従姉妹の丑の刻参り
2010/04/02 21:52 登録: 塾ぶどう
高校生になってから「髪伸ばして三つ編みするのが夢なんだ!」とか嬉しそうに言ってた従姉妹が、ばっさりと髪を切った。
失恋とは違うらしい。
「どういう心境の変化だ?三つ編みするんじゃなかったのか?」
「あ、もう止めた」
従姉妹は、にこにこ笑いながら、ピンピンに跳ねた後ろ髪を何回も撫でつけてた。
ちょっと違和感を感じた。従姉妹はこんなに笑う子じゃなかった。どっちかっていうと無愛想で、拗ねたみたいな顔してるタイプだった。
何かあったんだなって思って、しつこく聞いた。
そしたら、こんな話をしてくれた。
聞いた話をそのまま書くからグチャグチャかもしれない。ちょっとヒステリックになってたし。
「引かないでね。私、よくないことしたから」
って、最初に従姉妹が言った。
以下、従姉妹との会話。
『私、虐められてた。
理由は今でも分からないけど、リーダー格のA子からは「態度が悪い」「目つき悪い」「ぶりっ子」とか言われてた。
でも、私ぶりっ子とかしてなかった。
………何人かの男の子とは仲よかったけど、“男同士”みたいな感覚だったんだ。
本当に私ぶりっ子してないよ。下ネタとか普通に言ってたし、うん、言ってたよ。言ってた!』
「ぶりっ子してないのは、わかってるから大丈夫」
『…うん…で、無視されたりペンとられたりした。』
(長くなるから、虐めの内容などは割合させてもらう)
『私、悔しかった。………………で、悪いことなのは知ってたけど、アレした。
なんか、あの……丑の刻参り、みたいなの。
近くの木で人形に、釘打っただけなんだけど。……夜の12時に。』
「人形って?」
『…………ただの人形…。』
「本当?」
『………A子の持ってた御守りみたいな奴つかった。』
「それでどうなった?」
(この辺りから“その手の話だな”って思った)
『髪、引っ張られた。すっごい強く引っ張られることもあったし、軽いときもあった。
だから髪切ったんだ。』
「今は?」
『………マシになった。
で、お兄ちゃんにお願いがあるんだけど。』
「何?」
『友達のKさんって、実家が寺やろ?使った人形、始末してもらえないかな。』
「わかった。頼んでみる」
『ありがとう、本当にありがとう。』
「うん、暗くなって来たから、人形置いて家帰れ」
『わかった。ありがとう。』
(これで会話は終わり)
それで、俺は3日間ほど人形を持ってた。ちょっと興味があったのと、Yが一人旅行から帰ってくるの待ってた。
温泉に行ってたらしい。(何故俺を誘わなかったのかは分かっていない)
これといった問題はなかった。
敢えて言うなら、いろんな物が閉まらないことがあった。
冷蔵庫やタンスを閉めようとすると押し返される感じ。閉まってても急に開いたり。
わかりやすいのは風呂場。浴槽の蓋を閉めようとすると、ガタガタバシャバシャいうから直ぐに分かる。
俺の入浴シーンとか見られたかもしれない。
あとは、隣から呼吸音が聞こえたのと、ベッドに変なへこみができた。
決定的なのは、パソコンとかのタイヤ付きの椅子が転がること。2mくらい離れた位置にいる俺の目の前まで“ガーッ”て転がってきたことが一回だけ(昼間)。
今、幽霊の顔が至近距離にあるんだって思うと少し怖かった(美少女なら無問題)。
Kに人形を渡してからは、何もなくなった。
Kは実家の父に丸投げしてきたらしい。
個人的には、特に悪い霊では無い気がする。
Kには「お前は鈍いから」って言われた。従姉妹はまた髪を伸ばすらしい。
Kに聞かせてもらってた怪談話より怖くなかった。
はじめて俺が体験したやつ。これ以来、なにもない。
出典:あ
リンク:あ

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