台風の目の中で

2011/09/07 10:14 登録: えっちな名無しさん

ナンパしたあの娘と、山間にある祖父の別荘(ウッドハウス)へ行ったあの日。
まさか、あんなことになるなんて。

前日の夜は激しかった。
お互い、激しく求め合い、愛し合った。
そして・・・。




・・・外は激しい雷雨だった。
台風が近づいて来ているらしい。
このまま行けば、直撃だ。

別荘は、割としっかりした地盤にあったので
何事もないだろうと、安堵していた。
愚かだった。

気が付くと、外で何かが崩れる音がする。
時間は朝の6時過ぎ。

急いで服を着て、ふたりで外へ。
ほの暗い外の景色に、二人が見たものは
すぐ近くで土砂崩れが起っている光景だった。

動揺する彼女を車に乗せて、反対側の道から麓へ

が、前方の本来橋がかかっているはずのその場所に
絶望が待っていた。

橋が、跡形もなく消え失せている。
おそらく、簡単な造りの橋だったために
増えすぎた濁流に呑まれたのだろう。
最悪だった。

背後には、いつ崩れるかもわからない山
天空からは、止むことのない豪雨が降りしきり
隣では、恐怖で怯えている彼女。

意を決し、徒歩で先に進むことに。

車では通れそうになかったが、どうにか人が通れる道らしきものが。
ほの暗かった景色が、少しずつ光を帯び明るくなってきてるのを感じた。

空を見上げると、そこには太陽が。

そう、台風の目に入ったのだ。
ふたりは安堵の表情を浮かべた。
気を抜いた。

ふたりを支配していた恐怖から、ほんの一時かもしれないが
太陽は解放してくれたのだ。

それは、神々しく
ふたりを迎えてくれた
・・・悪魔だった。

刹那、轟音とともに川の上流から
鉄砲水が押し寄せてきた。

それは、気を抜いていたふたりにとって
衝撃的な光景で、動けなかった。

もし、気を抜かなければ
一瞬のうちに危険を判断し
この危機を回避できたであろう。

濁流に呑まれる彼女。
思考回路はショート寸前。

目の前に暗黒が訪れた。
結局、彼女は見つからず仕舞いだ。

彼は彼女を見つける為に
星の彼方へ旅立った。






出典:この物語は
リンク:フィクションです。

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