特急バスでの出来事

2010/05/27 23:41 登録: えっちな名無しさん

 特急バスが発車して間もなく
前方席のおじいさんが
「峠の手前のホロ町で降ろしてもらえんかのう」

 ガイド嬢は困った表情で
「お客様、特急バスは決められた場所にしか、
 お止め出来ないことになっています……」

 おじいちゃん
「このバスが、特急バスと知らんで乗ってしもうた。
 時間にわしが行かんと、皆が困るんで……」

 ガイド嬢
「安全な場所にお停めすると、他のお客様から
 ”じゃ、あそこに停めて”
 ”私は、ここで降ろして”言われた時、
 お断り出来ません」。

 他の乗客達が、なんとか出来ないものかと、思った時

 運転手さんと話していたガイド嬢が……
「お客様に申しあげます。当バスはこれより
峠に差しかかりますので、
念のためブレーキテストを行います」。

       ”ドアの開閉チェック”

 ガイド嬢は、おじいさんに向かって目で合図し、
右手を小さく差し出したのです。

 おじいちゃんは、”ハ”と、気づいて、
急いで荷物を持って乗車口に進み、
ステップの前でクルリと 振り向き、
運転手さんと、ガイド嬢に手を合わせて、
何度も、何度も、頭を下げました。

……ゆっくりとバスのドアが閉まり、ガイド嬢の明るい声
「ドアの開閉チェック完了、ブレーキテスト終了、
 発車オーライ!」
 期せずして車内には、大きな拍手が沸き上がりました。

出典:『本気で生きよう 何かが変わる』
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