もしも丹下段平がフリー編集者だったら

2011/02/16 01:02 登録: えっちな名無しさん



“何も良いとこがない映画だけど、丹下段平のコーチングにはぐっときた! もし丹下がフリー編集者だったら…”


“私は25歳のフリーター。バイト先の愚痴をブログに綴る毎日。そんなある日だった。コメント欄にあの男の書き込みを見つけたのは。「俺の目に狂いはねえ!あんたには類いまれなる文才がある!俺と一緒に文壇で明日をつかまねえか!」”

“ブログ内容からバイト先のコンビニを突き止めたあの男が、突然店に現れた。眼帯をしたあきらかにヤバい中年男。店長は追い出そうとしてる。「俺を信じてついてこい!直木賞を目指そう。あんたなら平成の林芙美子になれる!」 あまりにも五月蝿いので私はしぶしぶと彼の指導で小説を書くことに”

“丹下に3ヶ月以内に新人賞を取れと言われる。「1日原稿用紙10枚は書け。週に2日日は小説から離れて映画やアートに触れろ。月200枚量産がプロとして活躍できるレベルだ」”

“「初心者は背伸びするべからず!身の回りのことを等身大の感覚で素直に書けばいい!それこそが普遍性だ!」丹下に貰った「放浪記」という小説、ワーキングプア女子の話で面白かった…。ふーん、昔の文豪も私とおんなじことを考えていたんだなあ”

“就職活動での挫折、バイト先での悲喜こもごも… 格好わるいけど書いてみよう。完成した作品を、丹下はキリで穴を開け、器用な手つきで紐で閉じてくれた。「懐かしいな。投稿…」 彼は昔小説を書いていたそうだ”

“3ヶ月後… 私は大手出版社から短編でデビューした。はしゃぐ私を丹下は怒鳴った。「ぼやぼやすんな!選考委員全員にお礼状を書け!」「本を出してからがデビューだ!油断するな!少なくとも短編をあと3つ書かなきゃ本にならんぞ」”

“半年後、やっとのことで本が出た。でも初版がはけたかはけないか。がっかりする私。でも丹下は気にするな、と言う。「最初の本がバカ売れすると先が苦しいぞ」「いいか部数じゃない。書評家の反応がすべてだ」「最初の本は名刺がわりだ。お前の存在証明だ」”

“丹下の昔の人脈と売り込みのおかげで、ちらほらと読み切り短編の仕事が舞い込む。「いいか、新人の主戦場は文芸誌の読み切りだ!」「制限枚数五十枚でいかにテメエの世界を構築するかだ」「バッキャロー!物語の結末は必ず情景描写で終わらせろっつっただろう!」”

“デビュー二年後、三冊目の本が出て、連載も持てた。ようやくバイトも卒業。そろそろ大人の恋愛小説も書きたいなあ。「性描写はもう少し筆力がつくまで待て。その時は濃いやつを」「なんで?」「若い女の作家がある日突然濃いセックスを書くと、『一皮むけた』と絶賛されるんだ」

“丹下のアドバイスのおかげでついに夢の「本屋さん大賞」ゲット。忙しくなって締め切り三本が同じ日なんてザラ。徹夜開けに真っ白な灰になってる私に丹下はつぶやいた。「直木賞は43歳までにとればいい。焦らずゆっくり歩け。その日まで書け、書くんだ。モフ…」 (了)”

“続・もし、丹下段平がフリー編集者だったら→売れっ子となった私のもとには顔出しのインタビュー依頼が舞い込んでくる。「いいじゃねえか。どんどん出とけ」と丹下。「えー、ルックスに自信ないよ」「馬鹿。じゃあ美人作家は全員バンバン増刷かかってのかよ?」”

“「要は読者に好感を持たれるイメージに作り込めばいい。『美人』ではなく『面白いモノ書きそうな女』にな。ちょっと待ってな」 そう言い残し丹下はどこかにいってまった。そしてインタビュー当日…

“ライターさんの待つ出版社の応接室に通され私は驚いた。カメラマン、照明、スタイリスト、メイクさん… まるでこれからグラビア撮影でも始まるみたい。丹下は得意そうだ。「読者モデルにもスタイリストがつく時代、作家だけが放置ってのはおかしくないか?」

“「昭和の編集者は、身銭切ってでも作家を育てようとした。イメージ戦略には金と時間を費やした」 ゲイのスタイリストさんが「ダンペイちゃんの頼みとあっちゃかなわないわ〜」と私に服を選んでくれた。出来上がった写真の私は美人ではないかもしれないけどキュートで聡明そうだった。

“丹下のイメージ戦略が成功し、私のもとにはお洒落な雑誌からもコラム依頼がくるように。作品の一つが映像化され知名度はぐんぐんあがる。デビュー五年目にしてついに直木賞の候補に!

“山の上ホテルで丹下と二人、夢にまでみた「待ち会」するものの結果は×。「最初はこんなもんだ。景気づけに下で天ぷらでも食うか」 いつになく丹下はやさしかった”

“季節の天ぷらはおいしく酒も進み、私はぼうっとした。目の前の丹下が突然男らしく、眼帯までセクシーに思えてきたのだ。こちらの気持ちを察したのか丹下はぴしゃりと言った。「作家は誰と恋愛してもいい。ただし担当編集者とだけはするな」甘ったれるな、そう言われた気がした”

“恥ずかしくて悔しかった。私はその気持ちをバネに書いて書いて書いた。そして32歳の冬、直木賞をとった。丹下は泣いていた。「ずっと私のセコンドでいてくれる?」彼は鼻水をすすって笑った。「馬鹿。週刊文春に見開き連載とるまではゴールじゃねえよ」(了)”




出典:ついったー
リンク:http://twitter.com/mofumofu81/status/36805182528430080

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