放課後のジョーカー

2010/10/17 09:48 登録: えっちな名無しさんZ

厨二病重症編

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/12(月) 15:06:24.91 ID:0QQKf+Ir0

中学二年の暑い夏だった・・・
俺は体育が終わると教室までダッシュしてミッションに取り掛かった。
まだ男子も女子も帰ってこない。
俺はカバンから用意してきた手紙を取り出す。
当時俺には気になる女の子がいたんだ。
前日に俺はラブレターを書いた。

このラブレターがリアルに気持ち悪い。
今日はそれをカミングアウトしようと思う
二つ折りにした青い便箋の中には真っ赤な文字でこう書いた。




『こんにちは
初めまして。僕はこの学校に古くから住んでいる幽霊です。
ずっと君を見ていました。君はすごく可愛いね・・・。
これからもずっと見ています・・・
                 放課後のジョーカーより』

そして、手紙の表にはジョーカーのトランプを貼り付けたんだ。




それを彼女の机の上においた。
そしてトイレに行き、何食わぬ顔で教室に帰ってくる皆と合流。
彼女の反応を待った。
きっと彼女は手紙を見つけたらすぐ机の中にしまい、あとでこっそりトイレで読むにちがいない。

そう思っていた時期が僕にもありました。

女子は別の場所で着替えてから帰ってくるため、俺は男子数人とウンコの話をしながらそれを待った。
一人、また一人と女子が帰ってくる。
俺はニヤニヤして待っていた。


そして・・・彼女は帰ってきた。数人の友達と一緒に。

さあ気づけ!そして赤面して非日常に巻き込まれたヒロインのような顔をしろ!!
そう思っていた。

しかし先に手紙に気づいたのは友達の一人だった。


「あれ?何か置いてあるよ?手紙?」
「なにこれwwwトランプ張ってあるよ??wwしかもポケモンのトランプwww」

すぐに女子数人が騒ぎ始める。そして大声で
「こんにちはwwwww
初めまして。僕は??この学校に古くから住んでいる幽霊ですwwwww
ずっと君を見ていましたwwくはwwwwwww君はすごく可愛いね・・っぷww
これからもずっと見ています・・・だってよwwwwwwwぎゃははは 」


??俺は何で笑ってるのかよくわからなかった。


だって放課後のジョーカーって書いてるだろ。あきらかに不思議だろ?
このクラスのものじゃない誰かが書いたんだ。幽霊だぞ?
なぜ笑うんだ??

俺にはわからなかった。
ジャンプばっかり読んでたから。

だが俺は信じた。俺の好きなあの子は、きっと赤面してる。
なぜなら内容はどうあれこれは、
そう・・・ラブレターだから。

しかも不思議がいっぱいのな!!
こんな涼宮ハルヒ的な思考で俺は期待しつつ彼女の方を見た。

「ヤダー・・・キモイわー・・・」


俺はショックだった。
だってジョーカーだぞ?カッコいいじゃねぇか。

今でも少しはカッコイイと思ってる。俺は俺を信じてる。
だが彼女はそれをキモイと言ったのは事実だった。
そして女子は犯人の予想を始めたのだった。

「ねぇねぇ男子!このクラスで一番早く教室に帰ってきたのだれよwww」
「ええ?コバヤシじゃね?」
コバヤシとは少し背の高いイケメンだった。
「ええ?ねぇねぇコバヤシだってよ?なら良かったじゃんよwww」

え?どういうこと?

コバヤシなら良かったってことは何?
コバヤシのことすきなの?ねぇ。

それは今も分からないが、コバヤシ本人が
「俺一番だったけど武田も一緒だったからアリバイある」
と言った瞬間、彼女はすこしガッカリしていた。


そして、今日の「そのとき」はここでやってきます。
その時、歴史は動いた。

「ねぇねぇ、そういえば○○(俺の名前)体育終わった後ダッシュしてなかった?」

「え・・・?」二秒ほど固まった。
「なに言ってんのさwwお前らさっきまで俺とウンコの話で盛り上がってたじゃんか」

何やら女子がひそひそしている。
「うわ・・・きも・・・」
「喋り方がキモイ」
「ウンコの話とか・・・」

なぁオイ、どういうことだ?コバヤシならキモくないのに俺ならキモイの?
そしてある宛先である彼女のある一言が、俺を突き落とした。

「う〜ん、でも○○君と私喋ったことないからなぁ・・・こういうイタズラはしないよきっと。」

そうだった。
確かに俺は彼女と喋ったことはなかった。

だけど小学校一緒だったし、登校途中や授業中たまに目が合うし
給食の配膳途中とかでも親切だし、どこかでお互いに
「魂は繋がってる。前世では深い関係が」とか思ってる設定だった。
少なくとも俺はリアルにそう思ってたんだ。

そして・・・
「俺たち確かにお前とウンコの話してたけどさ、その前はお前どこにいたかしらねぇぞ?」

ウンコ友達が裏切った。
そして、その中の一人エンドウは密かに彼女に想いを寄せていた。
エンドウは切手あつめを趣味としている根の暗いやつだ。
ちなみに家にテレビはなく、いつか遊びに行ったとき
「ねぇ・・・お江戸でござるのラジオ聞く?」と聞いてきた。
「え、今やってるの?」と聞いたら
「カセットに録音してあるんだよ・・・ふふ」とか応えた危ない野郎だ。

そいつが驚くべき行動に出た。
「災難だったね△△(彼女)さん・・・。僕ならそんなひどいこと・・・しないよ」
こいつも彼女とは喋ったことないはずなんだが、勇気を出して話しかけていた。



ここで俺はいいことを考えた。
ここまできたら仕方がない。
全ての罪をエンドウに着せてしまおうというものだ。

次の日、俺は朝誰よりも早く登校し花壇からパンジーの花を抜いて彼女の机に置いた。
「エンドウ=ジョーカー」という置手紙とともに。

さすがにクラス全員が引いていた。
そして彼女はあまりの気持ち悪さに泣いていた。
エンドウも泣いていた。

エンドウが教室についた途端クラスの冷たい目。

そして告げられる事実。キリスト教系の宗教に入っていて優しいが、周りとずれていて精神的に弱い彼は泣くしかなかったのだ。

当然エンドウは弁解した。
「僕じゃないよ。昨日の今日でこんなことしないよ」
しかし、もともと女子から気持ち悪がられていたエンドウは、女子にますます嫌われてしまった。

俺は、といえばエンドウとセットにされるのがイヤでひどい行動に出てしまったのだった。
その放課後、俺は一つの作戦に出た。
当初の目的が失われている。
このままではエンドウ事件として終わってしまう。

キモイのはいい、しかしあれがエンドウの仕業と思われるのは・・・
特に彼女に思われたままなのはイヤだ。
俺の自己顕示欲が火を噴いたのだ。

放課後、学校には吹奏楽部のラッパ音が響いている。
「うむ、ユーフォニウム(←どんな楽器か知らない)の音色が俺の心を潤す」
そんな独り言をつぶやきながら、今度は彼女の机の上ではなく中に手紙を入れる。



内容は以下のとおり

『こんにちは。いや、こんばんはかな?レディ。
昨日は君が皆に手紙を見せびらかすから、エンドー君にはスケープゴートになってもらったよ。
あんな醜い男は本当の僕じゃない。
僕はもっと美しい人間だ・・・。
ちなみにエンドーと書いたのは、僕がイギリス人の幽霊だからで、漢字が苦手なんだ。
「薔薇」は書けるけどね。
ふふ、面白いだろ?
とにかく、この手紙は秘密にすることだ。
君と僕の秘密だ。いいね?

おりこうさんだよレディ。歌をおくろう

      夕暮れが目にまぶしいね
          このまがまがしい赤さは
                僕に前世の自殺の記憶をよみがえらせる
                    
                            放課後のジョーカー』





次の日、なぜか担任がクラス会議を開いた。

そして、この手紙は担任によってプリントアウトされ、クラス全員の知るところとなった。
もちろん表に張ったトランプ、二枚目のジョーカーも一緒にプリントされた。





ジョーカーとレディが前世は付き合ってた。
しかし身分のちがいで云々という裏設定だ。

俺はマジで信じてたよ。
だって目が合うたびに胸がどきどき苦しかったんだぜ?
今考えれば普通に恋だったけど、思春期の少年にとってみれば世界がひっくり返る出来事だ。
そりゃあ手紙だって書いちゃうさ。

お前らだってそうする。
俺もそうした。


担任「えー・・・誰とはいわないが、先生のところに相談をしにきた女子がいる。名前書いてないから手紙はプリントアウトさせてもらった。」

ざわ・・・
     ざわ・・・

「きめぇwwwww」
「うわぁ・・・エンドウじゃなかったのかな」
「あいつ学校休んだもんな。犯人じゃねぇぞ」

担任「先生は筆跡でだいたい見当はついています。やった人は後で先生のところにきなさい。」

・・・誤算だな先生。
俺は普段から筆跡を隠す練習をしていたんだ。
俺の普段の字は偽者だ。

ジョーカー「いざというときに急いで書いてもばれないぜ!!!」
そうまさにそれ狙い。

当初は筆跡隠して、秘密の手紙を続け、そして段々筆跡を崩していき
「もしかして○○君なのかも・・・ミステリーで素敵」
と思わせるムラサキの薔薇の人作戦だったのだが・・・

意外なところで役に立った。
しかし、先生の言った「筆跡で見当がついている」というのは脅しだったのだろうか?
当然俺は担任のもとへなどいかなかった。

これで俺の作戦は続行できる。
クラスにジョーカーが知れ渡ったのは誤算だったがな。

俺はそう思っていた。



しかし、なぜかその放課後から彼女はコバヤシと下校するようになっていた。
俺「コバヤシ君、なんで最近彼女と下校を?」
コ「ああ、担任に頼まれたんだよ。俺ガタイがいいし帰る方向一緒だから何かあったら守れって」
俺「なんでそんなことに!?」
コ「例の放課後のジョーカー?wwwキモイ名前だけどまだ犯人わからないんだって。いやなストーカーだね」

俺「あ?」

あとでわかったことだが、彼女が担任にボディガードにするなら誰が一番か?と聞かれて
「コバヤシくん!」と即答したらしい。

まさか非力な俺がコバヤシ君と喧嘩できるはずもなく、俺は一触即発の事態だけは免れた。
だが、どうやら結果的に俺はキューピッドになってしまったようだ。
二人は付き合ってるんじゃないかとか、そんな噂まで流れたのだ。

俺に残された道はただ一つだった・・・

事件は終局へと向かっていく。



俺は家に帰って布団をかぶり、声を殺して泣いた。
いや、声は出した、いや、こらえたかな?
とにかく泣いた。

そして机の引き出しをあけた。
俺の秘密ゾーンである。
中にはエアーガン、ペーパーナイフ、そしてトランプが入っていた。
しかし二枚のジョーカーはもう使い果たしていたのだ。

・・・ふと、俺の手には一枚のカードが握られていた。




次の日、俺は放課後がくるのを待った。

そう教室に誰もいなくなるのを、だ。

午後四時半すぎ。
俺は教室のうしろの黒板に、一枚の大きな模造紙を貼り付けた。
そう、持ってきた画鋲で。模造紙には、真っ赤な文字でこう書かれていた。



『やあレディ。いや、みなさん。
もう僕は君に裏切られて有名人だったね。
前世と同じ裏切りと過ちが繰り返されるようだ。

僕は結局、この世界からは拒絶されているようだ。
愛する人からも、前世からの因縁も。
君は僕を忘れて新しい恋をするようだ。
だが待って欲しい!
君はいつか必ず思い出す。
僕はそれまで待っている。
今回ばかりは僕は君のキューピッドとなってしまったようだ・・・
だが10年後か約束された13年後・・・そう13階段の13年後・・・
僕は君を迎えに行くよ。
卒業までお元気で。
僕はこの学校でいつまでも君を見守っているからね??
コバヤシくん・・・彼女を泣かせたら許さない。
君はハートのエースなのだから。(ここにハートのエースを貼る)

そして・・・僕は・・・

      繰り返されるあやまちに
          人は誰も気づかない
              こんなにも・・・愛していたのに・・・
                   放課後のジョーカーになりきれなかった

                              11(ジャック)より』


さいごにスペードのジャックを貼り付けた・・・


長くなったがこうやって俺は中二病を乗り越えた。

エンドウはその後見ていない。




*後日談
もちろん次の日はクラス中で大騒ぎになった。
他のクラスからも見にくる奴が多数。
担任もすぐには片付けなかった。

そのため、6時間目まで全ての教科の先生が見たことになる。






続く

出典:VIP
リンク:VIP

(・∀・): 80 | (・A・): 24

TOP