国益をいちばん損ねたのは誰か？

国益をいちばん損ねたのは誰か？＝中原圭介
【コラム】 2010/11/15(月) 22:52

　　鳩山前政権時代に普天間基地の移転問題がクローズアップされました。私は、その時の政治家や国民の反応を見て、日本人には「安全保障は経済問題である」という視点があまりにも欠けていると感じました。

　　日本が戦後に急速な経済成長を遂げることができたのは、日米安保体制のおかげで、戦争や紛争に巻き込まれるリスクを負わずにすんだからです。外からの脅威を心配することなく、経済発展にだけ集中することができました。その経済効果は数百兆円レベルではきかないはずです。

　　日米安保があるからこそ、日本の軍事費が少なくすんでいることも忘れてはいけません。日本の軍事費はＧＤＰの1％以下です。米国の軍事費はＧＤＰの4％強、主要先進国は2．5％程度ですから、日本は国力のわりには軍事費が著しく少ないのです。

　　この点でも、日本は米国から恩恵を受けていることになります。米国が軍事費を削減し、在日米軍も縮小することになれば、日本は自ら国防関連費を増やして国を守らなくてはいけません。

　　沖縄での米軍の影響力が弱まれば、中国の領海侵犯が頻発することは間違いありません。北朝鮮やロシアへのにらみも、これまでのように効かなくなるでしょう。

　　日本は財政負担が増すだけではなく、安全も脅かされるリスクを抱えることになります。経済も少なからず悪影響を受けます。

　　そもそも、尖閣諸島での中国漁船衝突事件からロシア大統領の北方領土訪問まで、その大元の原因をつくったのは鳩山前首相です。普天間問題で米国との関係をこじらせたために、必然的に起こった問題なのです。今後の影響も考慮すると、彼が国に与えた損失は数兆円では足りなくなるでしょう。

　　海上保安庁職員が中国漁船衝突事件の映像を流出させた件について、管政権は「国益を損ねた」と発言していますが、いちばん国益を損ねたのは鳩山前首相であって、もちろん海上保安庁職員ではありません。

　　民主党政権には「人の心」を掴む政治は期待できません。

　　鳩山前首相には、有事があれば命を捨てる覚悟で来ている米国の海兵隊に対する感謝の気持ちが欠けていたし、菅首相や仙石官房長官にも、危険と隣り合わせの海上保安庁職員に対するねぎらいの気持ちがないから、ああいう態度になるのだと思います。

　　民主党政権は無為無策のまま、すでに企業のモチベーションを大きく下げているのに、国を守っている人たちのモチベーションまで下げてどうしたいのでしょうか？

　　もはや経験不足を通り越して、素人集団としか言いようがありません。仮に無給で働いてもらうとしても、国への不利益を考えると総退陣してもらいたいところです。

出典：
リンク：http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=1115&f=column_1115_017.shtml