初恋の人からの謎の電話

2010/11/27 14:19 登録: ジー

携帯電話を持っている人の多くは、初めて購入した時に設定された電話番号をずっと使い続けているのではないだろうか。
私も大学生になった時に携帯を購入して以来、約10年の間同じ番号を使い続けている。
先月、それがきっかけである不思議な経験をした。

その日、いつものように会社から帰宅し、飯を食って風呂に入り寝る準備をしていた23時頃。ハイボールを飲みながら文庫本を読んでいると携帯が鳴った。登録してない番号からだった。

不審に思いながらも出てみると女性からだった。
「もしもし、お久しぶりです。E子です」
えっ!?、一瞬耳を疑った。本当にE子なのか?
E子は忘れなれない女性だった。それ以前もそれ以降もあんなに女性を好きになったことはなかった。

今から約10年前。E子とは19歳の時にバイトで知り合った。年はE子が一つ上。私は当時田舎から出てきて一人暮らしをしていて、神奈川県内の大学に通っていた。E子も大学は違うが一人暮らしをしていた。
私は金曜と土曜の夜にコンビニの深夜バイトをしていて、E子は土曜と日曜の朝のシフトに入っていた。深夜のシフトは夜の1時から朝8時まで。経費削減なのか、そのコンビニは深夜も朝もバイトは一人だった。店長は車で店まで通っていて、22時くらいには帰ってしまい、9時頃にならないと来なかった。夜の1時から朝7時まで私は一人ぼっちで働いていたが、7時から8時までは朝のシフトの人と一緒だった。
つまり計2時間ではあるが、週に2回、E子と一緒に働いていたのだ。休日の早朝であり、またそんなに売れてるコンビニではなかったので、客もあまり来ず、べらべらE子とくっちゃべっていた。

電話をしたり、食事をしたりと友達付き合いを続けていく中で、次第に私はE子のことが好きになっていった。
ある日、思い切って告白をした。今の関係を崩したくないと思う一方で、もうそうしなければもんもんとした気持ちが収まらなかった。

しかし、振られてしまった。他に気になる人がいるというのだ。年も私より上の23歳。大学の4年生だという。19歳の高校出たばかりの田舎ものからして見れば、23歳の都会人はとても大人に見えた。諦めるしかなかった。それ以来、気まずい雰囲気になり、仕事中もあまり話をしなくなった。そして告白して約1ヵ月後、E子はバイトを辞めてしまった。さらに、一人暮らしをやめて千葉の実家に戻ってしまった。

それから電話もできず、一度も会うことなく今に至っている。
さて、その電話の相手に対し、私は誰かにからかわれているのではないかと思い、当時の2人しか知らないようなことを思い出し聞いてみた。結果本当にE子であることがわかった。
電話をかけてきた理由は、E子はまた当時の近辺に住むようになり、懐かしくなったという。そんな理由でかけてくることがあるのかと不審に思ったが、話をしていくうちに、振られたことも笑い話となり(当時は相当傷ついたが)盛り上がってきて、10年ぶりのの会話を楽しんだ。
そして、新宿で次の週の会社帰りに会う約束をした。
待ち合わせはE子が指定した新宿のダイニングバーの前。時間は19時30分だった。

そしてその日がやってきた。朝から楽しみで仕事が手につかなかった。定時後、新宿に向かい10分前に待ち合わせ場所に着いた。
10年後のE子はどうなっているのか?そして私はどう映るのか?緊張でタバコに火をつけた。待ち合わせ場所は人通りが少なかった。女性が通りがかる度に心臓が止まる思いだった。

タバコを吸い終える頃には19時30分を過ぎていた。E子はまだ現れない。さらに緊張してきた。周辺をうろうろしながら、2本目のタバコを吸った。
それも吸い終える頃、すでに20時になっていた。だがまだE子は現れない。電話をすると電源が入っていないか圏外だった。いつまでも店の前にいるわけにもいかないので、もう着いていて近くのファーストフードで待つ旨をメールした。

雑誌と文庫本がカバンの中に入っていたので、暇つぶしには困らなかったが、次第に腹が立ってきた。社会人であれば急な仕事が入ることもあるが、一報入れるのがマナーであろう。E子からのメールも電話も一切ないのだ。21時までは待ち、それに間に合わないのであれば帰ることをメールした。

そして21時になる5分前頃、もう来ないものとあきらめ、読書に夢中になっていた時、不意に声をかけられた。
「遅くなってすいません。E子です。急ぎの仕事を頼まれてしまいました。お詫びにごちそうします」

私は顔を上げ、声をかけてきた人物を見上げた。
「・・・どなたですか?」
そこにいたのはE子とはまったくの別人だった。顔はもとより、E子は身長153くらいなのに、その女性は165くらいある。なにより声も先週電話で話したE子とは全然違う。
「わたしE子だけど」その女性は顔をにやつかせながら言う。
置かれている状況が理解できなかった。
しかし次第に騙されたのだと思い、怒りが込み上げてきた。
きっと周りにグルがいて、笑ってるのではないか?そう思うといてもたってもいられなかった。
「待ってください!」
その声を振り切り、店を出て、駅に向かい早足で歩いた。

次の日冷静になり、帰宅してからなぜこんなことをしたのかを電話でE子に問いただすことにした。
家に帰り、電話をかける。E子は出なかった。メールも無視。
さらに1週間後あらためて電話をかけてみると、なんとその番号はもう使われていなかった。無論メールも届かなかった。

いったい、E子はなんのためにこんなことをしたのか。その意図がまったくわからない謎の出来事だった。



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