少年時代の夏

2011/03/20 17:12 登録: えっちな名無しさん

 
 小5の夏休みの思い出。
 住んでいた家の近所にあった、いつの間にか操業を止めて閉鎖されていた小さな工場。すっかり荒れ放題になっていたその場所も、子供にしてみれば冒険心と好奇心を擽られるものがあった。
 そしてある日、俺は仲間達と共にその工場に忍び込んだのである。
 しかし別段、中に入ったからといってこれといった収穫がある訳でもなく、よく分からないさびた機械やらダンボールやらが散乱しているだけの光景。
 ああ、やっぱこんなもんかと、冒険ごっこの熱もすぐに冷めていく中、俺達は次に廃工場の裏庭へと回ってみた。
 そこで俺達が目にしたのは、無造作に置かれていた数冊の雑誌。表紙を飾っていたのは若い女性。しかも衣服を大胆に乱し、魅惑的な表情とポーズをとる姿。まだまだ無垢なお子様の俺達だったが、それでもその雑誌がいわゆるエロいものだという事はすぐに理解出来た。
 こうなると、俺達のテンションは一気に上がった。秘境の冒険の末に宝を見つけたトレジャーハンターのごとき気分である。俺達は我先にと、その雑誌に群がり手を伸ばしたのだった。そして未知なる領域に足を踏み込む興奮に胸を高鳴らせ、表紙を捲った俺達の目に入ってきた衝撃的なグラビアの数々。
 そう、それは俺達にとってあまりに衝撃的な大人の世界・・・表紙に喧伝されていたスカトロなどという単語を、誰もまだ知る訳がなかったのである。
 その後、誰一人として口を開く者はいず、俺達は無言で工場を後にした。もちろん、その雑誌を持ち帰ろうとする者も誰もいなかった。
 それからしばらく、学校の給食でカレーを食う女子の姿を正視する事が出来なくなった。


出典:?
リンク:?

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