ガラスの10代

2010/11/05 00:34 登録: えっちな名無しさん

寒い朝のことだ。俺は大学へ通うために駅のホームで電車を待っていた。
そのときに同じゼミの友人と会い、同じ電車に乗った。これもよくあることだった。
車内は通勤ラッシュと重なるためにいつも満員だ。友人との間にOLが割り込んできたので会話もできない。

駅をいくつか通過して、しばらくしたときのことだった。突然、
「この人痴漢です!」と女性の金切り声が車内に響いた。
声のしたほうを見ると、若い女が誰かの手首を掴んで頭上に掲げている。驚いた!なんと、よく見ると連れの友人ではないか。
これは冤罪だ。
手首を掴まれた彼はすっかり顔が青ざめてしまった。急に降りかかった災難に混乱したのか戦慄したのか……。
彼は同じ学科に在籍していて、俺なんかよりも勤勉で成績がよく、教授たちからも見込まれた優等生だった。
とても優しいヤツで、入学式のときに会場がわからず迷っていた俺を丁寧に案内してくれたのが彼だった。
そんな彼が痴漢などするはずないし、そもそも彼がそのような行為をしていないことは、近くにいた自分がよくわかる。
車内で交わされる口論。
「ち、違う! ぼくは痴漢なんかしていない!」
「嘘よ! あんた触ってきたじゃないの!」
ああ、どうしよう。まさかこんなことになるとは。友人は助けを求める強烈な眼差しを俺に向けてきた。助けなくては!

電車は次の駅に停車し、俺を含めた三人はいったん降りた。とにかく満員電車ではどうにもならない。
騒ぎを聞きつけた駅員がやってきて事情を求めた。痴漢の被害を訴える女と、自分の無実を主張する男。
駅員はうんざりしたような表情をみせて俺のほうを向いた。
「で、君は痴漢が行われたところを見たの?」
「はい」
と、しっかり答えておいた。
それにしても、朝からこんな悪趣味なアルバイトに付き合わされるとは思わなかった。本当に困った友人だ。
やがて俺は朝一の授業が公欠として認められるかどうかだけが気になっていた。


出典:なんとなくあの曲が頭の中で回ってる
リンク:2ch

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