なんとなく始まるストーリー

2010/09/08 10:19 登録: えっちな名無しさん


――時は、2010年8月3日――


「ふあぁ〜〜〜」・・・大きくあくびをする、俺の名前は錦鯉哲夫。

なかなかいない名字だとは思っているが、決してかっこいい名字だなんて思っていない。

そりゃこれで大きな屋敷の息子なんて事だったら少しはこの名前も好きになれてたのかもしれないけど・・・

「もう、こんな時間かよ・・・。」そういって小学校から使っている、少し幼稚なデザインの目覚まし時計が丁度9時を指している。
「まぁ今日は得にこれと言って予定もないしな・・・健全な男子高校生の夏休みが、良いのかよこんなんで・・・

悪態ついてみるが、すべての現況は他でもないこの俺だ

その前に、少し自分の紹介をしといた方が良いかな?

俺の名前は、にしきごい・・・ってさっき少し言ったよな。まぁ田舎生まれの都会育ちってもんだ。

と、言っても都会に来たのは去年の春、つまり高校入学の時だ。

得にこれと言って将来の夢も見つからない俺は、なんとなくで上京と言う大きな決心をしてみたのだ。

「んー・・・誰か暇な奴いないのかな。山岡に電話してみるか。」机の上の開きっぱなしの携帯に手をかける

「電池1本って・・・あぁ、昨日夜遅く帰ってきてそのまま寝ちまったのか。」充電器を探しながら数少ない高校の友達の電話番号を探す。

ぷるるるる・・・・ぷるるるる・・・・ぷるるるる・・・・がちゃ。

「あ、もしもし?俺、東王だけど、今なにしてる?」

『んー・・・?・・・・なに・・・・・・・・・?』

もう9時だってのに・・・まだ寝てたのか、こいつの夏休みの平均睡眠時間を自由研究にしたらそれだけでウケそうだな。

「おーいいつまで寝てんだよ。今日暇なんだけどさ、良かったらどっか遊びに行こうぜ?」

『おぉ・・・東王朝から元気だな・・・。ちゃんとパクパク餌貰ったのか?』

・・・まぁこの名字だ。東の王と書いてアズマオウって読む。打倒なあだ名だとは思うが、それこそ小学校の時は悩んで泣いてお婆ちゃんに文句を言ったこともあった。

「餌はこれからだよ。だから朝飯どっか食いにいかねえか?」

電話の向こうでガサゴソと音を立てたあと、カチッと乾いた音が鳴り響いた。

『ふぅ・・・。俺さ、バイト始めたんだ。何か大人の世界の仲間入りってやつ?いいよねー俺も社会の歯車になったんだよねー』

妙に大人びたりやがる奴って、絶対どこにでもいるよな。

「お前さぁ、タバコなんて吸ってたっけかー?」あきれ返ったような声で問い詰めてみる。

『おお、受話器から大人の煙が行ってしまったかな?こりゃ失敬失敬。』

腹が立つのは、こいつのデフォだ。いい加減友達をやめたいと思う。が、友達といえる友達はこいつくらいだ。

「大人になりたいのは分かるけどさータバコなんて体に悪いだけだよ。あんま吸うなよ?」

『東王ってたまぁーに母ちゃんみたいな事言うよな、生理か?』

母ちゃんみたいな事・・・俺、小さいころからいわゆるお婆ちゃんっ子って奴で。

父親も母親も小さいころに事故でなくなったって聞いてから顔も声も温もりも分からない、俺には縁のない遠い存在だと思っている。

それをあえて、隠さずに聞かれたら結構頻繁にその事を言っている。隠すような事でもないと思っているからだ。

「あぁきっと俺の母ちゃんの魂が俺に憑依したんだな。それでだよきっと、だからタバコはやめとけ?」

『・・・。あほかお前。』

と、俺は思っていたけど周りからはあまり触れたくない場所だったみたいだ。

「あ、おう。わりぃわりぃ。じゃお詫びっちゃなんだがどっかで飯おごってくれよ」

『逆だろうが・・・まぁ、良いけど。バイト代10日に入るし、今手元にちょっとしかないけど一人分くらいだったら余裕でおごれるぜ?』

「そういう面で大人になってくれるのは非常にありがたいな。感謝してるよ」

俺もバイトを始めようかな、きっとお金持ってたら友達も自然と出来る気がする・・・ってあんま良い友達は出来ないかな。俺みたいに。

「そうだな、じゃ10時に東京タワーで待ち合わせな。」

『どこのカップルだよ!・・・で、そっからどこ行くの?』

「突っ込んではくれたけど、ついでに否定もしてほしかった。」

『お前のボケは分かりづらいんだよ。てかボケじゃなくてアホだなお前は』

「ははは、まぁ準備できたらもっかい電話するよ。着替えながら考える」

『あいよ、じゃまた後で・・・』ぷつ。

そう言って、俺はまた部屋に一人ぼっちになった。

「さて、男二人なんて・・・まぁ少しオシャレくらいはしていくか。」

ピンポーン・・・ピンポーン・・・

「ん?宅急便か?誰だ、こんな朝早くから・・・はーい!」

『・・・・・ゴゴ・・・・・・グギギギギギ・・・・・』

・・・・ん?何か変な音がする。誰だろう。























『キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

「う、うわぁあ!!!」

驚いてしりもちを着いた俺に追い討ちをかけるように、郵便受けの隙間からタコの足みたいな触手が!!

「い!・・・な・・・ん・・・・!だ!!」

全く声にならない。声にならない声が勝手に漏れる。

『ユウビンキシャアアアアアアアア!!!オボレボボボボボボボ!!!』

「あぐ・・・あ・・・ぐ・・・・」

夢か!!これは夢なのか!!!そう思って頬をつねってみる。

「いつっ!」
体に電流が走った。頬が削げ落ちたみたいだ。

「な、何なんだよこれ!!!何なんだよこれェ!!!」

お、落ち着け!!落ち着くんだ!!こういう時は素数だけを数えるんだ!

「よし・・・えっと、2,3・・・それ以上わかんねえ!!」

自分の馬鹿さ加減に腹を立てる間もなく外のタコみたいな化け物をにらんだ。

『オボボボボボオ・・・ニジギゴイィィィ!!!・・・ユウビンデツオオオオオオ!!!』

死にたい死にたい死にたい、死にたくない、死にたい!!

恐怖と葛藤しているさなか、玄関のドアが壊れた。

ガッシャーン!!!!

『ユウビンデツオオオオオオオオオオ!!!!!!!!』

俺は玄関に立つ化け物を凝視した。

体から紫色の気体を発して、口からは体液が駄々漏れ、背中からは何本も触手がウネウネ動いている。

のに、ちゃんと郵便屋さんの帽子はかぶっている。

「あ、アホかてめぇえええええええええ!!!!」

その相手を見て第一声がそれだった。もうわけが分からなくなってきている。

それは錦鯉の思考回路がどうこうじゃなくて、今この文章を書いてる俺の心境だ。

どこで間違えたんだろう・・・

たぶん、きっと、最初の名前でミスったんだな。

ニシキゴイイイィィィィィィィィィィィィィィィ!!!

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(・∀・): 27 | (・A・): 36

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