夜道での災難

2010/11/27 15:01 登録: えっちな名無しさん

 その夜、俺はいつもの様に仕事を終えて最寄り駅から自宅までを歩いて帰っていた。周囲は田園や雑木林が多く、そこは夜にもなればあまり人通りのない寂しい場所だった。
 そんな夜道をいつもの様に歩いていたのだが、その日は夜も遅い時間帯であった事もあり、運悪くいかにも暴走族風の連中が五人ほど、道の片隅にバイクを止めてたむろしていた。 
 俺は嫌な予感しかしない中、そそくさと彼らの前を通り過ぎようとした。
「おい、ちょっと待てや」
 しかし案の定、俺は彼らに呼び止められ、取り囲まれてしまった。
「あのさ、俺ら今すっげぇムカついてんの。サンドバックになってくれるか、金恵んでれるか、どっちかしてくんないかなぁ?」
 威圧感たっぷりの彼らを前に、俺はもう泣きそうになってしまった。当然ながら俺には彼らに逆らう勇気などなく、しかしかといってこのまま素直に金を差し出すというのも堪らなく悔しくてならなかった。
 とっさに俺は、ある一計を思い付いた。
「君ら、ここら辺の子?」
「だったら何だよ?」
「それじゃあさ、君ら斉藤さんって人知ってる?」
 一か八か、俺は適当な名前を口にした。
 すると急に、彼らは顔色を変えてきたのである。
「え、あんた斉藤さんの知り合い!?」
「そうだよ。君ら俺から金を盗るって事は、斉藤さんの顔に泥を塗るのと一緒だぜ?」
 一転、彼らは俺に対しすっかり平身低頭な姿勢になっていった。
「ホントすんません、そんな事全然知らなかったんで・・・」
 俺は窮地を脱し、そのまま彼らの元から去る事に成功した。
 ようやく家の前にまで到着した時、俺は一気に体から力が抜け、そのまま腰を抜かして危うく漏らしてしまいそうになるくらいだった。
 人生には時としてハッタリも必要なのだと、俺はその時に学んだ。しかしもうあんな目に遭うのはこりごりだと、その日以来、俺は駅までの道を徒歩から車に変えたのだった。


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