始まりました深夜の不定期海賊放送テレビショッピング“悪魔の囁き”。
 今夜はここテレビ○日のスタジオをお借りしての放送となりまーす!』
けたたましい声。
「な、なんだ?」
テレビの画面には、さっきの声の主である少女の顔がこれ以上はないというほどドアップで映っている。
非の打ち所のない完璧な営業スマイル。
ニカっと笑った口元に、随分尖った八重歯が覗く。
というか、八重歯というより、もう立派な牙のようだ。
『初めての皆さんはじめまして、常連の皆さん3ヶ月ほどのご無沙汰でした、今夜も進行を務めますのはもちろん私、悪魔のキッカ』
キッカと名乗った少女が身を引き、その全身が画面に映るようになる。
大胆に肌を露出させたチューブトップにホットパンツ。
なるほど悪魔という設定だけあって、いかにもな感じのファッションだった。
その姿に、なぜか心の表面にさざなみが立つ。
この悪魔役の少女は、初めて見る相手のはずだった。
少なくとも記憶にある限り、今まで別の番組で見た憶えはない。
もちろん、この番組自体に関してもそのはずだ。
なのに、俺はこの娘のことを、そしてこれから出てくるだろうもう1人の天使の少女のことを――。


出典:悪魔
リンク:天使

(・∀・): 252 | (・A・): 70

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