「だめ、スイッチ入らない」

2010/07/19 17:46 登録: 0

「だめ、スイッチ入らない」

汗だくの顔をこっちに向ける弥恵。眉毛が下がって申し訳無さそうなその表情もかわいい。
残念そうにクーラーのリモコンを棚に置くと、また僕の横にちょこんと座った。
「今からでも、ひろくんの家でやる?」
「え、でも……うーん」
言いながらも夏休みの友をカバンに詰め込む弥恵。たしかに僕の部屋には
今年取り付けたばかりの新品のクーラーがある。でも僕の部屋ではだめなんだ。全然だめなんだよ。
「ひろくんの家、むり?」
「でも、あの、その……」
正直に言えばいいのだろうけど、まだ付き合いだしたばかりの僕にはとても恥ずかしくて言えない。
もじもじしていると、その様子を察したのか弥恵がニヤっと笑って顔を近づけてきた。
「あ、もしかして……?」
「はい、その、うん」
「ひろくんの家、親いるの?」
「うん……」
もうだめだ、弥恵には何でもお見通しなんだから、隠し事なんてできやしない。
「当ててみようか?」
「え……」
「"親がいるからエッチが出来ない。だから僕の部屋に行くのは嫌だ"
 当たり?」
「……」
弥恵はそういうと、黙ってうつむいている僕の鼻をぺろっと舐めた。わ!顔が近いよ。
体温が高くなる。これは夏のせい?クーラーが壊れているから?

出典:オリジナル
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