美香ちゃんの牛乳

小学校のとき、牛乳が嫌いな転校生・美香ちゃんと同じ班になりました。
美香ちゃんは牛乳を開けずに残していたので、僕が貰うようになりました。
１ヶ月くらいして、牛乳を上げてると言うだけで美香ちゃんが僕のことを好きだと噂が広がってしまいました。
その日から美香ちゃんは牛乳を黄色いカゴから取らなくなりました。
必然的にカゴに残った美香ちゃん分の牛乳は、欠席者分と合わせてジャンケン争奪になります。

美香ちゃんが僕に牛乳をくれなくなった理由は僕も充分に知っていました。
僕も噂の当事者として、仮に美香ちゃんがくれると言っても恥ずかしくて拒んでしまったかもしれません。

その日からは美香ちゃんから牛乳をもらうどころか、話すらせず壁が生まれてしまいました。

その半年もしないうちに、美香ちゃんはお父さんの転勤でオーストラリアに転校していきました。
最初から日本は一時滞在だったようで１年以内に海外への転校と先生は聞かされていたそうです。

１０代最後のお正月、なんと美香ちゃんが年賀状が届きました。
転校以来、まったく交友がなかった美香ちゃんなので、僕の記憶からは殆ど残っておらず、すぐにパッと思い出せなかったほどでした。

美香ちゃんは海外の高校卒業を機に日本に帰国していて、大学生になっていました。
演奏家になるのが夢で、音大生でした。

年賀状には簡単な近況と写真で、すっかり綺麗なお姉さんでした。
僕は悩んだ挙句、年賀状を返した後に、葉書の電話番号に電話しました。

下心がありました。正直、これはチャンスだと。

電話に出た美香ちゃんを僕は一方的に話しました（当時、美香ちゃんから牛乳をもらえなくなって距離を置いて悲しかった等のエピソード）。
そして美香ちゃんと今度会わない？と誘いました。

そうしたら、なんと電話に出ていたのは美香ちゃんの妹で、由香ちゃんでした。。。


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