親友

2005/04/02 06:31 登録: 名無し

初めてMasaに出会ったのは、
学校での初めての授業のときだった。
俺とMasaは、ひとつだけ歳が違うだけだったので、
すぐに仲良くなった。


俺らがアメリカの生活にも慣れてきたころ、
学校の2セッション目が始まった。
俺とM asaは相変わらずの生活を送っていた。
朝は学校、学校が終わると図書館にいってPCで遊ぶっていう、
決まったパターンの生活だ。

2セッション目の3日目か、4日目のことだった。
初めに彼女のことを知り、話しかけたのは俺のほうだったと思う。
グラマー(文法)の授業が一緒で、
授業のときに彼女と話す機会があり、
話したのがきっかけだ。
彼女の名前は、
Sunny
韓国人の女の子だ。

韓国人は、日本のことをよく知っている。
アメリカに来てから初めてその事実に気づいたのだが、
日本語も知ってたり、少しくらいなら話したり、
日本に対する興味がすごくあるのだと思った。
聞いたところによると、韓国は日本の真似をしてることが多いそうだ。
それに比べて、俺は韓国のことを全然知らない。
もともと俺は、韓国人を毛嫌いしてたところがあった。
学校にいると、韓国人の数がすごく多く、
よく集団でたまってたりしていて、
アメリカにきてまで、溜まったり、
韓国語話しまくってるんじゃねえよって、
思ってたりした。

でも、彼女に会ってから何かが変わり始めた。
最初に興味を覚えたのは、Sunnyはすごく驚きやすいことだった。
後ろから、声をかけただけでびっくりしまくっていた。
俺は、面白い子がいるとMasaに話したと思う。
Masaも同じクラスだったので、
話してみたようで、興味を持ったみたいだった。

それから、SunnyとMasa、俺で一緒にいることが多くなった。
俺は、Sunnyから韓国語を教えてもらった。
単語程度だったけど、相手の国のことを学ぼうとすることは、
相手に好感もあたえるし、
それが他の韓国人とも仲良くなるきっかけになったと思う。
いまでは、韓国人が好きだ。
ほんとにおもしろいって思う。
結局人間なんだ。
俺らとどこも変わらない人間なんだ。
いいやつも悪いやつもいるけど、
それは人種で決まることじゃない、
それがわかった。

俺もSunnyに日本語を教えたりした。
だけど、この子は、綺麗な日本語より、おもしろい日本語とか、
悪い言葉のほうが好きみたいだった。
MasaはMasaで、悪い言葉ばっか教えていたけど。(笑)
おかげさまでというか、Sunnyの日本語は、悪い言葉ばっか吸収していった。

いつからだったろうか、
俺はSunnyを仲のいい友達としてとらえていたのだが、
MasaとSunnyの仲はだんだん、だんだん深くなっていくのを感じた。

なんでSunnyの部屋に泊まることになったのかあまり覚えていないが、
とにかく、俺とMasaはSunnyの部屋に泊まることになった。
いい忘れていたが、俺にはちゃんと大好きな彼女が日本にいる。
今も、これからもずっと好きである彼女が。
女の子の部屋に泊まるわけだけれど、
彼女に対する罪悪感は特になかった。
女の子の部屋に泊まるって気がしなくて、
ただ仲のいい友達の家に泊まるって感覚だった。
だから、彼女にも事後報告になったけど、
ちゃんと泊まったことも話した。
それにもうひとつ理由があった。
Masaである。
このときには、MasaとSunnyは、俺がいたら邪魔なんじゃないのか?
って思うくらいの仲の良さだった。
3人で話しつつも、俺は、PCでゲームやっていた。
3人でいるとすごく楽しかったけど、
2人で話しててくれってなんか思っちゃったりした部分もあって、
ゲームに逃げ込んだ。
まあ実際にゲームしたかったってのもあるんだけど。(苦笑)

2人は、ベットに寝転びながら、
仲の睦まじいカップルのように2人でじゃれあっていた。
見てるこっちとしては、
勝手にしてくれって思っちゃうくらいだった。
Masaはそんなこと気にするようなやつじゃなかったけどね。
そのまま2人はベットで一緒に寝ちゃって、
2人の寝顔を見た俺は、
すっごい幸せそうだな〜って勝手に思ってた。
俺も眠くなってきて、
寝ようと思ったけど、
ベッドは2人でいっぱいいっぱい。(まあ2人の寝てるベットに入ろうなんか考えないしね。)
しょうがなく、床に寝る俺。
せつねーーーー。
寒くて、自分のジャケットを毛布代わりにして寝た。
寝心地最悪で何度も起きたけど、
しゃあないって気持ちだったから、あまり気にならなかった。
朝方目が覚めると毛布がかかっていた。
Sunnyか、Masaがかけてくれたようだ。
たぶんSunnyだろうけど。
2人がどこかに行こうとしてたけど、
そのまま俺は寝てることにしておいた。
毛布がかかって幸せな眠りが待ってたしね。


そっからだったろうか、
2人の邪魔したくねえな〜って思って、
3人でいる時間が減ったのは。
学校にいるときは、Sunnyからかったり、
Masaと話したりはいっぱいしていたけど、
学校が終わったあと俺は一人になることが多かった。
ちょっと寂しい気もしたけど、
まあしゃあないって思ってた。
学校生活は楽しかったしね。


韓国、中国のNEW YEARの日だった。
その日Sunnyは学校に来ていなかった。
Masaは心配みたいで、Sunnyの友達にそのことを聞いていた。
そしたら、なんか前日から休むっていってたらしい。
体調がすぐれず、風邪みたいだった。
俺は、普通に風邪か〜、それならしゃあないなって思ってたけど、
Masaはそれ聞いても、心配らしくて、
NEW YEARのパーティーを楽しむことに集中できないみたいで、
パーティーが始まる前に、
俺にカバンよろしく頼むというと、
Sunnyのところに向かっていった。
そのときのMasaは、Sunnyがただの風邪ではなく、
もっと重い病気かのように心配していた。
俺は、そこまで心配することはないって思ったけど、
そういうところがMasaなのかもとも思った。
普段生活してるときは、
なんていうか、自由奔放というか、
自分中心って感じっていうか、
個性強くて、
なんといっていいかわからないけど、
簡単にとっつくのは難しそうなやつだって思う。

でも、本当のところは、
俺が勝手に思ってるだけだけれども、
心底の心は、ほんとに優しいやつで、
人一倍、人間に興味があるやつで、
すっごい人間らしいやつで、
例えるなら、
友達がほんとに困ったときに、
心底一緒に考え悩んでくれるやつだと思う。
そういうとこは、ほんとにすごいって思うし、
好きだ。

Masaが行ったあとに、
俺ができることっていったら、
パーティーにでた料理を、
Masaの分確保しておくことくらいだった。

Sunnyは、ただの風邪だったみたいで、
ほっとしたMasaに会ったときは、
こっちまでなんかすっごいほっとした覚えがある。
よかったよかった。


2セッション目も終わって、
Masaはいよいよ帰国することになった。
俺はまだまだ残るのだけれど、
いろいろな事情により、
Masaは帰国することになったのだ。
俺は、学校が終わってから、
Masaに会う機会は減ってしまったが、
友達ってのは、全然変わらないし、
たまに学校終わったあとに、
学校にくるMasaと話すのは楽しかった。

そして、いよいよMasaの帰国の日も近づいてきた。
このまま帰ってしまうのだ、
Masaには、いろんなことを教えてもらったし、
ほんとに感謝している。
ここまで俺がやってこれたのも、
Masaがいたからってのが大きい。
俺一人だったら、寂しさに押しつぶされてたかもしれない。
俺も、普通の人より人間ってものが好きだから、
一緒に誰かがいなければ生きてけない存在だと思う。
人間を嫌いになったこともあるし、
今でも、世の中腐ってるなんて思ったりすることもあるけど、
それでも、人間が好きだ。
特に、自分にとって大切なダチはほんとに大事だ。
だから、俺も最後にMasaに何かしたい。
でも、俺にできることっていったら、
空港に見送りに行くくらいしかできなかった。

朝早くから、俺は空港に出張った。
けれど、そこには、Masaの姿はなかった。
時間通りにきたのだが、いないのでおかしいなと思いつつ、
待つことにした。
1時間近く待ったが、まだMasaの姿は現れない。
嫌な予感がよぎる。
俺が来る前にもう搭乗手続きを済ませ、
飛行場内に入ってしまったのではないか?
それでも、飛行機が飛び立つ時間まではいよう。
そう思ってたときだった。
Masaの姿が俺の目に飛び込んできた。
Masaは、Sunnyとその他何人かの友達と一緒に姿を現した。
俺は思わず、
Masa!!!って叫んでいた。
よかった。まだいってなかった。

俺らはしっかりとお互いの存在を確かめあい、
抱き合った。
正直に会えてよかったって思う。

搭乗手続きを済ませると、
飛行機が1時間遅れることが判明した。
俺らは、なにげない会話をしたり、
記念撮影をしたり、
いつも通り、これから帰国する相手と話してる感じじゃなくて、
ほんとにいつも通りの会話をしていた。
みんな笑っている。
ほのぼのしてて楽しかった。
SunnyもMasaが帰るのは寂しいだろうに、
いつもと変わらない笑顔でそこにいた。
Masaがこれから帰るのが嘘みたいだった。

いよいよ空港内にはいる時間がきた。
Masaがそのために列に並ぼうとしていたときだった。
Masaのホストブラザーが現れたのだ。
遅れに遅れていたのだが、来たのだ。
Masaは、ホストブラザーに手紙を渡していた。
家族全員に書いてきたみたいだ。
そういうとこがすごいと思う。
そのあとホストブラザーと抱き合ったときだった、
Masaの眼から涙がこぼれた。
我慢してたものがこぼれたのだ。
やっぱり今まで通り笑っていたけれど、
別れは別れである。
不覚にも俺ももらい泣きするところだった。
抱きしめあったあと、笑いながら泣いてるMasaはなんかかっこよかった。
そのあと、俺とMasaも抱きしめあったのだが、
俺はなんかうまく言葉がいえなかった。
ありきたりの言葉しかいえなくて、
ありがとうってのも言えなくて、
うまくいえない自分が悔しいような、悲しいような、
だけど、笑って見送りたいって思って、
泣かなかった。
Masaは、また帰ってくるって言っていた。
前から聞いていたことだけど、
絶対に帰ってこいよっていった。

そのあと順々にひとりづつ抱きしめたあと、
最後にSunnyを抱きしめた。
Masaも、Sunnyもいっぱいいっぱいって感じで、
でも、なんか愛みたいなもの感じて、
こっちがなんか照れたくなるような、そんな感じだった。
抱きしめ終わったMasaは、
荷物をもつとじゃあ行くわっていって、列に並んだ。
Sunnyは、今にも泣き出しそうなくらい眼に涙がたまっていたけど、
まだ泣いてなかった。笑っていた。
Masaは笑っていた。さわやかなくらいに。
列に並びながら、Masaは写真を撮り続けていた。
最後の別れを惜しむかのように。
Sunnyもビデオをまわし続けた。
Masaの姿を1秒でも多く残しておくかのように。

それは一瞬の出来事だった。
MasaとSunnyは、列を作っているロープ越しに向かい合っていた。
Masaは、Sunnyの顔を引き寄せると軽く唇にキスをした。
ほんとに一瞬だった。
そのあと、Masaは悲しみを振り払うかのごとく列を進んでいった。
さわやかに笑いながら。
Masaはこれで気持ちが晴れたのじゃないかと思う。
ほんとにいい顔していた。
俺はこのシーンみてて、すっごく感動した。
Masaのさりげないその仕草がものすごくかっこよかった。
俺にはできないって思った。
ああやって、なにげなくキスしたり、
そのあと笑っていけることが。

だけど、Sunnyはこのキスで耐えてたものが溢れ出した。
泣いていた。
彼女にはツライことだったかもしれない。
でも、それでも、俺は思う。
いい別れ方だって。

Masaはそのまま列を進んでいった。
みんな必死でMasaの姿を見続けた。
Masaが見えなくなるその瞬間まで。
俺は、最後にまた叫んだ。
Masa!!!
彼は、その声で再び振り返り、
笑いながら手を振っていた。
俺らも笑いながら手を振り返した。
Sunnyを除いて。

そして、Masaの姿は見えなくなった。
俺らもその場をあとにした。
最後に俺は立ち止まり、Masaが消えたその場所を再びみた。
Masaは行ってしまった。
だけど、Masaなら再び戻ってくるだろう。
言えなかったありがとうの言葉をMasaが消えたその場所に投げかけてみた。
答えは返ってこないけれど、
Masaに届いたような気にはなれた。
そして、俺はまた歩き始めた。

(・∀・): 59 | (・A・): 52

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